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ケインの後継  作者: みすみいく
5/7

主従

 事情を承知しているクリストファー達は焦燥と共に待っていた。そこへひとまずの決着が付いた旨連絡が入った。

 リント伯爵を継いだクリストファーが、自分の足で歩き始める切っ掛けとなる1話である。

 「…暫くは…ハネムーンだそうです」

 

 待ちくたびれて、それも、どんな事態が待っているのかに、恐々としながらの夜半までを過ごした俺達は、安堵と疲労にソファに沈み込んだ。


 「…良かった…」


 漸くそれだけを言い、ケインは、そのまま顔を覆ってしまった。


 「何よりです」


 昨夜、アレンの叔父貴と話し合った内容を携えて、予定より早く訪れた執事候補は、溜息と共に天を仰いだ。


 忠節な執事は、レオノールを前にして言葉に出来ないものの、己の進言が主人の命を脅かしかねない事態を招いてしまったと、自分を責めているのだろう。


 「ケイン。誰にも予測できない事態だったのだ。お前は進言したに過ぎないのだから、考えてはならない」


 聞いて顔を上げた執事は、俺を見詰めて息を呑んだ。


 「坊ちゃま…失礼を、クリストファー様」

 「父様にとって特別な執事であるお前は、僕にとっても特別な人だ。僕の執事にする事が出来ないのは残念だけれどね。父様同様、潰えて貰っては困るんだ」


 俺とケインのやりとりを聞いていた執事候補は、ケインに置いていた視線を向けると、弾かれたように此方へ顔を上げた。


 「ハンス次官が総てを承知しているので、私に省の業務の代理を務めるようにと命じられました。補佐して戴くわけにはいきませんか?!」


 彼は目を見張り、次いで伏せた目を上げ、溜息を付くと言った。


 「では、僕は貴方の執事として採用されたのでしょうか?!」

 「それは私が聞きたい。これまでの貴方は、義理を立てる為にいらしただけだ。この事態を前にして、この国のこれからを何とかしなければ成らない私を、助力頂けるだろうか?!」

 「それは、父上との関わりを考えずに返事をしろと言うことですか?!」

 「私の執事になって頂かなければ成らないからです」


 菫色の瞳には俺への奇異の印象が見てとれた。今の俺のもの言いが、彼の予想の範疇に無かったと言う事だろうが、同時に強い好奇心も窺えた。


 「最善を尽くす事は言うまでも有りませんが、僕なりに『やってみる』と言うのはどうでしょう?!僕1人の意志ではまま成らない事態も起こり得るでしょう」


 何というのだろう、俺の知らないタイプの人のようだった。困難を柳のように受け流すしなやかな…


 「…条件をもう一つ。フランスでお暮らしの貴方を、私の執事と成って、この国に居られる限りは、ケインと同じように扱わなければ成りません。合わせて承知頂けますか?!」

 「もとより。僕も過去のしがらみにこれまでの人生を強いられた者です。父上にはそれも考慮の内かと」

 「宜しくお願いする。雇用条件などはケインに準ずる事として、この後秘書に書類にさせる。ついては、ご苦労だが、朝1番で内務省に登省する」

 「畏まりました。お館様」


 さすがに、出自はフランス貴族の傍流で有った人らしく、特異なシステムを呑み込むのが速かった。


 これで良いだろうかと顔を向けたレオノールと、軽すぎる頷きを返した俺を、見ていたケインが苦笑する。

 皆で笑いながら、ひとまず、軽い食事を摂るために食堂へ向かった。

 お読み頂き有難う御座いました!

 少々甘やかしすぎかしらね~とか、思いながら書きました。ごめんなさい…

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