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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
43/111

第42話 守護四傑そして第二回

イベント当日


イベントへの参加は何処からでも可能ということだったが、プレイヤーのほとんどは天照王国に集まっていた。

理由は、巫女姫様の挨拶を直接見る為。ミオ、カクラ、マイをなるべく近くで見る為。


「集まっていただきありがとうございます。今まで空席であった守護四傑、その座に就いた者達を紹介させていただきます」


巫女姫の挨拶もそこそこに、いよいよ今回のイベントの主役達が登場する。


「守護四傑、小さな要塞(リトルフォートレス)・マイ」


名が呼ばれたマイ。舞台袖からゆっくりと歩きながら、舞台中央へ。

辿り着くと集まっている人々に向かい、軽く一礼。カーテシー?かな。


「守護四傑、軍服の使徒・カクラ」


マントを靡かせながら歩いていく。その姿は、下手な男よりも決まっていた。

普段はつけていない軍帽を胸に当て、軽く一礼。

女性陣から黄色い声が響いた。


「守護四傑、巫の狩人(かんなぎのかりうど)・ミオ」


この場で唯一、巫女姫と同じ服装が許されているミオ。巫女服とは、神のお告げを聞き、それを代弁する者に許された正装。つまり、ミオはそれが出来ると認識された。

ミオの装備がこうなっているのは、レオンが原因だったりするのだが、それはまた今度。


「守護四傑、始祖の血(ファーストブラッド)・レオン」


舞台中央の四人が、左右に避けスペースを作る。

すると、集まった人々の方から何やら声がする。


後ろの方から少しずつ、舞台中央に向けて、人が避けていく。


そこを歩くのはレオン。その少し後ろを使役獣ヴラッドウルフのリジ。レオンの足元にはヴァンパイアキャットのシド。リジの背の上にトニー。

更にその後ろに三体の鬼。プレイヤーなら知っている。レオンの百鬼だ。


種族進化の影響で、袴から装備に少し変更があった。袴ズボンと言えばいいのだろうか?レオンの戦闘スタイルを阻害しないよう、足元が多少スッキリした。


ミオ、カクラ、マイの三人は武器を持っていないが、レオンだけは刀を四つ。戦闘時の用に帯刀している。


「この場の四名を天照王国守護四傑に任命することを、この場で改めて宣言します。以後、この四名に不敬を働いた者は、国家反逆罪として相応の罰を与えます。そして、他国の皆様。彼等への接触はどうか慎重に」


自国民には、国家反逆罪で対応。他国に向けては、何かあれば最悪戦争ですよ?と仄めかす言い方。

来賓席であろう場所にいる、偉そうな人達が青くなっている。


「守護四傑の力、如何程か気になるだと思います。ですので、異界人達の催しに便乗して、見せてもらうことにしました。ここからは、レオン。貴方に任せます」

「承ります」


舞台の中央を譲られ、場所を交代する。


「守護四傑・レオン。どうぞよろしく」


挨拶は短く。必要な事だけを話していく。


「これから、特殊な戦場にて、守護四傑である私一人対この催しに参加する異界人全員の模擬戦を行います。開催時間はこの後12時より2時間。そこで守護四傑である私の実力、そして異界人の実力をご覧下さい。他の守護四傑の力に関しては、今回一切の公表を致しません。無理矢理に聞こうとするならば」


言葉を区切り、刀に手を添え、鯉口を切る。


「ご覚悟ください」


その顔、声から色や感情が抜け落ちる。

その姿に、プレイヤーまでもが震える。


「あれは何度見ても震える」

「慣れるもんじゃない」

「あの目...罵られたい」

「...ゾクゾクする...」


プレイヤーの中に変態が混じっているが無視だ。


「これより、特殊フィールドへの転送が始まります。参加するプレイヤーは、画面の操作をお願いします。そして、参加しない生産職のプレイヤー。露店の許可を出しますので、お好きなように」


