6話 中継/神から見た出場者
第10世界。アーク王国近く、森の中。中継を任された灯りとアロードは第1から第5、第10の人間達にルールを説明していた。この間に、龍恩と残乃が肉体と魂を繋げる仕事をしている。第6から第9は神戦が行われていることを知らない。システムには神戦について何も書かれていないからね~。
「第零注目出場者は、ルルカとフロラ。アロードはどう思う?」
「無難過ぎて面白くないな」
「言うねぇ。じゃあ、アロードは誰を注目してるの?」
「やっぱり、メロウだろ」
「無難だねぇ」
普段の雑談と同じテンションで話していた。灯りシステムを操作して、資料を映し出す役目を担っていた。
「派閥推薦に行こうかな~。派閥推薦は、神候補だね。ユラーゼ派閥はカヤ、ノア。龍恩派閥は月家、ルナ、メロウ。ルナチームだね。キング派閥は……無回答」
「キングは自分勝手で仕事もしないからな」
「言い過ぎ……ふふ」
普段と違ったアロード。悪口を滅多に言わないのに、毒舌キャラを演じていることが面白くて仕方がない。まぁ、元は魔天の狼だったんだけどね。
「それにしても、第1から第5なんて微妙だな。せっかく、僕……俺達が作った世界を入れてくれないなんて」
「確かに~第7も入れて欲しかったなぁ」
「不平等だよな。それでユラーゼさんと同じ神王になろうとしているんだから終わってる」
「殺されるよ~」
普段は大人しい性格だからこそ、ラインが分かっていないみたいだ。キングに聞かれてたら殺されるに決まっている。
「は~い、恒例の神から見た優勝候補を発表しま~す」
中継には、各派閥の順位予想が映し出されている。ユラーゼ派閥はノアチーム、キング派閥は帝チームを優勝と置いている。
「他の派閥のことなんて知らないけど、龍恩派閥の順位予想は解説出来るよ」
「一応、解説しておこう。少し時間がかかるみたいだ」
システムを操作しているアロードが煙草を吸う。灯りは器用だねと呟きながら、龍恩派閥の順位表を拡大する。
龍恩派閥予想順位表
1位ルルカ、エルテイト、ログダ
2位ノア、絶、フローリア
3位ルナ、月家、メロウ
4位カヤ、ジーク、アイリス
5位フロラ、ダンテ、ルーカス
6位ミハヤ、セツナ、刃茶
7位アーサー、ロア、楓真
8位ヴィルアート、藍、ミラレヤ
9位帝、メア、ホルクス
10位バートン、奈落、ガイア
「まぁ、1位はルルカチームだと思う。ルルカは第1のトップ。エルテイトが何者か知らないけど序列3位で、ログダは第5の序列4位。王族2人で政治も大丈夫だと考えると強いよね。戦力的にも……2番目かな」
「この神戦は序列戦だ。序列の上げ方を知っている者が強いと龍恩派閥は考えていることを理解してもらいたい」
「でもさ、そんなこと言ったら、ルナチームを3位にしてるの不自然じゃない?」
「……」
龍恩派閥の考えを補足しようとしたら、灯りから鋭い意見が飛んでくる。言っていることは正しいので何も言えない。普段は馬鹿な癖に、大舞台では頭の回転が早い。
「ルナチームは才能がある。それに、ルナとメロウはダンジョンを攻略していない。つまり、人への影響力のみで序列を上げている稀有な存在。半年という短い期間。第10は人への影響力を重視していることを見ても、ルナチームは優勝候補だ」
灯りは龍恩からルナチームの事を話すなと言われている。アロードの意見は完全に同意出来る。だが、仕事である事を考えると私情は禁物。
「アロードの個人的な意見だね。だけど、私もルナチームには期待してるかな。やる気無さそうだけど」
「失礼だろ」
アロードの突っ込みに笑う。いつも通りのアロードに戻ったみたいだ。神は間違ったことを言ってはいけない。誰も中継の仕事を引き受けない理由らしい。
「ノアチームは前衛特化だから、ダンジョン攻略が早いっていう意見が多かったね」
「ダンジョン攻略の理論上は、前衛2人、後衛1人が最適らしい。エリー派閥のエリーが言っていたから確かだ」
「それって、ユラーゼ、ラスティナ、エリーの3人でしょ。3人共、両方出来るから成り立つやつでしょ」
「普通の神や人間は大人数で挑んだ方が良いだろう。前衛は少ない方が後衛は楽だぞ」
「アロードって魔法制御が壊滅的だもんねぇ」
「魔法適正20のお前に言われたくない。魔法使えるのか?」
「使えます~」
龍恩派閥特有の雑談が始まる。アロードのシステムに龍恩からのメッセージが届く。どうやら、準備が完了したらしい。
「神戦が始まる。灯り、第10の地図をよろしく」
中継に表示された地図にはリーダーの名前が表示されている。違うページには、出場者が居る国をリアルタイムで表示する機能が追加されている。
アーク王国
ルナ、メロウ、月家
ヴィルアート、藍、ミラレヤ
ロンオン国
ルルカ、エルテイト、ログダ
カヤ、ジーク、アイリス
ノア、絶、フローリア
ランド国
バートン、奈落、ガイア
ミハヤ、セツナ、刃茶
フロラ、ダンテ、ルーカス
消星国
帝、メア、ホルクス
アーサー、ロア、楓真
「第10で栄えている国は……ロンオン国。ルルカ、カヤ、ノアが固まってるのか月家絶帝刃茶残乃~」
「最初はダンジョン攻略がメインだと考えるべきだな。ダンジョンの難度表だせるか?」
「はいはい」
アークダンジョン 難度7 80層 36層クリア
ロンオンダンジョン 9 120層 43層クリア
ランド炎封ダンジョン 8 110層 22層クリア
消星ダンジョン 9 200層 91層クリア
「ロンオンダンジョンが効率的だろうな。消星国よりも楽にクリア貢献出来る」
「だね。ロンオン国に出場者が集まると予想する!」
「予想する」
龍恩の口調を真似して話す。丁度、中継室に龍恩と残乃が現れたからだ。龍恩は満足そうに灯りとアロードを見る。これで、中継は龍恩派閥が支配した。