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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
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第91話 天才達と自覚



この特殊なフィールド。法則が強化されて、いつもと同じ動きができない。

慣性の法則が強くなっているから、思った通りに矢が当たらない。落下は殆ど無いと考えよう。


神楽は、やっぱりまだ遠心力に振り回されてるかな。

あのサイズの鎌だもんね。少しでも感覚にズレがあるとまともに扱えない。


舞も動きずらそう。舞を踊ることで術の起動を悟らせない。それが彼女のスタイル。だけど、こっちも普段と違うフィールドについていけてない。


相変わらず、玲音の適応能力に驚かされる。

聞いた話では、空中を蹴って立体機動で戦ったらしい。それを行える身体能力とそれを可能にする思考と神経。普通じゃない。


手間取ってるけど、慎重になってるおかげで、こっちはまだ余裕がある。向こうは残り八割ないくらい。時間制限はないから気にしなくていいけど、疲れはある。


「アテミア、ハイバーやるよ」

「ええ」「心得た」


第二回イベントの時から共に歩んできた契約精霊。

どちらとも私によく合わせてくれる。そして、私には勿体ないとも思う精霊達。


「認めてくれたんだ。だから、私はそれに応えてみせる!」


戦場に白いモヤが漂う。


「アテミア第六位階オールレンジキリングフィールド!」


ミオの声は聞こえるのに、姿が見えない。


ハイバーの第五位階アゼミシオンの効果で、30秒ミオの姿が見えなくなる。


「第八位階射貫く戦場の神」


残り23秒


「ペルン発動」


19秒


「信仰は裏切られ、我が神は川へと墜ちる」


14秒


「されども、我が神への信仰は、今此処にある!」


10秒


「稲妻と炎を従え、敵を滅せよ!」


8秒


「ドニエリヤ・ぺルーン!」


5秒を残して、精霊魔法は発動した。


どこからともなく現れた翼を持つ馬。その馬が引く馬車から雷や稲妻、炎の矢が雨のように天龍へ降り注ぐ。


信仰は裏切られ、川の底で眠りに着いたその神は、何の因果か結び付けられた存在の、預言の力を得た。


天龍は回避を試みるが、攻撃は当たるという預言によって、ほぼ全ての攻撃が天龍に命中する。


「九矢・アルカンシェル」


つがえた矢の先に幾つもの属性魔力が集まる。


放たれたソレは、虹を描きながら天龍目掛けて飛んでいく。命中すると、様々な属性が過剰反応を起こし、爆発する。


「射貫く戦場の神・アルテミス」

「あえて私を選ぶのね?他の力じゃなくていいの?」

「今求めてるのは貴女」

「ふふっ。なら、狩りを始めましょう」


白いモヤがいっそう濃くなり、晴れたと思ったら、そこは木々に覆われた森に様変わりしていた。


「何!?」


さすがの天龍も動きを止めてしまうほど。しかし、法則強化の力が消えた訳では無い。

ということは、結界は重複可能だということ。


「アテミア新第六位階、破壊を(アルカ・)齎す狩(アイラ・)猟の女神(ウーサー)


その瞬間、天龍はミオのことを過小評価していたことを自覚する。


「やはりあの男の関係者は!使徒ですら相当だと言うのに、その身に神を降ろすなど正気では無いぞ!?」


飛んできた矢を回避する。しかし


「ッ!?なぜ」


避けたはずの矢は身体に刺さっている。


「一体どうなって!?」


次々飛来するミオの矢を、何度も回避する。

しかし、その度身体に刺さる痛みに冷静さを失っていく。


「正直、ムキになってたと言われればそうなんだと思う。態々貴女のフィールドで戦い続けるなんて…レオンは確かに順応したのかもしれないけど、私達はレオンじゃないんだからさ」


それは、カクラとマイに向けて。


「私達は私達なりにやればいいんだよ」


伝えたいことを伝えながら、ミオは攻撃の手を一切緩めない。


「私は今、天龍の法則強化の効果を受けていない。私が受けているのは、自分で作り出したこの結界の効果だけ。複数の結界が存在する時、術者に作用するのは、格が一番高い結界。私が知る限り、一番格の高い結界はレオンの影血世界。その次に格が高いのが私のこの結界。そう自負してる。だから、私より格の低い貴女の結界の効果は私には及ばない」


