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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
46/111

第45話 運動祭そして自重

ヒュルルルルル


「…」


パァン!!


「…」


雲一つない晴れた空。そんな空に向けて打ち上がる花火。


今日は現実の方、学校で運動祭だ。


最近、運動部が部活休みが増えたとは聞いてた。だけどね?グラウンドに観客の為の席を作るとか思わないじゃん!しかも1週間で!

なんかおかしいな?とは思ったけどね!?


クラスメイトも、何かやるのはわかっていたが、ここまでとは思っていなかったらしい。

去年は徹夜突貫作業で、ガチのアスレチックフィールドを作り上げたそう。


この学校マジでなんなん?



開会式は何事も無く進み、開催を告げる花火が打ち上がって、今に至る。



「最初の競技は、各組の代表選抜選手によるバレーボールです。競技参加者はグラウンド中央に集まってください」


進行速度が早い。開会式に終わり、各クラスの待機位置に戻ると、最初の競技の召集が掛かる。


「バレーか、うちの代表誰だっけ?」

「男子は伊羅、女子が愛結」

「もう向かったよ」


うちのクラス全体的に仲が良いので、名前を呼ぶ時は基本的に呼び捨てか愛称。

男子数人は女子から君呼びされてたりするが。


グラウンドにはコートが二つ、白線によって作られ、男女で別れる。


この競技に決められたルールは

3セット先取ではなく、時間内に点を多く取った方の勝ち。

メンバー交代は3点に一回行うこと。

バレー部所属はコートに二人まで(各組一人ずつ)

制限時間は30分


「始まるぞ」

「お、伊羅も愛結もスタメンか」

「まぁあの二人バレー部じゃないけど、バレー経験者だからね」


伊羅と愛結の二人は幼馴染。小さい頃から一緒に遊んだり習い事をしたり。スポーツによっては男子別になったりもしたが、いつも二人で一緒。

そんな二人は両片思いになっている。周囲の皆はそれをわかっていて、毎日面白おかしく眺めている。


「見ろよあの笑顔」

「知ってるか?あれで付き合ってないんだぜ?」

「幼馴染ポジって強いけど弱いよね」

「そろそろ気付いていいと思うけどね」

「今年のバレンタインとホワイトデーで進展したっぽいけどね」


お互い本命とも言える手作りチョコだぜ?雰囲気甘すぎてコーヒーガブ飲みしたよ。


「コートに立ってない時の二人見てみ?超笑顔。一人の時とギャップが凄い」

「なぁんで付き合ってないん?」

「周りをご覧?あの男子の殺意が籠った目。女子の方は羨ましそうな目」

「なんで気付かないん?」

「二人の世界だからだよ」


俺達のクラスは、勝負の行方より二人の恋の行方に集中している。亜美先生まで羨ましそうに眺めてる。


ワァァァァァァァ!!


一際大きな歓声が響き、コートに視線を戻す。


「あれ?舞じゃん」

「あー、バレーやるって言ってたね」

「身長的に不利だろう」


舞の身長は149cm。高さがものを言うバレーという競技において、舞の身長は不利な要因でしかないのだが…


「ちゃっかり武術を転用してるな」

「やっぱり器用だね舞ちゃん」

「玲音解説してよ」

「武術って言っても真似事みたいなもんだからなぁ。説明する程のことをやってないんだわ」


というか説明しても理解されない。


舞が普通にジャンプしただけだとネットに届かない。届かせる為に舞は、筋肉、骨、神経を一斉に稼働させ、自身が出せる最大の力でジャンプしている。

分かりやすく言うならば、無意識下に掛けている制限を意識的に外し全力で跳ぶ、だろうか。


瞬攻、射抜き、破刃なんかで使う体術がこれだ。


「ざっくり言うぞ?前、剣道場で稽古した時あったろ?あん時の最初の動き、あれと同じ原理」

「さっぱりわからんが、わかった」

「うん」

「リカイリカイ」

「へぇーやるやん」


誰も理解していない。


「まぁわかるもんじゃないわな。そういうのやってない人には」


舞に注目が集まってるのは、その身体に見合わない身体能力もそうだが、もう一つ


「なぁ、ところでなんで舞ちゃんだけブルマ?」

「知らん。俺が聞きたい」


そう、舞だけブルマなのだ。何故かブルマなのだ!ブルマはいいゾ!


