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みこラブ  作者: 九条九重
一章 尊

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2/11

相談

話せばなんとやら、ミサキも来ていた。

「久しぶりだなミコ、何してんだ。」

 あの時は髪が長かったがショートカットになっていて、

 元気で活発な子だったとなんとなく思っていたが、今は不機嫌なのか曇りがかかっている。

「今日からセラさんのところでお世話になることになったんだ。

 今日はこの場所の魅力を知るためにって海に遊びに来てて、

 そしたら偶然ミサキちゃんの同級生と会って色々話してたんだよ。」

「そうか、まぁ胸だ尻だなんて会話はもうやめとけよ、

 じゃあ。」

「私じゃないよ…」

 ミサキは立ち去りたそうにしていた。

 ミコは会話に息苦しさを感じ、その会話を続けなかった。

「んまミサキ、ウチはあんたの小さい胸もすきやよ」

カレンはこの状況でもそれを言うのかと、他の人は落ち着かずにいた。

「お前の方が胸ないだろ。

 用がないなら帰るよ」

「胸のことどうでもええんよ。」

「なんなんだよ。」


「どうして歌うんやめたんや。

 ミサキがなんも言わんせいでユカが恥かいとるやん。」

「私が恥…」

 ユカはやはり私なんかとショックで卑屈になり、身を小さくしていく。

「そんなことで呼んだんか。」

「せえや。」

「なんでユカが恥かいたか知らんが、私は神社を継ぐ事にした。

 だから諦めるって言っただろ。」

 その言い方から過去にも何度かこの会話がカレンとの間にあったことを感じた。

 ミコはミサキの歌の事など知らなかったので、二人の会話にただ聞いていた。

「そうだったの。」

 ユカもあまり聞かされていなかったようだ。

 ミコはミサキの話を聞きながら何か考えているようだった。

 

