合格の糸口
第六話 合格の糸口
勢いのあった参加者達の足が止まり、沈黙が会場を包んでいた。しかし、時計の針は時を刻む。その間、多くの受験者はカスのスピードについていけずにただ立ち尽くしていた。
「残り30分。もう時間ねーぞ」
ドリーの言葉に3人にも緊張感が走る。カスも相変わらずのスピードで移動し続けていた。
「最初の合格者から声は聞こえてないよね」
「ああ、全く聞こえてない」
「だが、人数は減ってきてるよな?」
リンとライゼンが会話する中、あらぬ方向から声が入ってくる。4人がその方向へ目をやるとそこには男が堂々と立っていた。
「誰だよ!いつからいたんだよ!」
ドリーが叫ぶ。すると男はニヤケ出した。
「いや、それほどでもないぜ〜」
「褒めてねーよ!」
「え?あ、そうなの?ゴホン 申し遅れました。俺の名はジョージ・フライ。ジョージって呼んでくれよな!ちなみに職業はスパイやらせて貰ってる!年齢は、」
「いや、そこまで聞いてねぇーよ!」
「ここに着いてから「スパイなのにそんなにベラベラ喋って問題ないの?」と聞かれたが、大丈夫!仕事に支障をきたしたのは数十回しかない!」
ジョージは親指を立てて笑顔を見せる。
「いや、あんのかい!」
ドリーは再び頭を掻いた。するとリンがジョージに寄っていく。
「ねぇ、ジョージさん。さっき言ってた人数が減ってるってどういう事?」
「周りを見てみろ」
リンが周囲を見渡すと確かに人数が減っていた。
「うわ、ずっとカスさんみてたから全然気づかなかった!」
「え?あれをずっと見てたの?てか、見えてるの?」
ジョージは唖然とした表情でカスを指差す。
「うん!俺、運動神経と感には自信あるんだ!」
リンの言葉にジョージは瞬きをする。
「まあ、そうだよなぁ。見えてるよなぁ」
『俺でもギリギリで見えるってのにコイツマジですごいな』
「君も中々やるんだね、」
再び別の方向から声が聞こえてくる。5人が目をやると先程、オオモリと一緒にいた少年が立っていた。
「君は?」
リンが声をかける。
「俺はユタ、宜しくな。なんとなく年近そうな人固まってたから来たんだけど。君何歳?」
「俺は16」
「そっかそっか、じゃ俺たちタメだな!良かった〜。仲良くしようぜ」
「うん、」
「因みにさっきの話戻るけどさ、あの試験官、動きはまあまあ速いけど規則性あるよな?」
「うん、間違いないと思う」
「俺もそう思う」
ライゼン、リン、ユタは話し始める。
「おい、ちょっと待ってくれ!なんの話ししてるんだ?」
ドリーとジョージの声が揃う。
「えっとね、カスさんはランダムで動いてるように見えるけどよく見てみると後ろ、右、右、左、後ろで移動してるんだよ」
「ああ、ただフェイントも入れているからわかりにくいがな」
リンとライゼンが2人に対し説明をする。ドリーとジョージは目を凝らすがいまいち理解できなかった。
「ま、とにかく法則があるって事は、待ってりゃ合格できるって訳だな」
「んーまあそうなんだけど追いつければの話だけどね」
ドリーの言葉にユタが返す。ドリーは首を傾げた。
「どう言う事だ?」
「規則性は有るけどその場に滞在する時間にばらつきがあるんだよ。あそこだと0.1秒、あそこだと5秒、あそこだと0.5秒、あそこだと、」
ユタが右手をポケットから取り出すと指を刺していく。
「ちょっと待て、ユタ、君は全て覚えているのか?」
「え?あぁ」
「君は一体何者だ?」
ライゼンがユタを見た。するとユタは少し口を噤んだ後、一転し明るい言葉を放った。
「俺の家系少し特殊でさ、俺、ガポーネって家の出なんだ」
「ガポーネ⁉︎」
ドリーとジョージが同時に声を上げる。
「ガポーネって?」
リンの言葉でドリーが息を整える。
「いいか、ガポーネってのは三大マフィアの一角だ。普通に生きてりゃ知らねぇ奴はいねぇ」
ドリーはリンを見る。
「えっとな、この世界には大きく分けて三種類のマフィアの形がある。一つ目は国家マフィア。国家雇われのマフィアだな。国家マフィアは国家権力が強え。二つ目は財閥マフィア。財閥マフィアは巨大な財閥が抱えてるマフィアだ。この二つは基本的には雇い主の色んな意味での代行をする連中だな。そして、三つ目が個人マフィアだ。ガポーネってのも個人マフィアなんだけどよ、個人マフィアはマフィア自体が強い力を持ってて独立してる。仕事は雇われから、自営業までこなすって感じだろうな。だからまあ、勿論ごろつきもその中に含まれるけどお偉いさんの眼中には入ってねぇだろうな。それはともかく、その個人マフィアってのは三代勢力があって均衡を保ってる。それぞれが、流通、生産、暗殺を担ってる。そのうちの暗殺に特化してるマフィアがガポーネだ」
ドリーとジョージが横目でユタを見る。ユタは平然と立っていた。
「すげー!」
リンが目を輝かせユタに近づく。
「ユタってめっちゃくちゃ強いんだね」
リンの言葉にユタは恥ずかしそうに顔を伏せた。
「そうでもねぇよ。まあ、自信はあるけどよ」
「んでもよ、なんでチェイサーになんかなりたいんだ?」
ジョージが言葉を挟んだ。
「俺は自由になりたい。チェイサーってのはこの世で最も自由な職業なんだろ?」