第32話 晩餐そして目前
「明日から攻略が始まるぞ!鍛治組!リロード武器はどうだ!?」
「レオン、ミオ、カクラ、マイ、シェン、カイドウ、ベルリン、風音、凛を筆頭に、各クランのリーダー陣は出来てます!」
「最終チェックも終わって、今は当人達に使用感を確かめてもらってます!」
「よし!下に回す分はどうだ?」
「リロードを一つだけにする方向でやってるので、『解放者』全員に配る分は」
「それを除けば二千が限界です!」
「アミューのとこは武器はいらねぇ!それを他に回せ!風音のとこも無くていい!できるならもう少し数を増やせ!」
「錬金組どうだ?」
「できた!安定して蘇生薬を作れる!今から調薬レシピを確立させる。少し待ってくれ」
「了解!暇してるプレイヤーに依頼回せ!素材をありったけ持ってこさせろ!」
「上級と中級ポーション用も頼む!」
「ポーションってHPとMPどっち優先だ!?」
「知らねぇよ!とりあえずMP多めにしとけ!」
「おう!なんかあったらお前の責任な!」
「あ!?いいぜ受けてやる!」
「そこの赤髪大剣の男!突出しすぎるな!敵も大軍引き連れてるんだぞ!一人になったら死ぬぞ!!」
「タンク動き遅い!もう一歩判断を早く!それが無理なら、体勢を早く立て直せるように体幹鍛えろ!」
「スキルに頼り過ぎ!自分の技量で戦えるようにしなさい!MP切れたらお荷物になるわよ!」
「魔法は大規模なものは多用しない!小規模でも中規模でも、大軍相手なら効果はある。命中させなきゃって気負わないで!」
プレイヤー達で定めた準備期間最終日。
『天照王国』の北門付近は、プレイヤーの熱気に包まれていた。
「おやっさん!俺のコレ、上限何リロードだ」
「お前さんのは5だ。一は刀身延長、二つで刀身の反対方向に向けて魔力刃の形成。両刃剣形態。三つで刀身拡張、蛇腹剣形態。四つで魔力刃を形成、分離させ二刀流形態。五つで魔力そのものを撃ち出す、魔力砲形態だ」
「...使う時の注意点は」
「魔力砲形態は連続して使えない。冷却に十分、出来れば十五分だな。両刃剣形態は、後から魔力で弦を張れば弓としても使える。蛇腹剣形態は最大射程一キロ。一から四に共通で、持続時間は十分だ。効果時間の持ち越しは出来ないから、下手に重ねるな」
一から順に使って、四にあげても効果時間は十分のまま。連続して使うと武器の耐久が減りまくる訳か。
「わかった。それにしても、俺のだけ扱い難いな」
「お前さんはそれでも使えるだろ」
「まぁそうだけど」
おやっさん、俺が扱えるかどうかの確認をせず、この武器形態を組み込んできた。
ミオの武器は通常が弓、一つで両刃剣、二つで薙刀、三つで魔力拡張の魔弓形態。
カクラの武器は通常が鎌、一つで薙刀、二つでハルバード、三つで刀身延長の魔大剣形態。
マイの武器は通常が鉄扇、一つで双剣、二つで円月輪、三つで魔力小銃形態。
シェンやカイドウ、ベルリン達は非常にシンプルで大剣や盾といった扱いやすい物。
だいたいなんでも扱えると言ったのが悪かったのだろう。男のロマンとやらを詰め込んできた。内心では俺も大喜びした。
「魔力カートリッジの予備は一人二つ。インベントリに入るから、忘れないように注意しろよ」
「了解。他の皆にも伝えてくれ」
レオンはおやっさんと別れ、一人森へと入る。
「霧雨」
呼び掛け、手に持つは愛刀『霧雨』
「集中しろ...イメージするんだ」
瞳を閉じてイメージするのは、自信を中心とした円形の領域。
「抜刀術奥義」
抜刀。
「心月」
目標にした木は、傷を付くものの倒れることはなく。
「...まだ足りないのか」
玲音の父、アーノルドに教わった抜刀術の奥義の一つ『心月』。射程、攻撃範囲に制限は無く、使用者の思うがまま。斬撃が飛ぶのではなく、指定した場所に発生する。未来予知が出来ない限り回避不能。自動回避というものがあれば、直撃は避けられる。らしい。
故郷の世界でも、この世界でも玲音は成功した試しが無い。出来るのは精々が今のように傷を付けること。
「...スキルとして新しく出ないってことは、まだ技として見られてないってことか。仕方ない、次だ」
