第19話 強敵そしてPVP
「さて、今日の狩りを始めるか」
始まりの街、南の森方面の門の傍で、集合して向かう。
「さっきから誰かに見られてる?」
「見られてるな。街でた辺りから」
「どうする?」
「とりあえず放置。なんかあったら動く感じで」
PTチャットで簡単に打ち合わせ。
多分PKかなんかだと思うんだよな。
とりあえず放置で森へと向かう。2日間狩りをしていた奥の方まで進みながら、道中で出会ったモンスターも倒していく。
モンスターのポップ的に、他にも狩りしてる人がいそう。
「止まれ」
気配を感じて、警戒しながら進んでいく。
感知も看破もあるから、不意打ちは大丈夫。不意打ちされても、PSの方で何とかできるしね。
進んでいくと、少し開けた場所で戦闘をしている2人組を発見。 さぁ何と戦っている? SANチェックです。
冗談はさておいて、あれなんだ?
鑑定
???スライムLv25
スキル
消化吸収・物理軽減・魔法軽減
もしかしてエリアボス?
苦戦してそうだし、声かけてみるか。
「そこの2人!手助けいるか!?」
声にビクッて反応して、スライムから距離を取った。
「助けてくれるのか?」
「まぁ見つけた以上な」
「助かる」
スライムに集中しようと武器を構えると、感知と看破が背後に反応する。
「!めんどくせぇ!」
ずっと追っかけて来てたやつが、モンスターを引連れてやってきた。
「そこの2人!パーティー申請出すから承諾しろ!」
咄嗟にパーティー申請を飛ばして、チャットで連携を取れるようにする。
相手も少し困惑したものの受け入れた。
「姉さん、マイそっちの頼む」
「「了解」」
「ミオは俺の援護。そっちの2人も手伝えよ」
いつものように指揮を取り対処する。
「レオン、あのプレイヤーは?」
「そこのスライムに殺られてるよ」
モンスターを引き連れてきた奴は、そのままスライムの方に流れ、逃げようとして消化された。
「来るぞ!」
スライムの体から分裂した触手がこちらめがけて襲い掛かる。
「そこっ!」
一本の触手を剣で受けて、「反射」する。その先には別の触手がいて。
「ミオ!」
「見えてる!」
鷹の目と遠見、感知と看破を併用して、敵の弱点を探ったミオが弓を射る。触手に命中し、その触手は溶けるようにして消えた。
「本体の弱点!」
「常に動いてるからわかんない!」
厄介な。
「2人組!ミオの護衛!俺が前に出る」
飛来する触手を躱しながら、スライムに接近する。
近づけば多少は攻略の糸口も見つかるだろ。
と思ってた時期もあった。
戦闘を始めて20分。
攻撃は今のところ単調。接近する相手に触手を飛ばし、近付いてきた相手には触手の薙ぎ払い。これだけならなんとかなりそうだけど、こっちの攻撃が通ってる感じがしない。相手の体力が多いってのもあるんだろうけど、物魔軽減が辛い。
2人組の方はバテて離脱、マイと姉さんが合流したが、戦況は変わらず。打開策を見つけないと・・・。
この戦闘中スキルがいくつか上がっている。
剣術はLv7、感知がLv6 看破がLv5 鑑定もLv6 反射がLv3回避はLv4反撃はLv2になった。
戦闘前にスキルを新しく取得しといて良かった。じゃなきゃとっくにリスポーンしてる。
感知と看破は常に発動して、スライムの核を探ってるが見つからない。Lvは上がるからいいけどね。
というかそろそろ剣がやばい。消化吸収って言うぐらいだから、触れる度剣の耐久が減ってく。触手を触っても同じだ。だから、そろそろやばい。替えが無いわけじゃないけど、こっちの武器と向こうの体力、どっちが先に尽きるかと言われればこちらだらう。
仕方ない。試そうと思ってたことをやってみよう。
「少し時間を稼いで!」
SP使ってスキルレベルをあげることも可能。だけど、今やるのはそれじゃない。
「頼む成功してくれよ」
剣を手首に当てて、軽く斬り傷をつける。状態異常出血になる。
そそれに構わず流れ出る血にスキルを発動させる。
「血操術・血刀!」
身体から血が勢いよく抜けていく。貧血になりそうになるが、種族スキルの血液循環のおかげで、すぐに良くなる。
よし。刀の感触も現実のまんまだ。重さもいつも使ってた時と同じ。スキルは出てないけど扱える。
「ふぅー」
息を吸い、呼吸を整える。
「血操術・血刀鳳千禍」
癒えない傷口から、更に血が流れ出し無数の血刀を生み出す。
「下がれ!」
前に出ていた姉さんが、バックステップで距離を取り、マイが2人組を守りながら後退する。
「行け」
生み出された血刀が、次々とスライムに向かって飛んでいく。
「多数かつ全方位からの攻撃、どれだけ吸収できるかな?」
戦って気付いたのは、消化吸収が発動しても、直ぐには吸収されないということ。つまり、消化しきるまでにタイムラグがあり、攻撃をくらって即吸収にはならないということ。なら、そのラグを利用して攻撃を与え続けたらどうなる?
