第81話 レオンと玲音の協力者
「さて、何から聞きたい?」
颯とリジェルが気を利かせたのだろう。クラスメイトの家族達は眠っているようだ。
玲音は、質問に答える形で話を進めようとする。
「...玲音、お前は何者なんだ?」
「それは前にムーが答えてたと思うが、まぁいいか。改めて自己紹介しよう。外なる神に連なる、外なる者玲音。異世界よりこの星を救う為に派遣された、吸血鬼と人間のハーフだ。でも、吸血鬼としての血が強いかな」
「ゲームと同じなのか?」
「ゲームと同じなんじゃない。ゲームが俺と同じなんだ」
「...ゲーム内のレオンが現実の玲音に合わせた?」
「まず、なんでこの星に来たかを説明するか」
「破壊と簒奪の神グレーゴル。その眷獣がこの世界に降り立った。でも、神達の奮闘により世界そのものに影響はなかった。なんでかって?活動する前に封印することができたからな。封印できたのはいいが、この星の神では眷獣を倒すことが出来ない。この星の住人にもそんな強者は居ない。だから、神は少しだけ世界を弄った。その結果生まれたのが、俺達が普段遊んでいるゲー厶。VRMMOと分類されるCYANだよ。ゲームの中でなら、人間は際限なく成長する。その力があれば、眷獣も倒すことができるだろう。だが、それだけでは万が一の時に困る。そうならない為に別の世界から、眷獣を倒せる力を持った者を呼んだ。それが俺達四人だ」
「...玲音のレベルの上がりが早いこととか、レアモンスに会う頻度が高いのは、運営...神様からの恩恵?」
「いや、それは関係ない。なんせ、今この世界の神様は意志を簒奪されて、ほぼ操り人形だし。人間への関心すら簒奪されてるよ。神から俺への恩恵なんて、最初の種族と装備関連か」
「十分では?」
「だとは思う。でも、それだと不公平だから、公平にする為の初期プレゼントがあったろ」
サービス開始時に防具のプレゼント。一部プレイヤーは専用装備だったり、防具が弱い代わりに武器を...なんてことがあった。
「玲音は一度死んだのか?」
「死にかけた経験は何度かあるけど、死んではいないよ。故郷の星がある程度落ち着いたから、こっちに来ただけ。移動は、さっき見たと思うけど、ムーの補助で空間移動だ」
「...外から助けを呼ばないといけないほど、危険な状態なのか?」
「俺にはよくわからん。だから、ムーが答えてくれ」
「状態としては分からない、ですかね。そんな近々封印が完全に解けて滅びる、なんてことは無いです。神々の全力の封印が簡単に壊れたら問題ですから」
「玲音達のこの秘密を知ってるのは、他にもいるのか?」
「現実側だとお前達だけだな。ゲームの方だと天照王国の巫女姫と宰相は知ってる」
「なんでその二人?」
「巫女姫の方は、何代か前の巫女姫の時に神からの神託があったからだな。俺達が来たのはその神託からしばらく経ってからだ。宰相は、当代の巫女が信用に足ると評価したから」
「玲音...俺達に危険はないのか?」
「危険と言うと?」
「アイツらみたいに変な力でとか」
「そういう危険ならない。心配があるなら...」
そう言って、玲音は人数分の小太刀を作り出し、それをブレスレットに調整する。
「村雨の破魔の力を込めた俺の血刀だ。ただ、そのままだと物騒だから、ブレスレットにした。自分の血を一滴垂らせば、専用装備にできるようにした」
「...それを持てば平気なんだな?」
「こっちの世界での影響は防げる。向こうの世界で受けた影響は完全には弾けないな。まぁでも、向こうなら他にも方法はあるから問題ないな」
全員がそのブレスレットを手に取る。
「指先出しな」
指示を出して、出された指先に切傷をつける。
「何があっても俺達が基本は守るから、普通にゲームの攻略を進めてくれればいいよ」
ある程度の説明をして、その場は解散となる。
クラスメイトの中にバスを所有している家族が居たので、迎えに来てもらい全員が帰宅する。
玲音だけは別件があるとその場に残った
「...さて、ムー」
「はい」
「それなりに話したが問題は無いな?」
「はい。宰相からも協力者は確保した方が良いと許可をもらいました」
「そうか。...もう少し協力者を増やしてもいいか?」
「そうですね、せめて解放者参加のクランマスターには」
「全員をリアルで集めるか...そうだな、暫く姿消す必要が出てきそうだし」
「あぁ、地龍からの?」
「それもあるが、こっち側にも結界欲しいだろ?」
「あの結界ですか?」
「あぁ。あった方が便利だろ?」
その場に術式を刻みながら、玲音はムーとの会話を続ける。
「ムー悪いんだが、ルビアを呼んできてもらえるか?」
「護衛ですか?」
「あぁ。代わりに、天照様と月詠様、素戔嗚尊を国の守護に行かせてくれ」
「...いつの間に神に命令できるようになったんですか?」
「いや、すまん」
「ま、問題ないですけどね。それじゃ行ってくるので、ここで待っててくださいね」
そうして、ムーは再び次元を渡り、故郷の星へと向かう。
ルビアを呼ぶ理由は、現実で各地を回る時の護衛と移動手段の確保のため。
天照様達を防衛に向かわせるのは、単純に信仰心の向上と神の与える影響を知りたいから。
相性で行くなら、シェグナと意外にアイヴィアは素戔嗚尊とピッタリだろう。
颯とアリア、リジェルは、天照様と月詠様のどちらともいいだろう。
「この星の全体像が分からないから、必要な杭が計算できないな...どうにか調べられないか?いや、待てよ?なんか星に言及してる何かがあった気が...」
玲音はどこかで、この星の秘密を見たような聞いたような事を思い出す。
それは現実でだったか、ゲームの中でだったか...そもそも、自分の耳で直接確認したことだったか...
