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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
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第29話 遭遇そして稽古

「抜刀・炎装」


血刀が炎を纏う。


「瞬攻、破刃」


炎を纏った刀身がインゴットリザードに触れる寸前、炎が勢いよく燃え上がる。そして、リザードのHPゲージを大きく削る。


「何その削れ方!エグッ」


使用回数に制限のあるスキルは、大抵が強力なものが多い。そして、砲魔も例に漏れず強力なスキルだった。


「ゲームとしてどうなの!?」

「いやまぁ、一度しか使えないからまだね?」

「相手の耐性とか影響するんだろうけど、これはエグい!」


驚きながらも動くことは止めない。


「レオン一人に良いとこ全部持ってかせるなよ!」

「おう!」

「一、二班ブロック!三班チャージ!四班カバー!」


ベルリンの指揮の下、各パーティーのタンクが動く。


「魔法叩き込め!」

「ファイヤーランス!」

「ウォーターランス!」

「ライトランス!」


動きが止まった所へ、魔法師が攻撃を叩き込む。


この繰り返し。レオンが間に攻撃を繋ぎ、常に攻撃を当て続ける。ベルリンの指揮による安定した立ち回りで、何事も無く討伐が完了しようとしていた。


「割と楽勝か?」

「勝ったな風呂入ってくる」

「おいバカ、フラグ」

「いや、ないない」


そんな巫山戯た会話をしていると、レオンの看破と感知が強襲してくる敵を捉える。


「ッ!瞬攻!」


視覚外からの一撃に咄嗟に対応するが、レオンの身体は後ろへ飛ばされる。


「血操術・百鬼!十刃!」


体勢を立て直しながら、レオンは時間稼ぎの為に動く。


「レオン!」

「大丈夫だ!そっちを頼む!」


ベルリンがこちらに声を掛けるが、レオンはリザードに集中するよう返す。


「特殊抜刀術/守勢・稲穂。百鬼、解除」


納刀から再抜刀。百鬼を解除し、構え直す。


「刀を使うか。小僧」

「・・・」

「返事は無しか?まぁ、いい。暴虐天童サムライプライド参る!」


名乗りと同時に強烈な踏み込み。五十メートルを一瞬で詰める。


「潰れろ!」


上段から振り下ろされる大太刀を、レオンはその軌道上に自身の刀を置き、触れた瞬間絶妙な力加減でそれを逸らす。


「?」


暴虐天童は違和感を感じながらも、攻撃の手を緩めない。


薙ぎ払い、袈裟、逆袈裟、斬りあげ、突き、フェイントを織りまぜた猛攻を、レオンは最小限の動きで避けたり刀で軌道をずらしたり、一つも被弾せず捌き切る。


「見事な物だな。名は?」

「...レオン」

「レオンか。その名前、しかと覚えた。そして貴様に敬意を表し、この一撃を手向けとしよう」


距離を取った暴虐天童が霞の構えを取る。


「特殊抜刀術/守勢・漣」


対するレオンは納刀、自身を中心に二メートルの円を意識する。

そして、凝縮された殺意が解き放たれる。


「死突絶閃」


視認不可能な速度で放たれた暴虐天童の突き。


「抜刀、風な」


最速の抜刀術で受けようとしたレオンは、受けることなくHPを削られ、北の街のポータルに送られた。


「ふむ。封印は解けているようだな。さて、お前達も死ぬがいい」


レオンからベルリン達へ向かったヘイト。ベルリン達は為す術なく、北の街のポータルへと送られた。


「死体が残らない。なるほど、先のが異界人という奴か。あの程度脅威にもならぬ。あぁしかし、レオンと言ったな。やつは少し面白い」


