第70話 日記そして厄介祓いですか?
「さて、先の攻略は任せて、ミオ、玲奈、キク、風音、凛。古本屋でなんか情報見つけた?」
古本屋に行ったメンバーを呼び、確認をとる。
「ミオ、説明お願いしていい?私レベルあげたい」
「わかった。じゃあ、アレだけ貰ってもいい?」
キクが取り出したのは1冊の本?
「1枠でそれ持ってきたの?」
「仕方ないじゃん?必要だと思ったんだもん」
「予備武器は?」
「今、優先的に作ってもらってる」
「そか。なら問題ないな?」
「うん」
キクは前線へと向かう。その途中、パーティーメンバーと合流した。
「それで?」
「とりあえずこれ読んで」
キクから受け取った本?をミオがレオンに渡す。
受け取って、内容を見ていく。
「……」
これは日記だ。これを書いた人の、天照王国を出てからの。
後悔していたのかもしれない。
次の巫女姫に選ばれた。その役目を知っていた。それが怖くなって逃げ出した。
最初の1ページにそれが書かれていた。
時折表舞台に出てくる巫女姫は、私の知る人物。私が選ばれる前から巫女姫をしていた人のまま。
私はその人の付き人をしていたから、遠目からでも、巫女姫が衰弱しているのがわかった。
無邪気に笑っていたあの顔が脳裏を過った。
私の名前を呼んで、未来の話に花を咲かせた。
いつか、一緒に外の世界を旅しようと
私は、あの方を裏切った…
そんな私が願うのはおかしいかもしれない。だけど、どうかお願いします。誰か、あの方を 巫女姫を 救ってください
涙で濡れたであろうページ。
そして、3枚紙をめくると始まる、彼女が外で見て調べた内容。
「最初の内容も驚いたが…」
そこに記される、三魔狼についての考察。
「元が神獣…」
神の代行、神の権能を一時的に宿すスキル神代も確かに反応していた。
このスキルは、変異してしまったモノを元のあるべき姿に戻す力。それが反応したということは、魔狼は変異した姿ということ…
「殺すのか、生かすのか」
どちらも可能ではある。しかし、生かす方はかなり難易度が高いだろう。
殺すつもりで戦わなければ、負けるのは自分だろう。それに、1対1という状況をずっと保てるとは思えない。
迷宮の横幅凡そ100メートル。ゴールに繋がるその全ての道が敵の湧き場所。広範囲を警戒しつつ、邪魔が入らないように排除しながら、格上に挑む。それも、殺してはならないという制限付き。
「脳が持たないな」
険しい顔付きながらも、その口元だけは笑みを浮かべる。その姿に、少しびくつきながらもミオが声をかける。
「レオン?そろそろ行かないと置いてかれるよ」
言われて顔を上げれば、確かに周囲の殲滅は終わっている。
もう既に先に進んでいるのだろう。奥の方からも戦闘音が聞こえる。
「その時になってからでいいか」
「レオン、前のはこちらでやります。貴方は、レベルあげなくていいので、追ってきた奴を程々にお願いします」
「そうだな。レオンはあまり参加しなくていいぞ。あの狼とかラスボスは参加して欲しいがな」
「了解。まぁ、後ろのは試してみたい技の練習にでもするわ」
ベルリンとシェンに言われ、レオンはあっさりと最後尾に向かう。
「ミオ、カクラ、マイはこっちでいいぞ?」
「レオンに見られたくないのあるだろ?」
「……それもそう?」
「いいんじゃないか?レオンなら一人で平気だろう」
「ん。お兄ならどうとでもなる」
パーティーチャットでレオンに別行動の旨を伝え、ミオ達は道を塞ぐモンスターの殲滅に参加する。
「さて、後ろの方もちょこちょこ来てるな」
プレイヤー達の最後尾。
通り過ぎた場所からも、モンスターはリポップするようで、既に何体かと戦闘になっている。
また湧いた
「天叢雲剣」
装備品扱いのネックレス。それを握り、チェーンを引きちぎる。
その名を呼ぶと、手の中から光が漏れだし、剣の形に変化する。
持ち手は凡そ12cm程、刀身との境に鍔と呼ばれるモノは着いていない。そのまま両刃の刀身が伸びている。刀身だけで80cm程。
「神器換装、草薙剣」
姿や気配に何も変化が起こらない。
「名称が別だから変化しないのか?いや、それなら
都牟刈太刀も…」
そう呟きながら、向かってくるモンスターの手脚を狙い、行動不能、戦闘不能に追い込む。
そうしたのを、気付いた他のプレイヤー達が倒していく。
「そういえば、どんどん先に進んでるけど、おやっさん達生産職は?」
どこを見ても生産職よ姿が見えない。スタート地点だった場所にも気配は無い。
「おい、レオン」
「ん?おやっさん?いつの間に」
呼ばれて振り返ると、探していた人物の顔が。
