第11話 神と神と神
連続投稿4話目
「貴女は」
「我はこの星の管理者にして全ての神の主神にして、概念の神ムーア・ベル・アーメイア」
「俺の名は玲音・B・ヴァンデル。十三星座蛇使い座を司っている」
「ありがとうございます。玲音にコレを渡す前に、私達から大事な話があります。聞いて頂けますか?」
「天照様から聞いています。出来れば願いを叶えて欲しいと。話によりますが、貴女に協力します」
「ありがとう。では、少し場所を変えましょう。他の主神が待っています」
ここでも指パッチン。一瞬で景色が変わる。
「ムー、その子が?」
「はい。神託の子、玲音です」
転移した先には、円卓と12柱の神と空席が2つ。
アーメイアに促され、その1つへと座る。
「とりあえず自己紹介しましょうか」
「儂は神の父ムーア・ベル・アルトメルト」
「私は神の母ムーア・ベル・メリア」
「統括の神セルア・メリア」
「封護の神シュバリア・アル・セルア」
「俺は憎悪の神アージ・ダル・ハルカ」
「私が慈愛の神セージ・アル・ハルカ」
「僕は記憶の神シャルハウル」
「遺伝の神イーシェです」
「思念の神ラムセムだ」
「伝承の神イーベェ・カウナスですわ」
「感情の神フェル・カウナス、です」
「最後に時空の神ウェル・アムネウス」
アーメイアの提案で、神々が名乗りをあげる。
聞いたことの無い名前だが、1人、いや1柱だけ似た名前を知っている。
「玲音・B・ヴァンデルです。失礼ですが、アージ・ダル・ハルカ様はアジダハーカと何か関わりが?」
「それは俺の化身というか分霊だ。この中で唯一、地上へと伝承を残すことを許された神だからな」
「さて、まずは玲音に神についての説明をしましょうか。と言っても面倒なので、箇条書きで纏めてみました」
そう言ってアーメイアは懐から1枚の紙を取り出し、玲音の元まで滑らせる。
・神話に語られる神とは、主神達が生み出した惑星運営端末みたいなもの
・それらが成長していく際、最も早く成長し、長く自身を維持する為の方法が信仰
・八百万の神の多くは、自然発生ではなく、信仰による発現
・主神と呼ばれるのは、概念の神ムーア・ベル・アーメイア、神の母ムーア・ベル・メリア、神の父ムーア・ベル・アルトメルト、統括の神セルア・メリア、封護の神シュバリア・アル・セルア、憎悪の神アージ・ダル・ハルカ、慈愛の神セージ・アル・ハルカ、記憶の神シャルハウル、遺伝の神イーシェ、思念の神ラムセム、伝承の神イーべェ・カウナス、感情の神フェル・カウナス、時空の神ウェル・アムネウス
・統括の神と封護の神は同一の神であり分霊。どちらが上ということも、分身というのでもなく、本当に同一存在
・ムーア・ベル・アーメイアが全ての親であるが、メリアとアルトメルトが父と母となっている。アーメイアの存在を知る神は少ない
「なるほど。いくつか気になることが」
「どうぞ」
Q.八百万の神とは一体どういう存在なのか
A.独自の系統を持つ神郡。主神と副神は、ここにいる主神達とほぼ同格。我等との直接な関係無く生まれた神
Q.統括と封護の神が同一というのはどういうことか
A.元は1柱で両方を担当していたが、処理速度に限界を感じた為、自身を二分し効率をあげることにした
Q.そんなことをすれば、存在が危うくなるのでは?
A.彼女に至ってはありえない。何故なら、彼女自身が封護の対象内だから
Q.アーメイア様の存在を知る神は具体的には?
