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おしまいの聖女  作者: とりさし
逃亡の聖女
7/53

7 酔っぱらい吼える

口が悪いです。

倫理観もお留守です。

※お下品注意。


ヨウ視点で進みます。

 それから、おじいさんの《腰痛》のゲージを快癒に動かしてみたり、熟年夫婦の《愛情》をさっきの反省を踏まえてほんの少し動かしてみたりした。

 初見で狙った《状態》が見つからないときはスワイプしたら出てくるとわかった。今一番強い《状態》が前に来ていて他は後ろに隠れているようだ。


 

 いろいろ試してわかったことは、在るものはゼロには出来ないし、無いものはどうしようもないということだ。なので完治は不可能だし情が全くなかったら動かしようもない。


 ん? それなら私は無罪だな! 所詮時間の問題でなるようになったわけだ。

 良かった。先ほどのやらかしを思い出しホッとした。


「《情報》に付随するんだと思うけど、《血縁》も見える。人と人が線で繋がって見える。親子関係に限定されるけど」


 一呼吸置いてリオンを見つめる。嫌な話がくるぞ。

 テーブルに肘をつき鼻の下で手を組む。いわゆるゲンドウポーズだ。空気を察知してリオンが「うっ」とたじろいだ。


「王城の話。あれはもう終わっていたのよ。どうしようもない。聞く? 王太子は体質的に子を残せないし、第二王子は王の子じゃないし、王もとっくに枯れてる。まだ若いのに残念な。随分前に薬盛られたっぽい。王家の血じゃないと使えない何とか? があったっぽいから今更焦ったんだろうね」


 王の《情報》は遠くてぼんやりとしか読めなかった。ちゃんと読んでおけばよかったかもだけど逃げるの優先だったからなぁ。

 王太子は染色体異常だった。


「聞くんじゃなかった!! 国家機密じゃないですか!!」


「だからとっとと逃げる一択だったの。聖女なら何とかしてくれると思ったのかな? 無理だわそもそも種無いし。体細胞クローンでも作れって話かと。アホかって。因みに、何に何を願って召喚したの?」


「女神様に、国を導いてくださる聖女様をお遣わしくださいますよう、ですね」


「そ。導いたよ。終わりに。よく知らないけど女神様? も私を選んだんだからこれでいいんだろうね」


 女神様なんぞに会った覚えなどない。残念でしたの意を込めてリオンに向かって「おしまいだおしまい」と両手をヒラヒラさせる。


「引導……!!」


 リオンがテーブルに突っ伏した。


「大丈夫大丈夫。単なるの神話時代の終わりよ。謎の力なんかに頼らずに統治するといい。別の誰かが王になってもいいし。ほっといてもそのうち民衆の時代が来る」


 リオンが唸っている。頑張れ。ヤバさを理解しろ。


「第二王子は金髪碧眼だったけれど王様の子じゃないの?」


 この子本当に賢いな。酔っ払いの小難しい言動から必要なものを拾ってくるし、余計なことも言わない。子供扱いは逆に可哀想かもしんない。


「ソフィ賢い! いい質問です。父親は宰相さんでした。濃い茶色の髪ブルーグレーの目の人ね。多分元はそれに近い色じゃないかな。髪はエールで脱色でもしたかな? 毎日のお手入れの一環かも。わかんないけど。目は魔道具屋で色付けるの見せてもらったし魔道具かもしれないね。色は近いから誤魔化すの簡単そう。おバカそうだから本人はわかってないだろうなぁ」


 親の飲み残しのビールで脱色、流行ったなぁ。中学生の時。


「髪や目の色を変えることは禁忌なのですが」


 ぐったりとテーブルと一体化しているリオンを尻目に続ける。


「王や高位貴族の偽装防止のためのものだったろうに。怖いねー」


 続く、うんざりすることを伝えるためにワインを飲み干し喉を潤す。少し間を置き、口を開く。


「それと。付着した《体液》が見れる。名前付きで。何なら線で繋がってるから誰のなのかもわかる。これ本っ当嫌なんだけど!! 顔とか股間とか手とか青白く光って繋がってるのなんだろ? 男女もいれば男同士もいるし? 電源タップやタコ足配線みたいに何人かと繋がってる人もいるし? と思っていたけど、気づいた時の衝撃わかる?! こんなの知って何になるよ! 下世話もいいとこだよ!!」


