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「一旦、しばくね!」「ひと思いにヤっちゃって」

 ごふさたしております。


 本当にごぶさたしております。もうしわけありません、あの、なんというか時の流れははやいってもんで、更新しよう続きを書こう、だってびちことさくらん1回しか会ってないし、こんなタイトル詐欺もないよな、書こう……それはともかくぼざろが面白すぎるぜと思っていたら二年ほど経っておりました。そしてふと気づけば、Zepp Hanedaにおりました。時の流れは恐ろしいですね。いちばん好きな曲は「光の中へ」です。We Willも最高でしたね。


 閑話休題。


 更新を再開します!

 

 改めて読み返したのですが、やっぱり僕はびちことさくらんの二人に3回会って欲しいぜ、と思ってしまいました。なので書きます。長すぎるほどお待たせして本当にごめんなさい。話覚えていない方がほとんどかと思います……ので、ざっと登場人物をまとめておきます。


【岡崎陽平/さくらん】

 本作の主人公。高校二年生。童貞。楓とは幼馴染。

 ひょんなことからびちこと「3回会えたらシよう」という約束をしてしまった。ラッキーチェリーボーイ。楓に2度フラれているが、まだ心のどっかで好きなまま。告白以来、楓と気まずくなっていたが、周りの支えもあり「ちゃんと幼馴染になろう」と約束し、二人に似合った距離感を模索中。

 一方で「びちこに会いたい」という気持ちも大きくなり……。


【びちこ】

 本名不明。年齢不明。出会った日にはセーラー服を着ていた。雨女っぽい。

 前述のとおり、陽平と「3回会えたらシよう」の約束をしている。いまのところ再会回数1回。あと2回で「せくしゃるなおさそい」は成就するがはたして……。

 陽平とは電話を通じて仲良くなる。しかし、自分で「3回会えたら」宣言をしたくせに「会うのやめよう」とか言い出して……陽平、大混乱! その真意は……。


【峰岸晴喜】

 陽平の親友、相棒。高校二年生。ふざけたやつ。

 最近、畑中なずなという彼女ができて、最高に青春をエンジョイしている。

 その一方で、陽平への情が深く、どうにか彼とびちこを「偶然を装って会わせる」ことができないかと考えていて……。


【小山楓】

 陽平の幼馴染。高校二年生。負けヒロインならぬ、負けさせヒロイン。罪な奴だぜ!

 陽平といると安心するので、彼のことが大好き。でも恋愛感情というものが分からず、悩み中。「ちゃんと幼馴染になる」約束以来、一緒に帰ろうと誘ったり、峰岸に甘えるのを我慢しているが……本当はもっと話したいし遊びたいと思っている。もう一度言おう、罪な奴だぜ!


【如月美紀】

 楓の親友。高校二年生。図書委員。わずらわしい性格をしている自負がある。その分、天然ッ気の強い楓に憧れている。

 最近は陽平のことも気に入ってきたらしく、なにかとちょっかいをかけているが……。


【畑中なずな】

 峰岸の彼女。高校二年生。ロリ巨乳。静かそうなくせして、ノリがいい。峰岸の影響を多大に受けている。あんまなずなちゃんに悪影響を与えるなよ、峰岸!


【早乙女紬】

 高校三年生。図書委員長。ソシャゲ廃人。


 以上です。


 更新頻度ですが、以前と同じような高頻度は難しいかもしれません。

 が、なにとぞ、おつきあいいただければ幸いです……!


