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ノーマーカー  作者: 夏乃夜風
メロウ編
8/55

8話 ファーストインプレッション


 第10のロンオン国。ルルカ、カヤ、ノアのチームはダンジョン協会で中継を見ていた。システムに届く、アークダンジョンの難度は9に上がったという通知。


 9人の出場者。いや、ダンジョン協会内に静寂が訪れた。


「魔法屋ねぇ。ログダはメロウについて知ってるの?」


「僕ですか?僕は魔法屋の従業員なので知ってますよ」


 予想外の返事にルルカは固まる。王子が従業員なんてやるなとノアは言いかける。誰も言葉を発しないので、知っている情報を共有することにする。


「メロウさんは、バートン、ロア、セツナの同級生ですし、フロラに魔法指導をしてましたよ」


「出場者全員と関わりがあるんだね」


 ノアの言葉を境に、ダンジョン協会の喧騒さが戻って来る。


「何で優勝候補に選ばれて無いんだろ」


「神戦に興味が無いからでしょうね。聞いた感じ、第5は僕とロア以外は願い事が無いみたいです」


 ジークの疑問に笑いながら返事をする。明らかに異質な第5の空気感に戸惑う出場者達。


「ログダの願い事を聞いても良い?」


「同じチームですから勿論です!魔法屋として難度10のダンジョンが欲しいんですよね。魔法屋のお陰で、難度7の1人攻略が流行ってるくらいですから」


 ログダは純粋な少年のように目を輝かせている。これは、各世界によって捉え方が変わって来る。第1のルルカと絶は納得する。魔法屋が補助魔法を担っていると。第2、3、4世界は有り得ないと切り捨てる。ログダの虚言だと嘲笑う。そして、ノアとカヤは確信する。第5のメロウがキングだと。ログダは洗脳もしくは支配されていると考えた。


「メロウに興味が湧いたわ」


「紹介しますよ~公務が忙しくて中々会えて無かったんですよね、魔法屋で働きたいなぁ」


 盲信とも取れる態度に誤解が広まる。ログダは噓をつけない。人間性を見抜くには、もう少し時間が必要だったみたいだ。





 ランド国。ランドダンジョン協会。ここには、バートン、ミハヤチームが集まっていた。


「やっぱり、メロウは強いな」


「本当に剣を持つと活き活きするなぁ、絶対に剣を持たせたらダメね」


「お二人はメロウさんと知り合いなのですか?」


 丁寧な言葉使いで刃茶が聞く。他の出場者も興味があるみたいだ。関係性というよりは、メロウという人物について。強さを追い求めるメンバーが集まっていた。


「本音を言える唯一の親友だな」


「私も魔法屋でも働いてるから、仲は良いよ」


「じゃあ聞くが、剣術はどこで学んだと言っていた」


 ガイアは煙草を吸いながら話を聞いていた。アクセサリーを沢山身に着けており、魔力の流れが乱れている。


「剣術も魔法も独学と言っていた。メロウは幼い頃に両親を亡くしている。ダンジョンで生計を立てていたと聞いている」


「それは強くなるな。自分の強さを見つけたか、魂の使い方を理解したか」


 ガイアの楽しそうな独り言。全身鎧の奈落がバートンを見る。


「両親の職業は?」


「有名な冒険者だ。ダンジョンの特殊演出で死んだ。王はメロウの事を知っていたから、学校に入れたと聞いている」


 そして、卒業と同時にロアと結婚させるつもりだった。メロウから王との契約を聞いた後、家に帰ってから沢山泣いた。魂を感じたこと無かったけど、あの時から背中辺りが燃えている感覚に気付いた。


 今はメロウと同棲している。3年後、どうなってるんだろう。神戦の優勝は絶対に無い。この神戦の間に、私の強みを探したいなぁ。






 アーク王国行きの魔車。広々とした空間で、フロラは中継を見ていた。


「メロウって何者だ?」


 煙草を吸っているルーカスがフロラに尋ねる。窓を開けており、冷たい風が流れている。


「私の婚約者です」


 シンプルな返事。メロウについて語りたいことは沢山ある。だが、メロウの事は自分だけが知っていたい。フロラは独占欲が強い女の子だ。


「妄想じゃなくて?」


 ルーカスには、フロラはストーカーという第一印象がある。可愛らしい容姿だが……序列1位。自然と穿った目で見てしまう。


「第5世界が保証人です」


「王族権利の乱用は良くないぞ」


 ダンテも見過ごせなかったらしい。ストーカーを青春と片付ける癖に、王族には厳しいみたいだ。


「私を心配してくれる珍しい人なんですよ」


 フロラの本音とも取れる独り言。娘を持つルーカス、身近に拗らせた者しか居ないダンテは、フロラを応援することに決めた。






 消星国。アーサーの容姿は神に匹敵するほど美しく、ロアは一目惚れしていた。バートンという暑苦しい男と過ごしていると疲れるが、アーサーを見ているだけで癒される気がする。


「ロア?大丈夫かい?」


「好きです」


「え?もう一回言ってくれる?」


「好きです、神戦の間だけでも付き合ってください」


 ロアが既婚者だということは知っている。だが、使える駒を増やしておきたいという願望もある。それに、中継に映っていたメロウと同じ第5世界。絶対に欲しい。


「僕で良ければ……付き合おう」


 2人の話を聞いていた楓真は知らない顔をする。他人の情事に関わると面倒だと知っているからだ。雪が降り始めたな。粉雪だ。強風で煽られている雪を見て、脳内が騒がしくなる。他人を想い、本命は近くに居る。誰の話をしているんだ?