つまり、観戦席はないけど、観戦するためのお供に食事の提供したら?ということだ。


「さぁ、イベントの開始だ!」


レオンの宣言と共に花火が打ち上がり、プレイヤーの前にイベント参加の画面が現れる。


戦闘をたのしむ者は参加のボタンを押し、気合いの声と共に消えていく。

生産職のプレイヤー達は不参加のボタンを押し、露店販売の準備に取り掛かる。


更に、天照王国の正門を出てすぐの場所に巨大なスクリーンが現れ、誰でも観戦出来るようなスペースが出来る。街中にも小さなスクリーンが現れ、どこでも観戦が可能になる。


国民達も異界人の作る料理や異界人の実力に興味津々のようで、すぐさま移動したり露店に並び始めたりする。


「開始まで20分。レオン、ミオ、カクラ、マイ、神国と海国の国王に挨拶をしに行きますよ」


四人は巫女姫に連れられ、城の客室へと向かう。


既に来賓席から戻っていたのだろう。部屋には、初老の男が二人と若く見える女性が二人。他にも護衛の騎士や文官?も。


「改めてご紹介を。守護四傑、レオン、ミオ、カクラ、マイの四名です」


軽く会釈するだけに留める。騎士から殺気が飛んでくるが、相手が悪い。一瞬で倍以上の殺気をレオンから返され、腰を抜かし倒れる。


「臣下が失礼を。私は、海国アトランティア国王のオーザス・ネプチューンだ。こちらが妻の」

「王妃のレリア・ネプチューンと申します」

「僕は、神国エシオンの教皇、エリック・ポープ・エシオン。先代から変わってまだ短いから、拙いのは許して欲しい」

「エリックの妻、ロシエラ・エシオンと申します」


自己紹介されたので、こちらからも簡単に返しておく。


レオンは先に退室。準備があるからだ。

ミオ、カクラ、マイはイベントが終わるまで、ここにいることになった。


「しかし、彼一人で数多の異界人を相手に出来るのか?彼も異界人なのだろうが、数には勝てないのでは?」

「まぁその辺は、その目で確かめていただくしか...」

「あぁそれと、先程はすまぬな。殺気などぶつけてしまって」

「いえ、それは気にしていません。きっちり仕返し貰ったみたいなので」


倒れていた騎士は、レオンが退出すると壁に手を付きながら立ち上がった。


「護衛騎士に配属されて、日が浅い。まだまだ未熟だな」

「それはそちらもだろう?エリック。お前のとこの騎士も少し遅ければ同じようになっていた」

「だとしても、そうならなかっただけいいじゃないですか」


エリックの後ろに控える騎士が苦笑いしている。


「少し冷静ではなかったですね。退出する直前、見た限りでは、実力はそこまで高いわけではなさそうですが」

「...もしかして、鑑定のスキルをお持ちですか?」

「はい。実力とスキルを買われ、護衛騎士になりましたので」


エリックの護衛騎士は、優秀なようだ。


「スキルの熟練度によって変わりますが、恐らく貴方が見たのは偽りですね。私から偽装、隠蔽のスキルをプレゼントしていますから」


前日に、有名になるとこれから大変だろうからという理由で、レオン達に偽装、隠蔽のスキルと変装アイテムセットを贈った。

隠蔽スキルもちだったミオは、SPをそれなりに。


「そろそろ始まりますよ」


スクリーンを眺めながら談笑していた妻に呼びかけられ、全員がそちらに意識を向ける。


「酷い地獄が始まる」

「レオンがやりすぎないといいけど」

「それは無理だろう。レオンがやらかさなかったことの方が珍しい」