破壊を齎す狩猟の女神…術者に付与する加護は必中と破壊。

ミオの矢は、天龍の魔術回路と結界の破壊目前まで来ている。


「この世界において、結界はほぼ絶対の法則を持つ。貴女のは範囲内の全てに法則強化を与える、強制付与の結界。レオンのは隔離結界。そして私のは自分を有利にするだけの固有結界。私と貴女は同じ分類ね」


天龍以外のモノになれない戦場での戦いを強制する、天流。


ミオのは術者が有利に立ち回れる効果を付与する。結界としてみれば大した事ない。しかし、術者に付与される力は絶対と言えるだけの強制力を持つ。この結界内では、ミオが必中と言えば必ず当たり、破壊できると言えば破壊できるのだ。


そして、レオンの持つ固有世界に対象全てを取り込み、レオンが定めた絶対のルールの下、戦うことを強制する。世界から隔離し、絶対の法則を強制する。レオンの結界は、レオンが定めた数だけ種類が存在する。と言うのは、まだ知らないことだが。


ミオが攻撃を続けている間、カクラとマイは自身の思考が澄んでいくのを感じていた。


「お姉、ミオ姉のおかげで影響が弱くなった」

「あぁ。破壊の力が結界に綻びを作ったんだろう。この程度なら問題ない」


確認するように身体を動かして、ズレを合わせる。


「それに、そろそろ私達の出番だ」


天龍のHPが残り3割を切った。一人でここまで削れるミオの火力に笑いが出そうになる。デメリットも存在するであろう、短期決戦用魔法。短期決戦大好きなレオンの彼女らしいと思う一方、ミオにはもう少し他に何かあるだろうと不安にもなる。


