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おしまいの聖女  作者: とりさし
逃亡の聖女
5/53

5 出力装置リオン

ヨウ視点です。

「あははははははははは!! 何これ!! 何これ!!」

 

 余りの衝撃に笑いが止まらない。


 赤みの強い桃色の大きな光る輪がリオンの腰部を中心に回転する。上半身をすっぽりと覆うほどの大きさの板状の幻影が光る輪の上に何枚も並んで出現した。そのうちの一枚が《選択》されたのだろう。一枚を除き全て吹き飛ぶ。選ばれた一枚がリオンに吸い寄せられた。


 甥姪と何度も何度も観てごっこ遊びにも付きあわされた変身バングだ。


『レッツ○ーム! メッチャ○ーム! ムッチャ○ーム! ワッチャ〇ーム?! Iam○amenrider!』


「何なんですかこれ?! ずんぐりむっくりして動きづらい!!」


 リオンは涙目で困惑している。抗議とか生意気な。


「チベスナ顔の天才ゲーマー小児科医だよぉー」


 驚いた。リオンに切り替えボタンが付いているのが見えると思ったらこんな事までできてしまった。私やソフィにボタンが見当たらないところを見るとどうやらリオンのみのようだ。残念。泣いちゃうぞ。


「リオンさんおもンンッカッコイイですよー」


 ソフィも楽しそうだな!指を指して笑っている。


「初めて話しかけたにしちゃ酷くない?!」


 初会話おめでとう!




 ゴミ箱に包み紙や串を捨て、つまみと飲み物を持って西の高台へ移動した。




 いやあ、さっきはいい買い物をした。ほくほくである。くるしゅうない。

 古着屋で買った腰で帯を結ぶタイプの赤いワンピースの上に魔道具屋で買った疲労軽減、防汚、防寒の(まじな)い付きの黒いローブを羽織っている。ワンピースの下にはゆったりとしたズボンを穿いている。革のブーツも買った。ローブと同じ呪い付きの揃いのデザインだ。これでまともに歩ける。


 この世界は霧深く寒いらしい。らしい、というのは王都内は全体に(まじな)いが施されていて寒さは感じないし暗くもないからだ。気持ちのいい青空とはいえないけど。つまり、外に出るにはこのローブは必需品だ。少なくとも貧弱な私には。デザインも気に入った。黒地に金糸で民族衣装のような文様が全体に刺繍されている。エスニック好きとしては買うしかない。最高だ。白衣っぽくて落ち着くところもよい。ついでに金細工にカラーストーンがぶら下がるデザインのイヤーカフやピアスも買った。テンションが上がる。

 ソフィにも沢山服を買った。可愛いので何でも似合う。因みに今はゆるっとしたシャツに膝丈のキュロット、その上から赤いフード付きポンチョだ! 可愛い!

 あ、もちろんリオンのもいろいろ買った。この先必要だし。

 他にも、予算をみながら雑貨諸々を買った。便利家電に囲まれていた現代日本人には必要なものだ。それにしてもこの鞄はいい。大金を持っていかれたけどこの便利さには十分お釣りが出る。


 食べ物も普通に馴染みのある味だったし、やはりここは日本製のゲームや小説などのフィクションの中なのだろうか?




「次はこれ行ってみるか」


『シャ○ドゥビタッチ○ンシーン! シャバドゥ○タッチヘン○ーン!!!』


 リオンの方を向いた巨大な魔方陣が左側に現れ、赤く発光しながらリオンに吸い寄せられる。


「やかましい! 今度は何ですか!?」


「世界観に寄せてみた。指輪の魔法使い。魔族の王子様も行っとく?」


「物騒!!」


 魔族もいたりするのかな?


 残念なのはエフェクトのみで殺傷力が一切ないということだね。あったらあったでこの世界を物理的に壊しかねないからこれでいいのか。


 


 

 予測外の動きに体を振り回された疲労のためかそれとも羞恥心のためか、顔を赤くし呼吸を乱したリオンだけど、段々と落ち着いてきたようだ。ソフィはまだうつむいて時々震えている。ツボったみだい。


「初めのは、謎のウイルスと戦って世界を救うお医者さんの話ー」


「医者は戦闘職なんですか?」

 

 医者がいる世界なのね。治癒魔法とかは存在しないか希少なのか?


