第34話 覚醒そして討伐
「天道・柊」
「魔刃」
天童の袈裟懸けで振り下ろされる刀を、逆袈裟で真っ向から迎え撃つ。
問題無く弾き返すが、レオンのHPが僅かに削れる。
「柊...棘...武器で受けても固定ダメージか」
「察しがいいな」
天童の呟いた技名から、ダメージを受けた理由を考察、看破する。
どちらの攻撃も、必ず対処され有効打は一向に入らない。
天童がレオンの首を狙って振るった刀を、見切ったレオンは最小限の動きで回避。薄皮一枚斬られるが、止まることなく空いた胴体へと刀を振るう。
それを、天童が引き戻した刀の柄で強引に弾く。体勢は崩れないが、対処困難な状況に。危うく有効打が入る直前、レオンの刀が天童の刀を弾く。
間に合うと思っていなかった天童。一瞬出来た隙を、今のレオンは見逃さない。
「雷、電」
レオンの得意戦法、自身の周囲に特殊な磁場を発生させ、刀を加速させる。
雷魔法、とプレイヤーから呼称されているが、ゲーム内判定は風の上位魔法。
最初の有効打はレオン。天童に計十二の傷跡を刻む。
「変わった使い方を!それにその刀!神器だな!」
酷く楽しそうな声で話しかける。
「そうだ。神器霧雨、俺の相棒だ」
「やはりか。なら俺の刀がこうなるのも必然か」
天童の持つ刀は、既に刃毀れが酷く、いつ折れてもおかしくない。
「前会った時に刀をボロボロにされたんでな。お返しだ」
「ハハハ!ここからは俺も神器を持ち出そう!」
天童の手が虚空を掴み、胸を叩く。
「滅殺・天刃七星」
そうして現れたのは、刀身は深い黒、鍔は薄い黒、柄も深い黒と黒一色の大太刀。
「かつて俺が、厄災を殺した時に使った神器だ」
厄災を倒した英雄と共にあった太刀は、その英雄と共に厄災へと転じた。
「構えろ、レオン」
「ッ!」
全身を襲う気配に、レオンは全力で受けの姿勢を取る。
「特殊抜刀術/守勢・大樹!」
嵐の中でもビクともしない大樹のように、完全な受けの構え。
集中しろ!あの時の技が来る!感覚を研ぎ澄ませ!防いで見せろ!
「死突絶閃」
天童とレオンが初めて出会った時、レオンが防げなかった一撃。神器と言う武器を得て、更に強力になった一撃がレオンを襲う。
「......」
前回は、索敵範囲内に侵入した敵を迎撃をしようとした。けど、あの攻撃の速度は今の自分の全力よりも速い。だから刀を振るっても間に合わない。回避も間に合わず、防御も意味を成さない。
命の危機、絶体絶命と言う状況がレオンの覚醒を促し、レオンは深みへ踏み込む。
「抜刀術奥義・心月」
鋒がレオンの防具に触れた瞬間、天童の身体に突如衝撃が襲い、身体が弾かれる。
「何が!?」
左半身に深く刻まれた刀傷。右手を当てながら、レオンを睨む。
視線の先、睨まれるレオンは肩が大きく上下するほど呼吸を繰り返す。
鋒がほんの少し触れただけにも関わらず、レオンのHPは2割まで削られている。自動回復の効果でジワジワと回復してはいるが、ポーションで回復の方が今は早いだろう。しかし、レオンは戦闘中と言うのも忘れて、成功した『心月』の余韻に浸っている。
「チッ!時間切れか」
突然、天童が警戒態勢を解いて虚空へと話しかける。突然の声に、レオンの意識は引き戻される。
「わかった。コイツは任せる」
レオンに背中を向け、最後に言葉を捨て行く。
「生きていればまた会おう。その時こそ、お前を殺す!」
景色が歪み、天童の姿が消え、別の何かの姿が現れる。
「「ここからは、私が貴方の相手をしましょう!」」
五つ首の大蛇。
「破天、大蛇ッ!」
「いいですね!瀕死じゃないですか!これは有難い。主が喜びますね!」
重なって聞こえる声が煩い。
「あぁでも、完全に殺さない方が良さそうですね。天童が授かった主の権能の為に」
「主の権能...グレーゴルの権能?まさか!」
「そうですよ異界人!簒奪です!」
最悪だ!プレイヤーの力を奪われたら、どうすることも出来ない。
「あちらが終わるのを、貴方を嬲りながら待ちましょう」
五つの口が開き、何かが飛んでくる。
息を整えながら、それ等を全て回避する。
「毒、いや、酸か」
