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戦闘リザルト



 妖怪との戦闘を境に、いや、異世界への転移を境に俺の霊力が爆上がりした。

 あの時は頭痛のせいで冷静さを欠いていたみたいで、不気味な心地よさの正体に気が付かなかったが、あれは霊力が満ちる時の感覚だったのだ。

 いつもは霊力を消費した後、寝ている間に回復するのだが、あの空間には体外に霊力が満ちており、俺の身体に入り込んでいた……のではないかと推測している。

 正解を探そうにも確かめようがないから、そう言うことで納得した。


 あの頭痛も気圧差みたいに霊力圧差的なサムシングが働いたのだと思う。

 もう一度身体強化を限界突破すれば異世界に行けるかもしれないが、もう2度とあそこには行きたくない。そもそも妖怪の結界だったなら、あいつが死んで答えは永久に闇の中である。


 クソ親父に相談しようかとも思ったが、自作の札がバレたら怒られて「陰陽術の指導停止」を言い渡されそうだからやめておいた。


「お父さん、家の結界は大丈夫?」


「……突然どうした。妖怪の夢でも見たか」


 クソ親父はすごく不思議そうにそう答えた。妖怪が家に侵入したわけでもなさそうなので、一安心だ。

 地面を転がって汚れたはずの服もなぜか元に戻っているし、証拠はどこにもない。

 ただ、自作の札が1枚減り、丹精込めて作った第陸精錬霊素がすっからかんになっただけ。


 その代価とでも言うように、俺の最大霊力が以前の3倍くらいになっていた。

 この成長は純粋に嬉しい。霊力精錬効率が上がったことで原料の供給スピードに不満が出始めていたのだ。

 これでまた残った霊力を霊獣の卵へあげられる。


 それともう1つ。

 いつの間にか真っ黒な勾玉が俺のポケットに入っていた。

 なんとなく俺が殺した妖怪に関わっていそうな気がしたが、これもまた確かめようがない。

 最初は捨てようとした。こんな不気味なものを持っていてはいつかトラブルの種になりかねないから。

 しかし、外に放り投げたはずの勾玉は、いつの間にか俺のポケットに戻ってくるのだ。

 呪われた人形のように、何度捨てても戻ってくるので、俺は遂に諦めた。


 しばらく持っていても何の害もなかったこともあり、仕方なく持っておくことにした。

 お祓いの方法を教わったら真っ先にこいつで試すつもりだ。


「よく描けている。筆遣いも安定してきたな」


「うん。お父さんの教え方が上手いから」


 今日も今日とて陣を描く練習である。

 鉛筆で文字の矯正をした後は、毛筆の練習が待っていた。

 筆の扱いが難しいが、クソ親父の教え方が上手く、俺の予想以上に早く筆遣いのコツを習得できた。

 前世では学生時代の国語でしか毛筆をやっていなかったので、変な癖がついてなかったのも良かったのだろう。


「もう10種覚えたのか」


「うん。次は何をするの?」


「……勉強がつらくないのか」


 仕事と比べたらぬるいでしょう。

 それに、陰陽術は学校で習う授業よりも面白い。

 なんだよ、小さな文字を連ねて陣を描くだけで超常現象起こせるとか。世の中どうなってんだよ。物理法則どこ行った。興味が湧いてしょうがない!


 生まれた時からコツコツ増やしてきた霊素も、この陣を覚えてから実践使用できて、大変満足しております。

 実践どころか実戦使用までしてしまったし、第陸精錬ではまだまだ不十分なのだと知ることができた。

 辛いどころか、ますますやる気が上がっているところだ。


 その熱意を伝えたところ、クソ親父は面食らったような反応を見せた。

 何かおかしかっただろうか。

 何かに熱中する子供が異様な熱意や記憶力を発揮するなど珍しくもないだろうに。


「そうか……ならば、次は呪文を教えよう」


「おお!」


 札づくりも陰陽師っぽかったが、呪文はさらに陰陽師っぽい。

 ぜひとも教えて欲しい。


 こうして、描陣練習の次は呪文暗記が始まるのだった。



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