「確かに指定はないけど、なんで舞だけブルマ?」

「ほか皆、支給の体操服か自前の運動着やぞ」

「でも、いいと思います」

「わかる」

「いいよなあれ」

「正直に言え。あれで興奮したやつ、土下座しろ。今なら半殺しで許す」


三人程土下座したな。


「ちょっとこっち来ようねぇ」


首根っこ掴んで物陰に


「歯食いしばれ?」


顔と思わせて、強烈(弱)な腹パン


「グフッ」

「おまっ」

「ブルマッ!」


一人おかしな奴おったな


「後で着替えさせよう」


ムーに急いで取りに行かせ、空いたタイミングで渡そう。


そうこうしてたらバレーが終了。僅差で赤組の勝利。

ちなみに玲音のクラスは赤、舞も赤だ。


「続いての競技は、各学年毎のリレーになります。出場選手はグラウンド中央に集合してください」


次の競技が始まる


「松風、晴也、玲音、椚、犬鳴、神楽、レーナ、

楓華、奏、出番だぞ〜」

「もう既に向かった模様」

「続いての競技は、の辺りで行ってた」

「行動が早い!」

「ちなみにうちのクラスの勝利確率は?」

「「100」」


松風と犬鳴は陸上部、晴也は文化部だが趣味でサッカー、椚は運動全般得意、玲音は言わずもがな。

神楽も玲音と同様、レーナは凄い運動が出来ます。楓華はバドミントン、奏はオタク。


他のクラスも運動部を上手く集めたようだが…


「相手が悪い」

「どうせ玲音と神楽さんも舞ちゃんと同じようなことする」

「それな」

「バレないからいいや、とか言ってな」

「アンカーの玲音、既に何をするか決めた模様」

「あの感じなら悪いことじゃないと思うよ?」

「彼女様が言うのであれば問題なし!」

「確認ヨシ!」


勝手に解決したようだ。


「で、何するの?」

「ん?ちょっとしたパフォーマンス」

「…神楽さんは?」

「…ちょっとだけ体術を」

「どれ使うの?」

「尚也がやってた水上歩行術」


確か、脚が沈む前に次の脚。水上でも謎かしっかりとした踏み込みが出来て、前に跳ぶようだったとか言うアレ?


「応用できるの?」

「できる。周りからは、スキップしてるようにしか見えないのが欠点」

「期待してるわ」


ルンルン気分でスキップしてるよう見える奴が他の奴と距離を開いていく姿。面白いと思うの。


「犬鳴、1番手頼むな」

「任せて」

「レーナはあの走り方?」

「もちろん」


知らない奴はポカーンとするやつな。


順番は犬鳴、レーナ、松風、神楽、椚、楓華、晴也、奏、玲音。


「二年の俺らからスタートだからな。犬鳴、他が待ってるぞ」


スタート地点に並ぶ他のクラスの1番手達。犬鳴を見る目は闘志で漲っている。


緊張じゃないけど、あんなに力んでると…あぁ言わんこっちゃない。


合図で一斉に走り始めるが、少し力み過ぎたようだ。犬鳴よりワンテンポ遅れてのスタートになる。

それでも流石は運動部員。付かず離れずの距離を維持してる。それ以上近付けないとも言えるが。


このリレー、一人半周とかじゃなく、普通に一人一周なのだ。距離的には500メートル。


向正面。犬鳴と二番の差は凡そ4メートル。頑張ってるようだけど、犬鳴はここからが凄い。

少し姿勢を崩したと思えば急加速。カーブをものともせず、差を広げる。


10メートル近い差をつけてレーナにバトンを渡す。


レーナはバトンを受け取ると…手を振って走るのではなく、忍者走りといえばわかる?両手を後ろに靡かせながら走る。しかも速い。

結構前傾姿勢なのもあって、何故あれでその速さになるのか疑問である。金のポニーテールを靡かせ、レーナが差をキープしたまま松風にバトンが渡る。


松風の走りは良くも悪くも普通だ。最初の二人に比べるとあまりに普通。しかし、普通だからといって、遅いわけじゃない。走る速さだけで言うなら、2人に負けてはいない。相変わらず差をキープしたまま神楽に…


本当にスキップしてるようにしか見えない。

クラスメイトが皆笑ってるぞ。

多分、澪辺りが何やろうとしたのか説明したんじゃないか?そんで、こんな風に見えるとか言って、その通りで笑ってるとかそんな感じ?