吐き出された何かの着弾地からは、何やら異臭がする。蒸気の様な何かも立ち上り、危険だという事を明確に伝えてくる。
「さぁ!もっと行きますよ!」
酸に混ざりながら、魔法まで飛んでくる。
直撃は避けているのと自動回復のおかげで、HPが尽きるなんてことにはならない。
しかし、最悪な事に周囲の魔族と魔獣の数が眷属を上回っている。
眷属より敵の方がレベルが高く、能力も高い。その為、レオンが眷属を増やすより敵に殺られるのが早い。
「炎獅子!大蛇!鳳仙禍!」
何とか隙をみつけ、破天にでは無く周囲の魔族魔獣に向けて技を放つ。
これで周囲に向けている意識を破天に集中させる。
殺すことが目的になっていないからこそ、レオンは周囲に意識を向ける余裕があり、呼吸をおちつけることが出来た。
レオンが落ち着いたのを、まるで見計らった様に破天が衝撃発言をする。
「あぁそういえば、私の封印、実は完全に解けてないんですよ。最後の封印の鍵は巫女姫でしてね?あの女が生きている限り、私は天候を操ることが出来ないんです。しかも、殺そうとしてもあの女は死なないんです。というか死ねない。だからこう考えました。生物の胃の中なら殺せるのでは?って」
話の意味が分からなかったが、段々と頭が追いつく。つまり、
「私の中に巫女姫がいるんですよ。もうじき溶けきりますかね?」
レオンの動きが止まる。魔法が直撃して、吹き飛ばされる。吹き飛ばされながら、レオンの研ぎ澄まされた感覚が、破天から感じる違和感を感じ取り、それが何かを理解する。
「ムー居るな」
受身を取らず、仰向けに倒れながらレオンは虚空へと話しかける。そこに居るであろう者へと。
「はい」
「巫女姫は助けた方がいいか」
「...できるなら」
「なんでだ」
「彼女は使命に縛られてきました。せめて、これからの人生だけでも幸せを」
どれだけ長い間この世界で封印されていたのか。この世界のゲームという封印世界。歴史を創り育てるのにどれだけの時間を掛けたか。
「それは良くない。命があるなら、人生は楽しむべきだ。彼女が使命から解放されて人生を謳歌する。それを可能に出来る力があるのなら」
レオンは立ち上がる。
「ムー、巫女姫の名前は」
「...花憐...花のように、可憐で美しい子に、そう名付けられた普通の女の子の名前です」
瞳を閉じて、破天の中の気配を明確に捉える。
「八咫鏡」
開かれたレオンの左眼は、破天の中の花蓮を映し出す。
「彼女をここに」
次の瞬間には、レオンの腕に花憐が抱かれていた。
「は?」
破天の間抜けな声が聞こえる。何か喚いてる気もするが今はスルーする。
「ムー、花憐の状態は?」
「気を失ってるだけです」
「そうか。これで心置き無く殺れる」
トニーを召喚し、その上に寝かせる。
「我が神器は二刀一対。我が神が授け、我が神が与えた名は霧雨。此処に封印を解き、その真名を」
「守護の神格を授かり、守護神を宿す、護神刀早霧」
「妖を封じ、その妖気に当てられ変質した、破魔の神格、妖刀村雨」
早霧をトニーの前に突き立てる。
「百鬼。ヴェルウェナ、この子を頼む」
「任せな」
突き立てた早霧を一体の鬼が抜き、レオンに応える。
血操術・百鬼によって生み出された鬼の一体に、ヴェルウェナの意識を憑依させた。
「血を吸え村雨」
村雨がレオンの血を吸い紅く染まる。
「なぁ破天、この城壁、結界か何かだろ?」
「私の質問に答えろ!何をした!?」
「お前の中から巫女姫を助けた。それだけだ。答えたんだからそっちも答えろ」
「ふざけるな!」
魔法と酸、更には魔獣が襲いかかってくる。
「始祖化」
新たなスキルを使用する。レオンの黒髪が変色し銀髪へ。そして、空には紅い月が二つ。
「血刀」
血刀が瞬時に生成、魔法や酸を相殺する。
「まぁ、結界にしろそうでないにしろ、破壊すればいいだけか」
レオンは城壁の全てを意識の内に収める。
「界断」
チィン
戦場全体に響く納刀の音。その次に何かが崩れるような音が響く。
対・七つの厄災スキル『界断』。認識した界を全て断ち切る。
「予想通り。これで全部捉えた」
城壁の全てが崩れていく。そして城壁の向こう、入れ替わった天童やミオ達の気配を捉える。
