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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
49/111

第48話 ドワーフそしてまた異変


「まぁそういうわけだ。色々とすまん」


天照王国の王城にて、レオンと巫女姫が向かい合って座っている。


周囲にはミオ、カクラ、マイ、リック、おやっさん、宰相。


クランホーム増築に伴う報告と共に噂についての説明に来ていた。


「なるほど。異界人を標的にした異界人の暗殺者ですか...」

「いるとは聞いておりましたが、こうも表に顔を出してよろしいのですかな?」


宰相が言うのは、リックのことだろう。

『ジャック』のクランマスターで『ハロウィン』のクランマスターでもある彼は、『ハロウィン』のマスターとしてかなり有名になっている。


「そこはまぁほら。やり方があるんで」


企業秘密や、と笑ってみせるリック。

敵でないなら、と受け入れる面々。同盟に加入させた理由もメリットも既に説明がされており、納得はしている。


「ほんとすまんな」

「ほんとに悪いと思ってます?いや、何も悪いことはしてないんですけども」

「ところでレオン。いつになったら攻略とやらを再開するのですかな?」

「あー」

「魔の森を抜けた先には帝国。転国の北に土人の都市、距離は遠いですが南に森人の国。異界人が辿り着いたと報告はないのですが?」


情報やるからさっさと消えろ。みたいな念を感じる。


「みたい、ではありません。早く行きなさい」

「俺一応この国の守護四傑なんだけど?」

「別に貴方が居なくとも、ここを拠点にする異界人は沢山いるでしょう。何かあれば依頼でも出すので」


転国と天照王国を拠点にしているプレイヤーは多い。海国と神国を拠点にしているプレイヤーもいるが、割合的に多くはない。海国と神国はかなり近くにある代わりに、天照王国との距離が離れている。

現状、海国の先には進めず、神国も同様先に進めない。今の情報からして、今進めるのは帝国、土人国、森人国の三国。

なんというか...地盤を固めろと言わんばかりの情報の出し方だ。


「巫女姫、宰相、今一番最初に仲良くなっときたいのはどこの国だ?」

「...」


レオンは国同士の水面下の戦いを察知している。


「一番嫌なのは帝国だろう。とすると残り二つだが...」


レオンが探るような目を向ける。


「異界人のおかげでポーションという回復用アイテムが出回り、蘇生薬も少しずつ出ている。昔からその手の薬は森人...エルフから買っていたようだが、仲悪いだろ?一方的にだろうけど」


数少ない資料やこの世界に住む冒険者達に聴き込んだ成果である。


「なら、先にドワーフと同盟なり結んでおきたい。とか?」

「...流石レオン。お願いできますかな?」

「最初からそう言えって。ドワーフの国までどれくらいだ?」

「解放者の攻略速度で言うなら3日から5日。レオン単身で抜けるなら2日です」

「その理由は?」

「レオンは視界が無くとも問題はありませんよね?」

「ん?まぁ」

「しかし、他の異界人はそうはいきませんよね?視界を確保する為に魔法を使うと思います。松明等の選択肢もありますが、どれもコストが高いです。魔力を使えば、攻略に問題が生じる可能性。松明で手が塞がれば、それこそ問題になる可能性も」

「...なるほど。つまり、北に行くと洞窟や地下を通ることになると?」

「そうです」

「ふむ」


レオンが巫女姫と会話している間に、ミオ、カクラ、マイ、リック、おやっさんはクランチャットで解放者全体に情報共有。可能な限り準備を進めさせる。


「...出現する魔物の情報とかは?」

「ロックリザード、ゴブリン、フライングバット、アシッドスライム、ミニゴーレムが主な魔物です。レベルも50から70と高め。稀にロックデビルという魔物が出現するそうですが、姿形は不明。能力は石化しか判明していません。エリアボスはフライングロックリザード。ワイバーン種と呼ばれる、災害指定Cランクの魔物です」


