タイラル王国跡への道のり 2
「とりあえず鹿を人数分狩ってきたぜ」
アレンがそう言いながら鹿を引きずり帰ってきた。
人選、いや指示を間違えたかもしれない。
アレンの思考を考えれば食料調達=狩りになることは想像できた。
「やっぱり、そうなってましたか。食べられそうな草を集めてきました」
リアムが何処からか出した大きな袋に草を入れて帰ってくる。
どうやらリアムを行かせて正解だったようだ。
袋の中身をパッと見る感じ確かに食べれる草だった。
「俺は肉だけで良い」
アレンがそれを見た瞬間に嫌そうな顔をしながらそう言ったため、恐らく野菜全般嫌いなのだろう。
その偏食はおそらくスラムでの生活を更に苦しめていたのではないだろうか。
「出した分は食べろよ」
先程アレンが俺に従うと先程口にしていたためそれを試すついでに野菜も克服してもらおうと考えた。
「・・・・・・ちぇ、わぁったよ。食えば良いんだろ?食えば」
何か言いたげではあったが、先程の己の言葉を思い出したのか嫌々ながらも食べると宣言した。
◆
調理は着々と進んでいく。
調理に大切なのは繊細な魔力の操作。
丸焼きにしても魔力操作が繊細であればあるほど美味しいものとなる。
それこそ味付けなしでも美味しいものが出来上がる。
逆に魔力操作が荒いとどんなに高級な肉を使っても、どんなにその肉に合うタレをかけたとしても食べられる代物ではなくなる。
それを考えるとアレンは無理そうである。
リアムに関しては魔力を繊細に使っている所を見たことがあるため調理が出来ないというのは以外だった。
リサ王女は魔力を操作出来ているという段階にも至っていない。
カリアは荒々しく魔力を操作するイメージがあったため本人が出来ると言っていたものの不安であり横目でチラチラ見ていたが、普段の荒々しさはなく繊細に操作していたため驚いた。
◆
「え、何?その白い炎」
カリアが驚いたのは俺が調理に使っている炎。
「これは、とある人の形見、だ」
「形見?魔法が?」
その問いには答えない。
すると、カリアは聞いてはいけないと察したのだろう。
そこから会話はなくなり黙々と調理が進んでいった。
◆
そして、昼食の時間。
リアムが魔法で地面に敷物を作り、その上で食べることとなった。
アレンに割り振られた皿には皆より気持ち少ない野菜が乗っている。
アレンはそれを忌々しげに見る。
次の瞬間には決心したのか皿を口の近くまで持っていきフォークで野菜のみをかきこみ目を閉じ、鼻も右手で塞ぎながら租借していた。
そんな普段の彼らしからぬ行動に皆笑いを堪えていた。