暴虐天童は破天大蛇と入れ替わると同時に、プレイヤーの力を簒奪するために前線に立つ。百程力を奪った頃、何かの気配を感じる。
その気配のする方に視線を向けると、城壁が崩れていくのを目撃する。
「まさか...」
その予感は的中した。先程より濃密な気配を纏ったレオンの姿。
「貴様は面白いな!レオン!」
その姿を認識するなり、一足でレオンへ襲いかかる。
レオンは天童を一瞥するとリジとシドを召喚、足止めをさせる。
「破天、まずはお前からだ」
戦場を威圧するレオンの気配に、プレイヤーも魔族も魔獣も動きを止める。
「ヒキシャァァァァ」
雄叫びを上げ、破天の首が分かれていく。
「力はそのままに五つに分かれる。私の力を舐めるなぁ!」
襲い来る五人を捌きながら、レオンは周りへ指示を出す。
「トニー、花憐をマイに預けて。その後は暴れろ。ヴェルウェナは引き続き彼女の護衛な。プレイヤー共!ぼさっとすんな!」
ヴェルウェナはトニーと巫女姫を抱え、素早くマイの元へ移動する。
「レオンからだ。巫女姫を頼むって」
「任された」
「ほら、スライム。お前は暴れるんだろ?主の役に立ってこい」
敵陣向けて投げ込まれたトニー。その姿が巨大化する。
ワールドアナウンス
WARNING、WARNING
厄災、暴食、グラトニースライムが復活します。
全プレイヤーに流れる不穏なログ。
自らの復活に歓喜するように、グラトニースライムは魔族魔獣を飲み込む。
「天童様!何故厄災がこちらを襲うのですか!?」
「攻撃が効かない!」
「吸収されてる!?吸収できない程の攻撃を集中させろ!」
「馬鹿!周りには他の敵も居るんだぞ!」
先程まで優位に立っていた魔族魔獣は、グラトニースライムの復活に、そしてグラトニースライムが自分達を襲ってくることへの混乱で、戦線が崩れ始める。
「魔族喋れるんだね」
「そうみたい」
「え、二人共驚くとこそこなの?」
厄災の復活で驚いていたアミューは、魔族が喋ったことに驚いているミオとマイに驚いた。
「主の軍勢とはいえこの程度か!」
それを視界の隅に捉えながら、天童は二匹の獣を相手する。
「しつこい!格下だと言うのに、何故殺せない!」
レオンのブラッドウルフとヴァンパイアキャット。使役獣はプレイヤーの様にステータスが存在しない変わり、彼等の強さは主人と自身の経験が反映される。つまり、種族進化しレベルが低い状態でも、戦闘経験をそれなりに積んでいれば、問題がないのだ。
「敵陣が崩れ始めた!アミュー。再度指揮を!」
「ッ!シェン、カイドウ、カクラを筆頭に敵陣を食い破りなさい!」
「おう!」
「任せろ!」
「暴れる」
アミューの指揮で三人が先陣を切る。
「ミオ、彼等の援護を!弓、術士隊も!あのスライムは攻撃しないように!」
「了解!一矢・鏖殺!」
「アローレイン!」
「フレイムアロー!」「ウォーターアロー」
先陣を切る三人を援護するように、弓、術士隊が援護を開始。味方を巻き込まないように、極力範囲の狭いアーツや魔法を使う。
「前衛部隊は解散!全プレイヤーに告ぐ!先陣の三人を援護!敵軍を殲滅せよ!」
「オラァ!」
「行くぜェ!」
「反撃だァ!」
「さっきの恨みィ!」
死に戻りしたプレイヤーもそうでないプレイヤーも、全員が一斉に敵陣へ攻め入る。
「弓、術士隊、上空警戒!急降下来ます!」
「撃ち落とします!エアースナイプ!」
「ロックブレイク!」
落下する敵を風の魔力の塊で撃ち落としたり、落下する敵の真下の地面、そこから岩を撃ち出す。
全部を仕留めれる訳では無い。だが、前衛達への被害は抑えられる。
「カイドウ!切り開くぞ!」
「おう!」
二人は背を合わせ、大剣を振りかざす。
「「システムリロード!」」
刀身を魔力で拡張。
「「チャージ!」」
大剣アーツ、チャージ。攻撃系アーツの前ならいつでも発動可能。次に発動する攻撃系アーツの威力を二倍にする。
「「反転!」」
反転...二人が前回のイベントで得た特殊スキル。
MPを使用して発動する、全てのアーツ、魔法の属性、効果、対象のうち任意で一つ反転させる。
今回反転させるのは属性。無属性攻撃のインパクトソード。無属性を反転すると?