レオンをよく知る三人の言葉は、全員の耳にしっかりと残った。



「どう動こうか」


イベントフィールドに転移し、始祖化のスキルを発動。神殿顕現で要塞を顕現。要塞のてっぺんに立つ。


「ボスっぽく、眷属を送り込むか」


プレイヤー達のスタート地点は決まっている。位置は当然知っている。


「ある程度時間稼いだら、要塞仕舞って前線に殴り込みに行くか。そこでまた出せばいいし、防衛は眷属と百鬼、トニー達に任せよう」


レオンの作戦が決まり、いよいよ開始時間となる。


「さぁ、宴だ!」


一際大きな花火が打ち上がり、それと同時、。イベント開始のブザーが鳴り響く。


「朧月夜、王の晩餐、百鬼、血刀、炎刃、雷刃、水刃、風刃、光刃、闇刃」


太陽は隠れ、月が浮かぶ。紅く霞んだ月は森を不気味な雰囲気で包む。

レオンの足元、血の池から生まれ駆け出すのは、血で出来た無数の狼達。際限なく生まれ続け、既に数は千に及ぶ。

百の鬼達は、その手に様々な属性を宿した刀を持つ。


「全てを写せ八咫鏡」

「鏡が陽を表す時、宝珠は陰を表す。夜の帳を降ろせ、八尺瓊勾玉」

「天地裂く、魔より生まれし神剣、天叢雲剣。神器換装・都牟刈太刀」


瞳は全てを写す鏡のように、両手の甲には勾玉模様、天叢雲剣は左腰へ。


「我が神器は二刀一対。我が神が授け、我が神が与えた名は霧雨。此処に封印を解き、その真名を」

「守護の神格を授かり、守護神を宿す、護神刀早霧」

「妖を封じ、その妖気に当てられ変質した、破魔の神格、妖刀村雨」


村雨が左、早霧が右に。


「アカバネ、チャージブレード」


プレイヤー達と接敵するまで紅椿は抜かない。


「高みの見物だな」


レオンは準備を終え、プレイヤー達がやってくる時を待つ。



「紅い月が浮かんだ!狼共が来るぞ!」

「言ってる側からもう来てる!」


簡易マップに表示されている要塞を目指す途中、空の異変に気付き、プレイヤー達が対応する為に陣形を整える。


「ベルリン!抜かせるなよ!」

「任せろ!タンク!気張ってけ!」


「「ヘイトカウント!」」


最前列で構えるタンクのプレイヤーがヘイト集中のアーツを発動する。血の狼達がタンク目掛けて突っ込んで行く。


「遠距離攻撃開始!」


「ファイヤージャベリン!」「アイスジャベリン!」「ファイヤーエッジ!」「アローレイン!」「スピアアロー」「ウィンドアロー!」


タンクに接触する前に数やHPを減らす為に、後衛から攻撃が降り注ぐ。


「シールドバッシュ!」

「シールドスタンプ!」

「スラッシュ!」


盾で狼の攻撃を受け止め、盾の攻撃アーツや剣のアーツで狼を倒していく。

遅れて百鬼が到着。本格的な戦闘がはじまる。


「風音!抜け駆けした阿呆共を追いかけて、レオンの情報を取ってこい!」


視野を広く、戦場を見渡していたシェンが風音に指示を出す。


「恐らく、2陣共だろう。少しでいいからアイツの情報が欲しい」

「任せて。玲奈、凛、護衛よろしく」


風音率いる『風を識る』の精鋭と玲奈と凛が森へと踏み込む。


彼女達が森へと消えて間もなく、戦場に変化が起こる。


「...雨?」

「赤くないか確認しろ!」

「...普通の雨です!」

「ならいいが...不気味だな」


空は厚い雲で覆われている。それでも、紅い月は霞んだ姿を見せている。




「...何人か抜けて来たな」

「恐らく、ポイント欲しさに突出した阿呆だろ」

「数は50と言ったところか」

「アトラルカ血と魔力を回せ」