災害指定...一定以上の脅威度の魔物に対して定められたランク。

ゴブリンやウルフ種、スライムといった、単体なら多少の知識がある者なら倒せる魔物はFランク。

しかし、ゴブリンとウルフ種は群れの規模によって災害指定ランクがCまで上がる。


Eランクに分類されるのはスケルトンやゾンビ、マウントボア等、一定以上の経験を持たないと倒すのが厳しい魔物。


Dランクには、ゴブリンやウルフの上位種、オークやオーガが分類される。


Cランクは先程言ったように、ゴブリンやウルフの群れ、リザード系やゴーレム、ワイバーン種、オークやオーガの一個小隊が分類される。


Bランクは、ゴブリンやウルフの上位種の群れ、オークやオーガの群れ、ロックデビル等が分類される。


Aランクは、コカトリス、ジャイアントサーペント、キングスクワーム、ビックコックロッチ等大型の魔物。


常人では討伐困難なランクとしてSランク。ノーライフキング、シーサペント、クラーケン、シャイニングラビット、イリュージョンフラワー等。


正しく災害級SSランク、七つの厄災、古龍、キマイラ、キャッスルゴーレム等


「...パーティーは6人だったな...必ず12人で行動させ、エリアボス突入は24人の4パーティーにさせるように。ミオ、カクラ、マイ、風音、凛、リック、おやっさん、玲奈、クヌギ、アミュー、以上のメンバーは1時間後に転国北の街ホクトに集合。これより前線攻略を開始する」


素早く行動方針を立て、必要な指示を出す。


レオンが風音を連れていくのは、いち早くドワーフの国の情報を得るため。おやっさんも近い理由での同行だ。リック、凛、玲奈、クヌギはその二人の護衛。アミューは全体の回復役として同行する。


「他のところはシェンやカイドウ、ベルリンが上手くやってくれる。俺たちは俺たちの仕事に集中するぞ」


ドワーフの国との友好条約締結。

これが巫女姫からレオン達『解放者』への依頼。

細かくするとレオンに対する依頼なのだが、報酬独り占めもアレなので、クラン全体への依頼とした。


「それではレオン。お願いします」

「任された」


王城を後にし、クランホームへ戻る。



「おやっさん!」

「デカい声出すな!わかっとる確認のために研いでるとこだ。これが終わればメンテ終了いつでも行ける」

「それが終わったら自分の支度も忘れないでくれよ?」

「わーっとる」


赤椿を除く武具は全て自分でメンテナンスができるので、確認が必要なのはおやっさんに預けた赤椿だけ。


「基本的に神器はメンテナンス不要だからなぁ」

「お前さんは赤椿があるが、お前さんのパーティーの利用頻度がな」

「仕方ない。あの三人は神器が馴染み過ぎてるんだ」


ミオ、カクラ、マイの三人は神器である武器一本しか持っていない。

以前はおやっさんや万事屋製の武器を使っていたが、カクラとマイは武器の扱い方が少々特殊な為、消耗が激しくコストがかかりすぎるのだ。しかし、神器であればそのデメリットを無視できる。