呟いて闇に消えると、先程までの戦場には何も残らない。



「マジか」


リスポーンした北の街でレオンは思わず言葉を零す。


「ヤバいなあれは」


同じくリスポーンしたベルリンがレオンの隣に立つ。


「ステータス見た?」

「見れてない」

「これ」


そう言ってベルリンは、先の敵のステータスを表示する。


暴虐天童・サムライプライド

「七つの厄災・傲慢」

Lv368 HP1000000


絶対的強者。二メートルの人型。元王国守備部隊隊長。数百年前の厄災との戦いの際、力を求め禁忌へ至る。当時の厄災傲慢天童を打ち倒し、その心を喰らい厄災へ。


「元人間か」

「Lvが存在するのは、人間だった頃の名残か」

「レオンを殺ったあの技、めちゃ速かったな」

「あれを何時か相手にするのか」


この先のことを考え、少し面倒になる。考えるのをやめて、レオン達はギルドへと向かう。


「インゴットリザードは殺れてよかった」

「レオンが受けに徹したおかげだな」

「おかげで刀がボロボロだ」


レオンの刀は折れてこそいないが、刀身は何ヶ所も欠けており、酷いところでは罅が入っている。


「折れる一歩手前、修理頼まないとだな」

「なら、おやっさんのとこ先にいけよ。報告はやっとくからさ」

「いいのか?」

「手伝ってくれたんだからいいんだよ」

「なら甘えさせてもらうわ」


ベルリンの言葉に甘え、レオンはパーティーメンバーと「解放者」提携クランの鍛冶場へ向かう。


「おやっさん!いるか?」

「ァ?レオンじゃねぇか。どうした、武器のメンテか?」

「まぁそうかな?コレ見て」

「・・・おまえ、何をした」

「厄災に絡まれた」

「はぁ?詳しく聞かせろ」


レオンは先程の出来事を話す。


「なるほどなぁ。話はわかった。だが、刀がこの状態なら、新しいのを造った方がいい。サービスしてやるよ」

「助かる。十万で足りるか?」

「取り敢えず貰っとく。余った分は完成したら返す」

「了解。出来たら連絡くれ」


赤椿・紅芽、最初のイベントから使い始めて一週間程。長いようで短い間使っていた愛刀。よく、最後の瞬間まで折れずにいてくれた。


「またな」


小さな感謝の言葉。無意識のうちに出た言葉だが、それに驚くことは無い。その言葉を不思議に思わないほど、レオンはそう思っていたから。



鍛冶場を後にすると、パーティーは自然と解散になる。

ミオ達の方も用事が済んだようで、これから天照王国周辺で狩りをすることになる。クヌギ達も狩りはするが、そちらも先約があるそうだ。


インゴットリザードの討伐に厄災との邂逅。収穫のある時間ではあった。


Lv18→Lv23 獲得SP5獲得BP5

剣術Lv22・刀術Lv26・抜刀術Lv20・感知Lv30・看破Lv30・鑑定Lv31・血操術Lv33・反射Lv11・回避Lv10・反撃Lv9・火魔法Lv15・水魔法Lv14・風魔法Lv14・光魔法Lv12・闇魔法Lv12・並列処理Lv21・複数魔法Lv11・使役Lv6・特殊抜刀術Lv-・威圧Lv10

HP自動回復Lv20・MP自動回復Lv21

禁呪・朧月夜Lv4(王の晩餐Lv8)


トニー(グラトニースライム)Lv8 消化吸収・物理軽減Lv9魔法軽減Lv9

リジ(シードウルフ)Lv10 進化の芽Lv7・噛み付きLv10・引っ掻くLv12・魔法Lv10・迅速Lv13・空歩Lv7・???Lv?


割とレベルも上がっている。最近は召喚獣も呼ぶようにしているから、そちらのレベルも上がり始めた。そういえば、新しいスキルを取得することが無くなった。前が取りすぎな気がしないでもないが。

