103話 行動そして準備
「エルニエルト、モード切替」
空挺モードから潜水モードへ
「艦内のリソースを生命維持装置へ集中」
無音潜航開始。リソースの6割で主様の生命状態を維持します
「艦内の酸素濃度にも注意を払え」
かしこまりました。行ってらっしゃいませ主様
エルニエルトの主神格と会話をし、VRセットを装着。ゲームを起動し、向こうの世界へ戻る。
「……情報が欲しいとこだが、まぁ上手く進んでることはわかる」
ログインして一番最初に目に入るその建物。
「俺の魔王城か」
セレスの後を継ぎ、この世界の新たな魔王になる。古龍達と三天狼からの依頼。友好国とはうまいこと話がついたようだ。
「セレス、リック、ジル」
ただつぶやく程度の音量。それでも、呼ばれた3人は即座に駆け付けた。
「状況報告」
「私から。古龍、天狼達に最終確認をして、正式な書状にして貰ったわ。見返りに、レオンに頼まれた通りのことを伝え了承も貰った。ついでに、この島に三天狼の加護が付いたわ」
「書状は後で確認する。加護についても。城の建設はセレス主導じゃないのか?」
「それについては俺が」
話を変わったのはリック
「転国、神国、海国、天照王国、獣人国、魔法都市、ドワーフ都市。以上7カ国の承認を得て、魔国の建国が認められました。国主はレオン、あんたや」
「わかっている。国家名はどうした」
「魔国ドロアと」
「よし。それで城は?」
「そっちは、各国から口の固い職人が数十人。残りは、おやっさん率いる万事屋建築班。全員に事情は説明し、血盟で口外を禁じた」
「そうか助かる。城の進捗は?」
「現状8割…いや、6割。外装は完成したが、内装や城の周辺の整備やらなんやらに時間が」
「なるほど…人の手じゃなくてもいいなら、彼等も協力させればいい」
「いいのか?」
「そこに関してはセレスが詳しいだろ?」
「そうね。そういう契約で彼等はこの島での滞在を認められてる。だからこき使っていいわ」
「了解だ」
リックからの報告が終わり、最後はジルの番
「最近の戦争の影響で直接確認できていませんが、森人国、帝国は今回の魔国建国の会議に不参加でした。しかし、森人国の方はこちらの邪魔をすることは無いと手紙を受けました。帝国は完全に静観の形です。
次に、プレイヤー全体に関することです。主様が不在の間、いくつかのPKギルド、クランが先導者に戦争を仕掛け、その全てが我々の妨害工作により中止。そして、PKプレイヤーの多くが森人国側のプレイヤーと共に更に先の帝国へ流れていきました。先導者及び、転国・神国・海国・天照王国・ドワーフ都市・魔法都市・獣人国に連なるギルド、クランに所属するプレイヤーは森人国より先のポータルが使用不可となっています。また、何名かのプレイヤーが古龍や龍王を発見し、挑戦したようですが敗北。レイドパーティーを組んでようやく撃退。帝国側では、魔龍や四天魔などといった魔に属するモノとの契約が進んでるそうです」
「俺が来なかった3日の間に進みすぎだろ」
「リアル3日もあればかなり変わりますよ。どちらの陣営も廃人はいますから」
情勢はかなり変わったと言える。
今まで、レオン達一陣や二陣に不満を抱える三陣以降のプレイヤーやPKプレイヤー達は、異界人という同じ勢力になっていた。
しかし、帝国側にプレイヤーが流れたことで、帝国プレイヤーとそれ以外の構図に変わる。明確にレオン達と敵対関係になったという事。
「レオン、貴方にプレゼントよ。各国の代表達から国主の貴方へ」
手渡されたのは携帯電話サイズの魔石。
「国家間通信用魔石」
映像と音声の両方を通信可能。国家元首と認可された者にしか扱えない、国家機密に類する代物
「なるほどね。向こうやコッチになんかあったら連絡する用。恐らく、国家間会議なんかを行う時も想定してか」
プレイヤーであるレオンは簡単に移動ができるが、王族や国家元首がそう簡単に移動できる訳ではない。それにかかる手間を省くための通信魔石
「よし。城の完成は?」
「リアル2日です」
「それは内と外合わせてか?」
「調整を考えるなら、3日は欲しいです」
「なら、城を中心に終わらせるように。他は多少後回しでいい」
これからすることを考えると、どうしても城だけは完成させたい。
「それと、この国のダンジョン化についてだが」
「ダンジョンモンスターなら手配出来てる」
「了承が取れたのか?」
「基本的に私たち吸血鬼がフィールドに散るけど、ナンバーズだけだと面白みが無いでしょ?」
「まぁな」
ナンバーズ、セレス配下の吸血鬼達の呼称。
その手札の多彩さでその番位が決められる。ナンバーズ達は基本その番位で呼ばれ、それ以外のものは名をもつことは無い。
「だから、アレを使うのよ」
「あぁ。あの愚者共か」
セレスがアレと呼び、レオンが愚者共と言ったのは、この島に元から存在していたとされる住民。
森人国から離れ、衰退した力を取り戻そうと精霊族を実験道具にしていた、黒エルフ達のことだ。
この島には他にも、獣人族の中でも特異な力を持ち迫害された者達や、小人族の生き残り、土人の最古参や龍族である水龍、光龍、緑龍が存在していた。
三龍は戦闘力が低く、個別でいると討伐の可能性があった為、緑龍の力で豊かにしたこの島に隠れ住んでいたという。
太古の地龍がこの島を隠し、レオンに預けた理由がわかるというものだ。
「基本的に先住民は各国の者達と接してないんだよな?」
「作業区画を完全に分け、接触のないように見張りを立てていますから」
「黒エルフ達はどうなってる?ダンジョンモンスターとして活用できるのか?」
「そこは問題ないわ。既にその意識は侵食済み。殺すことに躊躇いの必要ない犯罪奴隷よ」
精霊族を無理やり魔石に封じ込め、死ぬまでそのマナを搾取する実験をしていた黒エルフ達。
精霊王であるアトラルカと契約している身としては、絶対に見逃せない行為であり、話し合いをしようとして先に力に訴えたのは向こうだ。各国の代表達にも確認を取り、この処罰が確定した。
「……。わかった。リアル3日後のゴールデンタイムに世界に、全プレイヤーに向けて告知しよう」
「この世界の防衛機構として、平和維持装置として、世界に魔王の誕生を布告する。我ら魔国のお披露目だ」




