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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
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第83話 血族そして建国準備

セレスとの戦いは、意外な程あっさりと終わった。


アトラルカの循環の力があるレオンと違って、セレスには限界があった。


レオンと同じように血液循環のスキルがあり、血の供給は問題なくとも、MPの回復手段が乏しく、HP回復手段も種族特有の自動回復しかないのだ。


「レオン、ずるくない?」

「いや、まぁ…生き抜くためだし?」


全力で生き抜く為に、レオンは三種の神器も夜天朧月もアトラルカ達精霊の力も使った。


そうすれば、いくら格上と言えどもレオンの敵では無い。


「まぁいいわ。時空魔法覚えた?」

「...あるな。おっけ取得した」


取得可能一覧から時空魔法を取得。その際、目に入ったスキルについて尋ねる。


「なぁ、セレス。操影術って?」

「え、嘘。取得出来るの?」

「あぁ」

「...いや、でもそっか。始祖の血筋なら可能か。じゃ、操影について説明するね。その名の通り、影を操る術なんだけど、夜を狩場にする私達種族には最高のスキルなの」


微かな月明かりで照らされる夜の方が、影が昼より濃く多い為、絶好の狩場となる。


「影は血ほど形を変えることは出来ないの。私が使う様に剣や槍みたいな単純な武器程度。それでも、指定対象は触れたモノの影全て」

「...俺に触れた場合、俺の影も操れるのか」

「えぇ。更に言えば、影を固定することで動きを封じる。なんてことも出来たり...ね」


動きを封じる...それがどれだけの時間か分からないが、ほんの一瞬動きが止められるだけでも、致命的な隙となる。


「その力があったから、大罪と厄災の単独討伐か?」

「...それ以外に要因はあるわ」

「その要因ってのは、種族全体に関わることか?」

「貴方、容赦ないのね。...まぁ、隠すことでもないか」


そうして、セレスは語り始める。吸血鬼一族の最後の時を。



''当時、私達種族の力は三強に数えられる程。そうなれば、他種族から協力を求められる。私達はそれを受けて、協力して敵を排除していた。


何度も撃退していくうちに、敵も進化していった。こちらの想像を超える速度で進化する敵に、こちらの被害は拡大していった。


最初の襲撃で、多くの種族がその数を減らした。


二度目の襲撃。精霊族の王が精霊族と森人族を庇い亡くなった。


三度目の襲撃。多くの種族を助けてきた吸血鬼が標的となり、後に大罪、厄災と呼ばれる二体が雑魚を率いて襲来した。


この襲撃で、その世界の吸血鬼は絶滅した。その代わりに、他の種族への被害はゼロだった。



私達吸血鬼を襲って来たのは、怠惰刻印パンデミック、破天侯フラドラと後に呼ばれた。


怠惰刻印パンデミック、彼の能力は単純。敵対生物の行動の禁止。戦うことも手を動かすことも出来ない。心臓すら動きを止める。


そして、破天侯フラドラ。天候を自由自在に操り、夜の景色なのに太陽によるダメージを受ける。始祖の一族とはいえ、太陽を完全に克服出来ていない吸血鬼達には致命傷だったわ。


パンデモニウムによって行動全てを禁止され、フラドラによって太陽でその身を焼かれる。


吸血鬼一族に為す術は残されていなかった。


ある一つを除いて。


朧月夜、夜天朧月の更にその先。

その二つが禁呪指定になった原因。


吸血鬼族、その王を除く全ての血を生贄に捧げ、王が発動させる。

術の名を「始祖の王が終焉を齎す」


後の歴史で、始祖の吸血鬼が全種族最強と知らしめた、最凶最悪の力。


発動者が知覚できる全てを範囲内とし、範囲内の全ての能力を無効化する。


先にこちらが無効化されていても、後出しで発動出来てしまう。


神の意志とは別に生まれた種族が故の、神すら打倒する絶対的能力。


だけど、この能力は発動者への負担も凄かった。私が耐えられず死んでしまう程に。


結末はわかった?その能力を使い、私を除く吸血鬼の全てが死に、大罪、厄災と呼ばれた二体を倒して私も死んだ。相討ちと記されるのはそのせい"