他のクラスからなんか怒声が聞こえるけど、あれで真面目にやってんの。しかも差は開いてんだよなぁ。

差を更に広げて椚に。


椚もまた、普通の走りを見せる。安定した走り、軸も呼吸も乱れがない。この程度の距離当たり前と言うかもしれないが、全てを一定に保つのは存外難しいのだ。差は変わらず楓華にバトンが渡る。


楓華の走りは、一歩一歩の幅が小さい。代わりに脚の回転が早い。

バドミントンをやっているなら、一歩は大きくなると思うのだが…そういうのは関係ないのだろうか?やったことないからわからん。

バトンが晴也に渡る。


晴也はうちのクラスで言うなら遅い方。でも、学校全体で見るなら、速い方に入る。差が少し縮まったが、まだ安全圏。

奏にバトンが渡る。


奏はオタクだ。だから走るのが速い。何故そうなるのかって?年2回の祭典の始発ダッシュにライブを全力で乗り切る体力、ヲタ芸で鍛えられた肉体。彼女が速い証明はこれで十分だ。


そして、バトンが玲音に渡ってしまう。


クラスメイトの方から「もうおしまいだぁ」とか「フッ勝ったな。風呂入ってくる」とか「俺、これが終わったら告白するんだ」とかよく分からん声が聞こえてくる。


とりあえず、右足を踏み出し、思いっきり力を込める。身体を縮め、胸が膝に付くギリギリに。

そして、溜め込んだ力を解放。前に押し出す力に。弾丸の様に飛び出した後は、身体が倒れないように、脚を交互に出していくだけ。カーブが少し大変で、大回りになるが問題は無い。半周以上の差をつけてゴール。