というか、最近自分でも忘れていたが、威圧というスキルの存在がある。モンスターに出会いにくい原因が判明した。


ミオ達と合流し、狩りを始める。刀が無くとも、レオンには刀があるので、問題無く狩りを進める。


「そういえば、レオンはどうして刀以外を使わないの?」


次の標的を見つけるまでの間に、ミオがそんなことを聞いてくる。


「あーそれは...」

「確か一通りの武器は使えるんだよね?余程特殊じゃない限り使えるんでしょ?」

「使えるな。今使わないのは、血操術という便利なスキルがあるから。昔はそんなの無かったから、扱える武器を増やして攻撃可能範囲を広げてた」

「でも、あってもいいんじゃない?」

「個人的には、スキル取らないで切り札にしときたいかな。PVPイベントがあるかもしれないし、敵がこっちのスキル読み取ってくるかもしれないから」


暴虐天童のように知性のある敵が、こちらのスキルやステータスを読み取って、行動を変えてくる場合があるなら、奥の手は一つくらい欲しい。


「それなら、私に稽古つけてくれない?以前は、師匠が教えてくれてたけど、ここには...」


ミオの声が小さくなって、最後には聞こえなくなる。


師匠、玲音の父と母、アーノルド・B・ヴァンデルとエレナ・B・ヴァンデル。玲音、神楽、舞の親であり、澪を含めた四人の師匠。剣術、槍術、刀術、拳術、棒術、薙刀、鎌、暗器と言った特殊な武器ですら使いこなし、基礎を教えてくれた。

四人に共通する流派があるとしたら、それはヴァンデル流かアーノルド流だ。エレナもアーノルドから教わった側だから。


「そうだな...。久しぶりに皆でやるか」


模擬戦自体はアレ以降も続けている。だが、四人揃って形稽古はやっていない。死を受け入れていても、癒えない傷というのは厄介なものだ。


「レオン、次見つけたよ」


ミオの報告で切り替える。


「心の傷は簡単には癒えない」


誰かが小さく呟いた言葉は、戦闘の音に掻き消され、誰の耳にも届かない。



「お兄、昨日の話だけど昼休みにしない?」


連休明け、学校の昼休み、玲音達の居るクラスにやってきた舞が声を掛ける。


「ん?この後?」

「うん。食後の運動になるでしょ?」

「まぁそうだな」

「私はいいよ」

「私もいいぞ」

「んじゃやるか。剣道場借りれるか聞いてくるわ」


そう言って玲音は職員室に向かい、澪達は動きやすい服装に着替えておく。


「鍵借りたから行くぞー」


ものの数分で戻ってきた玲音と一緒に向かう後ろには、興味本位のクラスメイト達。


「剣道場で何すんだ?」

「食後の運動って言ってたから、運動?」

「そりゃわかってる」



「よし。三人で来い」


剣道場に着くなり、シャツを脱ぎ捨て、木刀を構えて澪達三人を正面に見据える。

対する澪達も木刀を構え息を整える。


「ハァッ!」


最初に動いたのは澪。玲音の使う『瞬攻』より遅いが、一般人からすれば十分速い。


それに僅かに遅れて、神楽と舞も同じく『瞬攻』で続く。


その攻撃に対して玲音は、落ち着いて対処する。


「鳴神」


幾重にも隠蔽を施して、対複数人用の技を使う。

本来は四連のところを、三連で強制的に中断。姿勢を低くし、バランスが不安定になっている三人を床に叩きつける。


「クッ」

「ッ!」

「クゥ」


慣れていない衝撃に、三人は一瞬硬直する。


「揃いも揃って受け流された後が弱い。次をもっと予想しろ。瞬攻は速いだけが取り柄だ。それ以外は何も無い。だからそれだけでなく、何かに繋げろ。舞なら姿勢を更に低くして脚への攻撃、澪はそこまで近距離は得意じゃないんだ、他の二人の囮になれるよう急所に攻撃、姉さんは三人の中で一番近距離が得意だ。なら、二人を上手く使わないと」