「種族全体が滅びたのなら、このダンジョンで見たのは?」

「パンデミック、フラドラを倒し、終焉を使ったことで、この地には膨大なマナが集中していた。その結果、この国はダンジョンと化して私達の死体は、そのままダンジョンに吸収され今に至る」

「……なるほど。次だ」


種族が滅びた理由もこの地がダンジョンとなった理由もわかった。だが、もう一つ聞かねばならないことがある。


「俺とセレスの繋がりについてだ」


最初の反応で確信した。セレスとレオンは血の繋がりがある。それはつまり、レオンの母であるエレナもセレスの繋がりがあるということ。


「……膨大なマナは、その場に留まり続けるとその地をダンジョンへと変化させたり、凶悪なモンスターを生み出す巣窟と変化する。その規模を軽減する目的と、あわよくばこの血を残す為に時空魔法を発動させたの。魔法内容は、私の遺伝子情報を他空間に転移させること。ただの博打だったのだけどね」

「だけど、その博打は成功していた?」

「えぇ。貴方を見て確信したわ。私達の血筋はちゃんと別世界で受け継がれていた。貴方の世界に元々吸血鬼が存在したかは分からないけれども、貴方と貴方のお母様は確実に私の子孫よ」


エレナの母親の出自をレオンは知らない。一度調べた方がいいのかもしれない。


「なるほどね。で、御先祖?俺に託すって何を?」

「…それはね、私達の国の再建」

「ここでか?」

「ここはもう無理よ。だから、何処かに貴方の吸血鬼の国を作って欲しいの。私達が貴方に力を託すのはそれが理由」


国の再建。トップが吸血鬼ならそれでいいのか。しかし、その国に彼女達がいないのは寂しい。


「一つ、聞きたい。他所からの侵略も接触も無く、広さも十分あり、付近には狩場も存在する。そんな場所があるとしたら」

「……確かに良い候補地だわ」

「ならば提案だ」


レオンはニヤリと笑いながら、セレスに手を伸ばす。


「俺の国で生きてみないか?生まれ変わった新しい身体で」


セレスが目を見開く。口が開いたり閉じたりしている。

そんな馬鹿なと言いたいのか、それともお願いしようとしているのか。それは今は分からないが


「そんなことが可能なのかって話は、無論可能だ。このダンジョンに取り込まれた吸血鬼達は、全員が肉体を持っている。俺の持つ神器、八尺瓊勾玉の拡張能力には魂を縛るというものがある。これは、ある程度なら上書きして発動することが出来る。つまり、ダンジョンに縛られている吸血鬼達の魂を、俺もしくは俺の国に縛ることで、生まれ直すことができるわけだ」