 


 


 ダンジョンの安全地帯へ向かう。足元に円形のカメラが落ちており、カメラの核となる魔石が砕けていた。


「やるじゃん」


「だろ?ただ……右腕が麻痺したからな。後、2日ぐらいは休むつもりだ。宿を探そう」


「え!?肉体が耐えきれないってやつですか!?初めて見た!」


 メロウの右腕を触る。本物の治癒魔法を見せようと思っていたが、破れた袖から見える皮膚は魔石化していた。龍恩さんが言っていた肉体の魔石化。龍恩さんが言うには、今の魔法では治せないらしい。研究したいなぁ。


「そろそろ、放してくれると有り難い。誤解されるぞ」


 こんなところをフロラに見られたら殺されるだろう。意外と愛が重いタイプの人間だ。


「私は……誤解されても良いですよ?」


 メロウの腰に手を回し、服を捲る。左手でルナの腕を掴む。フロラの小さい頃もそうだった。距離感を縮めるためのスキンシップ。魂に触れることで、相手の気持ちが分かると聞いたことがある。俺は魂が欠けているせいか、全く分からなかった。


「自分を大切にしろ」


 フロラに何回も使っている言葉。そうだ、フロラとルナは似ている。話していると懐かしくなるような感じ。普段なら言わない言葉を使ってしまう。


 ルナはメロウから距離を取った。メロウは信用出来る。龍恩さんやお父さんが言っていた意味を理解出来た。頼れる人だ。


「ほら、宿屋探さないとな。ダンジョン協会で寝たくないだろ?」


「絶対に嫌です!仮眠室には獣が沢山居ますから!」


「そうだぞ、ルナは可愛いからな。日が暮れるまで、アーク王国を歩くか」


 ルナはメロウを見るも視線が合わない。システムを操作しているみたいだ。地図を見ているのかな。メロウさんの隣は安心感がある。ずっと、一緒に居た気がする。


『メロウさんって、元神ですか?』


「『違う』と思う。記憶が無いからね」


 笑って応えるメロウに心が踊る。魂が一瞬共鳴した。絶対に元神だ。誰だろう、ユラーゼだったら嬉しいなぁ。絶対にランスロットでは無い。紳士的な神……ユラーゼしか居ないでしょ。


「ルナ」


「何ですか?」


「俺は元神じゃないから。もう一度言うが元神じゃない。絶対に神にも成りたくない。だから、龍恩派閥の相手を頼むぞ」


「ふふっ、私と一緒に神に成らないの?」


「成らねぇよ」


『コノハとだったら?』


「『コノハ?』知らないな」


 記憶が無い、ね。そう言えば、コノハを復活させたら怒られたなぁ。コノハも私たちとの記憶が無かった。あの冷たい目は忘れられない。エリーさんが生きてたらどうなっていたのだろう。





 アークダンジョン協会の会議室。案内してくれたリザキは扉を閉めた。門番をするらしい。会議室にはゼクタと学生服を着た女性が座っている。ルナと歳は近そうだ。ゼクタの後ろには、斧を右手に持っている男が立っている。


「ルナさん、メロウさん。アーク王国が半年間支援します。なので、アークダンジョンをクリアして貰えませんか?」


「お願いします」


 ゼクタと隣の女性が頭を下げる。支援の内容に依るが……ルナに任せるか。俺は聞いておくだけにしよう。


「支援の内容を聞いてから決めます!」


 ルナが用意された椅子に座るので、メロウも従う。机には同じ書類が3枚用意されている。月家の分だろうか。


「アーク城を拠点として貰って構いません。1人1室用意していますし、食堂には一流のシェフが常駐しています」


 ルナが話を聞いているので、書類に目を通す。服も用意してくれるらしい。宿は城かぁ。少し重いな。この神戦はアーク王国と共に動くことになる。月家は嫌いそうだな。まぁ、帰って来ないか。

 

「鍛冶師は僕の後ろに立っている夜来、他の国の案内は妹のエルヴァが担当します」


「私は良いと思いますけど……メロウさんはどうですか?」


「もう1人の部屋を用意して欲しい。合流するために魔車でアーク王国に向かってるらしい」


 魔車?あれ、お父さんも魔車に乗ってるってシステムに来ていた気が……。


‘うちのチームはアーク王国に向かうことになったぞ’


‘どうしよう、リーダーがストーカーなんだけど’


‘ストーカーかもしれないが、絶対に良い子だ’


 何があったの!?


「出場者の誰と合流する予定ですか」


 ゼクタの質問。ルナはメロウを見る。もしかしたら、一緒のチームかもしれないと。


「フロラだ。第5世界最強だからダンジョン攻略が早くなるぞ」


「フロラさんってストーカー何ですか!?」


 純粋な目でメロウを見ていた。何を考えているのか全く分からない。


「何を言っているんだ」


「……忘れてください」


 好奇心が勝ってしまった。お父さんからストーカーだと聞いたなんて言えない。


「フロラさんはどういった方なんですか?」


「普通の女の子……だな。ただ、王族兼学生兼第5世界最強ってだけだな」


「それは心強いですね。部屋は用意出来るみたいです」


「ありがとう」

 

 良かった。受け入れて貰えるらしい。強者は恐れられやすいからな。


「……それは普通の女の子では無いですね」


 エルヴァが冷静に突っ込む。ゼクタは楽しそうに笑っている。初めは厳しい表情をしていた夜来も、面白そうに話を聞いている。


 ルナチームはアーク王国と提携を結んだ。城へ案内され、1日が終わる。出場者の中で序列戦に参加したチームはルナチームのみだった。




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