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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
第1章 地球・生まれ故郷編
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第16話 鬼教官と神

「禁呪解放朧月夜、八尺瓊勾玉解珠」

「我が神器は二刀一対。我が神が授け、我が神が与えた名は霧雨。此処に封印を解き、その真名を」

「守護の神格を授かり、守護神を宿す、護神刀早霧」

「妖を封じ、その妖気に当てられ変質した、破魔の神格、妖刀村雨」

「封護、統括、時空、記憶、加護解放」

「血刀、血を吸え村雨」


自身を強化する結界・朧月夜と陰を表す八尺瓊勾玉の解珠。

霧雨の本来の姿の顕現。

神の加護の一部解放。

血刀による手数増加、血を吸った村雨の強化。


現状で持ちうる攻撃に特化した能力の解放。ぶっちゃけ過剰だ。


「どうやって防ぐか見せてみろ。血刀抜刀千蓮万華」


千の血刀が不規則に襲い掛かる。


魔獣や傀儡兵を屠った時と違い、切り口から花弁が舞うだけに留まっている。


「結界の意味ないの!?」

「違う!結界も一緒に斬られてる!」

「それって意味ないってことでしょ!?」

「確かに!」


澪の焦る声に舞が反応するが、舞の方が混乱しているようだ。


「ギアセレクト2!」

「ん?」


リジェルから黒い光が玲音に伸び、まとわりつく。


「もう一つ制限を掛けたのか?」

「ねぇ、何の冗談?効いてないの?」

「いや効いてる。加護の力使ってるから邪魔されても問題ない」

「なんて厄介な」

「そっちの能力の方が厄介だと思うぞ?こうでもしないと影響を受けるんだから」


誰に対してこうして、誰に対してこうする、という並列思考と血刀の制御、これを両立させようとすると、どちらかが出来なくなる。リジェルの神器の影響で。ならどうするか。それの答えが、記憶を辿り過去の動きをトレースさせる。


統括の加護は、独立した思考回路とでも説明しよう。つまり、記憶を辿り、血刀の過去の動きを思い出し、その情報を統括の加護に共有し制御させる。そうすれば、俺は一人に対して警戒、統括の加護に他の警戒をさせることが出来る。まぁ、それでも、俺自身の思考には邪魔が入ってるせいで、それ以上のことは出来ない。


「その神器は本当にすごいな!封護の加護を使って弾けるのは、発動後だけなところが!」


加護を解放する前に受けた思考制限は、封護の力を持ってしても影響を受けている。思考を封じ守護するのだが、これには一切の妨害、強化を受け付けない。簡単に言えば、なんの効果も意味をなさず、素の状態で封じ守護する。にもかかわらず、リジェルの神器は効果を及ぼす。