「やべっ」


勢いが強すぎて、すぐに止まれない。両足を地面に付け急ブレーキ、強引に止まる。

砂埃を上げながら、ゴール後10メートル辺りで漸く止まった。


アンカーの選手は、唖然としながらもちゃんと走り切る。


観客席の親や地域の方、教師陣、生徒達は開いた口が塞がらないようだ。


「うーん、やり過ぎた」

「自重しろ阿呆」


グラウンドの中央に戻りながら、ちょっと反省したところ、椚に頭を叩かれた。


「一応、やろうと思えば誰でもやれるんだぞ?」

「そんなわけねぇ」


犬鳴にも叩かれた。


「何故頭を叩く」

「叩きやすいから」

「逆に聞くぞ?他に何処を叩くのか」

「…尻、背中、頭の三択だな」

「なら、頭を選ぶ」

「そうだな。励ますなら背中だが」

「私はお尻。玲音君、触っていい?」

「ダメだが?寧ろ許可が降りるとでも?」

「流れで?」


変態的発言をしたのは楓華。心の中におっさんや腐った人格をお持ちのオタクだ。普段とのギャップの酷さで有名。


1年、3年のリレーが続いて行われ、滞りなく進む。

次の競技の確認をして、準備を始めようとして


「お、玲音呼ばれてんぞ?」


椚に言われ、実行委員とか校長とか居るテントへ向かう


「君は…玲音君だったね。さっきのはなにか説明出来るかい?」

「あードーピング疑われてる?うーん説明ね…」


校長に聞かれて少し考える。どうやって説明すればわかるのか…

多分、マイクを通してこの場に居る全員に伝わる。


「立ち幅跳びする時って、膝曲げて力貯めるじゃないですか?立ち幅跳びに限らず上や前に跳ぼうとすると」


いきなりの説明に一瞬首を傾げる。それを無視して玲音は説明を続ける。


「やってることはそれと同じで、踏み切る脚に限界まで力を込めて、前に跳ぶ。ただ跳ぶだけだと着地するか盛大に転ぶかのどっちかなんですけど」


言いながら、軽くその場で立ち幅跳びをする。


「両脚で着地するんじゃなくて、片脚、最初の踏み切る脚と逆脚だけ地面に着き、同じように力を込めて前に跳ぶ。その繰り返しです」


走っている時よりかなり遅くゆっくりと実践してみせる。


「これのポイントは、前傾姿勢を保ちつつタイミング良く次の脚を出すことです。そうしないと本当に倒れるか、一歩一歩を大袈裟に跳ぶヤベェ奴になります」


ちょっとタイミングをズラして失敗。流れるように成功例を披露し、次の一歩をミスして地面にダイブする。


「こんな感じになります」


ね?誰にでも出来そうでしょう?


と言わんばかりの顔をしながら振り返る。


「…あー、そういえば君、武術とかそういう系やってるんだっけ」

「まぁ」

「なら校長」


実行委員の一人が校長に何かを提案してる。


聞こうと思えば聞けるけど、実行委員に手でシッシッって追い払われてるから戻ろ。


戻ろうとして、横から飛んできた何かを掴む。


「なんこれ?」


飛んできたのは矢だとわかるが…


「マジでなにこれ」


状況が理解できない。先端はタコの吸盤みたいになっていて、当たってもそこまで痛くないだろう。


それにしたって、いきなり、それも視覚外からとは。


「弓二人の槍と刀、素手二人。校長、これなに」


何かを知ってそうなのは校長。語気を強め言葉だけで威圧する。


「次の競技を変更します。演武を披露してもらう予定だった、プロの武術集団・六天衆の皆さんです。彼等と玲音君には、模擬試合をしてもらいます」

「拒否」

「君に拒否権はありません。折角です、盛り上げてくださいよ」


何アイツ。俺なんかした?


