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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
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第73話 呆気ない決着そして暁の空

「もう一度聞くよ?援護いる?」


ポーションを振り掛けながら、背中をさするミオの問い掛けに、レオンは否と首を振って答える。


「あのどちらも俺の獲物だ。お前らは全員でこの迷宮のボスを頼む」


流石に疲れたのか、少しふらつく。それでも、レオンの目からは戦意が失われていない。


「独り占めか?」

「そうじゃねぇよ。俺の魔法スキルが奪われた。しかもレベルも相当格上だぞ」


レベル自体はレオンと同等。しかし、複数人に有利なレオンの魔法を奪い取っており、それに紛れて各個撃破できる実力がある。

復活回数に上限がある以上、ここで無駄にする必要は無いだろう。


「戦いたいなら好きにしろ。巻き込まれても知らん」

「……んで、どうやって抜ければいい」


何人か牽制するために攻撃しているおかげで、ジャックと白狼はこちらに攻撃してこない。


「ちょっと待て」


村雨を納刀。赤椿だけを構える。


「魔装赤椿」


ドワーフ王に教えられた時は分からなかったが、確かに魔力が集中している。


軽く振ってみると、それだけで床を深く斬り裂いた。


「縮地、瞬攻、頭伐」


プレイヤーの攻撃が自分に当たるのを無視。

ただジャックの首だけを狙う。


「海流」


反応したジャックが、海の流れを生み出す魔法で、レオンとの距離を開ける。


「チッ」


ジャックが使おうとしている魔法が何かわかった。舌打ち、飛び上がろうとして


「クッソ!」


振り降ろされる爪。自身の何倍もある巨体から繰り出されるそれは、防御してもその上から伝わる衝撃だけでこちらの体力を削る。


ジャックが上手く魔法を使いこなしているせいで、プレイヤー側の攻撃が全て防がれている。

白狼がレオンに攻撃を仕掛けられたのもそれのせいだろう。


「わかったよ!頼れと言うのなら、力を貸せ!三種の神器!」


大罪のスキルを発動してから、その存在を主張するように熱を発している三種の神器。


「隙だらけ」

「うるせぇ。見えてる」


疾風迅雷だろう。接近してきたジャックを転移で回避。白狼の爪がジャックに当たりそうになる。

それを慌てて回避している二人。


「…全員その場を動くな。八咫鏡、入れ替えろ」


ジャック達が少し慌てている間に、レオンは準備を整える。

そして次の瞬間。プレイヤー達とジャック、白狼の位置が入れ替わり、プレイヤー達の目の前にボスエリアの入口が現れた。


「行け!」


レオンが叫ぶと、プレイヤー達との間を遮るように黒い壁が現れた。


「世界を閉ざせ、八尺瓊勾玉」


レオンとジャック、白狼だけを閉じ込めた、紅い月が浮かぶ夜の世界。


「アトラルカ、契約更新だ。右目をやる」

「いいのだな?」

「問題ない」

「よかろう。本契約を」


精霊王との契約。代償はあると思っていた。精霊王のその力は、強大故に制限がある。

レオンもアトラルカの精霊魔法を第四位階までしか使えない。どころか、その先の魔法名すら知らない。


第五位階より先は、精霊王に認められ、代償を支払うことで結べる本契約でないとならない。


この世界の人間には不可能だ。

プレイヤーが契約するなら、ステータスの数値を一つ犠牲にして、魔法属性を一つに絞る必要があるだろう。

しかし、その身を巡るマナを持つ吸血鬼は、その身の全てが触媒になる。アトラルカとの本契約なら、今のレオンの目で十分なのだ。


「力を試すぞ。アストラル・ウェポンズゲート」


レオンの右目に浮かぶⅦという表記。

レオンの周りには、11の武器が浮かぶ。


「アストラルウェポン。星を揺るがす力を秘めた11の武器だ。この迷宮も一つの世界のようなもの。迷宮の外に影響は無い。存分に振るえ」

「天叢雲剣、血円武器庫」


片手に天叢雲剣を握り、もう片方の手は、アストラルウェポンを扱えるように空けておく。

赤椿、村雨、早霧は腰に携えたまま。

更に周囲には、始祖化状態でしか使えないよう制限された武器も浮かぶ。


「まずはその魔法を封じる」


短剣のアストラルウェポンを手に、八咫鏡でジャックの背後に転移。

咄嗟に振り返って迎撃するが、正解は逃げるだ


持っていたナイフを壊しながら、短剣はジャックに突き刺さり、魔力回路を破壊する。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