血操術のLvが1なため何本かは外れているが、現在進行形で血刀は増え続け、スキルLvも上がっていく。
血液循環と言いつつ、血液を即生成し身体に影響が出ないようにする。これのおかげで貧血にならないし、便利なスキルだよ。
おっ、そんな事考えてたら、スライムの体力バーが目に見えて減ってる。
血操術での攻撃は物魔判定じゃないのか?見た感じ軽減効いてない?いや検証してないからわかんねぇや。
このまま行けば楽なんだけど、多分そうはならない。とすると変化するのは・・・3割か。
体力バーが5割を切って、じわじわと3割に近づく。
明らかに体力の減りが悪くなったな?
スライムをよく観察すると、直ぐに変化してるのに気が付いた。
「消化吸収の速度が上がってる」
未だ血刀の方が勝っているが、2割に減る前には殆ど意味をなさないかもな。
よし。やるか!
血刀を、血で作った鞘に納刀、構える。
やることは単純、いつもの抜刀術。そこに複数の魔法を統括の加護で無理やり纏める。
使うのはオリジナル抜刀術。リアルの動きにこの世界の力を合わせる。この世界、というかゲーム、割と判定が緩く、自分オリジナルの剣術とかが創れるらしい。リアルの剣術をモチーフにとか、アレとコレ合わせた的な。つまり、自由度が高い。何が言いたいかと言うと、今やろうとしてる事もそういうことだから。
「本家には及ばない速度だし、練度もまだだけど!」
左手は鞘に、右手は柄を握った抜刀術の構えのまま踏み込み、刀の間合いまで詰める。
縮地とかのスキルがあるわけじゃないから、当然反撃を受けるが、ミオ、マイ姉さんがそれを許さない。
「血操術·魔法三種複合抜刀術」
鞘に引っ掛けるように、デコピンの要領で抜刀する。抜刀された刀は風の魔法で加速し、スライムの身体に入り込むと、火と水の魔法が合わさり水蒸気爆発(刀身サイズ)が発生。勢いと共に刀を振り抜く。
「風雲」
風で加速して、水蒸気爆発した時の蒸気が雲に見えるからつけてみた名前。割といい?
ちなみに、某眼鏡を掛けてる雷使って抜刀する会長をリスパクした感じだ。まぁあれはまた違った技だけど
そんなこと考える余裕があるのは、未だ続く鳳千禍の追撃で、スライムの体力が無くなったから。
倒すと、他のと同じようにポリゴン状になるのな。
そうだ、ログの確認しないとな。色々来てたし。
Lv11→Lv16 獲得BP5 獲得SP5
剣術Lv10感知Lv10看破Lv10鑑定Lv10血操術Lv5反射Lv4反撃Lv5回避Lv3
風魔法Lv2火魔法Lv2水魔法Lv2
新規獲得スキル
刀術、抜刀術、並列処理、複数魔法、使役
エリアボス撃破ボーナス獲得
Lv16→Lv20 獲得BP9 獲得SP9
剣術Lv12感知Lv12看破Lv12鑑定Lv12血操術Lv9反射Lv6反撃Lv7回避Lv5
風魔法Lv6火魔法Lv6水魔法Lv6光魔法Lv5闇魔法Lv5HP自動回復Lv7MP自動回復Lv5
特殊スキル 暴食を獲得
グラトニースライムの使役が可能です。
南のエリアボスが発見された為、各方面のエリアボス情報がギルドから発行されます。
南のエリアボスが撃破された為、南エリアの奥地にレアモンスターが出現するようになります。
「何このログ」
戦闘中も上がってたスキルが、格上討伐して更に上がり、エリアボス撃破ボーナスでさらに上がった。
咄嗟にパーティー組んだ人たちも同じようなことになってる。
下のログもあれだけど、とりあえず今は情報の統制しないと。
「お二人、お名前は?」
「え、あ、ソエルです」
「サイトだ」
「ソエル、サイト、このことは秘密な。色々と」
パーティー欄から見ることもできるけど、ちゃんと名前を聞いて、このことは喋らないようにする。
「あの」
「どうした?」
サイトが何か言いたそうにしてる。
「さっき掲示板に、レオンさん達とパーティー組むって書き込みまして」
「・・・」
「それみた馬鹿共が向かってるみたいで」
「・・・」
「しかも、このエリアにいるの今自分達だけなので」
「・・・」
「必然的にエリアボス倒したことバレるかなって」
「・・・」
「あの、いや、ほんとすいません」
「お兄、困らせない」
「レオン、あんまり気にしてないでしょ?」
沈黙を貫いてたら、怒ってるように取られたようだ。ミオとマイがフォローする。
「まぁバレるのはいいよ。報酬とかも。ただ、スキルとかのは無しな?」
「もちろんです」
「私も問題ありません」
「よし。それじゃフレンド登録して、パーティーこのままで帰ろうか」
「いいんですか?」
「いいよ?二人じゃ大変でしょ?」
「まぁたしかに。疲れもしましたしね」
「なら、お言葉に甘えます」
即席の6人パーティー。近接職が俺とサイトさん、中距離が姉さん、遠距離にミオとソエルさん。マイは中距離と遠距離の間くらい。割とバランスはいい。帰りの狩りはとても楽だった。
Lvの上がった索敵系スキルのおかげで、馬鹿共との接触は回避出来た。余計な時間は取られたくないからな!
