第43話 龍精霊そして最高潮
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イベントが開始して1時間半。
レオンとの戦いに慣れたのか、プレイヤー達の攻撃が当たるようになり、何度かレオンを倒せそうな瞬間も生まれる。
観戦している住民達も、その戦いに夢中になっている。大技が決まれば盛り上がり、レオンに有効打が入ればさらに盛り上がる。
レオンが技を繰り出す度、一部から黄色い声。冒険者や騎士は、その技量の高さに舌を巻く。
エリックとオーザス、二人の妻レリアとロシエラ。彼等もモニターを食入るよう見ている。
最初こそレオンの種族に驚き冷静ではなかったが、今は落ち着いている。レオンの言動から、伝承のソレとは違うことを確信したから。
巫女姫、マイとエリック達の前に置かれているテーブルの上には、既に空のお酒が三本。摘みに出されていた山盛りのフライドポテトも無くなっていた。今は、あたりめやビーフジャーキーといった噛みごたえのあるものを咥えている。正直一国の王としてはよろしくない姿だ。
「ミオ姉とお姉がいても倒せない」
「なんとかなると言っていましたね。そういえば」
マイと巫女姫は以前の会話を思い出していた。
「精霊魔法があるからだと思ったけど、精霊魔法持ちの二人に加え、数千のプレイヤーを相手にして互角以上」
「何をしたらあそこまでになるの?」
「一番は星幽龍精霊のせいよ」
「お姉様の言う通り。あの規格外の力の影響」
二人の会話にマイの契約精霊のネアとリーネが加わる。
「アトラルカの力?」
「そう。精霊魔法ではなく、最初から持っている性質、みたいなものかしら」
「あの精霊が住まうのは星の外」
「世界の理が及ばない空間。そこで生きる為、龍精霊は空間に存在するマナを取り込み、それを生きる為に必要な力に変換した」
「それが影響しているのね。彼は常に龍精霊に頼み、周囲のマナを取り込み血や魔力、HPに変換しているわ」
「龍精霊...神話に語られる、龍族でありながら精霊に成ることを選んだ、最古の三体のことですか?」
モニターを見ていたエリック達がこちらに視線を向けていた。
ネアとリーネが会話に参加したあたりから、聞き耳を立てていたようだ。
「えぇ。それにしても、精霊王の一人がいいのかしら?」
「お姉様、そこは問題ないかと。精霊族は皆、龍
族と共に居りますので」
「そういえばそうね。王の領域にはどうやっても近付けないから、なんの問題もなかったわ」
精霊の話に護衛騎士や文官を含む、その部屋の全員が息を忘れたように硬直する。
「貴方達、この世界の種族についてはどのくらい知っているの?」
「異界人は全く」
「私は巫女として、ある程度は知っていますが、私も伝え聞いた身なのでなんとも」
「私達も巫女姫様と同じです」
プレイヤー達が知らないのは当然だ。未だ全ての種族情報が開示されていない。居るだろうとされているのがエルフにドワーフ、吸血鬼に天使、小人。確定は獣人だけなのだ。
「まぁそうよね」
「お姉様、教えた方が」
「まぁ今はいいでしょう。ほら、また戦況が変化するようです」
ネアに釣られ、全員がモニターに視線を向ける。
「付随神器展開、血円武器庫」
レオンの背後に血の円が現れ、円に囲まれるように幾つかの武器が見える
「レヴァンティン」
手に持つ刀を納刀。名を呼ぶと、背の円より武器が排出。レオンの手に収まる。
「煉獄の焔」
その剣を地面に突き刺すと、燃え盛る赤黒い焔が戦場に広がる。
「え!?燃焼ダメージ100!?」
5秒で100減っていく。このダメージはプレイヤーにとって痛手になる。プレイヤーのHPは高くない。多くのプレイヤーは、防御や攻撃に関するステータスにポイントを降っているからだ。
毒や麻痺等の状態異常は、現状無効化の方法が見つかっておらず、ダメージを軽減させることが限界とされている。
毒であればVITとRESの合計値÷10で継続ダメージを減らせる。
麻痺はまた別のステータス計算で対抗するのだが。
そもそも、状態異常に掛かるのはLUCKによる影響もある。運値が高ければ高いほど状態異常になる可能性が低い。
そういったのを無視して状態異常にしてくるのが、レオンの血印や今起きている燃焼。
「水魔法効きません!」
「冷も無理!」
「死も無理です!」
他の属性を試すが効果は無く、プレイヤー達は元凶を断つ以外の方法が思いつかなかった。