「「インパクトソード!!」」
火、水、風、光、闇の基本五属性を得たその攻撃は、なんか凄いことになった。
システムリロードからのインパクトソードの威力は今回、開幕で使いある程度判明した。
周囲十メートルに魔力の波を生み出して敵を吹き飛ばす。その生み出される波に全属性が付与された。とにかく凄いことになった。
この波を受けた敵は、火で燃えるわけでも、水に溺れるわけでもなく、風に刻まれたり、光で浄化されたり、闇に侵食される訳でもない。ただ消えるのだ。
属性相性で対消滅させ合うのか、その場にあるものが巻き込まれ消えて無くなる。
「術士隊!広域魔法用意!展開場所は、脳筋二人が作った溝!」
シェンとカイドウが作った溝を中心に、術士隊が広域魔法を展開する。
「「落水!」」
数人が同じ魔法を使い、溝を水で満たす。
「「広域魔法・アクアスパイダー!」」
溝を満たす水が、薄く戦場の地を覆い始める。
アクアスパイダーの効果自体は、水魔法の発動と威力を増加させるだけのもの。だが、知識あるものなら知っている。不純物の混ざった水が齎す脅威を。
「「サンダーボルト!」」
雷鳴が轟く。雷は水を伝播し、戦場を駆け巡る。
敵は感電、硬直する。
「システムリロード!ガトリングスタンプ!」
「システムリロード!」「システムリロード」「システムリロード!」
プレイヤー達はその硬直を逃さない。武器の力を解放。
「スローイングランス!だけど、ゲイボルグ!なんてな!」
「インパクトソード!ならエクスカリバーか!?」
「チャージ!インパクトアックス!」
楽しそうである。さっきまでの危険な状況を脱したからなのか、強力な味方が現れたからなのか、プレイヤー達は活き活きとしている。
「これならいくら来ても問題ない」
「ヨルムンガンド...」
「空のお願いしていい?数はまだいるから」
「わかった」
レオンとグラトニースライムに活躍の場を奪われてしまったヨルムンガンドは、上空の敵を一方的に蹂躙する。
「後はレオン待ちかな」
ミオの視線の先には、五人に分かれた破天大蛇と戦うレオン。
「何故当たらない!こちらは五人だぞ!」
「...」
「キシャァァァァァ!!」
攻撃をただ避けるだけ。刀は納刀し、完全な逃げに徹しているとはいえ、五人同時の攻撃をものともせず、レオンはひたすら避け続ける。
「...よし。もういいな」
呟くと、距離を取り、武器を「村雨」から「赤椿・紅蕾」に。
「システムリロード・三」
城壁内に侵入した後に一度使っているので、残りの魔力をリロード。空になったカートリッジが排出され、新たなカートリッジをレオンがセットする。
「蛇腹剣...」
拡張された刀身は最低の二十メートル。最大射程である一キロは今は必要ない。
「懐に潜り込めば、その長さでは対応しきれないでしょう!」
勝手な思い込みで破天が突っ込む。
「それくらいの対応ができないなら、この形態にする意味がないだろう。するからには対応できるんだよ」
左手で刃と刃の間を持ち、自身を独楽の様に回転。引き戻された刃が、破天の背後を強襲する。
「クソっ!」
サイドステップで避けたのを確認すると、左手を離し刃を戻す。
リーチを伸ばすのも縮めるのも使い手次第。直剣に戻し、身体を回転させた勢いそのままに破天に攻撃する。
「ガッ」
蛇、鱗が影響しているのか、生身にも関わらず小さな傷をつけることしかできなかった。
「鱗?いや、魔力障壁の可能性...」
「貴様ァ!!!」
