学園の日常③
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
約束したなら早めに実行した方がいい。
純恋ちゃんの予定が空いている放課後、学園のカフェで勉強会を開くことにした。
夏休みの課題を持ってきてもらい、どこが苦手か聞き取り調査を行う。
「なるほど、暗記系が苦手なのか。算数は理解できてるみたいだね」
「なんか、難しくて……」
苦手意識は早めに克服した方がいい。
中学からは内容が一段難しくなり、学年内でも順位が明確になってくる。
自分は勉強ができない方の人間だとカテゴライズしてしまう前に、勉強は難しくないと認識させなくては。
「暗記には色々コツがあるんだよ。何度も書いて覚えたり、声に出してみたり、繰り返し見たり。色々試していこう」
「うん!」
元気の良い返事に違わず、純恋ちゃんは根気よく暗記法を試していった。
暗記法の向き不向きを確かめるには時間がかかる。
結果を楽しみに待つとしよう。
〜〜〜
俺が純恋ちゃんに勉強を教えようと思った理由は、もう一つある。
御剣家のもう一人のお姫様、百合華ちゃんにデートプランを添削してもらっているから。
「このコンサートはどう?」
「それアニメの曲がテーマでしょ。同じもの見てなかったら退屈なだけだから却下」
「なるほど、オーケストラなら何でもいいわけじゃないのか」
教えてもらうばかりではバランスが取れないので、双子の片割れへお返しをすることにしたのだ。
同じカフェで教える側から教えられる側へ。
何とも不思議なものである。
「あんたもよく頑張るよねー。毎度毎度デートプラン考えてさ。それで、仲良くなったの?」
季節限定ドリンクを片手に百合華ちゃんが呆れた様子で尋ねてくる。
素直に肯定できたら良かったのだけれど、デートプランを教えてくれる彼女には正直に答えるべきだろう。
「入学したばかりの頃よりは、お互いのことを知れたと思う。けど、仲良くなれたかというと……どうなんだろう」
秘術の授業で話しかけ、月に一回くらいデートを重ねた。
しかし、いまだに距離が縮まった気がしない。
会話も他人行儀な感じが抜けていない。
「この前言ってた、住む世界が違うってやつ?」
「そうだと思う」
小学校で培った年下との交流スキルがまったく役に立たない。
根本的に興味のある事柄が違いすぎるんだと思う。
「ほんとかなぁ……」
「それはどういう意味?」
「私だって一応御剣家のお嬢様だけど、聖と壁を感じたことないし。聖がコミュ障ってわけでもないし。そもそも相手に仲良くする気があるのかなって」
「まぁ、晴明様曰く人見知りする性格らしいから。それに、親に決められた結婚ともなれば、思うところもあるんじゃない?」
明里ちゃんがOKしたと聞いていたけれど、安倍家ともなれば親の命令を断ることもできないだろうし、中学1年生じゃ折り合いをつけるのは難しいかもしれない。
最近になってその可能性に思い至った。
婚約できたからって、ちょっと浮かれすぎだったな。
百合華ちゃんはこの話題に飽きたのか「ふーん」と言ってドリンクを一飲みした。
そして、思い出したように呟く。
「そういえばさ……。やっぱ何でもない」
「何? そこまで聞いたら気になるんだけど」
何だろう、嫌な予感がする。
それでも俺は聞かずにいられなかった。
「本当に聞きたいの……? 友達から聞いた話なんだけど、聖の婚約者が男子と仲良さそうに話してるところを見たんだって」
当然、相手は俺ではない。
俺が婚約者であることは学園内で知られている。
俺以外と話しているからこそ、百合華ちゃんのお友達は気になったのだろう。
「その相手は?」
「すっごいイケメン。神楽って言ったっけ」
あぁ、あの子か。
「神楽家の嫡男なら知ってる。安倍家の兄妹と昔から懇意にしているから、仲良く話しててもおかしくないよ」
潮舵金哉神社の奉納舞でも見せられたが、神に愛されし子供として期待され、付き合いが長いようだ。
神による誘拐を阻止したときは兄妹揃って抱きついていたくらいだし、半分身内みたいなものなのだろう。
俺にとっての加奈ちゃんに近い関係性だと、俺は認識している。
「ふーん。幼馴染か。聖がいいならいんだけど」
別に誰と仲良くしても、この年齢じゃ浮気だなんだって騒ぐことじゃない。
ちゃんと結婚してからも同じ距離感だったら嫌だけど、今から束縛系彼氏みたいなことをしたら嫌われてしまいそうだ。
俺達はもっと先を見据えて関係性を構築しなければ。
~~~
そうしてやって来た、次のデートの日。
百合華ちゃん監修デートプランは相変わらず完璧で、明里ちゃんも楽しんでくれたようだ。
これまで積み重ねてきた思い出をフックに会話も繋げられるようになってきた。
客観的に見たら着実に距離は縮まっている。
そのはずなのだが、晴空君達と話すときの彼女とは何かが違う気がする。
空気というか、表情というか……この引っ掛かりは何だろう。
「来月は文化祭ですね」
「文化祭?」
「あぁ、文化祭じゃなくて、学園祭でしたね」
前世の学校では文化祭だったから、つられてしまった。
陰陽師学園では二日間にわたって学園祭が開催される。初日は学園生だけで遊び、二日目は一般開放される。陰陽師への理解を深め、親しみを持ってもらう為に。
「よければ初日は一緒に見て回りませんか?」
「はい」
中学生になって初めてのお祭りだし、明里ちゃんも楽しめるだろう。
阿部家の財力が投じられている陰陽師学園は予算が潤沢なため、なかなか豪華なお祭りになりそうだ。
それでも子供たちが手造りする部分は変わらない。
あの学園祭独特の空気を一緒に楽しめば、距離も縮まる……かもしれない。
「精鋭クラスの出し物は陰陽術の実演会でしたね。もう練習は始めてますか?」
「いえ、自分のパートをどうするか悩んでいます」
学園の精鋭として、俺たちはステージで陰陽術を披露することになった。
その中でも代表的立場にある安倍兄妹には、単独パートが割り当てられている。
これはチャンスでは?
一緒に困難を乗り越える。これこそ仲良くなる一番の近道だろう。
「それなら、今度一緒に練習しませんか。陰陽術については自信があります。いいアドバイスができると思いますよ」
「ご迷惑では?」
「婚約者が困っているのですから、こういう時くらい頼ってください」
「……では、峡部さんの時間の合う時に、お願いしますね」
こうして、デートの日以外にも合う口実ができた。
将来仲睦まじい夫婦となるため、頑張らないとな。





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