しかし、玲音は攻める手を緩めない
「ロンゴミニアド」
レヴァンティンが消え、燃え盛る赤黒い焔が消えると同時に、新たな武器をレオンが手にする。
光り輝く白い聖槍。全長2m。東洋の槍というより、西洋のランスに近い形状をしている。分かりやすく言うなら、穂先から全体の8割に渡って徐々に幅を広くし、途切れた後は柄と石突が。
それはまるで、持って戦うと言うより、別の用途での使用を目的とした形で
「ぶち抜け!」
逆手に持ち大きく振りかぶり投擲する。
聖槍は白い光の軌跡を残しながら、戦場のど真ん中を抜け、戦場を二分する。
「ゲイボルク」
次に現れたのは、絶死の槍。こちらは東洋の槍に近く、全身が黒で染まり、紅い線が幾つも伸びている。
「月影、第二機構解放」
月影を装備し、変形機構の一つを使用する。
手に持つゲイボルクを取り込み、両腕に巨大な杭が装着される。
「機構・大物殺し」
パイルバンカー。対大型、対城壁、対結界。
「ちゃんと備えろよ?」
飛び上がり、両腕を振り下ろす。
「我が手に宿れ、死を運ぶ絶槍よ」
紅い魔力が渦を巻き両手に集中、地面に近い方から魔力の渦が細く鋭くなる。
「大地を穿て!星を貫く神域の槍!ゲイボルク!」
地面に激突する瞬間、パイルバンカーを打ち付ける。
火薬、その爆発によって打ち出されたゲイボルクは大地を穿ち、その力は特殊フィールドそのものを揺らす。
「破天・噴火!」
大地が揺れ、地脈が刺激され噴出しようとしていた溶岩が、レオンにより強制的に噴出。その勢いは破天大蛇を取り込んだ暴虐天童以上。
「アテミア!ハイバー!」
「アシュト!ワウテウ!」
「マイ!」
「ネア、リーネ」
特殊フィールドではミオとカクラ。
特殊フィールドの外でマイがレオンのその一撃に対応する。
「レイ・テストレア!スポットチェンジ!」
「デモンズリッパー、ナイトイリュージョン!」
「第四位階表・放出!第四位階裏・吸収!合技・反転!」
アテミアの力を纏った矢は地面に突き刺さり、噴火という事象を徐々に鎮静化。更に、ハイバーの力でカクラの気配を遮断。攻撃のチャンスに繋げる。
デモンズリッパーにより、カクラが今レオンに与えられるダメージは、レオンの最大HPの凡そ6割。そこへ、威力は半減するが的を絞らせない為の囮兼火力アップのナイトイリュージョン。
フィールドが朧月夜で包まれているため、外が昼でもよると判定され使用可能に。
天照王国では、特殊フィールドを覆う結界をマイが調整する。
ネアの力で中から外に伝わる攻撃を結界に干渉しないように放出。
リーネの力で外から中に伝わる攻撃を結界に干渉しないように吸収。
合わせることで真価を発揮する二体の精霊。
反転により中から外に伝わる攻撃を結界に干渉しないように吸収、逆に外から中に伝わる攻撃を結界に干渉しないように放出。レオンの一撃で揺らいでいた特殊フィールドを補強する。
「魔法による事象を消しても、自然現象とゲイボルクの必殺の理はどうにも出来ないよなぁ!?」
噴火は鎮静化してたが、徐々に勢いを増し始めた。刺激された地脈が自然に溶岩を噴出し始めたのだ。
そして、ゲイボルクは今も尚地中を穿ちながら、標的を狙っている。
「第十一位階魔法・アシュト」
カクラのアルジェントリーパーに地獄の業火と猛毒が絡み付き、死角からその一撃を受けたレオンはHPを5割削られ、状態異常地獄刑が付与され、1秒事にレオンHPを200削っていく。
そして、この状態異常は解除することが出来ず、自動回復又はポーションや魔法の回復で時間が過ぎるのを待つ以外に対処する方法がない。
「20秒!?アトラルカ!」
即座にアトラルカに命ずることで、HPの回復量が状態異常ダメージを上回る。
「致命的な隙だな」
そんな声と共に、3人のプレイヤーがレオンの目の前に居た。
「「「システムリロード」」」
シェン、カイドウ、ガンツ。クラン『戦人』のトップ3。
大剣二人と槌。3人が同時に同じアーツを繰り出す。
「「「ブレイカー!」」」
全武器共通の最終奥義ブレイカー。武器を破壊、その武器に宿す魔力を放出し、相手に保有魔力分のダメージと自身に反動ダメージで保有魔力の半分。
リロード武器が完成してから実用的と見なされ、機会を伺っていた必殺の一撃だ。
「それは無理!」
流石のレオンも、その攻撃に対処しきれず、1度目の死を迎える。