狂乱したように魔法を乱れ撃つ。周囲の魔族や魔獣、レオンの眷属が被害を受けるが、レオンも破天も気にしていない。そのどちらも補充が効くから。
「問題無いとは思うが数が多い。アレを呼べれば...」
「あの門を使えば呼べますよ?」
「マジか。よしやろう」
魔法を避けながら、現状を更にこちらに有利に出来る策を実行する。
「リジ!シド!トニーの方に向かってくれ!」
レオンの指示に素早く反応。天童の攻撃を軽やかに回避し、離れていく。
「疾風!迅雷!」
これまたレオンの得意技。天童を強襲し、血刀で破天を抑える。
「ふざけるなァ!人間如きが!一人で厄災を二人も相手に出来ると思うな!」
言葉にしたのは破天だが、天童も内心では同じように憤慨している。
レオンは攻撃を受け、流し、避け、反撃に繋げる。不要な動きをしないため、受けてもいい攻撃はそのまま受ける。無視できない威力の攻撃は全て流すか避ける。
六対一。数で見れば圧倒的不利な状況だが、レオンは直撃を貰うことなく立ち回る。少しずつ目的の場所まで。
「天童・秋茜!」
身体を回転させ、遠心力の乗った一撃を受け、その勢いを殺さないように後ろへ飛び退く。そしてそのまま、目的の物へ手を付ける。
「呼ぶには何かしらの対価が必要だよな!触媒とも言うが!来いよ、エルニエルト!」
手を触れたのは、魔族達が湧き続ける門。レオンのMPが半分程持っていかれる。
門はヒビ割れ空間が歪み、一隻の巨大戦艦が姿を見せる。
「蹂躙せよ!」
現れた戦艦は宙に浮かび、その兵装を持って上空の敵を撃ち落とす。
「そろそろいい頃合い!ブラッドレイン!」
レオンの腕から流れる血が上空へと昇り、雲のように広がる。そこから降るのは赤い雨、血の雨。
「門が!?」
「これ以上の援軍は無しか!」
「キヒッ!構いません!殺せばいいのです!」
「「キヒッキヒッ!」」
門の崩壊は敵味方にとって衝撃的であった。だが、それに驚いていられない。魔族、魔獣を蹂躙する鋼鉄の空飛ぶ船。突然の出現とその猛威に、幾ら魔族であろうとも対応しきれない。
対応する為の時間をレオンは与えない。敵の戦意を削ぐために、まず一つ決着をつける。
「いい加減蛇は死ね!ブラドツェペシ!」
血の雨が付着した魔族達は、その身体を血の槍に串刺しにされる。
「こ、れは!?」
「チッ!この雨か!」
雑魚の魔族や魔獣は、全身に浴びた為、複数の槍に刺されている。破天も五体の身体はHPを共有しているため、数は少なくともダメージが大きい。
天童も数も少なく、多少のダメージは受けているが、それを無視してレオンに攻撃を仕掛ける。
「特殊抜刀術/攻勢・咆閃。心月」
咆閃・・・次の物理攻撃の威力増加。
また左半身を衝撃が走り、天童は弾かれる。
「またか!?」
原理の分からない攻撃。対処出来ないことに苛立ちを覚える。
「血操術・血染め」
『血染め』・・・他人の血を体内に取り込んだモノを、その血を用いて撃ち破る。
今回の場合は、レオンの血をモンスターが取り込んだ。このスキルの発動により、モンスターの体内から無数の血の槍が飛び出し、血濡れた死体になる。
「キヒッ?」
身体から飛び出る無数の槍。破天が紅く染まっていく。
「血刀抜刀」
動きの止まった破天をレオンは逃さない。
八咫鏡、村雨の力を使い、五体同時に首を落とす。
「散華血・五剣」
八咫鏡の霊体分身に、村雨が内包する妖刀を持たせ、一瞬の内に対象の首を落とす。
ワールドアナウンス
厄災・破天大蛇エンヴィーヒドラの討伐を確認。イベントが進行します。




