世界の裏側
スカウトマンと名乗る男についていくと、どっかの基地みたいなところに俺は連れてこられていた。
「なあ、あんた——スカウトマン」
「権堂とでもよんでくれ」
呼び名が無いと不便と感じた俺の気持ちを察したのか、スカウトマンはそう名乗った。
なるほど、権堂という名にふさわしく背が高く肩幅の広いがっしりとした体形をしている。
「ハヤブサ、今からお前にこの世界の裏側を見せる」
「裏ね——」
プログラム、もしくは数字の羅列でも見せられるのだろうかと思いながら、俺は促された方向を見た。
そこには大きなモニターがあり、ところどころ鮮明に画像が移っているが、一部崩壊しており黒くところどころモザイクのようになっていた。
「これは——」
「この世界の崩壊ぐあいさ」
俺の言葉をまたずに、権藤は答える。
「この場所――」
思わず俺はつぶやいた。
ここは見覚えのある場所だ、そう先日ウイルスに襲われたところだ。
「さすがに気付いたか」
「どういうことだ?」
権堂はいつの間にかコートを脱いで、そばにあった椅子にそれをかけていた。
うすうす気付いてはいたが、防衛軍のような制服を彼は来ていた。
「お前の事だ。フットワークが鈍いと思ってみていただろ?あのパトカーや警察はワクチンプログラムと連動して、動いている」
「なるほど」
道理で自分が暴れまわる時間があるわけだと、俺は内心で納得した。
「スカウトといったのは?俺を防衛軍にでもいれたいのか?」
「ああ」
俺の問に権堂が答える。
「なぜだか奴さんらは『昭和』エリアの崩壊に拘っている。このエリアに適合して、自由気ままに戦えるような奴は少なくてな」
権堂がそいうと、俺のバイクを見た。
確かに、この世界でゴリゴリバイクにモッドを詰んで遊び周る奴など、俺以外見たことがない。
電子世界といえど、事故や身体に危害が加わると現実世界へ大きな影響がある。
俺みたいな命知らずは早々いないようだ。
「特殊部隊を訓練しようにも、後手に回っているのが現状だ」
「――」
くだらねえと言いかけて、俺はやめる。
「近々、モッド規制なども進むが——こっち側なら防衛軍装備として、お前のモッド一式は保証できる」
なんとなくそう来ると思った。
モッドの規制は前々から噂になっており、この流れならば俺に何らかの利があると思ったとおりである。
「身分は保証されるんだろうな?」
「当たり前だ、ある程度こっちの指揮に従ってもらうがな――」
権堂の言葉に、とりあえず俺はうなづいた。
それになんとなく感じていた、そろそろ潮時か――。
どっかへ移るか、奴らと徹底的に戦うべきか、その選択が迫っているように感じていた。
ならば、俺は流れに乗り、この世界に残る方を選ぶことにした。