ミオの場合は...ちょくちょく大技を使い、武器への負担がかかるのだ。更に最近のミオは矢を持たない。魔法で形成した矢を放つので必要ないのだ。


そういう理由で、レオン以外は鍛冶屋に用が無く、更にレオン含めてポーション等を販売する雑貨屋、薬屋にも殆ど用が無い。


「おやっさん、私の暗器揃ってる?」

「ん?玲奈か。用意は出来とる。暗器とは別で要望の合った小太刀と試作品ではあるが、魔力銃だ」

「ありがとう。魔力銃の弾倉は?」

「八発。魔力が弾だからな、マガジンの交換は要らねぇ。問題は魔力の変換効率と伝導率の低さだ」

「そこは工夫してみる」

「こっちも改良は重ねてくから、色々意見を頼む。なんならレオンにも渡すから試してくれ」

「ほーん。なら、3つくれ」

「あ?いいけどなんで」

「俺用二丁、マイに一丁」

「使えるのか?」

「まぁ」

「わかった」


マイ用の魔力銃も受け取り、レオンは玲奈と一緒に外へ出る。


「小太刀って使えるのか?」

「う〜んまぁなんとか?レオンが刀使うとこよく見てるし、最近覚え始めた」

「スキルはどうなんだ?」

「刀からの派生であるみたい?確定じゃないみたい」

「そりゃそうか。現状刀スキルの最大レベルは俺だしな。しかも俺は抜刀術だし」

「派生するレベルは?」

「いやわからん。俺の場合、最初から抜刀術使って、スキル生えたから」

「そういえば、リアルで使えるんだっけ?」

「まぁ、そこそこな」

「なら、使ってればそのうち覚えるかな?」

「覚えるだろ。俺も最近二刀流スキル覚えれるようになってたし」


早霧と村雨の二刀流をボス相手に使っていたので、いつの間にか習得可能になっていた。


「必要なら稽古つけれるから言ってくれ」

「助かる。必要になったら頼む」


二人揃って北の街ホクトに転移する。

おやっさん以外のメンバーは既に揃っているようだ。


「おやっさんもじきに来る。先にパーティーを組むぞ。ミオ、カクラ、マイはいつも通り俺と。風音と凛もこっちだ。リック、アミュー、クヌギ、玲奈、おやっさんでパーティーを」


特にバランスとかを考えないで振り分ける。


「洞窟内では明かりを誰かに頼むと思うが...まぁアミューかミオだな」

「私がやるよ。アミューは回復の為に温存した方が良さそうだし。私は...レオンが何とかするだろうから問題無さそう」

「そうだな。前衛は俺一人で他は中衛後衛。俺への援護は最低限で非戦闘員の護衛優先」


各員の動きや役目、報酬の分配等を話し合いながらおやっさん到着を待ち、来たらホクトの北門を出てドワーフの国へ通じる道を進んでいく。



「この辺はまだ洞窟内じゃないから問題ないな。ミオ、この先はどうだ?」

「直線上に敵は居ないよ。木々や草むらに隠れてるのは分からないけど」

「鷹の目と遠見に索敵のスキル乗せられないのか?」

「ちょっと難しそう。でも、練習すればいけるかな」

「そうか。なら俺がやるか」


ミオの鷹の目と遠見で直線上は問題ないと判断。周辺の索敵の為に、魔力を薄く伸ばし、魔力反応があれば、鑑定看破を重ねていく。


「...反応が無い?」

「魔物がいないってこと?」

「魔力反応はあるが魔物じゃない...?反応が小さくて判断がつかない」


微妙に動いてるのを見ると、魔力を持った草が揺れている可能性、擬態している魔物の可能性、超小型の何かの三択か...


「俺が先行する。距離を開けて周囲の警戒をしながら来てくれ。疾風迅雷」


レオンが道を駆け抜ける。

魔力反応があった地点を通り過ぎ、その反応の正体を目にする。


「警戒はしておいてくれ!代わりに、この魔力反応は問題なしだ!」


距離の空いた仲間にそう伝え、ソレを手に取る。


「...鑑定...魔草か。ありそうで見つかってなかったやつだな。これ無しでポーションや蘇生薬作ってたのか...どうやったんだ生産職」


魔草...魔力を多く含んでいる。薬師が薬を作るのに必須の薬草。そのまま食べても魔力が若干回復する。

方法によって、回復薬、魔力回復薬、魔力強化薬、精力剤等多種多様な薬に変化する。


「余裕があったら魔草の採取頼む。おやっさんとこの薬師欲しがるだろ」

「おう。助かるぜ」


道すがら魔草を採取し、魔物に会うこと無く洞窟の入口に辿り着いた。


「ミオ、俺の方は気にしなくていいから、他のメンバーの為に明かりを頼む」

「了解。前じゃなくてレオンの後ろ辺りに出しとくね」

「早霧、村雨、天叢雲...そして赤椿・紅花(べにばな)


