第53話 マナと魔力そしてレオン
1週間も経てば、多くのプレイヤーがドワーフの都市へ辿り着くことが出来た。
地下都市に辿り着けたプレイヤーは多くはなかったが、地上都市の方は殆どのプレイヤーが到達した。
そして、「解放者」からの情報提供によって判明した魔物の発生源を攻略する為のレイドや一時的同盟が多く発生。地上都市周辺は瞬く間に普段の生態系を取り戻した。
一方、地下都市周辺は未だに複数の発生源、魔門が残っていた。
1度、メンバーを総動員してレオン達「解放者」が魔門を全て制圧したのだが、数時間後にはまた別の箇所に出現。
現状はある程度の間引きをするに留めている状況だ。
そして、今日は事前に告知していた、アトラルカによるマナと魔力の違いを説明する日。
「出席率は?」
「八割ほどですね」
「残りの二割は?」
「部活、攻略、見回り組です」
「後でクラン板に纏めといて。復習しやすいように」
「了解です」
傍に控える凛と会話を終え、用意されている壇上へ向かう。
何をどうやったのか、訓練場が一晩で講義が行えるホールとなっていた。
「全員注目!」
声を出し、全員の注目を集める。
「今日は、告知通りマナと魔力の違いを俺の契約精霊アトラルカに説明してもらう。質問は、ある程度区切りの着いたタイミングで行う。なので最初はしっかり聞いてくれ。んじゃアトラルカ」
「うむ。我が主の契約精霊にして、精霊王の一柱、星幽龍精霊のアトラルカだ。本日はよろしく頼む」
実体で召喚すると、クランホームそのものが潰れるので、今は最小サイズの霊体で召喚している。
アトラルカに壇上を譲り、その少し横でレオンも聞く姿勢をとる。
マナと魔力だが、現状プレイヤー達が認識しているのは、名称の違い程度。
「さて、マナと魔力の違いだが、名称だけではない。そもそも、名称を分けているのだから理由があるに決まっている」
パッと後ろのホワイトボードに映し出される図。
1人の人間とマナと魔力と書かれた円。
「まずマナとは、自然界に存在し、術式を用いれば、誰でも扱えるエネルギーの事だ。マナには上限というものが無い。戦争に置いて、魔術式が重宝される理由がそれだ。上限が無いということは、いくらでもマナを術式に込めることができる。時間と手間は掛かるが、術式の方が複雑な効果を得られるのはそれが理由だ」
「次に魔力だが、これは人間、いや、人種全てに言えることだ。マナを身体に取り込み、それを己が使いやすいように変換したのが魔力と言う。魔術回路というものが存在すれば、体外のマナをそのまま扱う事が出来るが、その回路を持っている種族は少ない」
人種に分類されるのは、人間、獣人、森人、土人、竜人、鬼人、魔人、小人、天使、翼氏、吸血鬼だ。
人種に分類されないのが、龍種、精霊、太古の五龍。
「さて、ここでちょっとした豆知識だ。人種は基本魔術回路を持っていないが、その例外が存在する。それはどの種族だと思う?」
クランメンバーが近くのやつと相談し始めるが、そこまで難しい話では無い。なんせ、その答えがこの場にいるのだから。
「その例外って何種いるんですか?」
「二種だ」
その答えで、ある程度絞れたようだ。
「さて、誰に聞いてみようか。主よ、選べ」
「あいあい。んー…風音と万里」
その2人を選んだのは適当だ。目が合ったからとも言う。
「私はそうね…魔人と吸血鬼だと思うわ」
「僕は、竜人と森人かなと」
「だってアトラルカ」
「風音と言ったか?吸血鬼は正解だ。万里の方はどちらも不正解だ」
どよめきが起こる。予想していない答えだったのだろうな。
「アトラルカ、正解は吸血鬼と天使だろ?」
「その通りだ主。天使の魔術回路は翼にある。翼そのものが魔術回路と言っても過言ではない。吸血鬼は、存在そのものが魔術回路というかなんというか…」
「ハッキリしないな。分からないのか?」
「いや、吸血鬼本人にわかっていて欲しかったのだが?」
吸血鬼そのものが魔術回路?…
「もしかして、血の生成や血の操作ができるのって魔術回路のおかげ?」
「そういうことになるか。その辺は古の時代より解明されていないのだが、吸血鬼には魔術回路が備わっているらしい」
「体外の血をコントロールするなんて普通は無理。それを可能にしているのが魔術回路…血刀」
いつものように傷を付け血を流す。血刀に形を変えて、魔力、マナが働いているかを確認する。
「マジだ。僅かに魔力の反応がある」
「魔力の反応なのか?」
「多分魔術回路ってのは、外のマナを体内に取り込むこと無く魔力に変換して活用する器官なんじゃ」
「そういうことなら、魔人とか森人も回路ありそうだけど?」
「魔人は魔術回路は持ってない。奴らは、その性質上多くの魔力を扱える。体内に取り込める量が多いだけだ。森人は、基本的に精霊と契約しているため、取り込める量は少ない。今の森人がどうかは知らんぞ」
「さて、ここまでで聞きたいことはあるか?」
脱線してしまった話を元に戻す。
区切りが着いたので質疑応答だ。
「マナを取り込むって、一体どこから?」
