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【書籍化】現代陰陽師は転生リードで無双する  作者: 爪隠し
第8章

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学園祭初日



 学園祭準備期間を経て、今日は学園祭本番である。

 放課後に各クラス協力して準備しただけあり、年齢関係なく生徒たちは浮かれている。

 まぁ、例外もいるのだが。前世の俺同様、周囲のテンションについていけない子もちらほら。

 今しかできないイベントだから、できるだけ楽しんでほしいものだ。


「聖君やっほー! 学園祭始まるね!」


「おはよう。純恋ちゃん、怪我だけはしないでね」


「それ、みんなに言われる」


 楽しんでいる陽キャ筆頭が顔を見せにきた。

 精鋭クラスは出店の代わりにステージで陰陽術の実演会をする。

 その舞台は野外ライブのような大型ステージであり、大観衆から注目される環境は、気の弱い者なら萎縮すること間違いなし。

 しかし、精鋭クラスの子どもは人前に立つことに慣れているようで、予行演習でも堂々と披露していた。


「ステージ裏ってこうなってるんだ!」


「物が多いから気をつけてね」


「わかってるよー」


 純恋ちゃんは一通り見学した後、すぐに次の場所へ向かった。

 超人的肉体を持つ武士がはしゃぐと、手をつけられそうにないな。

 広大な学園内を一周する勢いだ。

 そんな彼女を見送った後、俺は実演会の準備を再開する。

 巨大な和紙に陣を描いていると、背後に慣れ親しんだ気配を察知した。


「賑やかですね」


「年に一回のお祭りですから」


 源さんが追加の和紙を手に戻ってきた。

 少し前の彼女なら『何を騒いでいるのでしょうか』くらい言いそうなものだが、イベント参加のメリットを理解してからは楽しむよう努めているようだ。

 俺の後ろで自分の準備を進めながら、彼女は会話を続ける。


「将来起業する際の予行演習という側面があることは予想できるのですが、企業に劣る出店を周回する楽しみが理解できません」


「そこまで難しく考えなくても……。クラスメイトと一つの目標に向かって進む達成感と、友達とお祭りを回る思い出作りの為のイベントですよ」


「では、会場を一周すれば目的は達成できますね。将来思い出を語るのに十分でしょう」


 それ、友達を振り回してない?