いつも通り。腰に刀を引っさげて、洞窟へと一歩踏み出す。


「そういや、あいつの防具は誰が作ったんだ?」


レオンの後を追いながら、リックがふとしたように尋ねる。


「防具?あー着流しじゃない方?」

「あぁ。おやっさん作じゃなさそうだし...」

「アレな。アレはレオンが創ったのさ」

「レオンが?」

「月影と同じく、魔力でやったらしい。そのせいか、月影専用防具になったとかで、月影装備すると強制的に防具が変わるらしい」


こんな呑気に会話しているが、先頭のレオンは絶賛戦闘中である。


洞窟に侵入して直ぐ魔物の歓迎を受けた。

その後も高頻度で魔物が出現している。まぁ、レオンがうち漏らすことなんて滅多にないのだが。


「攻略優先なら俺一人で無双してもいいんだが...」

「エリアボスで出番あるだろうから」

「ボスエリアまでよろしく!」

「了解!血操術・鳳仙禍、血泉・火縄」


道中を完全に任されたことで、レオンは無双を開始する。


レオン取り囲むようにして現れた火縄銃は、1発撃つと次の列。1発撃つと次の列。を繰り返し、延々と血の弾丸を撃ち続ける。

更に隙間を埋めるようにして血刀が射出される。この血刀も途切れること無く隙間を埋めていく。


出現したそばから血の弾丸と血の刀に撃たれ、魔物は何も出来ずに倒れていく。

たまにレオン達の後方にスポーンすることがあるが、その対処も抜かりない。血刀が数本待機しており、危険を察知すると自動で迎撃するのだ。更に言えば、マイの結界があるため問題は無い。


特に分かれ道なども無く、あっという間にボスエリアに到達した。



「バフはいる?」

「俺はいらない」

「私もいらないな」

「私は自分でなんとかできるよ」

「ん。私もどちらかと言えば支援する側だからいらない」

「こっちのパーティーは私と凛だけじゃない?」


アミューの質問にそれぞれ答えるが、レオンパーティーの方はバフがほとんどいらない。

アミューパーティーの方は、そこそこにバフを重ねて準備完了。


「んじゃ、ワイバーン種ご対面といこうか!」


洞窟内なのか疑わしくなるような巨大な広間。そこへ一歩踏み出すと...


「瞬攻、破刃、血泉・縛鎖血刃」


リスキルを狙ってきたフライングロックリザードの後脚を弾き、ロックリザードの拘束を狙う。


「ギャァァァアァァ」


そんなに痛かったのだろうか?HPはあまり減ってないように見えるが?


「いや、あれがあいつの咆哮?なんじゃない?」

「なるほど」


また上へ戻ろうとするワイバーンにミオ、カクラ、玲奈、リックから魔法や矢、投擲武器等が飛んでいく。


「羽...翼か?まぁどっちでもいい」

「いや翼でしょ」

「...翼落とすか」


翼の部位破壊を狙いに動く。


「月影の方がいいか?いや、アカバネ・シャープエッジ、チャージブレイド。テンライ、ライトニング、チャージボルト」

「「おう」」


赤椿に精霊の強化魔法を乗せる。チャージブレイドの効果を高めるため、まだ抜刀しない。


「レオン、アトラルカ使わないの?」

「あいつ使うとここも俺一人で足りるからなぁ」

「あぁ」

「道中は無双するために循環させまくったけど、コイツは全員でヤるだろ?だから、アトラルカの支援は最低限にしてるんだよ」


アトラルカの力を全開にすれば、無限の魔力と血液によるゴリ押しが可能となる。

パーティー皆で攻略するなら、それは不要だろう。レオン、協調性はある方なのだ。


「レオン、そろそろ翼落としてくれる?」

「了解。10秒足止めよろしく」


仲間とワイバーンから距離を取り、前傾姿勢で抜刀の構えをとる。


「命有りて、我、人の生を全うする」


詠唱と共に鯉口に親指を当て、少し押し出す。


「我が力、最強成りて、最強為らざる」


詠唱が進むと共に、鞘と鯉口の間に見えている刀身から赤、白、黄の雷が迸る。


「結界・(じゅう)、重ねて、三重!」


レオンから発せられた魔力に、ワイバーンの気が逸れた瞬間、マイが重ね掛けした重量結界によってワイバーンは高度が落ちる。


「雷帝抜刀」


高度が落ちるのと同時に駆け出し、片翼の下あたりで停止。上を見上げ、


轟くは願い(タケミカヅチ)


