第59話 新たな頂きそして休み
「ここは…何も無い?」
気がつくとレオンは、何も無い真っ白な空間にいた。
「装備はそのまんま。インベントリの中身も残ってる」
「音は…響いてるな。空気はある。水の音はしないな。他の生物の気配もない。マジでここはどこだ」
「とりあえずもっと深く探るか」
意識を研ぎ澄まし、広げた魔力から返ってくる反応を探る。
「……少しズレてるが、魔力が途切れた……てことは、この感じ円形の壁があるな。魔力が反射しなかったってことは、魔力を吸収するか限界距離になったかだな」
ズレているというのは、四方から返ってきた反応がズレているということ。今立っているのは、円形の中心ではないことがわかった。
直径4キロを魔力で探れたとして、目視できるのは精々が1キロちょっとだろう。何も無い空間だと、逆に距離を掴みにくいこともあるが。
「ただ閉じ込めるだけの物か?それだけならあんまヤバい感じはしないと思うんだが」
色々とインベントリやステータスをいじっていると、ふと目に付いた。ログアウト消えてね?
「ちょ、待って?ログアウト出来ないの?マジで?それはまずい。ほんとまずい……焦っても仕方ない。とりあえず」
焦りそうになるのを落ち着かせる
刀を構え呼吸を整え意識を集中
「界断」
魔力が途切れた場所が限界とするなら、ここは一種の結界だ。巻物が媒体で触れた者を閉じ込める為の。なら、一度認識した以上レオンに斬れないことは無い。
「……次は魔物かよ」
何かを断ち切った感覚はしたが、次の瞬間には魔物の反応が多数。
数で言うなら厄災戦と同じかそれ以上。
「死ぬまで頑張りますか」
紅い月が浮かび、血の鬼や狼、刀や剣に槍といった軍勢がレオンを囲む。
「トニー、リジ、シド、ヴェルウェナ。暴れていいぞ」
スキルが使えるなら使役獣も呼べる。
早霧に宿る神格を鬼に移し、鬼全体の統括を任せる。
使役獣達は各々で敵を倒していく。
血で出来た武器が宙を舞い、縦横無尽に敵を傷付けていく。
そして、流れ出た血から新しい眷属や武器が生み出される。
「……」
レオンは目を閉じ、何かを探っている。
さっき感じたでかい気配が無い…倒したわけじゃない。消えたと考えるべきか?いや、俺が感知できない何があると考えるか?
そう考えていると、全身を駆け抜けた警鐘に従い、身を伏せる
何が頭上を通り過ぎた気配。それと同時、四方から何が飛来する気配を掴む。
即座に体勢を整え、刀で迎撃しようとして失敗する。
驚くと同時、咄嗟に身を捻って四つの射線から逃れる。
次に、首、腰、膝辺りに気配を感じ、跳躍して回避。その際に刀をぶつけようとしたが、すり抜けてしまった。
「防御できない?」
次に飛来した気配に、血刀をぶつけて相殺を試みるが失敗。
「回避するしかないのか」
時間が経つにつれ、攻撃の鋭さが増し、攻撃の間隔が短くなる。
一つを避けたと思ったら、避けた先に三つ
それを避けたらその先に更に四つ
それも避けると更に
といった具合にどんどん躱すのが難しくなっている
「いや、さすがに、きつい!」
どれぐらい続けているのか分からないが、相当やっているだろう。なにせ、珍しく息を荒くしているのだから
「くっ…そ。ハァ、呼吸がンッ」
徐々に攻撃が掠るようになってきた
「スゥ、ハァ、スゥ、ハァ」
無理矢理呼吸を整えようとするが、休むことの出来ない環境で、それも上手くいかない。
「やべ」
ついに、集中が途切れた瞬間に受けた攻撃で姿勢を崩す
そこに襲いかかる数々の攻撃
それを視界に捉え
唐突にレオンはその隙間を認識した
「そこか」
無視できる攻撃は受けながら、その隙間を辿って行く
攻撃全ては必ず同じでは無い。タイミングに若干のバラツキがあるなら、その隙間を掴めば!