しかし、今レオンがいるのは自身の神殿の効果範囲内。確率で復活する可能性があるが、今回はハズレたようで初期位置にリスポーン。要塞も元の位置に戻ってしまう。
「ブレイカー...存在は知ってたけど、愛用する武器を捨ててまで撃つか?普通」
ブレイカーのデメリットは、反動ダメージだけでは無い。もう一つ、致命的なものが存在する。それが、愛用する武器でのみ発動可能というもの。
つまり、使い捨てが出来ない。
レオンで言うならば、紅椿でしか発動できない。そんな諸刃の剣なのだ。
「そういうのは厄災戦で使えって、俺も一応厄災認定か」
リスポーンしたことで、切れてしまった強化を掛け直し、使役獣や眷属達と森を歩く。
何体か先行させてはいるが、あまり意味は無いだろう。
何せ、ミオが放っている矢がこちらに飛んできているのだから。
「あの精度と速度はズルいって」
一度に何本の矢を放っているのか。
「なんかあれだな、腕組んで戯けとか雑種がとか言い始めたらソレっぽいな」
金髪のアーチャー、我らが王様。
飛来した矢を刀で弾く。メニューを操作して現在の時間を確認する。
「もうそろ終わりだな」
現在のゲーム内時刻が13時51分。
「リアルだともうすぐ19時」
イベント開始が土曜の17時半。守護四傑のお披露目や戦闘開始前の準備等で30分。戦闘開始が18時。そして終了が19時。
「長かったような、短かったような」
プレイヤー達との距離が縮まったからだろう。他のプレイヤーからも攻撃が飛んでくるようになった。
それを刀で弾き、逸らし、回避する。周囲の眷属や百鬼達は攻撃してきた相手に向かっていくが、尽く返り討ち。まぁ最後のポイント稼ぎだろうからな。
どさくさに紛れ後ろから攻撃しようと玲奈と凛が強襲。
わかっていたと言わんばかりの顔で迎撃する。
「電」
殺しきらないように加減する。
「破砕」
「風砕」
頭上、レオンの真上から放たれた矢を、風を纏わせた刀で防ぐ。
「ソウルドレイン!」
「血泉、縛鎖血刃」
胴を薙ぐように迫る鎌を、地面から伸びる複数の鎖が阻む。
「風鳴」
「ガトリングスタンプ!」
納刀、高速の抜刀で反撃しようとした一瞬、槌を持ったガンツが飛び込んでくる。
「瞬攻、破刃」
咄嗟に攻撃を切り替え、ガンツの一撃を迎え撃つ。三連打からなるガトリングスタンプの一撃目を大きく弾き返し、強制的にアーツを中断。
「チャージ!反転!インパクトソード!」
次に飛び込んで来たのはカイドウとシェン。
厄災戦で使っていたコンボ。
大剣アーツの威力を倍にするチャージと攻撃の属性を反転。無属性から全属性に。周囲のプレイヤーをも巻き込む一撃。
しかしその攻撃は、効果を発揮する前にレオンに阻止される。
「抜刀都牟刈太刀、都牟刈災収」
抜かれた刀が、2人の大剣にぶつかると、全てのエネルギーが都牟刈太刀に吸われる。
「我、命燃やし修羅と成る」
レオンのHPをどんどん削りながら、その身に焔を纏う。
「炎帝抜刀」
全ての焔が刀に収束。その熱量は、木々を一瞬にして炭化させる程で
「そこまで!イベント戦終了です!」
今、正に振り抜こうとした瞬間、巫女姫の声が響き、戦闘終了が告げられる。
近接武器で攻撃しようとしていた者は、急制動を掛ける。
魔法や矢等の遠距離攻撃をしていた者は、魔法の発動をキャンセル。既に放ってしまった物は、レオンに当たってもダメージが発生しなかった。
「朧月夜、天叢雲、八咫鏡、八尺瓊勾玉解除。村雨、早霧、二刀は一刀になり力を封じる。アトラルカ、テンライ、アカバネ能力解除。終わりだ」
発動していたスキルや解放していた神器を封印。
アトラルカは循環を、テンライはレオンに掛けている魔法を、アカバネは紅椿に掛けた魔法を全て解除。
他のプレイヤーも強化系のスキルや魔法を解いて、武器を仕舞う。
「ランキングは公表しません。今から上位100名に人工神器、機甲武装・人鎧を。それ以降100名に機甲兵装・篭手を獲得ポイントと共にお送りします」
巫女姫の頭上で光が弾け、見える範囲全てのプレイヤーがリザルト画面を開いているのが見える。
「レオン、ミオ、カクラ貴方達は一足先に戻ってきてください。うるさい豚共を黙らせます」
うーん言葉。恐らく、ミオとカクラの力を見て色々あったんだろう。あと俺の種族とか。
「まぁ俺ら報酬関係無いし」
「精霊貰ったしね」
「専用神器もある」
巫女姫から貰いすぎな三人である。
そして戦場から転送された先は...