レオンの周りに数多の血刀が生まれ、過剰過ぎる魔力がレオンの瞳と口から排出され、紅い光の軌跡を作り出す。


「居たぞ!全員で囲んでボコせ!」

「ポイントは俺らのもんだ!」

「イキるなよ!」


口々に何か言いながら、武器を上段に構え...いや、構えすらない。振り上げているだけだ。


「...素人に一つ、忠告してやる。格上に対している時に、上段に武器を振り上げるのは悪手だぞ」


抜刀、一閃。


レオンの間合いに最初に入り込んだ一人の胴を両断。上半身と下半身がお別れになる。


「は?」


既に即死判定ではあるが、追い打ちをかけるように血刀が上半身に突き刺さる。


「...どうした。一人殺られただけだろう?来いよ」


一瞬の出来事。驚愕で動きを止めて居た阿呆共に対して、威圧のスキルを使いながら向き直る。


「少し、調整に付き合ってもらうぞ」


レオンは、破天と天童を倒した時に得ていた力を使う。


「破天・雷雨」


空を分厚い雲が覆い、雨が降り始める。時々、雷の音も聞こえてくる。


名前に大罪を冠して居たが、大罪の力を得ることは出来なかった。その代わり、破天の元々の力。何ある通り、破天の力を得た。少し劣化しているのもあるが。


天候を自在に操り、自身の味方へと変える。


「左二人」


レオンが呟くと同時、雷が落ちる。その場所には、二人のプレイヤーが立っていた。


「頭伐」


雷に撃たれ、動けない二人のプレイヤーに一瞬で近付き、その首を刎ねる。

重要部位欠損により即死。


「...チー」

「チートじゃねぇよ阿呆」


立ち尽くすプレイヤーの口から言葉がこぼれ落ちるが、それを遮る。


「何でもかんでもチートにするな」


自分が理解できない現象を全てチートで片付けようとする。こういう手合いは嫌いだ。


「死に物狂いで覚えた刀術だぞ」


真剣で手加減無し。その状況で稽古していた。

颯を守る為の訓練も、素手対武器が基本だった。

何度も死にかけて身に付けた体術と刀術。


「ゲームの中なら俺TUEEEE出来ると思ったか?出直してこい。お前らには百年早い」


紅い魔力光が森を駆け抜け、数分の間に50のプレイヤーは死に戻る。


「風音、凛、玲奈、今は見逃す。次は無いぞ」


遠ざかっていく気配に向けて、声を掛ける。風音と凛であれば、恐らく聞こえている。


「30分は経ったかな。さぁ、宴の始まりだ」


要塞を粒子状態に、スキル内で保管する。



「...風音」

「聞こえてる。気取られるのは覚悟してたけど」

「牽制で何本か飛んで来てた」


観察する風音達の死角から、何本か血刀が飛んで来ていた。


「気配を薄めてる私達の位置を完全に把握してるとか、化け物よね化け物」

「否定はしない」


同じクランで、厄災戦で共に強襲部隊に居た玲奈から見ても、レオンは化け物に見える。


それが、殆どのプレイヤーの共通認識になりつつある。


「ねぇ、雨が止んだ」


玲奈がいち早くそれに気付く。

先程まで降っていた雨が、急に止んでいる。

風音達は、この雨がレオンの力だということを知らない。

遠目に観察していたので、戦闘が始まると偶然雨が降り出したように見えた。


「...なんだか嫌な予感がする。急いで戻るよ!」


風で自身を覆い、空気抵抗を無くし、追い風で加速する。

『風を識る』のメンバーだけのオリジナル魔法、風の道。



「雨が止んだ...」

「おい、狼共が下がっていくぞ」