想像を絶する痛みに、ジャックは膝を着き、胸を抑える。

白狼と違い、魔力回路を完全に破壊されたジャックは、もう魔法を使うことが出来ない。


「全身を内側から焼かれるような痛みはどうだ?」


ジャックを蹴り飛ばし、白狼を地面に叩きつけながら、レオンは問う。


「なんだ、その力ぁ!なんで奪えない!寄越せよその力!」


なんとなく、嫉妬のスキルの効果範囲がわかった気がする。

あのスキルが奪えるのは、あくまでスキルのみ。

三種の神器はスキルではなく、装備品もしくは武器だ。だから嫉妬のスキルで奪えない。

精霊魔法は、精霊がいて発動できるスキルだ。だから、魔法の方を奪っても精霊魔法は使えるし、契約の要である精霊石が奪われない限り、精霊も奪われない。

まぁ他にも、この世界のものじゃないって理由もありそうだが


「悪いな。お前に時間を掛けたくないんだ。白狼を助けるために、俺の魔法返してもらう」


夜空に発生した暗雲。そこから覗くのは雷。


「テンライ、第七位階ヴァジュラ」


多くの罪を犯した者に絶大な威力を誇る。裁きの雷。その下位ではあるが、ジャックを焼き焦がし、消滅させるだけの力はあった。


ワールドアナウンス


七つの大罪・痴情解体・切り裂きジャック

七つの厄災・人斬人災・ジャック(真名・リーパーTheランタン)


討伐されました



「こんなに出さなくてよかったな。まぁいい。次は白狼だ。全力で殺さないように行く」


思い切り叩き付けたから、暫く立ち直れなかったのか。頭を振っている。


魔法が使えないから、噛み付き、爪の攻撃、巨体を活かした突進、後ろ足や尻尾を使った牽制。

それを、武器を投げることで妨害する。


武器達は常に追従してくれるので、すぐ状況に合わせた武器を手に取ることが出来る。


そして、攻撃方法が限られているおかげで、対処は簡単。


なのだが


「神代を発動してるとはいえ、どこまでやっていい?殺して復活とか出来るのか?いや、無理だろ。ならどこまで」


そう。暴虐天童は、死後元あるべき姿へ戻し、逝くべき場所へ向かわせるために使った。だから加減なく行けたが、白狼は生きたまま助けなければいけない。


「…元に戻すのなら、神代の効果で元に戻るまで殺さないように攻撃する、が正解か?」


それが正解な気がするが、もうひとつ問題があって、白狼が死にたがっていることだ。


神代の効果が出ているのか、白狼の意思が強いのか分からないが、時折、白狼の思念が聞こえる。


殺してくれ

もう終わりにしてくれ

これ以上、殺すのは嫌だ

頼む。死なせてくれ


苦しそうで、とても悔やんでいる。


そうだ。この白狼は、元々は人々を守る神獣だった。それが、魔に侵食され魔獣へと変質し、人々を守る神獣から人々を殺す魔獣になった。


意識は残っていたのだろう。だからこそ、人々を裏切り殺したことを罪として見ている。


魔に堕ちる前に自害すれば良かったと後悔している。

もう人々を殺したくないと、苦しんでいる。


「だけどな、お前を救って欲しいと願う人もいる。だから俺はお前を助ける。助けて、罪と向き合う時間をくれてやる。死んで逃げるなんてさせない。お前には、また人類を守ることで罪を贖って貰う!」


「神器換装・天羽々斬」


八岐大蛇を斬ったとされる十拳剣。それが天羽々斬とされる。


その伝承から生まれた、天叢雲剣に内包される天羽々斬の能力は、浄罪。


「生きることは辛いだろう。だからこそ、それがお前の苦行になる。死ぬまで罪を贖え。そして、罪を清算したとき、初めてお前は死ぬことを許される」


魔獣としての本能だろう。レオンを殺そうと襲い掛かるが、その全てをレオンは避けている。


レオンも避けると、浅く小さな傷をつけるように天羽々斬を振るう。


同じ言葉を延々と紡ぎ、白狼に届ける。いつしか、白狼の瞳からは涙が零れ落ちていた。


神代と天羽々斬の浄罪により、魔を祓い、人々を守る神獣へと姿を戻していく。


全身は薄水色、所々に白金色が混じり、黄色の瞳は人々を照らす太陽のように輝く。


その身で夜明けを表す神狼。


暁光の白狼・暁という名に相応しい姿をしている。


「感謝する。異界からの旅人よ。すまない、私は、私の守護する地へ戻る。君に着いていくことは出来ないが、君の頼みがあれば直ぐに駆けつけよう。それが、この身を救ってくれた恩人への感謝だ」

「あぁ。それで十分だ」


約束を結び、レオンは八尺瓊勾玉を解除。


自身がいるべき場所へ帰る白狼を見送る。



迷宮を突き破り、空を駆る白狼。


響く声は涙に濡れ、けれども、どこか喜びに満ちていて、そんな彼を見守るのは、やはり夜明けの空と太陽だった。


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