ハヤブサ
俺がこの空間に入るようになったのはいくつの時だったろうか、
幼少期に父親に連れられて何かのアトラクションの電子体験が初めてだったように思う。
それからしばらくして、電子空間の利用が年齢制限がなくなったころから、俺はここに入り浸るようになった。
日本の昭和、かつての戦後の特需にて異常な速さで復興と発展を遂げた時代。
『ここ』はその時代をモチーフにしたエリアだそうだ。
この煙臭いような、濁った空気のするエリアを俺は気に入っていた。
「そこのバイク!止まりなさい!」
当時のパトカーをもした電子警察が俺の後を追っている。俺はその辺で手に入れて、好きにカスタムしたバイクで街をかけていた。
制限速度、勿論そんなものは存在するが守ったことはない。
「おっと」
蛇行運転のようにパトカーの進行を妨害しながら、俺はいつものように走る。
「こちら、二番隊、ハヤブサです!応援を」
パトカーの無線で応援を呼ぶ声が響く。
ハヤブサ……俺のバイクにはメーカーやモデルの銘柄はどういうわけかわからなった。
ハヤブサはいつの間にか、俺につけられていたあだ名のようなものだ。
パトカーをいつものように巻くと、俺はビルの壁を駆け上り屋上にたどり着いた。
「ふう、現実では絶対にできない走り方だな」
バイクをとめ、下を見下ろすとパトカーの赤いライトが街中を照らす様子が目に入った。
「♪」
逃げ切った後の奴らのパトライト、それを上から眺め下ろすのが俺のお気に入りだ。
他のエリアも走ったし、近未来エリア、さまざまなモチーフの電子空間を走ってきた俺だが。
昭和のこのギラギラした空間、今の日本の現実にも社会にも存在しない、エネルギーを感じるこの世界が俺は好きだった。
「腹が減ったな――」
総意って俺は手首の端末を見た。
時間は24時をすぎており、夜はこれからだ。
「牛丼、いやハンバーガーも悪くない」
そう考えながら、俺はまたバイクにまたがるとビルを駆け下りた。