街に近づけば近づくほど、モンスターのレベルは低くなるので、帰りは行きより早く着く。
そして街に戻ると、門のところで変なのに絡まれた。
「アイツらだ!アイツらがMPKしてきたんだ!」
は?さっきのMPKしてきて死んだやつじゃん。言ってることが面白いな。
ギャーギャー一人で騒いでるけど、真に受けてるのは・・・何人かいるなぁ。
「どうしますか?」
「どうしますって言っても・・・」
いや正直言うと、対処法はある。というか確実にアイツを黙らせることの出来る手札が。それを切るべきか否か・・・いや切るべきか。
「一人で喚いてるところ申し訳ないんですけど、この動画に映ってるの貴方ですよね?これ、貴方がMPKしようとしてる風にも見えますけど?」
「っ!?」
その場にいた他のプレイヤーにも見えるように、大きめに画面を展開する。
動画と一緒に、常に後ろを着いてくるプレイヤーアイコンが映ってるマップのスクショも見せる。
「で、貴方はこのモンスターを擦り付けたあと、別のモンスターに殺されて戻ってきたと思うんですよ。というか実際そうでしたし?」
いい感じにザワザワし始めた。
「何この騒ぎ?あ、寄生虫じゃん。またやらかしたのか?」
おや?なにか知ってそうな人がいたような?
「うっわお前、かわい子ちゃん3人のとこに手を出したのかよ。やばすぎ」
「南のボス倒したパーティーに手を出すのはヤバいだろ」
「う、うるさい!これが1番楽に稼げるんだ!俺が楽しければなんだっていいだろ!」
うっわヤベェやつだ。
周りの人もドン引きしてるじゃん。
それにしても、これが1番楽に稼げるね・・・鑑定鑑定っと・・・なになに?特殊スキル寄生?
パーティーに属しながら、戦闘も採取もしない。ただモンスターをトレインするだけして、逃げ出す。経験値だけ貰って次に移るという行為をするものに与えられるスキル?
パーティーに属さなくても、複数人パーティーの一定の距離に入れば経験値が貰える・・・Lv15超えてるし相当やってんなこいつ。
「お前らみたいな雑魚は俺の役に立てばいいんだよ!」
言ってはならんことを言ったな?俺達が雑魚ね。他人に寄生するやつが強いと・・・クソみてぇ。
「おい雑魚、PvPしようか。どっちが雑魚か教えてやるよ」
腹がたって宣言してしまった。やっべぇ〜
「お、俺が雑魚?ふ、ふざけるのもいい加減にしろ!いいだろうその勝負受けて立つ。俺が勝ったら、そこの女3人俺に寄越せ!そそれと装備もだ!」
「(イラッ)わかった。場所は面倒だから門出てすぐのとこでいいな」
時間がもったいない。とっとと殺す!
「お兄ブチギレた」
「まぁ当然か」
「まぁアレは流石にね?」
ミオ達はなんとも言えない表情で着いてくる。というか、その場にいた全員が着いてくる。
掲示板で騒ぎを知った物好きも集まってきてる。なんか賭け事始まってんぞ。取り仕切ってるのギルドで絡んできたアイツじゃん。えっとカイドウ!
儲けた金で後で奢ってもらうか。
「よ余所見をするな!」
「うるせぇよ。いちいち怒鳴るな」
面倒なやつだなぁ。
「ルールはHP全損敗北、エリア外敗北無し、魔法使用可能、でいいな?」
「あ当たり前だ!」
「んじゃ始めよう」
向こうが武器を構えるのに対して、俺は構えない。だって刀今ないし。
なんか喚いてるけど、もう聞きたくねぇ。
カウントが進み、3.2.1 戦闘開始!