木刀を弄びながら、三人に対してのアドバイスをする。本来、後衛の澪と舞には必要のない練習ではある。


「瞬攻に頼るなよ。次!」


三人が起き上がり、息を整えるのを待ってから再開する。昼休みの時間はひたすらに三人の攻撃を玲音が受け反撃。悪い点や良い点を都度教えながら続く。


「玲音の動きが人間じゃない」

「いや、澪ちゃんと神楽ちゃん、舞ちゃんも」

「人間あんな動きできるんだな」

「俺、あんな風に動けるか?」

「何十年掛かる?」

「動けるうちに到達出来るといいな」


それを眺めていたクラスメイト達は、そんな感想を零しながら、最後まで観戦していた。



放課後、家に帰ってすぐにゲームをするのでは無く、昼休みの続き、学校ではできなかった本格的な稽古。


「舞頼む」

「遮断結界、防音、吸収展開」


舞が周囲から遮断する結界を家に施す。次いでに防音と吸収結界も。こちらは念の為、主に吸収は攻撃の余波が外に漏れないように。


「じゃあ、最初は得意武器から」


玲音は刀、澪が弓、神楽は鎌、舞は暗器。舞は体格や役割的に暗器を使う。神器やゲーム内武器は補助用の鉄扇を使うが、それがないなら暗器を持たせ、支援を行わせるのが一番だ。


「昼と同じ、三対一、取り敢えず一本取ってみろ」


模擬戦と何が違うのか、問い質したくなるが、これが彼等の稽古なのだ。稽古では、玲音が必ずアドバイスをする。しかし、模擬戦では一切そんなことはしない。それが彼等の模擬戦と稽古の違い。


「舞!気配はもっと薄く!それ以上が無理なら、気配を偽れ!木でも虫でも何でもいい、偽るとこから始めろ」


「澪!仲間に当たることを恐れるな。仲間をもっと信じろ。お前の実力はわかってる!誰も誤射するなんて思ってない!」


「姉さんは少し積極的すぎる!もっと後ろの二人の援護を貰って!そう!一人じゃ簡単に対処される動きも、援護があれば対処されにくい!」


自分達の持てる力の殆どを使い、自分達の実力を高めていく。

僅かな時間で、教わった事を吸収し成長し、少しづつ玲音が被弾するようになる。


「そうだ!いいぞ舞!自身の気配を極限まで薄め、偽りの気配を別の場所に残す、それをもっと素早く!」


「姉さん、今のはいい動きだった!よく澪を信じた。澪もよく今のを通した!澪はどんな隙間にも矢を射る事が出来る!もっと自信を持て。姉さん、そしたら次は自分の技量を信じた攻撃を仕掛けて。澪の矢を弾いたらとか舞の邪魔したりとか、そんなの気にするな。邪魔にもならないし、弾いたりもしない。姉さんならやれる!」


三人が成長すれば、玲音は自身のギアを上げ、更に三人にアドバイスをしていく。


アーノルドやエレナ曰く、玲音の実力は当時で既に二人を超えていた。二人に教わった戦闘術と魔獣を日常的に狩ることで得た経験が、ベテランである二人を越えさせた。


「よし、今日は終わりだ。ちゃんと身体のケアを忘れるなよ」


そう言って、今日の稽古が終わる。玲音は一足先に汗を流しに風呂場へ。

残された三人は息を整え、汗を拭いながら温まった身体をゆっくり冷ましていく。


「久しぶりにやったけど、相変わらず玲音は凄いね」

「あぁ。力を手にしたと言うのに、このザマだ」

「お兄も力を手に入れてるから、変わりないと思う」

「まぁ、玲音はアーノルドさんとエレナさんのお墨付きだから」

「お義父さん達の会社の人、全員に最強と認められてたからな」

「なんだっけ?お兄の迷言」

「えーと、片腕が無いくらいは問題無い?」

「それ」

「アイツの場合、片腕位は問題にならん」

「何時だか刀を咥えて鍛錬してたよね」


久しぶりに稽古を行ったせいか、昔話に花を咲かせる。と言っても、出てくるのは玲音の人間離れした話ばかり。これが全て吸血鬼へと種族が変わる前だと言うのだから恐ろしい。


「そろそろ玲音が上がるだろうから、私達も汗を流しに行こうか」


結界を解除し、中へと戻れば丁度、玲音が風呂場から出てくる所だった。


「お、丁度いいタイミング。晩飯は作っとくから、ゆっくりしてこい」


玲音の言葉に甘え、三人はゆっくりと風呂の時間を楽しむ。

その後の晩御飯は野菜炒め、唐揚げ、わかめスープ、白米とガッツリ目の食事となった。


この日は結果、宿題や稽古の疲れ等でゲームをすることなく終える。


ちなみにムーの姿を見ていないが、彼女は彼処の情報を集めに行っている。

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