「そうだ思い出した。アリナやゼロとカインが話してた、この星を守るようにして3つの星...今いるこの世界を守るために、封印を施したゲームの世界。更にその外、二つの世界。二つ目と三つ目の境界に精霊王...いや、それは今は良くて」
玲音はその場に座り込み、持っている情報から最適解を導き出す。
「この世界に結界を作るより、外の世界に結界を作った方が楽なのか?精霊王の存在する境界の先、二つ目の世界...そこに結界を構築するとして、どうやってそこに...アトラルカに聞くか?そうすれば、最低でも他の精霊王がいる場所にはいけるか。まぁいいや、全部に結界張る」
「纏まりました?」
「ルビアか。待たせたか?」
「いえ、丁度ですよ」
玲音が結論を出すと、傍にはムーとルビアが居た。
丁度戻ってきたところだったようだ。
「私の力が必要と聞きましたが?」
「俺の護衛を頼みたい」
「それは、澪さんや神楽さん舞さんでは、ダメなのですか?」
「ダメでは無いが、期間や内容的にルビアが最適かなと」
「護衛以外にもなにか必要と?」
「結界をこの世界にも張ろうと思ってるんだが、移動手段を考えると、ルビアのノアが一番だろう?生活空間もあるし」
「確かに。しかし、玲音様にはエルニがあるのでは?」
「あれは戦闘特化すぎてダメ」
ルビアの神器、聖艘ノアは戦闘、移動、索敵、拠点と何をやらせても十分な性能を持つ。
比べて、玲音の持つエルニエルトは戦闘に特化しすぎて、人目につかないようにするステルス機能がない。
ノアにステルス機能があるなら、そちらを使用した方が目立たなくて済む。
「わかりました。ちなみに、いつからですか?」
「2週間後で頼む」
「それまではどうしますか?」
「ノアの航行能力なら、世界一周が可能だろ?ある程度でいいから、結界の杭を打ち込める場所を探してきて欲しい」
「わかりました。一人だと寂しいので、アイヴィアか颯を連れてきても?」
「了承が取れたらな」
「わかりました。一度戻り、話を通した後行動に移ります」
「よろしく頼む」
ムーに連れられ、一度玲音達の星へ戻る。その後、話し相手を連れてこちらにまた来て、各地を巡って結界の杭を打ち込むのに最適な土地を探してくれるだろう。
「帰って、マザーからの試練の準備しねぇとだな」
携帯端末から、マザーの試練の内容を確認する。
太古の地龍の試練
・竜人の里の異変の調査
・異変解決
・黒狼、神狼の解放
・三魔龍の調査
・隠龍と癒龍との接触
「まずは竜人の里の位置調査だな...せっかくだから、俺の直属を使うか」
玲音は端末を操作して、あるプレイヤーにメッセージを送る。
「リックにも一応送るか」
イベント終了後に送られて来ていた、一通のメッセージ。気付いたのは今朝だが、申し出はありがたく受けた。
解放者への加入はさせないが、俺の直属として連携することを約束した。
そのクランがリック達に近しい為、クランメンバーには、リックのところに新規加入があったとだけ通達してもらうことに。
「三魔龍に関しては、風音のとこに頼むか」
風音の方には、三魔龍に関する情報が欲しいとだけ送り、調査を依頼する。並行して、残りの大罪や厄災関連の調査も。
「次のログイン時に、レヴィとシズに残りの龍の情報を聞かないとだな」
学校に通う時間もあるので、誰かにバレないように行動するには、期間が短めだ。
協力を仰ぐのはダメでは無いのだが、なんとなくこっちの役目に関連してそうなので、協力者は最低限にしておきたい。
「...もう少し、まともな学生生活できると思ったんだけどなぁ」