先程標的にしたのとは別の木の前に構える。
「奥義」
体を捻り、刀を引き、力を溜める。
「一点集中桜華八突」
視認困難な速度で突き出された刀は、木に八つの傷を付ける。そのどれもがほぼ中心を捉える。
「ッ!?身体が重い!」
抜刀術スキルに新アーツ登録
『一点集中桜華八突』・・・現HPの六割消費。MP消費無し。極めれば、全ての突きが一点に。
使用後プレイヤーに特殊状態異常、過負荷。
※過負荷・・・効果時間六時間。動きが鈍くなる。
「なんてこった」
ログに表示された情報を見て、レオンは膝を着く。
「いやまぁ、リアルで使ったらもっと酷いからマシな方か」
リアルで使おうものなら、一日一回の大技。二日連続で使うと後日に支障が出る程。使うなら、一日開けてからが望ましい。
「全身の筋肉、骨、神経を連動させ、本来では不可能な肉体運動を可能にする。よくこんなの完成させたな父さんは」
父から教わった奥義の二つ。現状使えるのは『桜華八突』だけ。『心月』はまだ先だろう。
「出来ることなら心月も完成させたかったな」
刀を納刀し、森の更に深くへと進んでいく。
これから確認するのは、まだ見られたくないものだから。
「この辺りなら...よし、大丈夫」
索敵系スキルをフル活用して、周囲にプレイヤーが居ないことを確認する。
「八咫鏡、八尺瓊勾玉、天叢雲剣」
霧雨が使えるようになった後、ムーから渡された鏡と勾玉、最初から持っていた剣を確認する。
「...転移は問題無い。勾玉は...確認のしようが無いな。これは明日。剣は...神器換装、都牟刈太刀」
『天照王国』付近の森から『転国ホープス』の東の森、最初にグラトニースライムと戦った付近に転移。そのまま、そこで剣の神器換装を試す。
「換装は問題無し。こいつは破天の切り札に成るな」
確認を済ませると、再び鏡の転移で『天照王国』付近の森に戻り、北門へ向かう。
レオン自身の準備は整ったと言っても差し支えない。欲を言えば、先の心月を完成させたかったところだが。
「ミオ、姉さん、マイ、準備の方は?」
「私は大丈夫。アレのおかげで礼装も使える」
「私の方は礼装は無いが、魔法にオリジナルが追加された」
「結界霊衣の付与もできるようになった」
三人とも、リアルで出来ていた技にコチラが追い付いたようだ。
「マイ、暗器の類は持ったか?何かあった場合の対処用に持っておけよ」
「お兄に言われなくても」
「姉さんのオリジナルは、破天と拮抗すると思う。そっちの対処は任せる」
「任せろ」
「ミオ、簡易じゃなくてちゃんとした礼装なら、お前の敵は居ない。消費は気にせず射て」
「大丈夫。ちゃんと儀式礼装だから、後ろは任せて」
三人も準備完了。あとは、決戦開始時間と仲間の準備完了を待つだけ。
「カイドウ!俺達は先に落ちるが、大丈夫か?」
「おう!こっちも後はポーション類の確認だけだ!問題ねぇよ」
「そうか。それじゃあ、お先に」
近くを通りかかったカイドウに確認を取り、四人でログアウトする。
「長時間使用アラームは切っといた方が良いな」
恐らく戦闘が始まれば、ログアウトする暇なく戦い続けることになる。
「出来ればリアル一日で終わらせたいな」
リアルで言えば、既に金曜の夕方以降と土曜日丸々使っている。一応、日月と二日あるが、ぶっ通しはきついだろう。
「日付が変わるまで後七時間。まずは飯だな」
時間を確認し、部屋を出てキッチンへ向かう。
丁度、澪達も部屋から出てきたので、四人で準備をする。
「ムーの分も用意してくれ。もうそろそろ戻ってくる」
「お皿はこれか?」
「澪姉、これで盛り付けいいですか?」
「うん、大丈夫。流石、舞ちゃん」
「ただいま戻りました〜」
「お、丁度だ。ムー、手洗いうがいして来い。もうすぐ飯だ」
「わかりました〜」
ムーが戻ってくると、食卓に並べて、全員で揃って食べ始める。会話の内容は、主にムー経由の尚也達関連。
「向こうも面倒な状況らしいです」
「なんだっけ、世界に着いた途端、分断されたんだっけ?」