飛び上がり抜刀、すれ違いざまに片翼を斬る。

そして、稲妻が宙を翔けるようにレオンの進路が急激に変化し、もう片翼も斬った。


ワイバーンより先に着地したレオンは、押し潰されないようその場から瞬時に移動。距離を大きく開けて回復に専念する。


「相変わらず代償がデカいなぁ」


自動回復があるので問題ないが、HPを優先で回復させていく。


「アトラルカ、すまん。MP回してくれ」

「承知した」


MP回復はアトラルカに頼んで、ポーション要らず。

今の一撃で六割程削れたワイバーンは、翼が無くなり地を這うトカゲとかした。


そうなれば負ける要素はもうない。


ミオの矢は魔力によって生成されているので、岩とか鱗とか無視して突き刺さる。

カクラの鎌は風の魔力で強化されているため、岩もスパスパ解体できる。

マイの結界は敵の攻撃を完璧に防ぎ、味方が動きやすいようにワイバーンをコントロールする。

リックは意識外からの強襲で、ワイバーンの意識を散らす。

凛と玲奈の攻撃はあまり通らないが、小さくとも攻撃が絶えないと言うのはかなりのストレスになる。

クヌギは最近覚えた瞬攻を巧みに使い、一撃離脱を繰り返す。

アミューは適度な回復と強化魔法で前衛を支援する。


「よし。回復したし、トドメやるか」


装備を切り替え、月影を装着。瞬時に専用防具、月影・衣に切り替わる。


「月影・第一機構解放」


月影自体に変化は見えない。しかし、纏う魔力は先程とは比べ物にならない。


「機構・魔力剣(マナソード)


魔力が剣の刀身を形成。パイルバンカーのように装填される。


「距離を取れ!」


レオンの声に真っ先に反応したのは、いつも行動を共にするミオ、カクラ、マイ。

次に、クラスメイトのクヌギ、玲奈、担任のアミュー。

リック、風音、凛、おやっさんは他が動いたことでそれに従うように下がる。


入れ替わるようにしてレオンが駆け出し、ワイバーンの真上を取る。


「全力射!」


ワイバーンの背中に落下。魔力剣をワイバーンに突き刺し離脱。


「弾けろ」


距離を取り切れてないが、まぁ大丈夫だろうと、最後のキーワードを紡ぐ。


すると、ワイバーンの背中に突き刺さった剣が消えて、代わりに体内を突き破るようにして小さな、と言っても普通に人が振るうサイズの剣が出てくる。

かなりの威力だったのだろう。体内を突き破ってなお速度は落ちず、エリアの壁に刀身が埋まって漸く停止した。

余りの勢いに、レオンも若干ビビった。


流石のワイバーンもこれには耐えきれなかったようだ。

ポリゴン状になって徐々に消えていく。


「特殊行動とか見てねぇな」

「翼ないと出来ないらしいよ」

「んじゃ無理だ」


情報では、ある一定以下になると空中から色々降らせる行動があるとか。翼ないから無理か?


「ワイバーン種は、その翼で飛んでいるわけではありません。翼に繋がっている魔力回路によって、飛行魔法(仮)で飛んでいるのです。つまり、ワイバーン種がブレスや魔法を使うには翼が必要なのです」

「...ムーいたのか」

「はい。最初からいましたよ?姿消してましたけど」


突然現れたムーがワイバーンの説明を行ってくれた。


「この情報は共有しとくか。翼斬り落とさなくても、ある程度傷付けておけば、多少軽減できるでしょ」


ワイバーンの情報が共有されるが、翼を斬り落とせたのはレオン含む『解放者』の前衛達と一部の一陣プレイヤー。それ以降のプレイヤーは、傷付けるのにも苦労して、中々突破できないのだが...これは今、関係の無い話である。