自分が新たに身に付けたその技術に、レオンの思考はさらに深く研ぎ澄まされる
どれだけ細く小さな隙間でも、今のレオンはそこを通って回避していく
攻撃を全て回避できるようになると、レオンは目を閉じて、回避し始める。最初は攻撃が当たるが、それも徐々に無くなる
それを続けていると、攻撃の気配が変わった。今までは漠然と攻撃の気配がしたが、今はちゃんと形を持っている。
「魔物」
気配的にはゴブリンやウルフ、オークにオーガ、空にはワイバーンまで。
それらの攻撃を避けながら、刀を振るう
今度はちゃんと敵を斬った感触が伝わってくる
「いい鍛錬だ」
絶え間なく襲いかかる魔物の攻撃を最小限の動きで回避。無駄のない動きで反撃に繋げる
こうしていると、今までの自分の動きには、まだ無駄があったと理解出来る
避けた際の重心移動に僅かなブレがあった
刀を振るった際の脇の締めが少し緩かった
避けるときの体勢が次に繋げ難いものだった
避けた時の力を利用した反撃は、力を入れすぎていた。もっと少ない力で反撃できた
一つ一つ無駄を削ぎ落とし、敵の動きを予想できるようになった。
「韋駄天」
未来予知とも言える程、正確に捉えたルートは、レオンの想像した通り敵を斬っていた
プレイヤーレオン
『開眼・箱庭の瞳』
自身を囲む一定の範囲全てを知覚できる
至った人物によって範囲は様々だが、この男は範囲を狭めることで精度を高めた
スキル制限は一日一度。使用後は任意のタイミングで解除可能。最大時間は10時間。それ以上は、現実に影響有り
『一心同体・刀』
如何なる状態であっても、万全の状態と変わらぬ動きができる。
刀を持っている間は、刀も身体の一部となり、思うがままに振るうことが出来る。
ログが流れると同時、閉じているはずのレオンの視界が白く染まり、景色が切り替わった
「……戻ったか」
箱庭の瞳が発動している今、先程までいた空間とは変わって、王の間に戻ってきたのがわかった。目を開ければ、記憶が正しければ少しも姿勢が変わっていないワルドワ達が目に入る
「どれくらいだ?」
「い、いえ、本当に一瞬でした。倒れ込んだと思った次の瞬間に姿が消えて、また次の瞬間元の姿勢で現れました」
時間を確認するが、全く変わっていない
「そうか。王様、この箱は下手に触れない方がいい。扱いに困るなら、こちらで引き取るが?」
「……わかった。貴殿に譲ろう。代わりに、何があったか教えて欲しい」
箱をインベントリに仕舞いながら、先程体験したことを話し、それが終わるとクランホームへ戻りログアウトする。
「時間はセーフだな」
身体を伸ばし、軽く動かす。やはり、途中で体を動かしたとは言え、凝り固まるのはしょうがない
パジャマから運動着へ着替えて庭に出る。途中で澪達と朝の挨拶を交わして、外にいることを伝える。
澪は朝食を用意しにキッチン
舞は朝風呂をする為に風呂のお湯張り。その後庭に来てレオンと鍛錬
神楽も着替えてから庭に出てきてレオンに付き合う
そうして時間を潰し、何があったかの情報共有をしてから、登校の時間。
道中、クラスメイトと出会いながら学校へ辿り着く。
終業式はこれといった出来事はなく、予想よりすこし早く終わり、教室では長期休暇の間の宿題を受け取ったり、注意事項を聞かされた。
こちらも時間が余ったが、昨日参加できなかったメンバーと情報を共有。時間になると皆帰宅する
明日から夏休みに突入する。部活も、ゲーム部とかいう新しい部活を作り、家からでも参加できるようにした為、ゲームやり放題。
部員は「解放者」に所属している人。顧問は亜美先生、海堂先生、万丈先生だ。
帰ったら食材や日用品を買い足しに出かけて、明日からの休みに備えよう