「…試合形式は?」

「1対1です」

「6回やるの?」

「えぇ」

「だるい。6対1でいい」

「本気ですか?」

「いいからはよ始めろ」


めんどくさくなった玲音は、今すぐ始めるように促す。


「ガキが」

「痛い目見ても知らんぞ」

「教育してやる」


なんか言ってる。どうせ大した事ないし。


「それでは、エキシビション開始!」


合図と共に2本の矢が飛んでくる。目眩しでも視線誘導でもなんでもない、ただ射っただけ。


「勝利条件と敗北条件聞いてなかったな。まぁいいや。全員潰そ」


僅かに早く到達した矢を掴み身体を回転。もう一本に向けて投げる。ドンピシャで命中し、地面に落ちる。


次を射る準備をしていた二人の弓使いは、動揺で動きを止める。


「この程度で止まるとか」


リレーの時と同じように力を込め、50メートルを一瞬で走破。


「お前らプロ名乗んな」


勢いそのままに、二人の顔を掴み、地面に押し倒す。

開始30秒に満たない時間で2人が気絶。


「さっきの俺の走りを見といて、護衛に誰も残さないとか頭使ってんのか?便利だぞ?」


人差し指で頭をトントンと叩きながら挑発する。



「何故玲音は挑発するの?」

「癖」

「癖かぁ」


クラスメイトの疑問に澪が答える。



今の動きを見て、受けの姿勢を取るが


「あのさぁ、格上相手に完全防御とか阿呆?自分からやられに来るって何?」


対応する前に、素手の一人が落とされる。


「いい加減反応しろよ。やってることさっきのリレーと同じだぞ?それ以外何もしてないんだぞ?」


ただ走って頭掴んで地面に押し倒すだけ。そろそろ反応して欲しいものである。


「もういいや。次、神楽!」


クラスの待機所にいる神楽に声をかける。応えるように長い棒が玲音目掛けて投げられる。


それを掴み、下段に構える。


「プロなんだろ?意地見せろ」


プライド刺激されっぱなしの槍使いが、我慢の限界と言わんばかりの突進。


突きも払いも戻しも一般的。どこにもプロの要素が存在しない。


「なんで槍にしたんだか」


根本的に槍と言う武器が合っていない。まだ薙刀の方が…いや、変わんないな。


相手より速い突きを4箇所に打ち込んで、痛みで蹲ってるうちに次に移る。


「せいっ!」


棒を放り投げ落ちてきた所を、残る二人の刀の方に蹴り飛ばす。


刀で弾かなかったのは悪手かな。ただでさえ、こっちの速度について行けないのに、未だ納刀したまんまなんて。


「次!」


玲音が手を伸ばすと、まるで予知していた様に木刀が手に収まる。


「瞬攻」


身体能力だけで扱うオリジナルの刀術。

視認可能ではあるが、困難な程の速度で振るわれた刀は、刀使いの刀を持つ左手を強打。あまりの痛みに刀を落とす。


「射抜き」


一切の手加減無く、鳩尾に鋒が当たる。

膝を着くことはなかったが、こちらから視線を完全に外した。


「頭伐」


後ろに回り込み、首目掛けて刀を振るう。

一応手加減として、軽めに振ってはいるがそれでも意識を刈り取るのは十分だった。


「最後!」


普通に走って近付き、玲音はゲーム内の動きを再現してみる。


「双葉、三輪、四道」


ゲーム内の格闘術アーツその2番から4番を再現。


双葉...左右の拳で一点を一秒の間に2度打つ

三輪...顔、鳩尾、腹の三点を一秒間に打つ

四道...掌底で顔を上に逸らし、無防備な胴体に三連打


若干の誤差はあれど、それは正しくイベントでレオンが使ったものと同じ。


合計9連撃を受けて、最後の一人はなんの抵抗も出来ずに地に伏せる。


「こんなもんか」


グラウンドの中央、倒れる武術集団を仁王立ちで見下ろす。


気絶していない者も残っているが、戦意は既に無いだろう。

世間からプロと呼ばれている集団が、たかが学生一人に完敗したのだから。戦意もプライドもズタズタである。


「で、校長と委員長どうすんの?」


視線は向けない。決着が着いたというのに、終了の合図が無い。まだやっていいのかな?