「深追いするなよ!何が起こるか分からねぇ!」


森の手前、主戦場でもその変化は訪れていた。


雨が止むと同時に、狼や百鬼が戦線を下げていく。

森に潜んでいる個体や、こちらに近い位置に陣取り、道を作っているように見える。


「...来るか」


感の鋭いプレイヤーは、その意味を悟り、緊張感を高める。

緊張感の高まる戦場に飛び込んできたのは、風音達。


「戻ったよ!」

「手短に情報共有!掲示板使え!」


警戒を怠ること無く、風音達が持ち帰った情報を共有していく。全プレイヤーに共有するため、掲示板も使っていく。


情報が行き渡った頃、全員の看破と感知に一つの気配が引っ掛かる。

全員がその気配が誰の物かを瞬時に把握。先制攻撃の用意を始める。


「神殿顕現」


突如、木々をなぎ倒しながら、森に要塞が現れる。


「はぁ!?」


全員が驚愕で固まる。いち早く復帰したベルリンがマップを確認すると、先程まで距離があったはずの要塞の反応が目の前にあるでは無いか。


「もうお前やだ!」

「ははは!んじゃ行くぞ!」


正門の上から、倒れ込むようにしてこちら側に。壁を蹴り、最前列に食い込む。


「鳴神」


FFは無いが、敵陣のど真ん中に行けば、攻撃の対処は楽になる。

範囲魔法は避けないと行けないが、それ以外は避けるのも防ぐのも大変簡単だ。まぁ、それが出来るだけの実力が無いといけないが。


「どうしたどうした!これじゃポイントを稼げないぞ!」


縦横無尽に敵陣を駆けながら、すれ違う敵を斬りまくるレオン。即死はしないが、一撃で半分近くHPを減らされている。


「お前!レベル高すぎるんだよ!てかステータス!」

「教えるわけないだろ!テンライ、チャージボルト!雷砲一閃!」


回復が間に合わなかったプレイヤーが数人死に戻る。


「なんだその威力!?」

「精霊魔法ってやつだ!取得方法は終わったらな!」

「ふざけんな!?スローイングハンマー!」

「チャージスタンプ!」

「心月」

「「はぁ!?」」


純粋な攻撃力ならトップのハンマー系の攻撃を見えない斬撃で弾く。


「眷属共!喰い散らかせ!」


レオンが暴れることで乱れた戦列に、レオンの眷属、狼や百鬼が斬り込む。

戦場は混戦に。



「まぁ、こうなりますよね」

「知ってた」

「対策はあるので、実行しますね」



アナウンス


レオンを除く全プレイヤーにワールドスキル発動


全プレイヤーの厄災に対する特攻


「は?」

「おい、巫女姫ェ!!」


全プレイヤーが固まる。今度はレオンも。次の瞬間には、虚空に向かって吠えているが。


「だって、暴食、憤怒、傲慢を持っているでしょう?なら、これくらいの措置ありかなって」

「なら、先に言っとけぇ!俺ももう少し能力使えるだろうが!」


レオンの両腕を黒い模様が埋め尽くす。


「モード・憤怒」

「飢えを満たせ、村雨ェ!!」


刀身を包む紅色が柄まで広がる。そして、レオンに特殊状態異常・飢え が付与され、エリアボスのようなHPバーが表示される。


全身から紅い魔力光を滾らせ、瞳孔は紅一色に染る。背中からは血の翼を生やす。


「吸血鬼の始祖...神話の存在...」


それは誰の呟きか。


レオンの姿にプレイヤーだけでなく、現地人も呑まれていた。


「巫女姫様、彼は一体」


エシオンの王、エリックの問いに巫女姫は視線を向けぬまま答える。