「今来たからな。俺たち生産組や死に戻った奴は、セーフティーエリアって言うか、こことは別の場所に飛ばされてるようだな。安全に生産できるが、攻略してる組がボスエリア到達するまでだな。到達後は俺達も弾き出されて、討伐に協力するっぽいぞ」
「へー。出現位置は任意?」
「いや、後方の安全地帯固定だ。今回の場合はお前さんの近くだな。あー、あとは、任意のプレイヤーにアイテムだけなら直接送れる」
「便利っちゃ便利だな」
会話を続けると、おやっさんが出てきた理由を知った。
なんでも、スタート直後のはずなのに、数人の死に戻りがあった。その原因の聞き込みと現状の確認の為らしい。
「へー。噂の三魔狼がねぇ」
「そっちも厄介だけど、なんかもう一体いそうなんだよ」
「三魔狼がか?」
「別の何か…恐らく人型。それも、刃物を扱うタイプか」
「その心は」
「狼の爪で切ったのだとしたら、残骸が小さすぎる。アイツの手脚や爪のサイズ的に、あれだけ細かくはできないはず」
「なるほどな。だから人型の刃物か」
そうして話していると、次はリックがやってくる。
「レオン、手伝いに来たで」
「ん?レベル上げはいいのか?」
「前は渋滞中や。なら後ろの方が稼げるやろ」
「それもそうか?」
「そうやで。前はミオさんみたいな超技術ないと稼げんわ」
「あー。射程とか無いに等しいからなアイツ」
「それに一撃の威力も高いやろ?あの人が攻撃すると一瞬で敵が倒れるんや。ワイらの移動速度じゃ間に合わん」
「…瞬攻と縮地覚える?」
「覚えたいなぁ」
そこから、レオンの講義が始まる。
「縮地ってのは、仙術の一つで地脈を縮め、距離を短くする。古武術的には体を大きく前傾させ、重力を利用して素早く移動する。なんだけど」
そう言って、レオンは縮地で移動する。
「?今のが縮地か?普通に移動しただけじゃないんか?」
「えっとね、集団戦で使う用の縮地と個人戦で使う用の二つあるんだよ」
「二つ?」
「縮地と言っていいのかわかんないんだけどね?個人用のは、相手の意識の隙間に潜り込む感じ」
「いやわからん」
「これは感覚的なもんだからなぁ。しかもこれ、多分縮地じゃないし」
「なんやねん」
「さらに言えば、このゲーム縮地スキルあるし」
「は?」
「動くなよ」
リックの傍により、腕を掴む。
「これで」
そのまま縮地で移動。リックを振り返る。
「どう?スキルでた?」
「出たけど、HPごっそり減ってるんやけど」
「まぁ無理矢理連れてったからね」
「釈然とせんわ」
「そのスキル、1レベル事に2m伸びるよ」
「つまり、初期1レベルで2m、2レベで4m、3レベで6m」
「そ。10レベで20mになって、それ以降10レベる毎に10m」
「レオンのレベルは?」
「20で止めた。他の方法いくらでもあるから」
疾風迅雷が主な技だが、他にも組み合わせ次第では、縮地と同じようなことができる。
「空間属性の魔法で相手との空間そのものを歪める。仙術に近いタイプだな」
「空間魔法なんてあるんかい。取得条件は?」
「レベル200だな」
「スキルが?」
「プレイヤー」
「お前以外おらんやん」
今の話を掲示板に書き込んでいたプレイヤーがいたようで、周囲に人が増えてきた。
「広めてよかったんか?」
「アドバンテージはあるし、一応他にも条件あったから」
「それは?」
「そっちは頑張ってくれ」
レベル上げをするために、討伐ペースがさらに上がったようだ。いい感じに敵の反応が減ってきている。
「レオン、俺はそろそろ戻る。その前に、前貸した魔導銃の方はどうだ使ってるか?」
「いや、備えとして持ってるから使う機会なかったわ」
「だろうな。てことで、試作4号だ。受け取れ」
「へー?改良進んでるんだ」
「そらそうだ。玲奈やリック達ジャックのメンバーが協力してくれてるからな」
「あ、そうなの」
「せやなぁ。銃なら幾らでも仕込めるから」
おやっさんから二丁受け取る。
「以前のより装弾数が上がってる。そのサイズだから、込められる魔力量も限界があるからな」
「限界?数値は?」
「サイズ的にはハンドガンだからな。200だ。装弾数は20」
「リロード方法は?」
「弾切れになったら勝手に魔力を吸う」
「…」
「そこが課題なんだよ。どうやって回路を切り替えるか…」
説明するだけして、色々呟きながら帰って行った
「不便じゃない?」
「撃ち切ることなんて、早々ないで?試作品だから検証兼ねて撃ち切ったんや。そしたら判明してな?」
「吸われたくなければ、仕舞えばいいのか。あとは捨てる」
「捨てたらおやっさん泣くで?」




