第50話 成長そして例外
「おやっさん!スマンが俺達は落ちるぞ」
一向に終わる気配がしないので、今日は終わりにすることに。
洞窟を抜けてここまで来るのに、現実で丸々1日を使っている。都度ログアウトして休憩を挟んでいたが、休憩はほんの僅か。先も言ったが、リアルが疎かになっている。
「...聞こえて無さそうだ。ワルドワ、こっちに気づいた時にでも伝えといてくれ」
「分かりました」
ここに来るまでに、ポータルの解放は終わっている。
なので何時でもここに来ることが可能だ。
クランホームに戻り、洞窟内で入手した素材を整理して、ログアウトする。
「日が昇り始めた頃か」
カーテンの隙間から射し込む光に目を細める。
「身体動かすか」
服を着替え、運動のしやすい恰好へ。
部屋を出ると、ムーや澪とすれ違う。
どうやら2人で風呂に入っていたようだ。
「少し外に出てる。なんかあったら声掛けてくれ」
外にいることを伝え、木刀とタオルと飲み物を持って外に出る。
「......」
準備運動をせず、木刀を手に瞑想する。
やろうとしてるのは、ゲーム内でやっていた魔力反応による索敵。
表の世界では意味を持たないが、感覚を掴むには丁度いい。
「何せ、こっちでは魔力に反応できる人間がいないからな」
ゲームでは、感知が育っていれば魔力反応を感じることができるらしい。
「とりあえず、どこまでイケるかチャレンジだな」
感覚を研ぎ澄まし、限界を探る。
「...最大2kmか。なら、この距離くらい難なく出来るように練習だな」
玲音は最大2kmと言ったが、半径の最大、が正しい。つまり、直径で4kmが玲音の感知範囲となる。
ただ、この距離を感知するのにかなり集中しなければいけないので、無防備になるのだ。それを避けるため、そこそこの集中で感知できるようにしようと言う。
「さ、次だ」
左の腰に手を当て、輪を作る。そこに木刀を差し、鞘があると意識する。
「スゥー」
息を吸い、吐き出し、感覚を更に研ぎ澄ます。
ゆっくりと抜刀。流れを止めることなく納刀。
抜刀の速度を上げ、また納刀。更に速度をあげる。それを繰り返すうち、振り抜かれた刀身が視認出来ない程になる。
次に、そこへ動きを加えていく。
鞘の位置を腰から胴の横辺り。感覚でベストポジションへ。
抜刀、横薙ぎに振り抜き、納刀。
納刀の際位置を低く、再度抜刀する。袈裟懸けの軌道を逆から擦るように振り上げ、そのまま翻り袈裟懸けに
柄を手の中で回転させ、鋒が鞘の方を向き、刃が上を向く。
納刀する際に持ち手を元に戻し、斜め上に飛びながら前へ。
空中で姿勢を制御し抜刀、身体を縦に回転させ、遠心力を乗せた一刀を振り下ろす。
バックステップで距離を取り、納刀を済ませる。
納刀位置は腰より少し上。刃は外側を向くようにして待機。そうすることで、今の動きをもう一度繰り返す。
無理だろ、と思う動きだとしても、そもそもレオンは常人では無い。人外である。人には無理な動きができても不思議では無い。
「雷をその身に受けても平気なんです。今更ですよね」
「ん?ムー、いたのか」
「はい。たまには貴方の成長を確認しておこうと」
ムーに気付いてレオンは木刀を置き、飲み物を手に取り休憩に入る。
「俺の成長っていうのは、技術的な?それとも、そっち側の話?」
「その両方ではあります。3:7ですかね」
「そんなに後者の方が大事?」
「レオンに与えられるであろう役目的に、技術はあまり要らないんです」
「役目の力が強いタイプか」
「はい。ですので、早くこちら側に来ていただきたいと」
「っても、よくわかんねぇよ」
今のレオンを区別するなら、外なる者だろうか?
世界の理に縛られない存在になってはいるが、そこ止まりだ。
レオンの生まれ故郷の星で神の加護を覚醒させた時に、レオンは加護を授けた神々を超えている。
格で言えば、ムーの次くらいになる。
「心月」「極至」を習得し、少しは近付いたと思っていたが、実際そんなことはなく、余計にこの先というのがわからなくなっている。
「人の理から外れ、世界の理すらも越えた先。そこへ辿り着く方法は存在するのかね」
レオンは外なる者の中でも特殊な方だ。
『外なる神』…ニャルラトホテプ、ヨグソトース、アザトース、クゥトゥグア、クトゥルフ等、次元の管理者達
ムー、グレーゴル等、惑星の管理者達
『内なる神』…惑星の管理者によって生み出された神々
外なる神は自然に発生し昇華、初めから神としての役割を持つ。
内なる神は外なる神によって役割を与えられることによって発生。
レオンは人と吸血鬼の間に産まれた人だ。自然発生したわけではない。神としての役割も持たない。
どちらの条件も満たないため、レオンが『外なる神』になる条件が不明。
「そもそも、外なる神、者って空想の存在だと思われてたわけで。未だに信じられねぇよ」
「いや、実際存在してますし、貴方も立派な一員ですよ。信じなさい」
これ以降、特にこれと言った会話は無く、玲音の鍛錬をムーが静かに見つめる時間が流れて行った。




