名もない村
昼食も食べ終え馬車はまた歩を進めていた。
ルシルは御者として馬の管理も上手く、適度に食事や給水などをさせているため馬に疲れも見えない。
そんな一行が進んでいると小さな村が存在した。
時間が夕方なのもあり、そこにお邪魔することにした一行。
そこに誰もが想像していなかった再会が起こるのだが、この時はこんな小さな村でそんなことが起こるなど、誰も予想していなかった。
◆
村の近くに馬車を止めると数人の子供達が村からこちらを見ていた。
旅人がここを通るのは最近では珍しくなっているためだろう。
その原因はタイラル王国が天使により壊滅したからである。
そして、噂ではタイラル王国跡には無数の魔物が住み着いたらしい。
このご時世で馬車を持っているのは商人位なものなので余計に馬車は珍しいのだろう。
今にもこちらに来ようとしていたが、村の大人たちに止められていた。
「馬車、もう少し村の近くに停めたら?」
カイラがその様子を見ながらそう言う。
「お前、優しい心も持ってんだな」
アレンが意外そうにそう言う。
それにカイラは顔を赤くする。
「ち、違うわよ。ただ、ここに停めてるよりももっと村の近くに停めた方が安全かなって思っただけ。
別にあの子達にもっと見せてあげたいと思って言ったわけじゃ無いから」
「ですね。あの子達も興味津々ですし、もっと村の近くで馬車を停めましょう」
「だから、私は」
「分かりました。もう少し村の近くに停めます」
カイラは否定しようとしているのを遮り、ルシルがリサに従う。
異常なほどの忠誠心であり、特にリアムは驚いていたのだった。
◆
「このような名もない村によくいらっしゃいました。私は一応この村で村長のような役回りをしているものです。この度はどのようなご用件で?」
村に着くと初老の男性に呼び止められた。
「はい、私達はタイラル王国跡に向かって目的地に旅をしていたのですが、」
そこまで説明すると、初老の男性が、
「お~、あなた方は強いのですね。若そうなのに大したものです。
私はこれでも昔は国の騎士をしてまして魔物を倒していたのですよ。
子供達には信じてもらえませんけどね」
と白髪の頭をかきながら言う。
「そうなのですね。引退してこちらへ?」
リサ王女がそう聞くが、男性の顔からしてそうではなさそうである。
「私はこれでも騎士団長でしてね、小さい国でしたが、それでも私はその国を守りたかった。
それでも天使には全く敵わなかったんですよ。運良く生き残った私はこの村の人に助けられ、最年長となったことでここで村長のような事をさせてもらっています」