「…エキシビションマッチ終了。勝者、玲音」


ゆっくりと。驚愕を隠せない震えた声。まぁ普通に考えれば、玲音が勝つとは思わない。


「余興に付き合ってこの有様。ゲーム内モンスターの方がよっぽど練習になるな」


救護員に運ばれる五人に目もくれず自分のクラス席に戻る。


「神楽姉さん、棒と木刀の調達ありがとう」

「気にするな。何かあると思って、最初から持っていた」


最初から持っていたのは本当だが、それはムーに保管してもらっていたからだ。

ムーの姿は、玲音、澪、神楽、舞の4人にしか見えていない。なので、ムーが収納している武器や防具を取り出すと手品のように、その場に無いはずの物が突如現れる。

玲音に投げた棒も木刀も、ムーが持ってきていたのを受け取って投げただけ。

周囲から見れば、いつの間に!?状態である。


「ゲーム内で使ってるからわかってたが、お前本当にすげぇな」

「たまーに見るけど、本当に人間?」

「玲音君、今度私にも教えて?」

「あ、俺も教えて欲しい」

「なら俺も」

「私も」

「」

「」


席に戻れば、クラスメイトが騒がしく迎えてくれる。

周りの空気が死んでいるというのに、元気なヤツらである。


「まぁ、基礎程度だけな」


少し笑みを浮かべながら、玲音はそう零す。



エキシビションの後に行われたのは、本来第3競技だった2年と3年合同の騎馬戦と竹取戦争。


騎馬戦が男子で竹取が女子だ。

何故、竹取戦争なのかって?そりゃ、男より女の争いの方が怖いからだぞ。


普通に手や足が相手チームに向かって出るし、確保した竹で他の竹を狙うチームメイトを援護したり、竹ではなく竹を狙う生徒を狙ったりする。


男子は楽しそうに、けれど真剣だった。

しかし女子は、かなり殺伐とした雰囲気を作り上げ、結果僅差で白の勝ちとなった。


午前の競技は多少の変更はあれど、恙無く予定は進み、昼ご飯の時間となる。



「お兄」


玲音が澪と神楽とスペースを確保していると、舞が遅れてやってくる。その手には大きな風呂敷を持っている。


「そっちが舞が作ったやつか?」

「そう。お兄も作った?」

「もちろん。知ってるだろけど姉さんも澪も作ってるぞ」


今日は朝3時から起きて、一人1時間で4人分の弁当を順番に作ってきた。


「まぁわかってたが量多いんだよな」


単純16人前。いくら4人が沢山食べると言っても限度はある。


「んで?集まってる君らはお零れ目的?ちゃんと言ってごらん?」

「「少し分けてください!!」」


周りに集まっているのは玲音のクラスメイトと舞のクラスから4人。

一人1品ではあるが、全員に行き渡る。


「いただきます」

「「いただきます!」」


玲音に合わせて、皆が手を合わせて命に感謝し、食べ始める。


「うっま!」

「ヤベェ!うめぇ!」

「冷凍食品と比べたらなんかあれだけど、めちゃ美味い」

「比べる対象が悪い。冷凍食品は悪くない」

「玲音君!先生にも頂戴!……負けた…」


自分の弁当のおかずと食べ比べ、その差に驚き大きな声が自然と出る。

亜美先生も加わり、料理の腕で負けを悟る。


「お兄、どう?」

「丁度いいと思うぞ。人によっては、もう少し甘くてもいいんじゃないか?」


厚焼き玉子の出来を聞かれ素直に答える。

ついでに周りの意見も聞く。


「俺はこれが丁度いい」

「私はもう少し甘くてもいいかな」

「俺はこれでも少し甘いかも」


と言ったふうに大体3種に意見は分かれた。


「澪ちゃん、やっぱり唐揚げは2度揚げたの?」

「時間があったからね」

「自分でやるなら、手間掛けてでもやった方がいいのかなぁ」

「まぁそこはその時に決めるでいいんじゃない?」


「神楽って料理できたんだね」

「バカにしてる?」

「いや、だって、ね?」

「ね?じゃない」

「玲音君や澪ちゃんに比べるとどうしても」

「比べる対象が悪い。私も人並みにできる」


お互いにおかずを交換し合い、賑やかに昼食の時間を過ごす。

食べ終わったら、少し時間を置いて、ゆっくりと身体を動かし始める。



「玲音待て!」

「待てと言われて待つ阿呆いるの?これ一応勝負なんですけど?」


グラウンドに設置されている次の競技で使う障害物を華麗に躱しながら玲音が神楽から逃げる。


「アイツ凄くね?」

「いやわかってたけどやばい」

「なんであの二人は、食後すぐにあれだけ動けるの」

「バケモン」

「本当に人ですか?」

「ゲーム内じゃ人じゃないけどな!」


クラスメイト達の反応はいつも通りだ。玲音がいつも通りだから。


結局時間一杯玲音が逃げ切り、神楽の負けとなった。


「じゃ今日の訓練は実戦形式な」

「実戦形式という名のPVP」

「実戦形式だろ?」


ゲーム内故、死という概念が無く、死ぬほど身体に動きを覚え込ませる。どんな状況でも対応できるように。


「ちなみに私と舞ちゃんは?」

「もちろんやるけど?」

「ですよね」


澪と舞は免除なんてそんなことしません。


「参加したいやついるなら参加していいぞ?」


この誘いにクラスメイト全員が参加表明。リアル20時にログインしてやることが決まった。


「んじゃ、午後も元気に行きますか!」

「おー!」


午後最初の競技は察しの通り障害物競走。各クラス一人参加。男女が分かれているだけで、学年は混同だ。


これもまた僅差で赤の勝ち。


それ以降の競技も接戦が続き、最後の演目が始まる。



「澪、神楽、舞、頑張ってこい」


玲音に背中を押される様にグラウンドに進む三人。赤組の代表。


最後の競技、演目はダンス。何故?と思うが、毎年なんだそう。やるのは、ダンスでもいいし、ヲタ芸、バレエでもいいらしい。ならダンスじゃなくて踊りとかにしとけよ、と思うが言ったらダメらしい。