「徐々に道が整備されてるな」


ボスエリアを出て十数分。段々と道が広く整備され、明かりが設置されていたり横穴が空いていたりする場所に。


「...採掘の音が聞こえるな」

「暗くてよく見えないけど、この先誰かいるよ」


レオンとミオの情報で一応警戒しながら進む。


「おらおらァ!さっさと取ってずらかるぞ!嫁の飯が待ってんだからなぁ!」

「おおおおおおおおおおおお!!」


一段と音が大きくなった。というか騒がしい。


「一瞬、賊かと思ったけど違いそう」

「嫁さんって言ったし、どう見てもドワーフですね」

「豪快?いや、大雑把と言うべきか?」


広くスペースの取られた採掘場。色々な道具が散乱している。


「片付けしないのな」

「どうせ、何処にあるか分かればいいんだよとか言う」

「あぁね」


女性陣一同の深ーい納得の声。リックとおやっさんが顔を背ける。

心当たりがあるんだろう。


「ファーストコンタクト大事にいこうか」

「恐らく、マイの種族聞いた瞬間何かありそうですけどね」

「...警戒態勢は維持で」


採掘場へ乗り込み、ドワーフに接触を試みる。


「ん?親方ァ!転国の方から客人ぽいですよ!」

「なに!?()()()()()からか!?」

「です!ほらそこ!」


レオン達に気付いた一人のドワーフが親方...ここの責任者らしき人物に声をかける。


「地下道の方?地下じゃない方があるのか?」

「なんだお前さん。知らないで来たのか?てか、異界人か?なら納得ではあるな」

「えっと?」

「お、すまんな。俺はここの現場責任者ルツだ」

「このパーティーリーダーのレオン。察しの通り異界人だ。それで地下道とは?」


お互いに、リーダーだけではあるが挨拶を交し、話を聞く。


「ドワーフの国は地上都市と地下都市に別れてるのは知ってるか?」

「なんかで聞いた気がする」

「まぁ地上都市の真下に地下都市があるだけなんだが、地上都市に訪れた奴は実力を認められないと地下都市にいけない。しかし、最初から地下都市に訪れた奴は地上都市にいつでも行けるんだ」