「応えよ、天の宝物」

「禁呪解放・天槍!」


2度目の抜槍。一度目はグリードトータスに。

これまで二度目を使う機会がなかった。それは、エリクサー症候群に近い。


「天槍ウリエル」

「承諾……対価要求」

「この世界を救う為に必要な事だ。対価を請求するのは後にしろ!」

「……最後の天翼の命令確認……認証。禁呪・天槍の発動に対価を不要とします。我らの主最後の一翼、貴女にこの星の未来を」


アナウンスとは思えない言葉。


「任されよう。まぁ、私は1人では無いがな」


カクラの手に握られる、炎が揺らめいているような、光が迸っているような不思議な槍。

それは神の炎、神の光とも称される名を持つ天槍。


「ヨルムンガンド」

「動力選択」

「予備カートリッジ全部とMP全部」

「動力確認、禁忌解放、禁忌稼働」


機械龍ヨルムンガンド。一番最初に使った時は僅か数十秒。二度目の稼働時は五分。

そして、今回の稼働時間は


「私達だってレベルが上がってる。MPに多めに振ったから、直ぐに終わりなんてことにならない」


十分は持つだろう。


そして、二人の切り札が出揃う。

天龍と同じかそれ以上の機械の龍。

光と炎が揺らめく様な槍。


ヨルムンガンドは天流の影響を無視して天龍に襲い掛かる。

天槍は、カクラに悪い影響を及ぼす効果を全て無効化していく。


「我が敵を討て!ヨルムンガンド!」

「ギュアァァァァァァァァ!」


「その光は、炎は、敵を排して人々に希望を齎す!輝き照らせ!ウリエル!」


ミオの攻撃が止んだことで、天龍はその二つに集中する。


「知っていたが、この龍は最悪すぎる!」


機械龍ヨルムンガンドは、果てることなく永遠を生きる。それは、マナがある限り永遠に。

その身が朽ちることも無く、傷付くことも無い。つまり、天龍の攻撃の一切を無視して攻撃してくるのだ。

止める手段は、発動者を倒すことか、ヨルムンガンドが一撃で停止するほどの衝撃を与える必要がある。


天龍は海龍の様な強力な切り札がある訳じゃない。魔天砲が最大の攻撃と言っても過言では無い。その代わり、この特殊なフィールドと多彩な手札が天龍の武器なのだが。


「マザーの聞いた通りとはな!そっちでもソレを持っているのか!」


天龍が言うソレは、カクラの背中に現れた白い翼だろう。片側三、両側で六の翼。


カクラは感覚的にその使い方を把握した。一対の翼で風の捉え方を変えることで、複雑な軌道を描きながら天龍に攻撃を加える。


ジリジリと天龍はHPを削られていく。天流というアドバンテージが失われた今、天龍に勝ちの目は残されていない。ように見えたが、


「魔天墜落」


三人が頭上を見上げるほどの魔力。降り注ぐソレは、流星群。


「流石にこれは無理かも」

「私にも手が無いな」


カクラ自身も精霊達もアレをどうにかできる手札を持っていない。数個なら何とかできる気がするが、数が多すぎる。

マイも同じだ。防御系の結界に注力すれば、それなりに耐えることは出来る。しかし、数が多く、終わりが見えないアレを耐え切れるかどうか。


「儀式礼装・弓神楽、三分稼いで」


終わりが見えないなら、こちらが殺られる前に殺ればいい。

そう言ったのは誰だったか。

ミオからの指示に、二人は笑みを浮かべながら行動する。


「ネア第十位階カランコエ。あとはめいっぱい結界で固める!結界術・守護六十重ね!」


ネアの第十位階魔法カランコエ。その効果は、複数人を一人一人包み込む結界。そのものを守り、そのものに幸福を告げる。HP、MP含む全ステータスを2倍にし、被ダメージを半減する


マイの結界は、その多くがハニカム構造を利用している。それが六十層。


次々降り注ぐ攻撃。如何に強力な結界でも、限度はある。一つ、また一つと結界が破壊される。


「ナイトイリュージョン、テンペストウルフ!ウルフエアレイド!」


ワウテウの第六位階精霊魔法ナイトイリュージョンで自分の分身を作り出し、合わせて九体の暴風の巨狼が降り注ぐ攻撃を邪魔する。


「まだ、まだァ!」


巨狼に天槍を投擲。巨狼がその炎を取り込み、強化される。


「即席合技・炎渦の天狼!」


勢いの落ちた暴風の巨狼。炎により強化され、蘇る。しかし、それでも十数秒。


三分が遠い。


「サンダルフォン!」

「ヨルムンガンド!」


カクラは新たな天槍サンダルフォンを呼び出し、流星群を一時的に封じる。

その隙に、マイがヨルムンガンドを正面に移動させ、物理的な盾とする。破壊不能とはいえ、こんな使い方をすればリキャストタイムは増加するだろう。それでも、この一戦は負けられない。


「ミオ姉だけに独り占めはさせない!」


サンダルフォンの効力が切れた流星群。その一つがマイを直撃する。

その瞬間、軌道が逸れる。そして、別のに当たり砕け散る。


「無茶はしてなんぼ!無茶しただけ強くなるんだから!」


お兄は、玲音はそうやって強くなってきた!


マイがやっていることは、自身の重力結界を何重にも重ね、横からぶつけることで軌道を無理矢理逸らすというもの。巨大な質量を強制的に移動させるだけの重力を発生させるのに、どれだけ集中して結界を重ね、それをピンポイントで当てることができるのか。

マイもまた、家族に負けず劣らずの天才。


「なら、私に出来ることは!」


負けず嫌い。レオンもミオもカクラもマイもそう。

マイのやっていることを理解し、自分にできるよう応用する。

自分が今使いこなせる力を選び、制御する。

炎を凝縮し、襲い来るソレを包み込む。包み込まれたソレは、個体から液体に変化していく。

高熱で溶かされ、マグマへと変化した。

圧縮された風は、レオンの刀のように全てを切り裂く刃と化す。


懸命に時間を稼ぐ二人。ソレを視界に収めながら、ミオは思考する。

リズが言っていた、巫女という言葉。自分を指して、神の巫女と言っていた。その神は恐らくレオンのこと。私は玲音の巫女になれているのだろうか。自分でいいのだろうか。


ずっと前から思っていた。玲音の隣は自分でいいのだろうか。他に相応しい人がいるんじゃないか。


考えて考えて、私は、考え方を変えた。


玲音に相応しいかどうかは、私が決めることじゃない。玲音が、隣は私が良いって選んでくれた。無意識であっても、自分に仕える神職は私が良いって、隣は私が良いって選んでくれた。だから、私はその想いに全力で応える。玲音は私のことを好きだと、大好きだと言ってくれた。なら、私も同じだけの想い、いや、それ以上の想いを返そう。


