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ノーマーカー  作者: 夏乃夜風
メロウ編
9/55

9話 中継初日

 中継室。暇になってきたので、中継を一旦閉じる。今回の出場者は慎重らしく、ルナチームしかダンジョンに入らなかった。面白くないなぁ。メロウの肉体が魔石化したところを見ると、明日はダンジョンに来れないだろうし。


 中継室は龍恩派閥の溜まり場となっていた。


 アロードは第零を往復して、円形のカメラを大量に持ち込んだ。魔法陣を何重も描き、耐久性を上げている。


「それにしても、メロウ凄かったね~。やっぱり、剣術は1番!」


「本当にメロウの事が好きなんだな」


 アロードの言葉を聞いて現実に戻される。メロウの書斎にあった一冊の本を見てから、心が壊れ始めた気がする。


「フロラっていう婚約者が居る。それに、ダンジョン協会で働いてくれているセツナも仲が良い。今はルナと良い関係だね~」


「響衛、真実は残酷なんだよ」


「龍恩さんも悪いですよ。メロウを隠していたのに、アロード先輩に共有しちゃったんですから」


「みんな喜ぶかなぁって。特に灯り……とかね」


 放心状態の灯りを見て、苦笑いをする龍恩。人間の頃、魔物に囲まれていた龍恩は人への興味が薄い。だからこそ、リーダーとして大成した。だが、恋愛という全く知らない領域には手を焼いていた。


「龍恩さんは知らないから仕方が無いですよ。ユラーゼの彼女遍歴なんて興味無いでしょうし」


「え!?めちゃくちゃ気になる!」


 アロードの言葉に龍恩が反応する。響衛も全て知っている訳では無いので、アロードの話を聞いている。


「第1に居た頃は雪波。第零では……龍恩さんが知っている通りコノハです」


「ああああ。第1ではラスティナだと思ってたぁ……。第零でも仲良さそうだったし!」


 悔しそうに机を叩く。ラスティナでなければ、チャンスがあったと考えていた。


「ユラーゼは裏で付き合うタイプなんですか?」


「いや、付き合うと言っても一緒に居るぐらいだった。ユラーゼに個人的な時間は無かったからな」


「僕や灯り、アロードとずっと居たからね。コノハもずっとメロウと魔法について研究してた」


 響衛はユラーゼの生き方を想像する。ずっと仕事をする人らしい。でないと、神王には成れないか。


「しかも雪波なのがムカつく。絶対に私の方が早く好きになった」


「そうだろうな。ユラーゼも灯りを特別視していた。俺は何度も付き合えと言ったのに……まぁ、メロウを奪えば良いだろう」


 アロードは心の中で言ってはいけない事言ったと反省する。人間と獣人は種族が違う。異種族間の結婚は認められていなかった時代だ。今はラスティナに似た容姿になっている。人間に憧れていたのだろう。


「奪えるわけないよ」


「俺が説得してくる。今の灯りは神だ。立場なんて関係無い」


「絶対に止めて!」


 兄妹の話を聞いていて疑問が浮かぶ。ユラーゼを処刑した者は雪波だ。ユラーゼと雪波の間で何かがあったはずだ。浮気か。雪波が浮気を発見し、別れた。それなら、説明がつく。


「ユラーゼは雪波に処刑されたと聞いていますが、2人の関係は悪かったとか?」


「雪波の記憶にユラーゼは居なかった。ただの他人だ」


「雪波は神に選ばれる資格が無かったのよ。だがら、ユラーゼが神になった段階で、雪波が持っていたユラーゼに関係する記憶を封印してる。人間として生きて欲しいと日記に書かれてた」


 灯りは龍恩を睨む。心当たりがあるようで、システムを操作して気分を紛らわせる。


「封印されたままなら良かったけど、ユラーゼが残した書斎に記憶が残ってたみたいだね。雪波はユラーゼの記憶を思い出して……ユラーゼを探してる感じかな」


 システムには月家の姿が映っている。龍恩として選択を間違えた。あの頃の第1は誰でも強かった。龍恩派閥は最弱。強くなるために急ぎ過ぎた。神戦に選ばれていない理由を考えずに、招待してしまった。


 今でも思い出す。神戦の偵察をするために第1を僕とユラーゼで歩いていた。ユラーゼを見た雪波はユラーゼの腕を掴んで離さなかった。ユラーゼは腕を振り払う。乱暴なユラーゼを見た事が無かった。第1で有名な貴族である雪波を拒絶した事実が龍恩を駆り立たせる。心の隅に居た正義感が邪魔をした。


「雪波が名前と容姿を変えたのは、自傷行為で再起不能になっていたから。ユラーゼも一途な女の子に酷な事をするね」


 アロードと灯りは魔法陣を展開する。他人の責任、それもユラーゼの責任にした龍恩に殺気を向ける。だが、一瞬で解除する。


 扉が開き、セイラが入って来たからだ。魔力の流れを誤魔化すために、龍恩は扉近くに向かう。


「仕事が終わったんですか?」


「ええ、肉体を取り替えた者が居る。これは確定よ」


「なるほどね」


 見張りのセイラ、凛を突破した強者。どこのキングさんやら。会議室を出ると風が吹いていた。右手が沁みる。月夜に照らされた右手は流血していた。自傷行為ね。人の事を言えないなぁ。メロウ、そろそろ世代交代をしても良いよね?


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