A.八百万は主神天照、副神素戔嗚尊、月詠。他は主神クラス、オーディン、ゼウス等。あとは外なる神とか
「待て、外なる神だと?いるのか?」
「はい。いますよ?というか我もその一員。更にいえば、玲音の持つ戦艦の1隻、あれもこちら側」
「ッスゥーーーー」
思わず、某マリンメイドさんみたいな息の吸い方をしてしまった。いけないいけない。
「あーでも、正確には『外なる』ではなく、『異なる』ですけど」
「その違いは」
「我等主神達が呼ぶには『外なる神』だが、我等が生み出した神からすると『異なる神』となる。理由は、『外なる神』は自然発生だ。我を含め全ての『外なる神』が自然に発生し昇華された。しかし、この星の神は我等によって役割を与えられて生み出された。故に『この星の神』からは『異なる神』と呼ばれる」
「な、るほど。つまり、神としての発生条件か」
「その通りです。我等も生まれた時は役割は無く、先達の『外なる神』から役割を与えられた」
「ムーに役割を与えたのは、確か宰相だったか?」
「そうですね。我に概念という役割を与えたのは、宰相ナイアーラトテップ。言いやすく言うならニャルラトホテプです」
「宰相?が何故概念なんてデカい役割を他神に与える?そもそも、『外なる神』に役割なんてあるのか?」
「『外なる神』はこの世界、この次元の管理者です。そして、自分たちの世界を維持するには、世界の中に小さな世界を運営しなければいけないのです」
「もしかして、運営が面倒で管理するために?」
「その通りです。世界を運営するにあたって、1番最初に役割を与えられたのは我です。その次に複数の神が役割を与えられ、それを補佐する為の神に役割を与えました」
「少し整理させてくれ」
この星は『外なる神』が住まう世界の一部で、この星を管理しているのも『外なる神』。だけど、この『星』に語られる神話に出てくる神は『外なる神』が生み出した管理用端末。
この『星』が生み出された理由は、『外なる神』が自分の領域を守るため。というか、世界を維持するためのもの。
この『星』を管理する『外なる神』は自分達より先に現れた『外なる神』により役割を与えられた。その理由が上にあるように、世界を維持するための一環。
「あーそういうことか。そりゃ観測出来るわけない」
「どうされましたか?」
「いや、ただ宇宙観測の謎が解けただけだ」
宇宙は常に広がり続けている、という説がある。
何故広がり続けるのか、それが解明されていなかったが、『外なる神』の領域であれば、広がり続ける理由もその謎も解明できなくて当然だ。
「アーメイア様、この星の名前はありますか?」
「名前ですか…。あるにはあるのですが…」
この質問にだけ歯切れが悪い。
「話したくなければ構いませんが」
「…いえ話します。話さなければならないことだから」
"この星の名前は地球と言います。かつて、他の神によって創造され、他の星よりも優れた力と技を繁栄させた『外なる神』注目の星でした。その星は、何度か破滅を迎えましたが、その度新たな種が生まれ、繁栄していきました。その中で最も栄えたのが、貴方々と同じ人間です。人間は頭脳を持って利便性を向上させ、人間は力を持って星を制覇しました。しかし、玲音も知っているでしょうが、人間とは少し違っただけで相手のことが途端にわからなくなるのです。どういうことか分かりますか?
相手が怖くなり、どうしていいか分からず、自分を守ろうとしたのか。
そうです。喧嘩や対立、果ては戦争に至ったのです。人間はことある事に争い、傷つけ合いました。それを見た神が、人間を滅ぼそうと、厄災を振り撒きます。洪水、津波、嵐、噴火、地震等、人間を滅ぼすために何度も策を講じました。しかし、人間は滅びることはありませんでした。何故か。それは知っての通り協力したからです。滅びに迫るほど、人間は協力的になり、争い事が減ったのです。ゼロにはなりませんでしたが、それでも、以前に比べれば無くなったのです。そうして厄災を乗り越えた人間は、時が経つとまた争いを始めるのです。それを見て神は、病を流行らせることにしました。代表的なのは黒死病、インフルエンザ、ウイルス感染症、狂犬病等。一部似たような物や変異したもの、人間には関係の無いものもあったりしましたが、多くは人間を滅ぼすためのモノです。そうして滅びに瀕する度協力し乗り越える。そして、乗り越えたらまた争う。その繰り返し。ある時、何を思ったか神は、自身の眷獣をその星に解き放ちました。初めはただの気まぐれでしたが、定期的に解き放ってみると、人間は争うことを辞め、常に協力して生きていくようになりました。そして神々は度々眷獣を解き放ち、星に滅びを与えようとしました。
結果、その星はどうなった?