「最初に紹介した通りです。始祖の血・レオン。この世に始祖と名のつく種族は一つしかなく、それは絶滅したと言われていました。もうお分かりになりますよね?」

「本当に始祖の吸血鬼だと言うのか!?」

「あの種族がどれだけ凶暴だと思っている!?」


声を荒らげる二人の王に対して、巫女姫は冷めた目を向ける。


「控えろ新参者共。貴様らが彼の何を知っている。あの種族の何を知っている。知りもせず、勝手な妄想で語るな。貴様らそれでも一国の主か?」


ミオ達も聞いたことの無い冷たい声。その声は、怒りや悲しみ、後悔の念を感じる。


「都合のいいように神話をねじまげ、事実を隠蔽する。奴の影響があったと言え、許し難い」



「再開するぞ」


呟くと同時に踏み込む。


「疾風迅雷、瞬攻、浅太刀」


再びプレイヤー達の陣形の内側で駆け回る。

すれ違いざまに切り傷を付ける程度。しかし、HPは4割から6割持っていかれ、血印という状態異常が付与される。


プレイヤー達も何とかしてレオンに攻撃を当てるが、一人一人が削れるHPは微々たる物。レオンの自動回復のせいで、未だ1割も削れていない。


「こいつ、これで解放(ワールドスキル)無しかよ!」

「うちのマスター、バケモン過ぎる!」

「リアルとのギャップ酷すぎませんかね!」


「アカバネ行くぞ」


何とか対処しようとするプレイヤーに、レオンは攻める手を緩めない。相手を壊滅に追いやる一刀を抜き放つ。


「紅椿、抜刀」


抜かれると同時、その刀から発せられた気配に、全プレイヤーが視線を集中させた。


「テンライ、チャージボルト、雷砲一閃」


チャージブレード、納刀時間×一分0.5%のダメージボーナス。凡そ45分納刀されていた今の一撃は、22.5%のボーナスが掛かる。


チャージボルトで強化された雷砲一閃。これを受けて生き残れるプレイヤーは、現状存在しない。とある例外を除いて。


隔つ壁は堅牢なる城壁(ベルリン)!」


その例外を持つプレイヤーが動く。

対厄災のワールドスキル。全てのダメージを一手に引き受け九割減。

レオンの今の一撃も余裕で耐え抜く。


「神器換装、月影(つきかげ)


ベルリンに向かって駆けながら、インベントリを操作、刀を納刀し切り札を装備する。


「柏手」


両手を打ち鳴らし、ベルリンの正面で拳を構える。


「取っておきだ。一拳」


その名前を聞いて、ベルリンの顔が引き攣る。

レオンの拳を受け、ベルリンの体が後ろへ押される。


「やべぇの来るぞ!今のうちに削れ!」


恐らく、技の名前が他のプレイヤーにも聞こえていたのだろう。必死になってレオンのHPを削ろうとする。


「双葉、三輪、四道」


双葉...左右の拳で一点を一秒の間に2度打つ

三輪...顔、鳩尾、腹の三点を一秒間に打つ

四道...掌底で顔を上に逸らし、無防備な胴体に三連打


一拳で盾を弾かれたベルリンに、その連撃を止めることは出来ない。


「五つ星、六貫、七輪、八天」


五つ星...2秒の間に五箇所を打つ

六貫...貫手で喉と腹を突く

七輪...円を描くような軌道で繰り出す足蹴り2連打

八天...残像が残る程の高速八連打


「九里」


九里...足払い、背負い投げ、少しの助走で飛び上がり、空中から踵落とし


柏手から始まる舞は、次で一旦の終わりとなる。


「十重・百燐」


レオンの拳が白い光に包まれ、起き上がったベルリンの背中に添えられる。


踏み込み、その衝撃を拳に上乗せし伝える。

この技の原理は発勁に近い。


バゴォーン!!