「朗報だ! 朗報だぜ! 持ってきたぜ俺が、朗報をよぉ!」


 スイパラに行った翌日。朝、一時間目が始まる前のことだ。

 峰岸が僕の元に駆け寄り、叫んだ。


「まずはこちらをご覧しやがれ、相棒」

「おー、急転直下の命令口調に聞く気も失せたな」

「いいから、見ろっての!」


 峰岸が、机の上でスケッチブックを開いた。

 それで僕の記憶は、一瞬にして夏前に遡った。


「おー、その顔。思い出した、って感じだな」

「ああ……思い出した。いまとなっちゃめっちゃ懐かしいな、それ」


 ああ、と峰岸が肯く。


 そのスケッチブックが話題に上がったのは、五月のことだ。具体的に言えば、僕がびちことゼロ回目の出会いをした直後だ。たしか峰岸は、僕からびちこの情報を訊き出して、そのスケッチブックにまとめていたはず……。


「とりあえず、おさらいだ」

 そう言って、峰岸はスケッチブックを開いた。

「その聖女は、たしか半袖のセーラー服を着ていたんだよな。で、時期は五月。その頃、俺らの高校は夏服に衣替えする前だった」

「……だね」

「っつーことで、名探偵俺の推理が始まった。聖女が通う高校は衣替えが早い、あるいは自由制服なんじゃねーかってな。で、だ。実は昨日な、近隣の高校を調べてみたんだ。で、見つけた」

「は……!? ちょっと待て、峰岸」

「なんだよ、水を差すな」


 差すよ。水でもお湯でもマグマでもなんでも差したくなるだろ。

 お前、いつの間にそんなこと……。


「あ? ったりめぇだろ。お前の童貞がかかってんだ。力になりてぇって思うのが、親友ってもんじゃないか?」

「親友のために、そんなライン越えの行動を……」

「ライン越えだあ? 違うね、俺はなにも踏み越えちゃいねぇ。ま、でも。しいていえば……」


 そう言って、峰岸は得意げに微笑んだ。


「お前からすればラインの向こう側、彼女持ちの世界に行っちまったのかもしれんな」

「死ねやカス」


   ***


 友達に「死ね」なんて言ってはいけません。絶対にな!

 

 それはさておき、峰岸は本当のことを言っていたらしい。

 スケッチブックの左ページには、お世辞にも上手と言えない女子高生の絵……びちこだろう......が描かれており、右ページには「五月に衣替えがある高校(セーラー服)」と「自由制服校」の名前が箇条書きに書かれていた。その数、少ない。たった三校だ。


 峰岸の顔を覗き込む。さきほどから、こいつはしたり顔のまま。癪に障るニヤケ顔だが、机の上の成果物を見てしまえば、その表情を浮かべたくなる気持ちだって、分かってしまう。


 ガチだ。峰岸は、ガチで見つけてきたのだ。びちこを見つける、特大ヒントを。さらには、


「いいか。俺調べによると、衣替えが早い高校は隣町の『ルナソル女学院』だけだ。だが、ここは違ぇと思ってる。なんてったって、距離が遠い。お前がその子と出会ったのは、この街のタバコ屋だろ? それにしてはルナソルの校舎は遠いんだ。お前らが出会った時間帯的に、その子が早退でもしてねーとタバコ屋で出会うのは物理的に不可能なんだよ」

 で、だ。と峰岸は続ける。

「そういうことも考慮に入れると、候補はもっと絞られるってわけだ」

 峰岸が、スケッチブックの右ページに書かれた学校名を人差し指で指した。

「この街の自由制服校。隣の『私立伊月西高校』と、ちょっと離れたここ……『常磐北高校』。どうだよ、二択まで絞れたぜ」

「……悔しいけど、すごいよ」

「なっはっは。だろ? 将来の夢が探偵の俺に死角はないってわけよ」


 峰岸の将来の夢が探偵だなんて初めて聞いた。し、絶対いま考えたでまかせだ。なんで、そこはいったん無視した。


「さあ、どっちから攻めるよ?」

「……」

「……っと、あれだ。その前に、確認しなきゃいけないことがあったな」

「なに?」

「お前の気持ちだよ」


 そう、峰岸が言ったときのことだった。


 何やら突然、視線を感じた。視線……いいや、殺気? とにかく重たい気配を正面から感じたのだ。

 目の前には峰岸がいる。でも、その殺気の出所は彼じゃない。その向こう側。


 峰岸の背後。


「は~る~きぃ~」


 そして、聞き馴染みがありすぎる声。もっと言えば、峰岸を晴喜呼びする女子は限られていて、というか峰岸と仲のいい女子なんて数えるほどしかいないから、二択に絞るまでもなく、答えは単純明快。