「はい。強制転移で、バラバラになったそうです。妹は尚也お兄ちゃんと一緒です」
「それなら大丈夫だろ。それに、向こうも連絡手段は持っていってるしな」
「父さん作製の遠距離通信機、サテライトでしたか?」
「それ。登録した魔力反応があれば、距離に関係なく通信可能。ただし、遠い世界同士は無理。出来たらムーに頼む必要ないんだがな」
ムーが家やゲーム内に居ない時は、この世界の神々の監視をしているか、尚也達の世界まで行き、情報収集をしているかのどちらかだ。
「まぁ今は、向こうの心配をしてる暇は無いな。六時間後には、俺達の方が大変な場面だ。今のうちにしっかり休めよ」
玲音は一足先に食事を終え、庭へ出て木刀を握る。何かをするのではなく、ただ正眼に構え続けるだけ。
澪は部屋に戻り、床に正座で座り意識を鎮める。頭の中では矢を番え、弦を引き、的へ中てる。その動作を繰り返し反芻させる。
神楽は部屋に戻り、運動用の服に着替え、家の周りをジョギングする。歩幅は一定に、歩く速度も一定に保つ。それを意識しなくても出来るまで続ける。
舞は、部屋に戻ると服を着替え、両手に扇子を持ち、自身が知る最も速い攻撃を思い返し、それを避ける様に舞を踊る。扇で時には刀を弾き、逸らす。二時間、舞い続ける。
ムーは縁側に腰掛け、玲音を見つめたり、星空を見たり。何を想い、考えているのか。
「0時になったら、攻略開始でしょ?集まってお酒飲んでて大丈夫?」
「大丈夫だろ。量は一人一缶だし、全員ここからログインするんだし」
海堂や万丈、亜美、風音は海堂の家に集まり、お酒を飲みながら時間を潰す。
「ベルリンは寝てるって言うのに、なんで貴方達は...」
「あいつなりの落ち着き方だろ。俺達はこれなんだよ。玲音なんかコレだぞ?」
そう言って海堂がスマホに映した写真は、誰が撮ったのか、木刀を正眼に構えて微動だにしない姿の写真だ。
「...かっこいい」
「あぁ...なんつーか、様になってる」
「軸のブレもなく、ちゃんと木刀が正面に来てる。間違いなく振れるな」
「そういえば、玲音君のご家族の情報全く出て来なかったの」
「なにしてんの?」
「え?気になったから?」
「お前は昔から...」
カイドウ、シェン、アミュー、風音達もそれぞれの方法で休み時間を待っている。
それ以外のプレイヤーも、方法は違えど英気を養って、決戦に備える。
土曜日の23時丁度。参加する多くのプレイヤーがログインし、北門へ集まっていた。
「なぁ、この告知マジかな?」
「まじだろ。ほらこのサイト」
「うゎぁ、マジだ」
「48時間生放送は、運営頭おかしくなってるw」
「誰が全部ぶっ通しで見るのかw」
「いや、一万既にいるから」
集まっているプレイヤーの話題は、三十分程前に告知された、運営による今回の決戦、イベントの生放送。合計十の視点を用意して、様々な場面を映せるようにしたらしい。ちなみに、配信開始前の待機所には、一万人の視聴者が集まっている。
「向こうから攻めてきてくれるのが楽だが、暴虐天童が待っているって言ってたからな。こっちから攻めることになるんだろう」
「巫女姫様助けるんだから、こっちから行くのが普通じゃない?」
「分からないぞ?向こうが連れながら攻め込んでくるかもしれない」
「馬鹿なのかな?」
「まぁいい。風音達によれば、城壁はあるけどそこまで厚くないらしい。開戦の合図はアレに決まりだな」
レオン達もリーダー陣で固まりながら、残りの時間を待つ。
「お兄、三十分前」
「よし。移動開始」
日付が変わる三十分前、全員が北の魔の平原に向かう。
向かう先に見える城壁。城は見えないが、巨大な門が見える。それに...
「飛行戦力...あれは狡だろ」
宙に浮く、羽ばたくモンスター。見た目的に魔族か。
「遠距離持ちの役割固定されたね」
「あんなん現状対処方無いもん」
「当たって砕けろ」
「砕けたらお終いなんだよなぁ」
失敗は許されない。一人二回の死が、プレイヤーに許された挑戦権。
まもなく決戦の火蓋が切って落とされる。
巫女姫の処刑まで残り96時間
世界の終わりまで残り---
玲音の覚醒までまもなく




