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【書籍化】現代陰陽師は転生リードで無双する  作者: 爪隠し
第7章 社会変革編

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詐欺師


 空前の陰陽師ブームにより、グッズもまた流行し始めていた。

 定期的に流行る和風テイストのアイテムであり、ものによっては安全確保という実益も兼ねている。

 ミーハーな人や家族想いな人がその手のグッズを買い求めているのだ。


「聖これ見てよ!」


 そんななか、クラスの男子が意気揚々と見せてきたのは、紫色の御守りである。

 金色の糸で装飾されたそれは、一見高級そうに見える。


「父さんが昨日買ってきたんだ。安全のためにって」


 こちらに好奇の視線が集まる。

 周囲で話をしていたクラスメイトが興味を引かれたようだ。

 さすが流行最先端の陰陽師グッズである。


「へぇ、それは良かったね。どこで買ったの?」


「商店街で占いしてるお婆さんから買ったんだって」


 おや?

 最近話題の陰陽術関連の詐欺師が脳裏を過ぎる。


「それって、シャッター街になってる、あそこの商店街?」


「そうそう」


 一気に胡散臭くなってきた。

 高級な御守りはそんなところに売っていない。

 ちゃんと陰陽師の家に行って購入するか、術具店で注文するか、最近では各地の陰陽師会でも購入できる。

 それ以外のルートということは、後ろ暗いところがあるに違いない。


「念のために、中身見せてもらってもいい?」


「えっ、聖でもそれはダメだよ。袋を開けたら効果がなくなっちゃうって、占い師が言ってたって」


 ますます胡散臭い。

 その程度で札の効果が変わるものか。

 出しっぱなしにすれば霊力が拡散するだろうけど、10分20分なら影響はないに等しい。

 御守りの技術漏えい防止の線も考えられるけど……見ればわかるか。


「もしも効果がなくなったら、俺が新しいの作ってあげるから。これよりも効果の高いやつ」


「本当に? ならいいよ」


 渋っていたはずのクラスメイトは途端に許可を出した。

 むしろ壊れて欲しいと思ってそう。

 俺の代わりに君のお父さんに謝っておいてくれる?


 御守りの中身が気になるようで、先ほどよりも視線が集まっている。

 俺は慣れた手つきで御守りを検めると、早々に判定が出た。


「それじゃあ中身を拝見……ふーん」


 やっぱり偽物だった。

 ニュースで知っていたけれど、さっそく実例が出てきちゃったよ。

 御守りの紋様を描く際、必ず固定される文字が何箇所かある。ここが変わってしまったらお守りとしての効果を発揮しない、そんな要となる部分が、この御守りには描かれていない。

 それ以外にも、この文字とこの文字が隣り合うことはないし、ここの円が歪だ。

 陰気をうっすら打ち消す感じもしない。

 完全に素人がそれっぽく描いてるだけの品だった。


「何かわかったか?」


 自分の御守りにすごい効果があると証明して欲しそうな顔だ。

 俺は彼のプライドを守る為、周囲に聞かれないよう耳打ちした。


「……偽物だった。詐欺師にパチもん掴まされたね」


「えぇ、偽物!? すっごい高かったって言ってたのに!」


 彼はクラス全体に聞こえる声で叫んだ。

 わぉ、俺の配慮が水の泡だ。


「酷くね? 偽物だって!」


「嘘ぉ、本物っぽいのに」

「お父さん騙されてかわいそう」

「詐欺じゃん、ひっでぇ」


「な、酷いよな!」


 そうだった、こいつは話題を作れればそれでいいタイプの男子だった。

 俺に見せてきたのも、盛り上がれば良いなと思ってのことだろう。

 あの顔、話題の中心になれて嬉しそうだ。

 お父さんの優しさは、息子の楽しいひと時に消費されていった。

 そんなお祭り騒ぎを他所に、浜木さんが今日も話しかけてくる。


「聖君は本物の御守り作れるんだよね。私にも使って欲しいなぁ。バレンタインのチョコあげるから、ホワイトデーにどうかな?」


「あっ、それなら私も!」


「私も!」


 浜木さんと一部の陽キャ女子がそんな提案をしてきた。

 学校で女子からチョコを貰う……それは前世の悲願だったが、小学生に義理チョコを貰ってもなぁ。

 せめて女子高生になってから出直してきて。


「ごめんね。峡部家の御守りは身内にしか配ってないんだ」


「そっか、残念」


 ん? もしかして、御守りを手に入れるよう父親に頼まれたのか?

