名もない村 4
「私何か悪いことをしてたんですか?」
リアムにミーナと呼ばれた女性はリアムが他の人に出ていってもらったため悪いことをしていたのかと考えてしまっていた。
「ミーナは何も悪いことはしてないよ。悪いのは僕の方だから」
リアムは改めてミーナを見る。
白にうっすら青色が混ざったような色の髪をベリーショートのような髪型にしている。
最後に見たときにはセミロングだったためここまでたどり着く道中、もしくはこの村で髪を切ってもらったのだろう。
着ている服はちょっと痛んでおりオシャレだった彼女とは考えられない。
「ミーナはタイラル王国で親孝行をしながら暮らしてたよ」
「じゃあ、私の両親は・・・・・・」
「断定は出来ないけど多分・・・・・・」
自分の両親が亡くなったかもしれないというのにミーナは何事もなかったような表情をしている。
記憶を失っており両親も思い出せないため実感がわかないのだろう。
「貴方は私とはどういった関係だったんですか?」
ミーナは先ほどのリアムの反応から友達以上の関係だったのではないかと推測していた。
そのミーナの問いに少し間をおくリアム。
「恋人だったよ」
意を決したようにリアムは言う。
面と向かって本人に言うとなると恥ずかしさというものがあった。
その答えにミーナは驚かない。
男女で友達以上の関係と言われると恋人、あるいは夫婦位だろう。
親友という可能性もあるが、恋人や夫婦の方が先に候補に出てくる。
「私は幸せだったんでしょうね」
「え?」
文脈が繋がってなかったためリアムはなぜそういう発想になったか理解が出来なかった。
「あんなに身を案じてくれる恋人がいたんですから」
「そう・・・・・・かな?・・・・・・・・・皆を呼んでくるよ。ずっと外で待たせるわけにもいかないし」
◆
「皆、時間をくれてありがとう。ちょっと散歩に行ってくるよ」
一方的にそう言いどこかへと歩いていくリアム。
その背中を見ながら、
「さっきの彼氏失格って言葉は取り消すわ。あんな背中を見てそんなこと言えない」
カイラは先ほどの言葉を取り消した。
確かに今のリアムの背中には喪失感からかすごく小さく見える。
しかし、本人に直接言ったわけでもないのに取り消すのは彼女の律儀さの表れだろう。
「追わなくても良いんですか?」
「一人になりたいのでしょう。頃合いをみて迎えに行きます」
リサの心配する声にルシルは安心させるように答える。
「ま、とりあえず休もうぜ」
アレンの呼び掛けで全員家の中に入り、一緒に待ってくれていたこの村の村長は一言挨拶をして自分の家に帰っていった。