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【書籍化】現代陰陽師は転生リードで無双する  作者: 爪隠し
第8章

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九尾の暗躍①


 封印から逃れた九尾之狐は、近場で人口が多い場所へ向かった。

 向かった先は栃木県の宇都宮市。

 己がどこにいるかもわからないまま、情報収集を始めた。


 ォォォオオン?


 九尾之狐が活動していた平安時代とは似ても似つかない。

 人間の外見も言葉すらも変化している。

 それでも、調べていくうちにここが日本であることは分かった。

 陰から人間の会話を盗み聞きし、言葉を学ぶ。

 取り憑きやすい人間を見つけてからは早かった。人間の感情と言葉をリンクさせ、平安時代の言語と現代の日本語を擦り合わせる。

 同じ日本語なだけあって、言語の習得はすぐに終わった。


 ォォォオオン!


 宇都宮で基礎的な情報を得た後は、東京へ移動する。

 現代は京の都ではなく、東京が最大の都市であると知ったからだ。

 実際に東京を目にした九尾之狐は、数えきれないほどの驚きに出会した。


 栃木よりもさらに大量の人間、高層ビルが連なる広大な領地、天まで伸びる塔。


 日本の首都に集まる情報は、九尾之狐に多くの情報をもたらした。

 そして、人類が繁栄の極地へ至ったのだと確信した。

 かつて人類よりも上位に立っていた存在の気配はさっぱり感じられない。

 人類に淘汰されたのだろう。


 しかし、九尾之狐には理解できないことがあった。


「そっちに妖怪が行ったぞ!」


「俺が倒す!」


 街中で低級な妖怪を倒す陰陽師を観察していた時、そのあまりのレベルの低さに驚いた。

 平安時代ならば見習いと呼ばれるような者たちが現場に出ている。


 …………?


 しばらく観察して分かったのは、低級な妖怪の数が平安時代よりも遥かに多く、駆り出される人間が増えたのだということ。

 時折現れる中級の妖怪に対しては、昔と遜色ない強さの陰陽師も姿を見せていた。

 その中には、当時九尾之狐封印に加担した陰陽師の末裔の気配があった。


 …………!


 九尾之狐は湧き上がる殺意を抑える。

 あれを殺した場合、さらに強い陰陽師が出てくることは確定的である。


「今日の敵は強かったな。みんな無事か?」


「「「はい」」」


「さすがご当主様、強いな」


「ああ、これなら妖怪が強くなっても問題ない。頼もしい限りだよ」


 一仕事終えた怨敵の末裔を見て、九尾之狐は鼻で笑った。

 あの程度の強さであれば、いつでも殺せるだろう。

 まずは己の一部を滅ぼしている敵を討ち倒し、安全を確保してから殺しに行けば良い。

 九尾之狐は再び東京を探索することにした。



 〜〜〜



 九尾之狐は時間をかけて、現代日本の複雑怪奇な社会制度を理解した。

 さて、どうやって混沌へ落としてやろうか思案していると、己の一部が封印から解き放たれたことに気づいた。

 そして数秒と経たずに消滅させられた。

 すぐ近くに己を狙う陰陽師がいる。

 九尾之狐は現場へ向かった。

 

 念のため現場から遥か遠くに位置どりした九尾之狐は、後片付け中の討伐グループを発見した。

 そこにいた陰陽師たちは、これまで見てきた中でも有数の実力者たちである。

 一番弱い者でも、中級程度なら難なく倒してしまうだろう。

 しかし、その程度の相手に瞬殺させられるほど九尾之狐はやわではない。それがたとえ欠片であっても。

 つまり、あの中に自分を狙う陰陽師はいない。

 もうすでに移動した可能性が高かった。

 それでも九尾之狐は注意深く敵を観察する。

 付け入る隙のある相手がいないか見定める為に。


 ……ォオン……


 陰陽師たちに混ざって武士が作業をしている。

 そのうちの一人、年若い武士がこちらを振り向いてきた。

 視線が九尾之狐を捉えることはなく、辺りを見渡し、警戒したまま作業へ戻っていった。

 九尾之狐は離れた場所で偵察を始めた判断が正しかったと確信した。

 現代の敵も強者揃いであるという予想は間違っていなかったのだ。

 そして、来たる戦いへの戦意を漲らせる九尾之狐はついに──見つけた。


「皆さん、お先に失礼します」


「「「お疲れ様でした!!」」」


 車から出た少年が挨拶すると、その場にいる大人達が敬意と共に挨拶を返した。

 九尾之狐は一目見て分かった。

 己の体の一部を倒してきたのはこの少年であると。

 間違いなく己に比肩する強さを持ち、失ったはずの毛皮が粟立つ感覚に襲われる。


 ォォォオオン!


 全盛期で互角か、あるいはそれ以上か。

 九尾之狐は少年の強さを見積もった後、己の現状に思い至る。

 肉体を失い、己の一部が消滅させられ、封印から目覚めたばかり。

 こんな状態で全盛期を語るなど烏滸がましい。


 ……ォォオン


 真正面からの戦いでは勝てない。

 なら、策を弄すれば良い。

 それこそが九尾之狐の強みなのだから。

 少年の弱みを探し、確実に勝てる状況を作って襲う。

 方針を固めた九尾之狐は、必ず討ち倒すと決意を込めて遥か遠くの敵を見つめた。

 すると、少年に続いて車から出てきた大男が、こちらをハッキリと見つめてきた。


 ──!


 九尾之狐は慌てて逃げた。

 見つかった。

 間違いなく視認された。

 少年と今戦うことは死を意味する。

 大男が少年へ己の存在を伝える前に、九尾之狐は全速力でその場を離れるのだった。



 〜〜〜



「む……」


「御剣様、どうかされましたか?」


 縁武は目元を揉みながら、聖の問いに答える。


「何かがこちらを監視していたようなのだが……目の焦点が合う前に逃げられた。これだから歳はとりたくない」


「相手の狙いは何でしょうか?」


「分からん。最近は外国の勢力も入り込んでいると聞く。お主の力を見定めようとする輩の可能性が高い。あまり手の内を晒さぬように気をつけよ」


「わかりました」


 殺生石の監視を信頼する人類は、九尾之狐の暗躍にまだ気づかない。


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