 あっさり引いたが、その可能性は捨て切れないな。

 スパイの策略を警戒しつつ、俺はパチもんを掴まされた男子に尋ねる。


「占い師からいくらで買ったか知ってる?」


「10万円したって」


 偽物にしては強気な価格設定だなぁ。

 しかし、一般人からすれば、霊感商法は胡散臭い方がそれっぽく思えてしまう。

 シャッター街の野良占い師に高額を支払った辺り、その思い込みは深刻である。

 高いからこそ、本当に効果があると思ってしまう罠だ。


「御守りは一定期間過ぎると効果がなくなるから、定期的に購入できるレベルのものを買った方がいいよ。露天売りで10万円は高過ぎる」


「えっ、妖怪からずっと守ってくれるんじゃないの?」


 おい、詐欺師。

 何も知らないからって一般人にとんでもない嘘をつくな。

 むしろ定期的に購入させた方が儲かるだろうに。

 これは恐らく、短期間に大きく稼いで売り逃げするつもりだな?


 人様の管轄区域で好き勝手するとは、良い度胸じゃないか。

 きっと毎日場所を変えているはず。

 逃げられる前に、今夜ジョンと手分けして捜索するとしよう。

 息子想いの良いお父さんを騙した罪、償ってもらおうか。



 〜〜〜



『聖、見つけたぜ』


「でかしたジョン!」


 夜の9時、人通りの減った道を巡回していると、ジョンから早速朗報が来た。

 捜索開始から30分後の出来事である。

 位置情報アプリを見ると、ジョンとの距離はそれほど離れていない

 身体強化した脚で街を駆け抜ければすぐだろう。


『見つけたは良いんだが、既に天罰が下っているようだぞ』


 ジョンと通話を続けながら現場へ向かう俺の耳に、物騒なやりとりが聞こえてくる。


『許しとくれ! もう取り扱いはやめるから!』


『偽物掴ませやがって。俺の50万円を返せって言ってんだよ。何が取り扱いだこのやろう!』


 ゴスッ、ドスッ、という暴力の音が電話越しに聞こえてくる。

 なるほど、クラスメイトの父より毟り取られた客が先に見つけていたのか。

 それにしても50万円って……いろいろ疑えよ。


『なぁBOSS、自業自得とはいえ、助けて良いよな?』


『痛い! もうやめとくれ! 私は小売店で、商品の性能については責任を持てないんだよ。文句があるなら製造元に連絡しな!』


『小売り希望価格50万ってか? ふざけんな!』


 反省してないな。

 もう少し痛い目を見た方がいいと思う。

 いやいや、ここでステイできるジョンではないか。


「仲裁してあげて」


『OK』


 俺が到着した時には、ビルの壁にもたれかかる老婆と、仁王立ちするジョン、そして怒り心頭の見知らぬ男性が立っていた。

 いかにも占い師といった風貌の老婆は、暴行された体を辛そうに摩っている。そして、ブツブツ言い訳をしていた。


「私だってこんなこと、したくなかったんだ。でも、孫がヤクザのバイトに手ぇ出して、逃げられなくなって、お金が必要だからって」


 いや、動機とか知らないよ。

 陰陽師の評判下げるようなことをした時点でギルティだよ。


「そのババアから金を取り戻すまで、俺は許さないからな」


「孫に渡したから、私はビタ一文持ってないよ」


「こんにゃろう!」


『まぁまぁ落ち着け。手加減してるとはいえ、年寄りなら死にかねないぞ』


「お前たちはさっきから何なんだよ! なんで英語喋る坊さんと子供が邪魔してくるんだ!」


 さて、現地に到着したはいいが、カオス過ぎて俺にできることは何もない。

 老婆は陰陽師ではなさそうだし、男は完全に他人だ。

 よって、その道のプロにお任せする。


「通報ありがとうございました」


「いつもお世話になってます。あとはよろしくお願いします」


 御剣家の息がかかった警察に引き渡すのみである。

 法に則って、然るべき処置をしてくれるだろう。

 男も暴行罪の疑いで連行された。

 これにて、一件落着である。


 日本の至る所で、こんなトラブルが発生していた。

【朗報!】

『次にくるライトノベル大賞』にて

 \\第7位 //

 にランクインしました!

 皆様の応援のおかげです。

 ありがとうございますm(__)m

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