玲音の持ち込んだ三種の神器。天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉


天叢雲剣の基礎能力は、絶対切断と浄化、換装

八咫鏡の基礎能力は、転移と分身、千里眼

八尺瓊勾玉の基礎能力は、縛りと門

そして、この三つが揃った時各種能力の拡張が起きる。

その結果

天叢雲剣には事象改変能力

八咫鏡には転移の制限解除と陽を示す結界の構築

八尺瓊勾玉には魂への干渉と陰を示す結界の構築


「……魅力的な提案ね。その話、吸血鬼種族代表セレス・ブラッド・ドロワがレオンの申し出を受け入れ、我ら一族貴方の配下に」

「受け入れよう。八尺瓊勾玉、この地に囚われた我が同胞の縛りを解き、我との縛りを!八咫鏡、我が同胞の真実の姿を映し出せ!」


レオンの呼び掛けに応えるように、二つの神器が輝きを放つ。


八咫鏡によって映し出された彼等の身体には、魔力による縛りが可視化され、鎖のように見える。


その魂に結びついている縛りを、八尺瓊勾玉が解いていく。そして、レオンの命を起点に新たな(むすび)を繋いでいく。


「解いて結べ、血の縁。我が魂に誓う」

「我等の命はレオンと共に」


レオンとの新たな結。それは、全員の身体の一部に刻印の様に刻まれる。


「さて、契約しておいてあれだが、候補地については暫く待ってくれ。いい場所を見つけてくる」

「それは構わないけれど、何処で待っていればいいかしら?」

「……ちょい待ち。我が血、我が影よ加護と神器の力を受け、創造せよ。我等の箱庭を」


膨大な魔力がレオンを中心に渦巻き、空間が歪んでいく。

その歪みにレオンの血と影、八尺瓊勾玉と加護が干渉し合い、徐々に影が広がっていく。


「常時展開はきついな。一時的な隔離世界を創った。そこで待っててくれ」

「規格外ね。了解したわ」


セレスと他の吸血鬼達が影に入っていくのを見送り、レオンは制御を止めて座り込む。


「...少し重いか?」


違和感が身体にまとわりつく。


「いや、別の...」


その違和感の正体は、狼系モンスターの視線なのだが、距離もあってか今のレオンはそれに気付けなかった。



まぁ、そんな経緯があってレオンの配下にセレス率いる吸血鬼一族が加わった。


「ジルヴァニアとは会わせておくか」


ジルヴァニア...正式名称をジルヴァニアファミリー。プレイヤージル率いる、レオン直属のクランだ。表向きは、リック率いる『ジャック』と『ハロウィン』に加入があったとなっている。


至る所から聞こえてくる戦闘音と伐採音。

久しく手に入れた自由に、張り切っているのだろうか。加減に失敗して仲間を巻き込んでいるようだ。


怒声も聞こえるが、巻き込んでるのはお互い様なので、ほっといていいだろう。


「どうせ、行ったフリしてサボってるんだろ?お祖母様?」

「...その呼び方やめなさいよ」

「真面目に働いてくれたら考えます」

「なんて意地の悪い孫なの」


お祖母様、孫と言い合っているが、実際それがあっているか分からない。なんとなく、それが一番合う気がした。


「セレス、会わせておきたい奴らがいる。問題ないな?」

「構わないわ。でも、信用出来る人にしてよ?」

「当然」


そう言って、レオンは何処かに転移して行った。

恐らく、会わせておきたい奴らを呼びに行ったのだろう。


「...全員集合。状況報告」


セレスの一声で、全員が即座に集まり、島の状況報告を行う。


「敵のレベルは前後20。恐らく、所有者のレベルに応じてる」

「モンスターとは別の痕跡を発見。明らかに人種系統です」

「モンスター以外に牛や豚、鶏、羊、山羊などの痕跡も確認しました」

「害獣とされる獣も数種確認しています」

「島の大きさは、二倍近いかと」

「仮拠点の方は6割がた確保出来てます」

「飲水、食料等、生活に必要なものは島内である程度賄えます」


次々報告される内容を瞬時に精査して、優先順位をつけていく。


「仮拠点と本拠点、生活に必要なスペースの確保を最優先。人種系の痕跡に関しては、要警戒。敵対するかどうかをよく見極めて接触します。行動再開!」


シュバッ みたいな効果音が聞こえる程の早さで行動を再開する吸血鬼達。

そこに指示を出すセレスの姿は凛々しく、元王の風格を感じさせた。



「……リックとジルは獣国にいるのか。チャットを飛ばそうか」


フレンドの二人が獣国にいるのを確認して、メッセージを送ってクランホームに帰ってきてもらう。一緒に、ジルヴァニアを全員招集させ、空いた穴をジャックに埋めてもらう。


「情報次第では、行動を早めるか」

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