「少し、感覚を研ぎ澄ますか」


玲音は「早霧」を納刀。「村雨」も納刀し抜刀術の構えを取る。


「血刀解除」


目を閉じ、深く深く集中する。

余計な力は要らない。血刀を解除し、「朧月夜」と「八咫鏡」「八尺瓊勾玉」にだけ注力する。


「抜刀」


囁くような声。されど、引き起こされるのは、


「っ!遅延罠強制発動!ディレイカウンター!」


全員を包む舞の結界の破壊。アリアの機転のおかげで、全員が半歩退くことが出来た為、その被害で収まった。


「ただ抜刀しただけだよね?」

「抜刀術、居合切りを視認するのは難しいのはわかってる。だから、見えないのはいい」

「ねぇお兄、何したの?」


さすがに自分達では処理しきれない、と玲音に説明を求める。


「八咫鏡の力を使っただけだ」

「説明になってない!」

「手の内晒し過ぎるのも良くないだろ?」

「お前、俺達にやらせといて、自分だけはってずるいだろう」


玲音の言い分に、シェグナが呆れている。


「と言ってもなぁ」


玲音は頭を書きながら、できる限り説明をする。


やったことは、八咫鏡の力の一つ「霊体分身」を使い、己の分身を出現させ、それを八咫鏡の転移の力で対象の傍に。一瞬で抜刀するだけ。


「なんちゅー初見殺し」

「あの時に使われなくて良かった…」

「殺すつもりで攻めてた私達が言えたことじゃないけど、容赦無さすぎるよね」

「遅延罠全部使って、半歩しか退けないって、なんですか、それ」

「は?」

「追加説明!」

「時空の加護で加速させた、以上」


抜刀の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()させる。


「遅延罠、の効果、範囲は、周囲50m。里の森の、効果で、私達は加速する。それが、無ければ、死んでたと、思います」

「なるほど。里の森は、罠の効果を反転させ、味方に恩恵を与えるのか。しかも、発動した罠の効果は、相手にしっかりと発揮されると」

「加護怖い」


アリアとリジェルの声が重なる。二人は目を合わせ、そっと寄り添い、肩を抱く。


「霊体分身、恐ろしいな。神器も複製するのか」

「いや、神器は複製してない。それ等半分は村雨に内包された別の刀。残りは血刀」

「えっと?」

「妖刀村正、妖刀鬼刃(ようとうきじん)妖刀蛇骨(ようとうじゃこつ)妖刀血染め改(ようとうちぞめあらた)妖刀(ようとう)千年椿(せんねんつばき)、天下五剣童子切安綱」

「知らない名前があるんだが?」

「妖刀鬼刃、鬼を斬った刀を素に、鬼の角とで鍛えられた刀。蛇骨は、蛇を殺した刀に殺された蛇が絡まり、刀身が蛇の骨と同化した刀。血染め改は、使い手も無く彷徨い続け、人や怪異を殺し、紅く染った刀。千年椿は、とある村で千年贄を捧げられ、贄となった若い女の憎悪の塊によって変質した刀だ」


この国の伝承に残らない、残せなかった一部の妖刀。それ等を断ち斬り、その身に押さえ込んでいたのが、破魔の神刀村雨。


童子切安綱でさえ、鬼を斬り変質した。それ等を複数取り込み、それでも破魔の神刀としての意味を成していた村雨は、本当の意味で神刀と言える。


「童子切安綱が妖刀?なら、伝えられていたのは、嘘の情報だったってことか?」


いつの間にか訓練は再開され、お互いの攻撃を捌きながら会話をする。


「そういうことじゃねぇか?そこは神様に聞かないと」

「概ねその通りです」

「だそうだ」


先程まで空気になっていたアーメイア様が、すかさず答える。


「さ、続けようか」




玲音の攻撃は、前衛を務める尚也、シェグナ、ウルスの三人に弾かれるか、中衛の神楽、クレハ、アイヴィア、アリア、に逸らされる。

後衛の舞、澪、颯、リジェル、ルビアが支援を行う。


玲音が血刀を使っていないにもかかわらず、尚也達はこれといったダメージを与えられていない。それは、玲音にしてもそうだが、こちらは一度、全員の結界を破壊している。その分のリードはある。


玲音は『学園』にいた頃、強者の一人に数えられていた。「現代の新撰組隊士」と言う異名が付けられる程、卓越した刀術。最大の所以が、観察眼と情報把握能力の高さ、それを活かした戦術の多様さにある。

例えば、100の力を持つ者が複数人敵にいるとする。自分の力も100。その状況で、どのタイミングで全力を出せばいいのかを見誤らない。更に、相手の全力の力を受け流したり、当たらないように誘導したりする。冷静且つ迅速に、己がとるべき最前を導き出す。

