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パズル

作者: 青崎衣里

友人から「パズル」のお題をもらって書いた1200文字小説です。

 特に成績が良いわけじゃないけど、答えが一つに決まっている数学は結構好きな教科だ。スパッと答えが出ると気持ち良いから。それと同じでパズルの類いも嫌いじゃない。暇つぶしにアプリでもよく遊ぶ。けれど俺は今、クロスワードの四角い空欄をじっと睨んだまま、なかなか答えを見い出せずにいた。


「佐久田、おまえさっきから何唸ってんの」

 昼休みに総菜パンをかじりながら問題を解いていると、同じクラスの松井が手元の紙をひょいと覗き込んできた。A4サイズの白い紙の表にはいくつもの問題が、裏面には四角い升目が並んで印刷されている。

「今朝来たら、机の中にこの紙が入ってたんだよ。なんとなく気になるから解いてるだけ」

「印刷じゃん。誰かの自作ってこと?」

「たぶん」

「へぇ、クイズ好きのおまえへの挑戦状?」

「俺が好きなのはクイズじゃなくてパズルな」


「うーん…………」

 怪訝そうに首を傾げた松井が、不意に声を潜めて訊いてきた。

「なぁ……このやり取り、なんとなく前にもした覚えがあるんだけど」

「ああ。通算十五回目だからな」

「えっ、そんなに? いつ?」

「やっぱり忘れちゃうんだな」

「どういう意味だよ」

 クロスワードの問題が書かれている紙の表面右上には、今日の日付も印刷されている。その部分を指さして告げた。

「俺はこのクロスワードを三十回以上解いてる。けど三十日前からやってるわけじゃない。ここの日付は毎回同じだ」

「は?」

「たぶんくり返してるんだと思う」

「はあぁっ?」

「まぁ最初は俺も信じられなくて気のせいかと思ったんだけど、どうにも違和感があって」

「ってことはタイムループってやつじゃん! かっけぇ!」

 うん。こいつは最初からこういう反応だった。何回くり返してもやっぱ軽いな。


「とにかく、ほとんど同じくり返しなのに、このクロスワードの問題だけ、なぜか毎回少しずつ違うんだよ。だからこいつをちゃんと解けば、出口に繋がるんじゃないかと思ってるんだけど……」

「難しくてできねぇの?」

「というか普通の問題じゃなくて、クラスの出来事とか担任が言ったセリフなんかが問題になってるんだよ」

 〇月×日の三限目の授業で最後に当てられたのは誰かなんて、覚えてるわけないっつーの。そう嘆いて頭を抱える俺の隣で、誰かが言った。

「んじゃ、クラスみんなで考えようぜ」

「へ?」

 顔を上げると委員長の藤堂が立っていた。

「いやぁ、実は俺もなんとなーく違和感あったんだよね」

「あたしもー」

 いつの間にか周りにわらわらと集まってきたクラスメイトたちが同調し始める。


「どうりでいつまで経っても推しの誕生日が来なかったはずだわ」

「俺、今朝駅前でハトに糞を落とされたんだよね。最近やたらと食らうなって思ってたんだけど、ハトの糞エンドレスループは勘弁だわ」

「全員でやれば正解できるっしょ」

 それから普段しゃべらない奴ともたくさん話して、全員で問題を解いた。




 結果――――翌朝目にした日付は、一日進んでいた。




次は「朝顔」というお題をいただいております。

そちらもよろしくお願いいたします。

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