「次のは謎の儀式に巻き込まれた青年が愛する人のために戦う話ー」


「儀式」


「因みに、私のとこでは皆、幼児からこれらを観て生き様を学ぶ」


「戦闘民族召喚()んじゃった?!」


「女の子向けもあるよ!」


 ドン引きしているけど失礼な。


「そうそう、儀式。リオン知らなかったでしょ? 世話役の意味」


「か弱い異世界の聖女様に不都合のないようお世話するよう仰せつかっていたのですがね」


 不貞腐れたような、うんざりとした顔で遠くを見つめて言う。残念だけど、これからもっとうんざりすることを聞くことになるよ。これから話すことは推測交じりだけど、と前置きして言う。


「最初に名前、聞いたでしょう。その後、後ろでじいさんが何かした」


「じいさんではなく大神官様です。俺を媒介に世界と繋げ言葉の壁を取り払う秘術だそうですよ」


「半分正解。言葉の方は難無く結ばれた。(まじな)いはもう一つあったんだわ。そいつは私に首輪をつけるためのものだった。本来は聖女が逃げたり言うことを聞かなくなったときに始末するためのものだったんだろうね。世話役を殺すことで聖女も死ぬようになっていた」


 そう。本来は。偽名を名乗らなければ。


「だけど、失敗したの」


 指をリオンと私の間でぐるっと一回転し、再び私の胸元に戻す。


(まじな)いは私とリオンの間で迷子になり逆に結ばれた。だから、私が死ぬとリオンも死ぬよ! 死にたくなかったら死ぬ気でか弱い私を守れ! そんで何故かリオンで私の想像したことが再現出来るみたいでさ。見た目だけだけど。呪いが迷子になったせいで魂の線? が変なふうに繋がっちゃったのかな? つまり、あなたは私の出力装置(デバイス)になりました! おめでとうございます!」


「めでたくない!!」



 騒がしいと思ったら、遠くの、貴族街前の広場に物々しい集団が見えた。お待ちかねだ。



 さあ、ショータイムだ!



「来た来たぁ! そろそろだと思ってた!!」


「王国騎士団!! 早く逃げましょう!!」


 リオンが真っ青だ。中々ヤバい人たちらしい。はっは! 腕が鳴るぅ。

 

「よーし、ソフィ、見つかるといけないから私とこっち隠れようー。良し行け! リオン!」


 リオンの背を押し、私とソフィは大人しく岩陰に隠れる。


「何なんですか!!うわぁーーーー!!」


 リオンの体から衣服が消失し胸部や股間など大事な部分が白く輝きだす。手首に白地に黄色が配色されたカフス、足にも揃いのブーツが装着される。白いフリル付きの、大事な部分を隠せていないのでは? むしろ見せているのでは? という丈の黄色のスカート、胸元に黄色の大きなリボン、体にぴったりと沿うラインの白いパフスリーブの黄色のトップスが次々と装着される。スパッツも穿いているのでパンチラも安心だ。髪もふわっふわに変化した。顔も、ただでさえ整っているのに見る人が見れはリオンだとわかるが涙目で見上げられでもしたら命に代えてでも守らざるを得ないほどの庇護欲に訴える小動物然とした可愛らしさを携えた美少女に変化した。

 もちろんあざと可愛いフリもばっちりだ。


 何度も何度も姪と観た変身バング。


「「あは! あは! あははははははははは!!!!」」


「何ですかこれー!! なんて破廉恥なー!!」


 スカートを抑えて真っ赤になるリオン、可愛いぞ! 私と一緒に指をさして涙目で爆笑するソフィは鬼畜に目覚めつつあるのかもしんないね。 


 いやぁ、特殊撮影がこんなに簡単に出来るなんて夢のようだ。


「大きなお友達に大人気! 因みに髪の色とキャラ合わせてみたよ! さあ、いくよー! 人差し指と中指を立てて腕を振り下ろせ!!」


 リオンは右腕を上げ言わゆるピースサインをする。高台の上空に雷雲が立ち込め一瞬(まばゆ)く光ったと思うと一帯が激しい光の柱で覆われた。そのまま腕を広げクルクルと回りだす。そして、頭上で両の手でピースサインを作り、騎士団のいる方角へ勢いよく腕を振り下ろした。

 



『○ースサンダーハリケーーーン!!!!!!!!!』




 リオンの両手から轟雷が放たれ騎士団を襲う。

 バチバチとした光の洪水が視界を覆い、刹那耳をつんざく轟音が聴覚を埋め尽くす。


 直撃を喰らった騎士団はご愁傷様だ。



「解除」



 リオンを元の平民服姿に戻した。


「今のうちに逃げよう! 見せかけだけだけどしばらく動けないさ」



                   『ピコン』



「おめでとう! 性癖に女装が追加されたよ!」


 リオンが涙目で叫ぶ。  


「嬉しくない!!」


 またまたぁ~


ヨウは甥姪とリアルタイム視聴の他に、動画配信サービスで全プ〇キュア、平成ラ〇ダーを網羅しています。戦隊は嗜む程度。エンディングダンスも踊らされました。


好きなライダーのストーリーは龍〇と剣とエ〇ゼイド、5〇5の第八話は神回。好きなキックはア〇トの第一話。

好きなプ〇キュアは初代とムーンライト姉さん。



甥姪はプリキュアもライダーもどっちも観ています。リアルタイム派。ご褒美はて〇びくんやた〇しい幼稚園を買ってもらうこと。

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