そうでなければ、攻撃を別の攻撃にぶつけるなんて技巧は不可能だ。玲音はそれなりに多用するが、普通は一回成功させるのですら、至難の技だ。



「わかってたことだけど!玲音の刀術おかしい!」

「俺、澪にだけは言われたくねぇ!」

「お兄も澪姉もおかしい」

「舞に同意だな」

「いや、ここにいる者全員おかしいだろう」

「まぁ、そうだね」


訓練の為に移動した先、ホームの裏手の庭で大の字に倒れる十二人。


全員、疲労困憊で動けないでいる。


「本当に負けるとは思わなかった」

「ある意味反則」

「加護怖い!」

「加護が無ければ勝ってた」

「いや、加護があるからこうやって一対十二やってるんだよ。なかったらやらない」

「腹立つー!」

「一人だけ立って、上から見下ろしてるから尚 更」


訓練は玲音の勝ち。慈愛の加護を使い、自身の疲労を回復し続ける。怪我をしても、種族特性の再生速度であっという間に無傷。それに対して、澪達はスタミナや魔力に限りがある。長期戦になり、一人、また一人と脱落したのだ。

最後まで残っていたのが、澪と尚也、シェグナの三人だった。


「そろそろ飯の時間だ。汗流してから食堂に行けよー」


玲音は一足先に向かう。


「置いてくな!」

「こっちも治療しろ!」

「玲音!」


神楽、ウルス、澪の声は届かない。


「まじで行きやがった」

「鬼だ」

「悪魔だよ」

「なんであいつが主人公なの?どう考えても悪役じゃん」

「まぁ訓練となればいつもこんな感じだよ?」

「寧ろ今日は優しい方だな」


ウルス、クレハ、ルビア、アリア、シェグナ、アイヴィア、リジェルの視線が平然としている五人に向く。


「酷い時だと、すぐさまランニングさせられるしね」

「走る距離が割と鬼畜だったよね」

「訓練、というか鍛えることに関してはかなりストイック」

「昔の話ですが、腱が切れてるのに走ってましたし」

「折れた腕で無理やり筋トレしたり?」

「それ本当に人間か?」

「少なくともその時は人間のはず」


全員の顔がありえねぇ〜と語る。


「そろそろ行きますか」

「そうだね。それなりに回復はしたし」

「早く行かないと飯抜きにされる」

「リオンの料理は実質お兄の料理。逃す訳には」

「なるほど。玲音の手料理・・・初めてですね。楽しみです」


駆け足で向かう五人の後を、ウルス達七人はゆっくりついていく。割とキツイのだ。


「歩くのがしんどいと思ったのは初めてだ」

「ウルス、それはここにいる皆が思ってること」

「筋肉痛、久々になるかも」

「明日もきっと・・・」

「想像するな。余計辛くなるぞ」

「食事・・・箸や茶碗持てるかな」

「落とさないよう気をつける」


そして、この後彼等は驚愕する。食事の美味しさに。


彼等は後にこう語る。「あの料理を食べれるなら、あの程度の訓練は地獄でもなんでもない」と。



「それにしても、彼は凄い速度で成長しますね」

「全くです」

「吸血鬼の始祖の血筋。身体能力が他の吸血鬼に比べて高く、種族特性も桁違い。それ抜きにしても」

「加護がなくとも英雄クラス。下手したら英霊クラス」

「玲音の中に渦巻いていた黒いアレはどうなった?」

「アレは上手くいったようです。早霧と村雨、封護に統括。封じ込めることに成功したようです」

「結局アレはなんだったんだ?」

「吸血鬼の始祖の怨念、それと、奴が手を加えていました」

「奴・・・。グレーゴルが?」

「私達が目を付けていたように、奴も玲音に注目していたようで。堕とし、自身の手駒とするつもりだったのでしょう」

「危なくは無かったのか?」

「問題はありませんでした。すぐさま霧雨に選ばれ、生活の中にも負の感情を抱く瞬間はありませんでしたから」


力を願ったあの瞬間、玲音を包み込んだ二つの光。一つはアーメイアのモノ。もう一つがグレーゴルのモノ。

アーメイアの光は、守りたいと願うほどに強くなり、グレーゴルの光は憎しみや恨みを感じるほどに強くなり、意識を奪う。

だが玲音は、憎しみや恨みを感じることは無かった。それまでの生活も、そこからの生活にも、彼は幸福を感じていた。だから堕ちることは無かった。その幸せを守りたいと。強く願っていたから。