「死ね!」
武器は槍だから速攻刺突。まぁ初手にしてはいいんじゃない?知らんけど。
攻撃を敢えて寸前で躱して、浅めの切り傷を負う。
問題なく流血したな。ヨシ!
「血操術·血刀」
流れ出る血が、意志を持つように動き、形を定める。
見物人もうるせぇのも驚いて固まってるな。
「ほらどうした。来いよ」
挑発のようなそうでないような物に簡単に乗ってくる。まぁ間合いの有利は向こうにあるし?
「つってもなぁ」
単純な突きと払いしかない。弱い、めちゃ弱い。
「なぁ弱くね?それ全力?マジ?」
話にならなすぎて、言葉が自然と零れる。
なんか切れてるけどさぁ。
「あぁもういいよ終わりにしよ。つまんないから」
スライムの時同様、血の鞘を生成、納刀、構える。
「寄生してる雑魚が吠えるな」
叫びながら向かってくるが、さっきと同じで芸がない。というか、それしかできないのだろう。
「魔法複合抜刀術、風鳴」
槍の一突きをギリギリで避け、首目掛けカウンター。正直胴でも良かったけど、せっかくだからレベルの違いをね。
部位欠損の流血、更に重要部位の破壊による即死判定。これ風鳴使う必要なかったかもなぁ。
PVPは勝敗決定後、その場での復活となる。
「さて、雑魚に負けた気分はどうかな?」
首を切られた恐怖が忘れなれないのか、若干震えてる。
「な、なんだよそれ。チートだろ!ふざけんなよ!」
「は?馬鹿か」
もうこいつと関わるの面倒くさすぎる。
「もういいや。ミオ、マイ、姉さん帰ろ。あ、カイドウ!飯奢れよ!人で賭け事しやがって」
逃げようとするカイドウを呼び止め、ミオ達を連れて、3日目だが人気の食堂へ向かう。
「レオン、さっきのなんだ?もしかして、特殊種族のスキルか?」
「まぁな」
「てことは、掲示板の三種族は」
「俺と、そこの三人のうち二人」
レオンの横に座る三人の方に少しだけ視線を向ける。
「なるほどねぇ。それにしたって中々凄いことしたな」
「そうか?」
「PVPで人の部位破壊、しかも重要部位破壊はお前が初だ。何人か検証した感じ、腕とか脚なんかはまだできるらしい。だけど、首や目、耳なんかの破壊は何故か難しいらしい」
「当たり判定か?」
「そこもよくわかってないらしいぞ。掲示板受け入りだからホントかどうかは知らん」
「まぁそんなもんか。すいませーん。飲み物同じのお願いします」
「私も」
「私も頼む」
「えっとぉ」
マイと姉さんは軽く注文するが、ミオだけ若干遠慮がちに。何故なら、
「なぁお前ら遠慮って知ってる?」
既に会計は5万は超えてるから。この食堂が人気なのは、看板娘ちゃんと料理の幅が影響してる。
看板娘ちゃんはまぁ置いといて、料理の幅というのは、値段もそうだし、料理のジャンル、ジャンクフードとかフレンチとかそういったものが豊富なのだ。当然、フレンチは高い。良い肉のステーキなんかも。それ等を頼みまくってるレオン達。カイドウの懐が寂しくなるのは時間の問題だ。
「まぁ頼むのはこれを最後にするか」
「おう、そうしてくれ」
切実な声で項垂れる大男。うーん絵面。若干泣いてるな?
「安心しろ。少しは利のある話をやるから」
「ホントか?」
「ほんとほんと」
飲み物が来たから、PTチャットにして秘密の会話をする。
「まぁミオ達は知ってるんだが、南のボスがな?」
言いながら戦闘後のログを表示する。
そしてさらに、これなんだよ。
追加で見せるのは、使役欄にいるグラトニースライムの名前。
「なぁ」
「うんまぁ言うな」
どう考えても大罪系よ。暴食な。
「こんな序盤でいいのか?」
「運営が配置してる以上いいんじゃね?」
「まぁそうだが」
「それでこいつの話でな」
それから、グラトニースライムの話を纏め、公開するかどうかを議論し、今はやめることにした。
これ以上目立つのは嫌だったから。
「特殊種族の掲示板凄いね」
「スキルの方も凄いよ」
「攻略板もな」
どこも俺関連での盛り上がりだな。
刀術に抜刀術の発見、血操術というスキル、更に魔法を複数合わせるスキル等、情報を提供しなくても、憶測が飛び交っている。取得条件やスキル効果等、現状、掲示板はサービス開始から最大の盛り上がりを見せていた。