 思わずテーブルを拳で叩いてしまった。ソフィをびっくりさせてしまった。反省だ。


 体液というかDNA痕だろうか。三年ほど前までDNA型鑑定作業をしていた。親子鑑定とかそういうやつだ。うん、今と昔あんまり変わらない気がしてきた。


 《血縁》が見えるのはもしかしたらこれのせいかもしれないな。


 唾液血液精液に限定されてるっぽいところにひしひしと悪意を感じる。女神というのが本当にいるならぶん殴りたい。助走付きで。



「城での話はそれでだったんですね」


 日頃の行いじゃないか?とでも言いたげな、そっけない態度だ。

 ちょっとムカッときちゃったな。


 リオンの好きな子すれ違ったっけな確か。


「そうそう。あなたの好きな女の子、エイミーちゃん? あなた以外の二人分の《体液》ピカピカしてたよ~モノと部位も知りたい?」


「うわああああああ!!」


「生きろ! 次がある! 多分!」


 

 うなだれている背中を撫で、追加注文したポテトフライをリオンの口に突っ込みエールを注文し落ち着くのを待つ。ソフィはウトウトしだした。まだ早い時間だけど疲れたかな。話に入れないしつまらないのだろうし。


「んでね、召喚なんだけど、多分次の聖女って話になると思うから捕まえに来ると思うよ。ところで、前の聖女様と世話役……ローザとケヴィンってどんな人? 今どこにいる?」


「とても慈悲深く美しい方でしたよ。世話役までは知りませんが。褒美とともにご実家に帰られたそうですが?」


 まだ何かあるのか? とでも言いたげな顔をしている。あるんだな、これが。


 ……見習いとはいえ、よく知らないというか前職に対してあっさりしているのが気になる。聖女様関連って神殿の重大な仕事じゃなかったのか?


「召喚するために前聖女と世話役の血液が大量に要る。……召喚魔方陣、血液が使われていたんだよ。《ローザ》と《ケヴィン》の《項目》を開いたら聖女と世話役と出た」


 魔方陣には何人ものDNA痕が表示されていた。量からしてはっきりわかるのは前聖女と前世話役。その他にも沢山のDNA。何代も継ぎ足して魔方陣を描いたんじゃないかな。処刑台で順番待ちをしている気分だった。ク〇マイやデ〇スター等のエグい系洋ドラが頭を過った。てかまんま誘拐殺人じゃないかこれ。


「――…………!!」


 リオンは血の気の引いた顔を両手の平で覆った。


 ようやくヤバさに気づいたかな。向こうは確実に私とリオンを狙ってくる。最悪リオンは私を差し出す気だっただろうけど、向こうは最初からセットで組んでいる。聖女召喚の真実を知った者を生かしておくわけがないだろ。


「要するにね、あなたは聖女用のハニトラ要員兼首輪の鎖兼生贄だったの。あれだな、イケメン用意しとけば呆気に取られてる間にホイホイ本名でも何でも答えていいように利用されてくれるからとかかな。ハイ残念でした! 私の好みは爽やか王子様系じゃありません! 真面目眼鏡と! イケオジな! 四十手前からがストライクだ! 声は腰に響く重低音な! 後大事なのは筋肉だ!! 盛り上がる大胸筋! セクシーな腹斜筋! 指でなぞりたい上腕三頭筋! 後ろ姿も光ってるよ僧帽筋! 縋りつきたい大臀筋! 筋肉は裏切らない! 細マッチョの言葉に騙されるな! 自分で細マッチョとかいうやつは高確率でもやしか太もやしだ! ……正直ニッチな自覚はある。けど、好みは人の数だけあるんだよ。爽やかイケメン配置しておけばいいんじゃね? みたいに安牌こいたのがあいつらの敗因だぁ!!」


 リオンは残念イケメンだけど、という言葉は追い打ちにしかならないから言わずにいてあげる。

 真面目眼鏡は鬼畜眼鏡やインテリ眼鏡じゃないところがニッチさに追い打ちをかけるポイントだ。


「ねぇ、聖女様。もしリオンじゃなくてそのイケオジ? とかだったら?」


 眠気を堪えて目を擦りながらソフィが尋ねる。舌が回らなくなってきてるな。そろそろ寝かせてあげなきゃ。


「あーうん、用意されたお部屋、何のための物かわかる? リオンは流石にわかるよね。普通にそのまま(まじな)いを掛けられて側妃様とかいう繁殖用にされていたと思う。精一杯抵抗するけど。で、子なんてできるわけないから最終的には次の召喚の素材にされちゃう」


 R指定ついちゃうやつだ! メリバエンドだな。


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