唯一、父と母を殺された時は、負の感情の抱いていたが、あの時には既に加護を解放し、制御することができていた。


「驚きですよ。人の身でありながら、理の外へ飛び出して来るとは」

「外なる者へと至る・・・。彼はなんの役割を与えられるのでしょう」

「・・・宰相が言うには、神すら滅ぼす究極の概念。生と死の神になると」

「アーメイア様の役割と言い、宰相の直属は規格外が過ぎるのでは?」


アーメイアの概念。神、という概念が不要だと願えば、神という概念、存在は消えてなくなる。格下の神にしか通用しないが、対象を指定することも可能だ。


「私の場合は、完全な道連れ。それに、関係の無い者達も巻き込んでしまう。最悪の場合、宰相達も」


概念を消し去る、というのは諸刃の剣。故に対象の指定が必要となる。


「玲音が至るなら、私以上の抑止力となる」


玲音がいるであろう食堂の方を眺めながら、アーメイアは以前、宰相と話した内容を思い出す。



「彼をこちら側に引入れるのですか?」

「少し違います。こちら側に至らせるのです」

「どういうことですか?」

「我等の目下の目標は、愚か者のグレーゴルを消滅させることです。ですが、奴も神である為、死は存在しません」

「そうですね」

「というかですね、何故、神である我等に死が無いのでしょうか?我等は生命ではないのか」

「宰相?」

「んんっ。話を戻します。彼に貴方の所の主神全員、加護を授けなさい。そうして、神の力に慣らし、至らせるのです」

「それになんの意味が?」

「彼に役目を与えるのは、我等の主神です」

「主神自ら!?」

「与える役目、それは生と死。神であろうとも殺す、最強の概念」

「っ!それでは!」

「えぇ。敵に回せば、厄介でしょう。しかし、これは必要なことであり、その心配はいらないと思いますよ」

「…何故、彼にその役目を?」

「長くなりますが説明しましょう」


そもそも、神とはなんでしょう。人間とは何が違うのでしょう。我等はどこから来て、なんの目的があって生まれたのでしょう。

人間の世界では、アダムとイブという、人類の始まりの二人が存在します。それは、神が生み出した最初の生命。

では、我等は?我等の始まりは、主神ただ一柱。次から次へと生まれる我等は、主神が生み出した訳ではありません。

疑問を抱え、長い時を過ごし、新たな疑問を抱きます。

人間には死がある。では、我等は?無尽蔵に増える我等。生まれて、その先は?主神や我ですら、死の気配を感じたことはありません。

そして考えついたのが、神に死は存在しない。

なら、神に死を与える存在を創ればいい。そう考えましたが、中々その力に適性を持つのは現れませんでした。


そんな時に、彼が現れた?


その通りです。人の身でありながら、始祖の吸血鬼の血を引く彼ならば。


なるほど。私達と同じ成り立ちを持つ彼であれば、適性を持っていると。


そうです。

まぁ、主神の考えは、我等は生きてもいなければ死んでもいない。生きていれば、死んでもいる。という矛盾の塊でしたが。

そこにあるだけで、周囲に影響を及ぼす。それこそ、空気や重力のようなもの。そうだとしたら、考えている我等は何か。形取る何かは何なのか。

実体の無い我等は一体何なのか。それを知るために、生と死を司る物が必要と。



「役割はいつ、与えられるのでしょうね」


そう呟きを残し、アーメイアは消える。神域を構成していた魔力が霧散したからだ。

これで、1章は終わりになります。これの投稿前に、章を追加したので、わかりやすくなったと思います。


2章から舞台が変わり、新たな冒険が始まります。

彼等が命を賭して戦うのは故郷だけでは無い。


ということで、また次回!

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