「マナは身体を透過し、身体に馴染む。人が生きるのに酸素を必要とするだろう?あれと同じだ。呼吸でも取り込めるし、その場にいるだけでも取り込める。そして、不思議なことにマナは一人一人の上限を超えて集まることは無い」
「異界人風に言うと、魔力を使い切ると時間経過で徐々に戻る。これは、魔力が無くなった生物の中にマナが入っていくからだ。そして、魔力が一杯になれば、マナは中を漂うだけ。上限を超えてマナを取り込むと、こうなる」
そう言って、アトラルカがレオンに魔力を過剰に循環させる。
「こういったように、目や口、耳といった外に繋がる器官から排出される」
「マナが魔力になるのはわかりました。ではその逆は?今のレオンの状態だと、魔力が排出されているのでは?」
「いい質問だ。この状態のレオンは確かに余剰魔力を排出している。マナが常に体内に送られ、魔力に変換、余剰魔力を排出の繰り返しだからな。しかし、我の能力で魔力をマナに変えている為、レオンから排出された魔力はその場でマナに変わる」
「つまり、貴方の能力を使っているレオンは魔力が尽きない?」
「そうなる。主は永久機関と称していた」
それはそうだろう。世界に満ちるマナというエネルギーから、異界人が戦う上で必要な魔力、体力を変換し供給。余剰魔力はマナに変換することが可能。最大級の精霊であるから、ロスもなく変換可能。正しく永久機関だ。
「少しズレるのですが、貴方の他にマナを魔力に変換できる精霊はいるのでしょうか?」
「いない…いや、似たような能力はいる。精霊王がそうだな。攻撃を喰らい、それをマナへと変換する。もう一人は…魔法、術式の分解だな」
その後もちょっとした疑問が上がり、アトラルカが解説していき、質問が尽きてきた。
「さて。マナと魔力の違いはこれであらかた説明が終わった。質問ももうないようだし終わるか?」
「せっかくだし、精霊契約の話したら?」
横から声がし振り向けば、そこにはマイの契約精霊の
「ネア?」
「主達ばかり不公平でしょう?」
「まぁ説明はいいが、精霊石って手に入るのか?」
「最近、貴方と異界人の催しがあったでしょう?」
「俺対参加プレイヤーのあれな」
「あれってポイント交換できるの知ってるかしら?」
「えっ」
まさかの情報である。ポイント交換の話は巫女姫からも聞いていない
「どこで交換が?」
「えっと、異界人に分かりやすく言うなら、オプションからお知らせ、イベントページかしら?」
「あ、ほんとだ」
「そのページに多分、????の石って言うのがあるのね。それ、精霊契約の石って言うの」
「つまり精霊石か」
「ただ、そこまで純度は高くないから、精々が上級精霊ね」
必要ポイントもそこそこで交換できるからか、純度は低いらしい。
純度は高いほど上位の精霊と契約できるからな。
「らしいぞ?精霊魔法については…確か掲示板に載っけてたな」
話を聞いて、その場の全員が精霊石を交換。誰がその話を掲示板に流したのか、攻略板の流れが加速したようだ。
「ネア、教えても大丈夫だったの?」
「大丈夫よ。それに」
「教えた程度で、主達のアドバンテージは失われないでしょ?ってお姉様は言いたいの」
「アドバンテージ?」
「そうだ。主達には我々王級、超級が付くだろう?」
「しかし、今回の石では上級と契約出来れば上々」
「上級と王級では、力の差が歴然。私達、これでも上級相手なら無傷で勝てるのよ?」
精霊契約に伴い、その場で一応の精霊魔法の説明が行われ、幹部以外は解散。
場所を変え、もう一つの議題に移る。
「レオンに関してって何があったの?」
率直に聞くのはミオ。基本的に大人しめの性格な為、こういった場の進行役に昔から選ばれるのだ。
「レオンの口から」
凛が全員の視線をレオンに向けさせる。
「説明難しいんだけど?」
少し考え、レオンは全員に「抜刀・極至」のスキル説明を見せながら、獲得に至った経緯と今回の発端を話し始める。
Exダンジョンの話しは、少し端折りながら説明し、魔物の発生源の話は時折、玲奈や凛、リックから補足が入りながら説明していく。
「そのアーツ?スキル?の射程は」
「俺が認識できる範囲だな。心月と変わらない。魔力で拡張はできそうだが」
「威力は?」
「ダメージが入るような敵と戦ったことないからわかんない」
「使用条件とかは?」
「特にないかな?ただ、それなりの集中が必要かな」
「取得条件は?」
「俺レベルに刀極めないとかな?」
「極って他にも?」
「あるっぽい。斬る事の極、抜刀の極、観察眼の極、身体制御の極かな?」
「それってどうゆうの?」
「わかんないけど、抜刀の方は何となくわかるかも」
「それは?」
「抜刀ってさ、視認困難ではあるけど、視認可能なのよ。それを極めると視認不可になるんだけど、その先にある極地、自身の影すらも追い付けない抜刀の極。俺の親が言うには抜刀術・越影」
「他は?」
「いや知らん。そもそも残りの二つに名前とかあるのか?」
「千里眼とか…身体制御はわからん」
それからもう少しだけ情報共有をして、実際にレオンのバグり具合を見せる為に、発生源を一つ潰しに向かった。




