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朧と霞の許嫁  作者: 帆 霞 れ る
1/1

朧と霞

「朧さん」

そう霧原朧(きりはらおぼろ)に話しかけるのは、小柄で可憐な少女―冴乃霞(さえのかすみ)である。朧と霞は共に18歳で、幼馴染であり許嫁である…という複雑な関係なのだ。

ただ、互いに愛はない。

朧にとって彼女は「話していて楽な幼馴染」という認識であり、決して愛だの恋だのと言った甘い感情は持ち合わせていないのである。その点に関しては彼女とも共通する点であろう。単に、互いの親が結んだずっと昔の約束によりこうして婚姻関係を結んでいるのであるから。

「朧さん、夜ご飯はどうしましょう?」

「あぁ…。何か出前でも取るか」

「不健康です」

「思いつかないんだろ」

「う」

分かりました、と渋々承諾する彼女を見ながら一人苦笑いを零す。

彼女は本当によく出来た娘だと思う。家事などは完璧、おまけに教養まであり、所作一つ一つが非常に綺麗。加えて常にさらさらの長い黒髪に白い肌、繊細で綺麗な顔のパーツとくれば完全無欠な美少女である。

このような美少女が許嫁という周囲の男性から見れば極めて幸運な立場にいる朧であったが、朧は別に彼女の美貌云々に興味はなく、ただ許嫁だから結婚したのであり、認識としては幼馴染のままであった。

「なあ霞」

「はい」

「俺らってなんか許嫁だから結婚した感満載だけどさ、互いに異性として興味示したことってなくないか」

「そうですね。朧さんとはよく話す幼馴染といった認識ですので、これからもその認識が崩れることはないと思います」

やっぱりか、と一人小さくつぶやく朧であったが、実に彼女の言うことに説得力がありすぎるのと正に自分が思っていたことをそのまま返されたので別に思うことはなかった。

「朧さん。夜ご飯届きましたけど」

「ありがと。ちなみに何頼んだ?」

「うどんです。朧さん好きでしょう?」

「よくわかってるな」

「そりゃ幼馴染ですもの。一体何年一緒にいたと思ってるのですか。流石に好物ぐらいは覚えますよ」

「そうだな」

早く食べないと冷めますよ、と促してくる霞と共に食卓につく。しっかりと食物に感謝の念を表してからうどんを口に運ぶ。10月の下旬という少し冷え込んでくるこの季節に優しいお出汁の味がする温かいうどんは非常に美味である。

ふと霞の方を見ると、ふーふーと息を吹きかけてなお熱そうにうどんを食していた。

そういえば霞は猫舌だったなということを思い出しつつ、じっと見る。

綺麗で可愛い、それは間違いない。10年を超える歳月を霞と共に過ごしてきて、見た目を差し置いても霞の人柄は非常に好ましいものであった。

友人としての好意であり恋愛感情かと言われれば絶対に違うと言い切れるが。

「どうかしましたか?」

つい熱心な眼差しで凝視してしまったらしく、霞が不思議そうに首をかしげながらこちらを見ている。

「あぁいやなんでもない。よく考えたら霞って美少女だよなと」

「え?」

急に何言いだすんですか、とやや冷たい眼差しで見られたものの、軽く笑って受け流しながらうどんを頬張る朧であった。


はじめまして、夜野みずきと申します。

「朧と霞の許嫁」第一話、楽しんでいただけましたでしょうか?

朧くんと霞ちゃん、両者の甘い恋を可愛く描いていくつもりなので応援をよろしくお願いいたします。

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