「ねぇ、玲音君。あの三人で何するの?」

「練習してる感じもなかったけど大丈夫なの?」


皆、心配しているが、玲音は少年のように笑ってグラウンドを見つめる。


「何も言わず見とけって。驚くぞ?」


玲音の顔は、これからの反応を楽しみにしているのか、それとも、三人の踊りを楽しみにしているのか、とてもいい笑顔だ。視線も三人に釘付けで、話しかけてもそちらを向かない。

だから、クラスメイト達も大人しく玲音の言葉に従い、静かに始まるのを待つ。


シャラン


澪が手に持つ鉾鈴の音が始まりを告げる。


動きは早くない。けれど、優雅で美しく見るものを魅了する。


神楽の笛の音は、透明感のある心地の良い音色だ。長く続く音は、鈴の音を邪魔することなく調和する。


他のクラスや客席から聞こえていた喧騒はもう聞こえない。全員が澪の舞に見蕩れているから。


グラウンドの外、通行人たちも思わず足を止めて見入っている。


鈴の音は、澪が鳴らそうとしない限り鳴らない。

素人が下手にやろうとすれば、余計な音が混じり、舞を台無しにするだろう。

澪の家系は代々巫女や神主を務めていた。その為、日頃から舞の奉納や祈祷等の練習は行っていた。世界が変わらなければ、澪も次の代の巫女になっていたことだろう。


そして神楽と舞も澪の手伝いをしていた。澪の練習に付き合うために笛の練習。一人では出来ない舞は、手伝ってもらったり。


曲調が変わる。先程までは流れるようにゆったりとした曲調が、少しテンポが上がり、賑やかな日常を思い起こさせる。


踊り手も澪から舞に変わり、両手に持つ扇から花びらが舞い空間を彩る。


神楽の笛は舞の動きに合わせて奏でられる。


舞の踊りも美しいが、曲のテンポが早いからか、舞の動きも少し活発だ。


舞い散る花びらを扇ぎ、地に落ちないように身体を動かす。雑に動かすのではなく、その動きを中心に踊りに組み込む。


運動服で下がスカートで無いからなのか、アクロバティックな動きを混ぜていく。バク転、バク宙、ムーンサルト。その小さな身体にどれだけの力があるというのか、疑問に思わざるを得ない。