 その声に、峰岸が振り返る。そこには鬼の形相を浮かべた、彼の彼女が立っていた。


 なずなだ。


「な、なず……」

 と峰岸が呼びかけるよりもはやく、なずなは頬を膨らませて叫んだ。


「なぁああああんで先行っちゃうかなあ! 朝練ない日は一緒に登校しようって言ったじゃん!!」

 峰岸は、なずなに背中をぽかぽかと叩かれながら言う。

「ごめんって、いやさ、今日は大事な用事が……すまん、陽平! 一旦、戦線を離脱する!」

「や、ぜんぜん構わん」

「岡崎くん、ごめんね! 一旦、晴喜しばくね!」

「それも構わん。ひと思いにヤっちゃってくれ」

「親友を見捨てんのかよ、それはねぇぜ!」


 ぎゃーぎゃー喚きながら、峰岸はなずなに引きずられて行く。

 ふぅ。朝からバカップルを拝見。心安らかなり。


 ──という、安寧に満ちた心をざわつかせたのは、峰岸の去り際の言葉だった。


「いいから、あとで聞かせろよな! お前の気持ち!」

 そして、

「セーラー服の子……その子のこと、どこまで本気かってのをよぉ!」


   ***


 どこまで本気か。

 アイツ、去り際に爆弾を投げていきやがった。


 びちこのこと、どこまで本気か。


 それは「会いたい」という気持ちの硬度の話だろうか? だとすれば答えは簡単だ。強い意志で持って、僕はびちこに会いたい。会いたくなっていた。

 だって彼女は心の支えだ。孤独な夏を、彼女のおかげで乗り越えられた。

 それだけじゃない。びちこの言葉があったから、楓との件も、一歩踏み出せたのだ。楓と約束ができたのだ。ちゃんと幼馴染になろう、って。僕たちなりの距離感を見つけようって。おかげでいま。僕の毎日は、憂いなく回っている。


 いわば恩人だ。恩人に会いたい、そう願うのはいたって普通の心理じゃないか。疑う余地はない。


 ……って、ごまかしの言葉がいくつも頭に浮かんで、被りを振った。


 そういうことじゃ、ないんだろうなあ。


 スイパラでの峰岸の言葉を思い出す。


「お前、恋しちゃったわけだ」


 そういうことを尋ねられているんだろう、僕は。

 試されているのだ、峰岸に。


「…………」


 正直言えば、分からなかった。この気持ちが「会いたい」以上の感情かどうか判別つかなかった。


 一時間目の英語の授業中に考えていたのは、そんなことだった。


 まったく、真面目に授業受けろ、って感じだよな。でも、目下最大の問いは、黒板に書かれた英文法の正しい用法じゃない。びちことのことだった。そっちのがよほど難問で、一向に答えが出ない問い。前回の英語のテストで赤点ギリギリだったことを差し引いても、そう思う。ちなみに赤点の答案用紙はまだ親に見せていません。だってこえーもん。


 さて、この感情をなんて呼べばいいんだろう。


 そう考えたときに頭に浮かぶのは、やっぱり楓のことだった。


 僕の人生のうち、恋をした相手は楓だけだ。楓以外のことを好きになったことがない。

 だからもしかしたら、簡単な話なのかもしれない。びちこへの思いは、楓以上なのか以下なのか。

 それを考えればいいのかもしれない──けれど、楓のことはもう恋愛対象として見ないって決めたわけだし…… 


 ぐるぐると思考は巡る。時計の針も回る。

 気づけば、一時間目の授業が終わってしまっていた。


 二時間目は体育があった。だから僕は峰岸と一緒に教室の外へ出ようとした。


 その時、だった。

 扉の前で僕は、


「……あ、いた! あの、ごめんね急に。ちょっと用事があって」

「えっ、ああ……どうしたの」

「いやぁ、えっとねぇ。それが、」


 小山楓──幼馴染に声をかけられた。


 楓は僕の目を見て、ただ一言、


「借り物競争で、来た」

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