 結局カレンはミサキが辞める事を言っても諦めなかった。

「ほんまにそれだけか。」

 ミサキは背を向けて帰って行く。

「そうだよ。」

 去り際にその言葉を残して。


「酷いよカレンは、私には何も言わないで。」

 カレンはユカの事は余り気にせずに何か考え事をしている。

「うちは行かなきゃだから。」

 カレンはそう言うとミサキを追って行ってしまった。

「カレンはどうしたんだ?」

 セラはユカに尋ねる、随分と軽く捉えている様に思った。

「私にも分からないです。

 ミサキは歌をやめるし、カレンは考え事ばかりで私はどうしていいか分からなくて、

 でも私が歌の素晴らしさに気付かせればまだ諦めないかもって、

 ちゃんと話してくれるはずってカレンは言ってくれて、

 でも上手くいかなかったみたいです...」

 ユカは落ち込んでその目には疲れが滲んでいた。

「大丈夫だよユカちゃん、私も協力するよ」

 ミコはユカを即席の言葉で励ましたが、ユカが期待をしている様子はなかった。

「お気持ちだけでも嬉しいです」

 その後はセラのもとで少しユカと話して帰った。


 セラの実家に帰るとおばあちゃんは手料理を用意して待っていてくれた。

 ミコはそれが懐かしく嬉しく思う。

「ミコト久しぶりだね、

 もうこんなに大きくなって。」

「久しぶりおばあちゃん、今日からよろしくお願いします。」

 ミコは挨拶をし、言われるまま机に向かった。

 おばあさんは台所から料理を出してミコの前に置いた。

 ミコはすぐに立ち上がり料理を運ぶ手伝いをした。

「ありがとうねミコト。」

 おばあさんは礼を言い、運び終えた後まずミコを座らせた。

 ミコが座った後に左右にセラとおばあさんが向かい合うように座った。


 今日来てみての事を話しながら楽しくその晩を過ごした。

「明日は午後から店に来てね。」

「わかりました。」

 セラと明日のバイトの約束をし、部屋に入る。

 長らく物置になっていたと言っていたが綺麗に掃除されており不満な点などは無く、ありがたいばかりだった。

 その日の夜は不慣れな土地での疲れや海での疲れなどもあり、布団に入るとミコはすぐに寝てしまった。



 夢の中で目を覚まし、うずめる顔を少し上げると車窓から星空の海が見えた。

 力強く穏やかな波を立て走る列車。

 冷たい空気を感じながら呆然と外を眺めて待っている。

 ここは幽世の夜空を走行する列車のなか。


 扉は開かれ一人の少女が入ってくるとミコの隣に座った。

 ミコは横の席を一目見て、前に頭を垂れ、質問する。

「どうして歌うのを辞めるの。」

 ミコは昼間とは違う冷静で落ち込んだ声をしていた。

 表情は見えないが曇りが差しているように感じられた。

「私、実は歌を配信してたんだ…


 ミサキは悩んでいることを話しだした。


 それから少ししてから、暗くなると誰かが家の周りをうろついている様な気がしてな、

 覗かれているんじゃないかとかも思うようになって。

 歌うのが怖くなったんだ...ダサいよな私、みんなにも迷惑かけて…」

 ミサキは話していくうちに落ち込んでいく、声は恐怖と悔しさで震えている。

 ミコは顔をあげて聞いた。

「それを見た事はあるの?」

「見たことない」

 ミサキは自信なく、ただの思い込みであるかもしれないという思いもあった。

「…大丈夫だよミサキ、ダサくなんてない、

 「誰だって不安に思う事はあるんだから」

「いや私はダメだ。」

 ミサキが否定してもミコは諦めたくなかった。

「ミサキの歌、私は聞きたい、カレンちゃんもユカちゃんもきっとそう思ってるはずだよ。

 不安とか怖いなって思う事があるなら私が必ず護る、だからそんな事で諦めないで、

 だからさ後でミサキの歌、私にも聞かせてよ。」

 ミコは思わずそんな事を言っていた。

 それが意外だったのか、はたまた感銘を受けているのか、

 ミサキはそんなミコを瞳を大きくして見ていた。

 ミコはじっと見られて心が落ち着かないでいた。

「まさかミコトがそんなこと言ってくれるとはね

 ...私もう少し続けてみるよ」

 ミサキの顔はここに来たときより少し晴れやかになっているように思う。

「でもプロにはなれないだろうしさ、そんな続かないと思うけどね」

「それならそれでも良いんだよ。」

 ミコは軽く微笑んで言う。

「じゃあなミコト、今夜はありがとな」

 ミサキはにこりと笑って席を立った、ミコが開けと思うだけで扉は独りでに開き、ミサキは列車を出て星空の中に去っていった。


 ミサキはこの事を起きた時には覚えていないだろう。

 これがミコの能力、意思を繋ぐ者として”コード”と呼ばれるもの。

 ミコは人知れず困っている者や助けを求める者の胸の内を聞き出し、励ましていた。

 励ますだけだった、だがそれも少し前の話。


 ミサキが去った後、ミコの前に一人の女が現れた。

 赤く塗られたマントをした軍服の真白い肌の女。

 顔を仮面で隠し表情は分からないが仮面の隙間から何かが漏れて流れる。

 これこそが今のミコが持つコード。

 クイーンラバー

 希望を掴み取る能力。


 ミコは後ろの方の席を見た、一番後ろにはミコの親友が乗っている。

 大雨の夜に濡れて入ってきた彼女はずっとあそこに座り、

 彼女は車窓から星空の海を呆然と眺めている。

 ミコは彼女を見た、それは戒めそのものだった。

 ミコは目を閉じた。


 ミコは布団で目を覚し、静かに家の外に出た。


 ミコは暗いミサキの家路をたどり、ミサキの家のそばで境内を覗く人影を見つけた。

 人影の後ろに姿を現したクイーンラバーは戦鎚を振り下ろす、紅い蝶が舞った。

 夏の月夜に虫の声だけが響いている。

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