「奉納剣舞・玲音の舞」


玲音は意外と丁寧で繊細だ。一度、玲音が踊っているのを見たことがある。その時の感想は、美しい、その一言に尽きる。

指の先まで意識され、一切ぶれることの無い重心。余計な音を立てない身体の動かし方に、私は少し嫉妬した。


でも、玲音は私を見てその動きを覚えたと言った。嬉しかった。私を見てくれた玲音が、私から何かを得た玲音に。


玲音ならこう動く。この時はこうやって剣を振るう。考えながら、玲音の姿を想い描く。


ここはきっと鋭く、緩やかに。逆にこっちは素早く、優しく。



その舞を奉納するミオの発する気配がガラリと変質する。

カクラもマイも天龍も、視線を向ける事を止めれない。


「私達の主様は、凄いわね」


ミオから発せられる気配は、ミオのものともう一つ。


「我が神は我が力と共に」

「偽典・始祖の血」


ミオの背後に浮かぶ巨大な赤い球体。その全てが血。その量は、レオンがこれまで使ってきた血の量によって決まる。


「圧縮、生成、血の矢。装填・アルカンシェル」


ミオが番えた矢から眩い輝きが放たれる。


「四矢・破砕」


静かに放たれた矢は、進路上の全てを破壊し、尚その勢いを落とさず天龍に命中……しない。


「何!?」


驚く天龍。その視界にもう一本、いや、八本の矢が映る。


「一点集中桜華八突」


一体どういう原理だろうか。八本の矢が同時に同一箇所に命中。

天龍の体に穴を開け、そのHPをゼロにする。


長い三分が過ぎればあっという間の決着。


そして、次の瞬間には天龍のHPは全回復していた。


「合格だ。三人にもレオンと同じ報酬をやろう。後は、スキル書か特殊スキルを選ぶといい」

「特殊スキルの内容は?」

「弓の主は射手。鎌の主は鎌王。鉄扇の主は扇妃。効果はレオンの剣豪と同じ」

「一択かな」

「だな」

「お兄と同じ」


三人は特殊スキルを選び、狼道とは別の挑戦権スキルを入手し、クランホームへ戻る。


「特殊スキル滝登り…か」


龍王への挑戦権。それが特殊スキル滝登り。

自身にあった龍王へと導くスキル。

ミオは神龍、カクラは炎龍と風龍、マイは光龍と緑龍。

そう予想できる天龍だった。


「次のいい目標だな」

「お兄に追いつく」

「そうだね。今回のでいい感じにレベル上がったもんね」


三人はクランホームにて、天龍戦のリザルトを確認していた。

経験獲得量増加のスキルによって、かなりの量の経験値を得てレベルもそこそこ上がった。


「お?ミオ達もしかして勝ったか?」

「カイドウさん」

「三人で勝ったぞ」

「おめでとう!俺達もそろそろリベンジだな」


レオン以外の攻略者の登場に、クランホーム内の熱気が高くなる。

ただ、全員が思う。


きっとこの三人も特殊な勝ち方してんだろうな、と


「そうだミオ。デメリットはどうなってる?」

「ん?結構…ひどいなぁ」


一時間の全ステータス半減、武器の耐久力半減、獲得経験値減少の三つ。


「まぁでも、一時間なら……それゲーム内?」

「いや、リアルかな?」

「あーそこそこキツい」

「ミオ姉続ける?」

「んー…、ちょっと技の開発しようかな」

「そうか。なら私も」

「一緒にする」


三人はクランホームを出て、裏の訓練場に出る。


そして、カイドウは以前のメンバーを呼び集めて、天龍の再戦に向かう。


大変お待たせしました。レオン側に移るつもりが、澪たちの活躍を挟まねばと。


澪は玲音の彼女であり、神になるであろう玲音の巫女でもあります。神楽と舞にも巫女の素質はありましたが、家系で神職な澪に適うはずもなく…まぁ、なれたとしても二人は遠慮するでしょうが

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