しかし、観客は皆その踊りに魅了されている。

疑問を挟む余地はなかった。


やがて曲調がゆったりとしたものに戻る。

舞の動きも徐々にゆったりと優雅なモノに変わる。

最後は澪と舞の二人の息の合った踊りで締めとなる。


澪が左足を出せば、舞は右足。その逆も然り。

澪が前に出ようとすれば、舞は一歩引いて後ろに。


二人の距離は一定のまま。ぶつかることも掠ることも無い。余計な音は鳴らず、澪の持つ鉾鈴と神楽の奏でる笛の音が響くだけ。


笛の音が止み、澪が鈴をシャンと鳴らす。もう一度鳴らぬようゆっくりと胸に抱き、舞が両手の扇をゆっくり閉じる。

三人揃って会釈をすれば、三人の舞は終わりとなる。


疎らながら、拍手の音が聞こえる。それは徐々に伝播していき、グラウンドに居た全ての人がその手を叩く。


「相変わらず綺麗だな。父さん、母さん」


後半の言葉は、玲音が意識せず発した言葉だった。小さい声であったが、近くにいた数人はその言葉が聞こえていた。


その言葉を追求することは、彼等には出来なかった。

戸惑っている間に玲音が三人を迎えに行ったから。


「そういえば、玲音から親の話あんまり聞かないな」

「いつだかの話で、玲音達の武術は親に教わったとか言ってたくらいか」

「澪ちゃんの両親の話は聞くけど、神楽ちゃんは聞いてない」

「玲音と神楽ちゃん舞ちゃんは義理の姉弟だっけね」

「それにあの4人、本来はこの世界の人じゃ無いから」

「……」


玲音や神楽、舞の親の話を聞いたことがないと気付き、少しだけ雰囲気が沈む。

察しのいい者は、どう言った人物が異世界に呼ばれるのか。そこに考えを持っていかれる。


実際は、玲音達は死んではいない。但し、玲音の

親も神楽と舞の親も亡くなっているが。


「なんつー顔してんだよ」


玲音が澪と神楽を連れて戻ってきた。


「気にするなって言っても気にするだろうから、これだけ言っとくぞ?もう、別れは済ませた。今は澪や神楽姉さんに舞がいる。だから大丈夫だ」


事情を察したのだろう。玲音に寄り添う澪と玲音の頭を二度軽く叩く神楽。


「ほら、今日の勝者が決まるみたいだぞ。最後は笑って終わろうや」


実行委員長と理事長が物見台に登り、マイクを手にする。


「結果発表です」

「今年は過去、どの運動祭と比べても見劣りしない、記憶に鮮明に残る祭りとなったでしょう。そんな活躍をした人物を先ずは表彰したい。玲音君、澪君、神楽君、舞君、前に来てくれ」


結果発表の前に何かあるらしい。理事長に呼ばれ、四人が物見台に向かっていく。


「鍛え抜かれたその技術、誠に見事であった。弛まぬ努力があってこその結果。しかし、その力の使い道を間違えないで欲しい」


理事長の視線は玲音に。


「君達の踊りは、多くの人を魅了し、心に癒しを齎しただろう。できる範囲でいい、もし、疲れて苦しんでいる人達を見かけたら、その踊りで助けてあげて欲しい」


次いで、澪、神楽、舞に視線を。


「今年の運動祭を最も盛り上げたであろう四人に、粗末な物かもしれないが、このバッチを贈らせて欲しい」


物見台の上に案内され、理事長と対面する。


一緒に登ってきた役員から受け取ったのは、銀で縁取られたバッチ。中央に彫られているのは薔薇。黄色で色付けされた薔薇。


「友情?」

「友愛とか平和じゃない?」


神楽と澪が、恐らく花言葉について話してる。花言葉はよく知らん。澪は意外と乙女チックだから、花言葉はよく知っているみたいだし、神楽姉さんも、男っぽく見えて意外と女の子らしい趣味もある。


「平和…ね」


バッチを受け取り、陽に翳す。

縁が陽を反射し、きらりと輝く。ケースも受け取り、席へと戻る。


「では、結果発表に移る」


実行委員長がマイクを使わないで、後ろの委員を呼んでいる。

すると、何人かがパネルのような物を持って理事長の左右に並ぶ。


「第一競技、赤組100点、白組50点」


メモ用紙だろうか?紙を持ち出し、そこに書いてあるであろう数字を読み上げていく。


「第二競技、赤組280点、白組310点」


リレーは、各学年の成績を考慮しての得点か


「エキシビション、赤組100点、白組50点」


これは恐らく、玲音が勝ったから赤が多いのだろう。負けていたら同じ点数だったはずだ。


「第三競技、赤組260点、白組330点」


騎馬戦と竹取戦争か…残った騎馬の数と取った竹の数での計算かな?運営に携わってないからわからん


第四、第五は白組の方が多く獲得。

第六、第七で赤組が点差を開く。

第八は白組にのみ点が入り、同点となる


残る競技は最後の一つ…


「最終競技…白組340点、赤組」


340を超えれば勝利。340を下回ると敗北。


「420点」


……


「合計得点、赤組1980点。白組1900点。よって、赤組の勝利!!」


一瞬の静寂。次の瞬間には割れんばかりの大歓声。

かなりの接戦だったこともあり、盛り上がりは最高潮。

白組は悔しそうにしているが、最後の競技…澪達の舞を思い出し、納得したように手を叩く。


落ち着くのを待ってから授与式、閉会式と行われ、編入学後初めての学校行事が幕を閉じた。




おまけ


「今年は近年稀に見る接戦でしたね」

「彼のクラスが異常だったが、全ての競技に参加するわけではなかったからね」

「いい感じのバランスになったと思います」

「来年はせめて、彼と妹のクラスは別の組にしよう」

「来年もあの踊りされたら堪りませんね」


実行委員や校長達教職員は、今回の教訓を来年に活かすべく、早速メモを残していく。


その後の打ち上げは、学生は21時、教職員は日付が変わるまで行われたとか…

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