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季節が終われば  作者: 緑アオ
1/1

ナツノオワリ


「あちぃー・・・・」


    『夏だ 』


俺の部屋にはクーラーがない。だから扇風機の風速を最大にしてこの猛暑と戦っている。

元々灰色一色だったこいつにはナニモンやらナニレンジャーのシールがベタベタと貼られていて、その年季の入り方も相まって今すぐ粗大ゴミに出して新しい物が欲しいところだ。


そのチャンスはついこの間にあったはずなのに逃してしまった。

「てか、なんでアイツの部屋にはクーラーあんのに、俺の部屋にはねーんだよ・・・」


アイツとは妹の事だ。成績は並、スポーツも並。全くもって俺と同じようなスペックをしてるくせに、愛嬌という武器を最大限に活用して見事に昨年の夏にクーラー付きの1人部屋をゲットしていた。


「お兄ちゃんはさ、可愛い顔してるのになんか捻くれてるよね。ママはそんなとこも好きみたいだけど、パパの方は嫌いっていうか最近はもう見捨てられてるよね(笑)」

「・・・・。」

「今日だって誕生日だったのに、第一希望のクーラーどころかプレゼントはなし。去年まではみんなでお寿司食べに行ってたのに、それもなくってウチまで損しちゃったよ」

(ジロッ・・・)

「でたっ!お兄ちゃんのその顔!ウチも同じような顔してるけどそれはできないよ! なんでそんなに『不機嫌ですっ』って顔できるの? 眼は死んでるし、口もとんがってるしほんと感じ悪い!やめた方がいいよ!」


一方で俺は晩のおかずの取り合いで親父と喧嘩をして以来挨拶すら出来ておらず、3日前の誕生日にもらったのは妹の愚痴と外見批判だけだった。


(・・・俺だって、わざわざ喧嘩したかった訳じゃねぇよ・・・)


あの時、親父は酒に酔ってたんだと思う。

普段は無関心というか俺に対して興味がなさそうな癖に。

それがテーブルのおかずを取って欲しいと頼まれたのを自分で取れと突っぱねただけで顔にウイスキーをぶっかけてきたんだから意味が分からない。


親父と掴み合いの喧嘩をしたのなんて初めてだった。

昔はヒーローごっこや、なんの気なしの攻撃で股間を狙いすぎて逆に泣かされるなんてことがあったが、あの時みたいに本気でムカついて、泣いたことなんてなかった。


親父も母親も妹だって嫌いなわけじゃない。

ただ自分のやりたいことがあって、俺だって毎日大変で、イライラしてて・・・。

そんな時にやれ、飯だ。やれ、水の出し過ぎだとか言われるとうざったくてしょうがないだけ。

友達とゲームをしてる時も空気を読まず話しかけてきたり、何度もお願いしても聞いてくれやしない。


(ほっといてくれればいいのに、いちいち干渉してくるから悪態をつかなきゃいけなくなるんだ。)


『ガタガタ・・・ガタガタ・・・』

触るとシールでベタついてる扇風機はもう限界のようで、駆動音を立てながら埃っぽい羽根を回し続けている。


生温い風は無いよりはマシなのだろうが、やっぱり納得ができない。



「「スダはさ、将来の夢とかあんの?」」

「「いやないけど、コンノは?」」

「「俺? 俺はさーーーーーーーーーーーー。」」



《『菅田 涼太 スダ リョータ』 18歳。 誕生日は7月21日 》


《 夏休みの始まりが誕生日の彼は高校卒業後は働くつもりで、なにより家を出ることを考えています 》


=1=

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