その星は滅びました。神々の眷獣を飼育する箱庭とかして。
そして、今この星を襲っている魔獣。それは、滅びた星の元人間や動物達。アトランティスで見たでしょうが、この星にいたいくつかの人間や動物は、種族を変えたり、聖獣へと至っています。それ等は全て私達神が行ったことです。彼等を変化させたのは、この星に侵攻してくる奴に対抗するためです。奴の動機は単純で、羨ましいと思ったから奪い滅ぼしたい。自身の星と同じような姿をしているのに、全く違う成長をしようとしているから。
奴は既に、2つの星を奪い滅ぼしています。その星で魔獣を調達し、戦力の補強を行っているのです。
奴ってのは誰のことなんだ?
簒奪と破滅の神ムーア・ベル・グレーゴル。私の次に役割を与えられ、更に自分自身で役割を与えた、宰相達の座を奪おうとする最悪の神です。
我の弟に当たる神で、実力は同等、戦力は向こうが圧倒的でしょう。"
「話はわかった。そこで質問だ。アトランティスの神殿の奥にあった石版には、神々の戦いの代理戦争って残されていた。あれは、間違いなのか?それとも正解なのか?」
「概ね正解と捉えて頂いて結構です」
「概ねってことは、多少の違いはあるんだな。それを聞くことは出来るか?」
「はい。我等主神達『外なる神』は、星への直接干渉を禁じられています。今、この場を設けていることすらギリギリなのです」
「なるほど。許された範囲での対策が、生命の幾つかを作り替え、神器を授けることか」
「神器を授けているのは、我等では無なく、貴方々のよく知る神達です。我等が命じることなく、自身達の判断で神器を授けていたようです。あと今回は、宰相からの承諾を得ているので許されています」
「ん?だとしたら、俺の神器と力はどうなる?聞いた話じゃ、神に由来する力と神器だと聞いてるが?」
「貴方の神器は、知っているでしょうが2つの神器の融合体です。それは、どちらの力も絶大すぎて相殺させないと、存在するだけで世界に影響を及ぼすからです。それを成したのは封護と統括の神セルアです。それが貴方の手に渡ったのは、おそらく神器と共鳴した結果でしょう」
「神器のことはわかった。次は」
「早い話、貴方には我等主神の加護が備わっています。ステータスにも表示されない特殊な加護。その影響で、貴方は種族が力に適応出来るよう変質し、変質して尚、その力は種族を上回り異常な成長を見せているのです」
「と言っても、儂アルトメルトとメリアの加護はないんじゃが」
「そうね。他の神と違って、私達2人は父と母と言うだけ。その代わりに、管理している内容がかなり重要なものなの」
「加護を与えることは許されたのか?」
「加護に関しては、宰相の方から提案されました。理由を聞いたら納得しましたよ」
「我等の加護は、授けられた者に効果を齎し、条件解放により授けた神の権能を扱うことができます」
「主神、統括、封護、憎悪、慈愛、記憶、遺伝、思念、伝承、感情、時空の加護が?」
「はい。その力は、授けられた者によって効果が変わるのでわかりませんが、条件は感情です」
「どういうことだ?」
「それをお教えすることは出来ません。それと、そろそろお時間のようです。色々と大変なことが起きるでしょうが、頑張ってください。それと、こちらの時間はゆっくりと進みますが、本来の時間は既に作戦始まってますよ」
「は?」
「急ぐことをオススメします。それとこちらが八尺瓊勾玉です」
唐突に会話を切られ、衝撃の事実をぶち込むアーメイア。
「その話が本当なら、今何時?」
「日付が変わって12時間程ですかね?」
「おいおいおい」
作戦方針を伝えてはいるが、宜しくない。とても宜しくない。それにあの魔力。澪達が気付いていないことは無いが、その魔力の持ち主に心当たりは無いはずだ。急がなければ。
「渡り鏡!あ、勾玉ありがと!」
手の甲に刻印された勾玉の模様に触れることなく、玲音は消えていった。
「八咫鏡って神域でも問題無く発動できたんですね」
「どう考えても加護のせい。主にアムネウス」
皆の視線が時空の神アムネウスに向かう。
「神の力なら神域だろうと問題ない。それに、彼は」
それ以上は口にしない。いや、口に出来ない。
「なんにせよ、彼が至るその時まで、堕ちないことを祈るばかりです」
アーメイアの言葉に全員が同意するように頷いた彼女等の姿は、周囲に溶け込むように消えていて、その場には何も残らなかった。