一連の攻撃を受け、ベルリンのHPは五割を切る。

更に、体勢が不十分であった為、衝撃を受けて味方に衝突しながら大きく吹き飛ばされる。


「なんつー音...」

「アイツよく生きてんな」

「ヤベェ奴にやべぇスキルが...」

「ぼさっとすんな!まだ終わってねぇぞ!」


一連の攻撃を見て、動けなくなっていたプレイヤーが、シェンの叱責で我に返る。


「一拳」


声がして振り返り、そのプレイヤーは死に戻る。


「とにかく逃げろ!今のアイツの攻撃受けたら、ベルリン以外一撃だぞ!」


格闘術アーツは二巡目からその威力を倍にする。


「双葉、三輪、四道、五つ星、六貫、七輪、八天、九里」


逃げる者、何とか止めようとする者。ランダムに狙い、アーツを一度使う度一人、また一人と死に戻る。


「双重・白蓮」


そして、舞が完全に奉納される。


レオン自身が白い光を纏い大地を駆ける。それだけで、何人ものプレイヤーが吹き飛ばされ、瀕死に追い込まれる。


駆け抜ける勢いそのまま、復帰しようとしていたベルリンを打つ。


ただでさえ、馬鹿にならない威力になるレオンの格闘術アーツ。それが倍になって襲い来るのだ。

HPを回復出来ないベルリンは、死に戻ることになる。



「レオンが離れた隙に、要塞を落せ!」


レオンが離れたのを好機と捉え、要塞に攻め込もうとするが


「簡単には通さねぇよ?」


要塞の門が開き、中から百鬼(ヴェルウェナノミコト)、血の狼、リジ、シド、トニーの使役獣が出てくる。


そうして、足止めされている間に、レオンが背後を強襲する。


「やってる事キモすぎ!」

「少しは手加減しろよな!?」

「ガトリングスタンプ!MPの回復間に合わねぇよ!」


ワールドスキルが発動したとしても、攻撃がレオンに当たらなければ意味が無い。



「これでもダメですか」

「レオンをそう簡単に捉えられるはずないからね」

「なら、もう一つの策を実行した方が良さそうですね」

「もう一つ?」

「ミオ、カクラ、レオンを倒すため、プレイヤー達に協力しなさい」



アナウンス


プレイヤー陣に援軍が到着。戦場へ転送します


「援軍!?」

「誰だ!」

「意味のある援軍なんだろうなぁ!?」


援軍という言葉に盛り上がるプレイヤー。一方、レオンは嫌な予感に顔を顰める。


「四矢・破砕」


転送後の光が消える直前、レオンに向けて矢が放たれる。


「チッ!だろうな!」


予想はしていたので、余裕をもって回避。


「そうだよな!一人なわけないよな!」


回避した先に強襲する気配を察知し、血刀で牽制、距離をとる。


「一切の公表をしないって宣言したんだが?」

「レオンが暴れすぎるのが悪い」

「まぁマイちゃんは来てないから」


援軍に来たのは守護四傑の二人、ミオとカクラ。プレイヤー達にとって最高の援軍だ。


「よっしゃ来たァ!」

「これは行ける!」

「カクラを中心に戦闘組み立ててけ!ミオの射線は気にするな!何処からでも通すからな!」


プレイヤーの指揮が一気に上がり、戦況が変化していく。


「喰い破れ!アルジェントリーパー!」

「鳴神!」


間合いの外から振りかぶられた鎌を迎撃しようと刀を振るう。


「は?」


刀が鎌に触れた瞬間、刀が纏っていた雷が霧散した。


「ッ!魔力喰か」


アルジェントリーパーに付与されている能力の一つ魔力喰。

その名が示す通り、魔力を喰らい敵の魔法を無効化する。


「レオン!全力で行くぞ!」


胴を薙ぐ様に振られた鎌を下から弾き上げて、姿勢を低くすることで回避する。


「風鎌」


弾かれた勢いを殺さないよう、身体を独楽のように回転。再度振り下ろすと同時に風を纏わせ、攻撃の範囲を広げる。


「三矢・囲い矢」


退路を塞ぐように飛来する三本の矢。簡単に避けれそうだが


「ほんっと、どうやったら矢がブレて見えるんだよ」


矢がボヤけて、上手く捉えることが出来ない。


「破天・風域、嵐断、風砕」


強力な風が矢を弾き、風で強化された刀身が風を纏った鎌を相殺する。


「アテミア、撃ち抜くよ。第一位階魔法・必中」


拮抗状態に陥ったレオンの背後から心臓目掛けて飛来する。