 学園の敷地はかなり広いよ。


「今日同行する相手は、一度母と距離を取った家の子達なので。多少振り回すくらいでないといけません」


「相変わらず大変そうですね」


 立場をわからせるとか、中学一年生が考えることじゃないだろ。

 源家の家内政治闘争はずっと続いている。

 そしてその情勢は、多少良くなってきているそうな。


「以前ほどではありません。峡部さんのおかげです」


 『峡部さんの力を見て、方針転換する家がありました』と、最近言っていた。

 俺が源さんに肩入れしていることは明らかであり、九尾之狐討伐作戦に同行している家の当主が鞍替えしたらしい。

 妻の付き合いを夫の方針で変えるとは、本当に面倒なことである。

 前世でもそこまでバチバチな社内闘争に参加したことはないから、恐ろしい限りである。

 まぁ、今では俺も情勢を変えるほど重要な駒になっているわけだが。


「何かお返しができたら良いのですが……」


「別に気にしなくていいですよ。俺は特に何もしていませんし。あっ、紙が足りない」


 家で枚数を数え間違えたか。

 今日の実演会で使うお手製の和紙が1枚足りない。

 家はすぐそこだし、取りに行くとしよう。


「でしたら、こちらをどうぞ」


 早速移動しようと立ち上がった俺に、和紙が差し出された。

 俺のものよりも出来の良い、お手製の和紙である。


「えっ、でもこれは源さんのじゃ……」


「峡部さんの霊圧なら上書きできるでしょう」


 そういうことじゃなく。

 いや確かに、作成段階で注いだ霊力は製紙の肝ではあるし、俺の霊圧なら上書きできるのだが……。


「自分の分は足りてますか?」


「余分に持ってきています」


 さすが源さん。準備の良いことで。


「じゃあ、さっきのお礼ってことで。ありがたく頂きます」


 入学前に続いたお土産ラッシュ同様、下手に断るよりも素直に受け取っておいた方が良いだろう。

 ありがたく頂いた和紙に墨で紋様を描き、準備を進めていく。

 そして、ついにその時が来た。


「先生達のお話、長かったですね! 皆さま、お待たせいたしました。これより、学園祭を開会いたします!」


 マイクを握った放送部の生徒が初っ端から盛り上げてくれる。

 開会式ということで、ステージの前には全校生徒が集まっている。

 これから生徒達は自分の持ち場へ戻って出店を運営したり、友達とお店を回るのだろう。

 だが、開会式が終わってもその場を離れる生徒は少ない。

 この一番人が集まっている状況で、学園祭の目玉であるステージイベントが始まるからだ。


「それではさっそく始めましょう! 最初のプログラム、精鋭クラスによる実演会です!」


「「「きゃー」」」


 トップバッターである晴空君が出てくると、黄色い歓声が轟く。初等部から大学部まで年齢関係なく、屋根のない屋外ですら響き渡った。

 本人の顔の良さと地位だけでなく、学園内で随分と活躍しているらしい。

 あっちで人を助け、こっちで悩みを聞き、そっちで妖怪を倒す。

 ジョン顔負けの活躍っぷりらしい。

 そりゃあ人にも愛される。


「塵一つ残さぬ地獄の焔を今ここに──焔獄之陣!」


 黄色い声援が止むと同時、晴空君が高らかに詠唱する。

 これも秘術がオープンになったからこその演出である。

 ステージいっぱいに敷き詰めた和紙から炎が吹き上がった。


「「「おぉっ」」」


 ステージ周辺の気温が僅かに上がる。

 霊体特化の性能にしているにも関わらず、これだけ現世に影響を及ぼすこの陣は、まさに秘術に相応しいものだ。

 業火之札を習得したら履修できるらしいので、来年が楽しみである。


 トップが力を示した後は、神楽君が技術を見せる。

 否、魅せる。

 

「「「キレイ」」」


 周囲で感嘆の声が漏れるのも当然だろう。

 わざわざ焔之札を改良して、上空で花火のように花開かせたのだから。

 ……まさかとは思うけど、観客の女子達は神楽君の顔を見て呟いてる?


 そんな演出から始まった実演会の中盤、俺の出番がやってきた。


「楽しい学園祭になりますように」


 俺の演出は詠唱が必要ないので、そんなメッセージを口にしてみた。

 俺はバックヤードに用意しておいた人形代を札飛ばしで空へ舞い上がらせる。

 その数は1000枚ほど。観客全員には行き渡らないけれど、これ以上お手製の和紙を用意するには時間が足りなかった。


「蝶、犬、猫、飛行機」


 ドローンショーをイメージした群体操作が俺の演出である。

 青空をキャンバスに、人形代で色々な形を披露する。


「はぁ? あれ一人で操ってるのか?」

「いやいや、そんなわけないでしょ。何枚あると思ってんだ?」

「でも、ステージに立ってるのは一人だけだよ」

「ステージ裏に分家の子とかいるんじゃない?」

「しかもあの精密操作、絶対無理だって」


 ステージ最前列からそんな声が聞こえてきた。

 はっはっは、俺一人で操作してると知ったら目を剥いて驚いてくれそうだ。

 期待通りの反応が聞こえてニヤけてしまう。


 人々を魅了する演出が何かと考えた時、俺は懇親会での成功体験を思い出した。

 あの時も札飛ばしで多くの人が驚き、喜んでくれた。

 実際、一度に複数の物体を操るのは簡単なことじゃないらしい。

 前世で霊力なし状態を知る俺だからこそ、簡単にできるのだ。


 演出の最後には人形代を観客達の手元へ届ける。


「うわっ、落ちてきた」

「何か書いてある」

「ラッキー出店?」


 学園祭バージョンとして、人形代には各出店の宣伝を書いておいた。

 いろんな出店を回るきっかけになれば幸いだ。

 これにて、俺のパートは終了。

 他の精鋭クラスも披露し、最後は明里ちゃんが締めた。


 初日のお仕事はこれで終わり。

 あとは自由時間だ。

 ということで、さっそく婚約者様と共に学園祭を回る。


「明里さんの演出、とても素晴らしかったです。練習の成果が出ましたね」


「峡部さんのおかげです」


 先ほどのステージについて話しつつ、色々な出店を巡って学園祭を楽しんだ。

 この日ばかりは話題に困らない。

 あちこちに話題のタネが転がっているのだから。


「楽しかったですね。明日も一緒に回れたら良かったんですけど」


「ごめんなさい。明日は父と母がいらっしゃるので」


「もちろんわかってますよ。それじゃあ、おやすみなさい」


 明里ちゃんを家の前まで送り届け、俺は学園祭初日を終えた。



 〜〜〜



 それは、初めてのデートでの思い出だった。


『秘書の方に連絡させていただきましたが、今日は個展に行きましょう。安倍さんの趣味に合えば良いのですが』


『もともと興味があったので……楽しみです』


 明らかにエスコートに不慣れで、不満に思うことは多々あった。

 個展での聖の感想はどれもつまらなく、無難なものばかり。明らかに芸術を理解していないことがわかる。

 会話もぎこちなく、話題があっちこっちへ飛んでいき、話を合わせるのが大変だった。


 明里からすれば、デートとしては落第点である。

 けれど、源 雫(しんゆう)や周囲の人間にアドバイスをもらい、一生懸命デートプランを考えてくれたことを、明里は知っている。

 デート中も明里を楽しませようと、必死に行動してくれている。

 婚約者を大切にしようという気持ちが伝わってきた。


 決して悪い人ではない。


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