「...地下都市に行く道の方が大変だから?」

「正解だ嬢ちゃん」

「嬢ちゃんじゃない。マイ」

「そうか。そりゃすま...ん?マイ?」


マイの名前を聞いて、ルツの動きが止まる。古びた機械が動くようにレオンの方を向き、再び固まる。


「おま、まさか...」


周囲のドワーフも、何人かは気付いたようだ。


「天照王国の守護四傑...」

始祖の血(ファーストブラッド)レオン」

小さな要塞(リトルフォートレス)マイ」

「......てことは、そっちの見覚えのある二人は」

「軍服の使徒カクラ」

巫の狩人(かんなぎのかりうど)ミオです」


その場の全ドワーフの時が止まる。心臓も止まっているのでは?と思う程の静寂。


一拍


「国王とこ行ってこい!全力で行け!いいな!あとついでに門番にも話付けとけ!最重要人物が来たってな!」

「うす!!」


ルツの大声に3人ほど反応して、一目散に駆けて行った。


「はっや」

「AGI高いのかな?」

「ドワーフって職人でしょ?DEXじゃないの?」

「DEXの次に高い可能性もあるじゃん?」

「全員が職人って訳でもないやろ。採掘してたみたいやし、STRが高い可能性もあるやろ」


後ろでなんか考察している間に、レオンは周囲を探っている。


「なぁルツ...さん」

「なんでございましょう?」

「...いや敬語はやめてくれ」

「ならお前もやめろ」

「わかった。この中に戦闘ができるのは何人いる?」

「戦闘か...2割だ」

「今回は採掘目的で、都市に近い位置だからか?」

「よくわかるな。都市に近いから護衛は最低限なんだが...そういうのを聞くって事は?」

「まぁそうだ。あーでも気にするな。こっちでやる。血泉・火縄」


ドワーフを守るようにして展開された血の火縄銃。

その銃口は、採掘場から伸びる横穴に向けられていて。


「一斉射」


魔物が這い出てくるのと同時に、その銃口が火を噴く。


「ルツ!非戦闘員を中央に固めろ!ミオ、マイ、アミュー、風音、凛、リック、おやっさんは中央によってドワーフの護衛。カクラ、クヌギ、玲奈は俺と共に火縄を抜けてきた魔物の排除。行動開始!」


即座に行動を開始する。


何体か硬い魔物が抜けてきている。火縄の火力では殺りきれないようだ。

突出しすぎないように調整しながら、魔物を間引いていく。


「ルツ!このまま全滅でいいのか?」

「構わん!」

「了解だ!ペースをあげるぞ!血を吸え、村雨!」


刀身を紅く染め上げ、レオンが魔物に向かっていく。

魔物を斬って斬って斬りまくる。


出てくる魔物は先程まで倒してきたモノと同じ。ならば、360度どの方角にいても簡単に対処出来る。


「色々試させて貰うぞ!」


レオンの動きが目で捉えられないほどに加速する。


かろうじてわかるのは、レオンの攻撃が魔物に当たっていないことだけ。


「何を?」

「アイツ何する気だ」


ぐるりとドワーフ達の周りを一周。元の位置に戻り


刻刃(こくじん)


納刀。同時に、魔物達が先程までレオンが刀を振るっていた場所に足を踏み入れ、突如バラバラになって倒れていく。


「まだ浅いか?車輪!」


小型のものは倒せたが、中型以降は倒せていない。トドメを刺すために行動を再開する。


車輪...その名の通り、身体を車輪のように回転させながら相手を斬るだけのシンプルな技。


「あいつ...すげぇな」

「ゲームとか関係なく憧れるよ」


淡々と処理していくレオンの姿。見方によっては戦闘狂。兵器のようなものだろう。

だが、扱いにくい刀を使い、世界を救うという使命?をもって戦う姿にはロマンを感じるのだ。


憧れるだろ?世界を救う英雄。


「なんか面倒になってきた。まだ見せたくなかったけどいいか」


中央に戻ると地面に手を付き、血操術の新しい力を解放する。


「戦場に流れる血よ、始祖の血族たる我が命ずる。刃と成りて敵を討て。血命刃」


レオン達が倒したり傷つけた魔物から流れ出る血が、レオンがいつも使う血刀のように形を変え、残る魔物に襲いかかる。


「...まぁできるよな」

「もしPVPあったら、出血の状態異常に気をつけないとダメ?」

「レオンが相手ならそうなるな」

「これ味方はどうなんの?」


自分以外の血を使った攻撃。

第二回イベントの時に、血印をつけたプレイヤーから血を奪い回復する。ということをやっていたのだから、これくらいできて当たり前。

と、皆は思っている。実際はもう少し高度なことができそうということはレオンだけの秘密である。


またイベントか?って思いました?私も思いました!


行く先々でトラブルに巻き込まれる系主人公。

まぁ、世界を救うという使命があるので、世界の異常に真っ先にぶつかり解決する、というのは間違いでは無いので…


ですが、今回は始まりの街のようなイベントにはなりません。

だってドワーフそこそこ強いから。

始まりの街は、異界人を迎え入れるという都合上、沢山の人を住まわせることが出来ませんでした。それでも、そこそこの規模になっているのは、今の領主の賜物です。


そして魔物のランクですが、プレイヤーにはあまり関係の無いものです。

この世界の住人達は不死では無いので、魔物の脅威度を明確にしないと無用な犠牲者を増やしてしまうからです。それでも一定数の馬鹿はいますが、そこは自己責任です。

つまり、不死であるプレイヤーにはランク分けは意味をなさないのです。死んでも復活して再挑戦できるから。成長もするしね。


ちょっとした裏設定でした

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