その矢は風域を無視して貫通。レオンの身体に必中。レオンのHPを減らす。


「精霊魔法か!」

「グリム、第一位階魔法ソウルドレイン」


レオンの意識が逸れた一瞬、カクラも続いて精霊魔法を使う。


レオンのHPが更に減り、カクラのHPが上限を超えて回復する。


「ギアボルト、ライトニング」


レオンもテンライの精霊魔法を使用。身体強化で拮抗状態から抜ける。


「アトラルカ第二位階・マナエンハンス」


レオンのMPがゼロになり、その後MP総量が半分になる。


「アカバネ、第四位階・ファントム」


紅椿の刀身が霞。


「疾風迅雷、瞬攻、目貫」


カクラへ最速で向かい、視力を奪うべく目を狙う。


「ワウテウ!イリュージョンボディ」


狙われたカクラは咄嗟にもう一体の精霊魔法を使用、攻撃をずらす。


「さっきからミオの気配が掴めないのは、精霊魔法だな?アトラルカ、予想は付くか?」

「恐らく、ハイドバードだろう。精霊狩り共の天敵、精霊の守護者たる王級精霊だ」

「全く揃いも揃って王級、超級か」

「主も含めな」

「まぁ、な!」


四方八方から飛んでくる矢に魔法。それ等を回避したり、弾いたり逸らしたり。


ミオとカクラの援護のおかげだろう。他のプレイヤーの攻撃もレオンに当たるようになってきた。しかし、HPが5割を下回ることはない。


「ハイバー第四位階エレメントキラー、アテミア第五位階属性拡散爆破」


ミオの放った二つの矢は、レオンが纏わせている雷を吸収、真逆の属性冷の爆破と雷と冷の拡散爆破が起こる。


レオン以外のプレイヤーには何の影響も及ばさないが、レオンには牙を剥く。


冷、氷な訳だが不純水の塊だ、雷を良く通す。


「効果無いけど、なんか視界がイラつく!」


攻撃の手が緩まない為、そこから移動することが出来ない。更には視界不良で攻撃の対策も上手く出来ていない。


「洛陽」


陽属性が刀身に集中。それを振り下ろし爆発させる。

太陽が如き熱量と光は、周囲の氷を蒸発させ、雷属性干渉、またも爆発を起こす。


魔法も矢も弾かれ、爆風で近くに寄っていたプレイヤーも吹き飛ばさる。


「あーくそ。この使い方自傷ダメージ酷すぎる」


爆煙が晴れた爆心地の中心には、HPを3割まで減らし自動回復で徐々に回復しているレオンが。


「まぁ、攻めてくるよな」


その姿を見ると同時に、ほとんどのプレイヤーが詰め寄ってくる。


爆破のせいで、地面が荒れている影響で間合いに入るまでまだ余裕はある。ならば


「命を全うしろ、村雨」


紅椿を納刀、村雨を抜刀。鋒を地面に突き刺し、能力を発動させる。


血が地面を伝い、高速で広がっていく。蜘蛛の巣の様に広がったそれは、血印という状態異常が付与されたプレイヤーのHPが2割程消失。広がっていた血がレオンの元に戻ると、レオンHPが最大値の2倍になっていた。


「はぁ!?」

「おま、ふざけんな!」

「ボスに超回復持たせんな!」

「レオン全力すぎ!」

「後でお話だよ!?」


プレイヤー達からブーイングが飛び交う。ミオとカクラもそちら側だ。


「まぁ、始祖化状態で村雨の解放してないとだから、頻繁には使えないけど」


紅椿も抜刀し、二刀を右肩に担ぐように構える。


「疾風迅雷、血水刃(ちすいじん)・円環」


斜め前に飛び出し、上空で縦に円環を描くように刀を振るう。飛び散る血と水は空中で留まり、刃の形を取り、地上のプレイヤーに降りかかる。

レオンを中心に円環を描くように落ちる刃。回避するのは簡単だが、レオンがその程度で終わるはずがなく。


「風域、風鳴、嵐断、風砕」


上空から風の刃を塊の様に飛ばす。


風域によって滞空。風鳴による高速抜刀、納刀の繰り返し。嵐すらも断ち切る剛力で刀を振るい、風砕の強化によって、大地を抉りプレイヤーを引き裂く。


地上は阿鼻叫喚に包まれ、ミオとカクラも風の刃の対処でレオンに攻撃する余裕がない。


五分程経って、レオンが地上に降り立つ。


プレイヤーの数も減ったようだが、遠くから駆け戻ってくるプレイヤーの姿が見える。減ってもすぐ戻って来てるようだ。


「まぁまだ時間はある。宴はまだ終わらせねぇ!」

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