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異世界戦争、界渡り〜渡る世界は馬鹿ばかり?〜  作者: 鯉狐
2章 異世界・代理戦争編(仮)
101/111

98話 開戦と知られざる禁忌

大変遅くなりました。また徐々に投稿再開します

「そら来たぞ。正面から渋々とな」


翌日。天照王国と森人国を繋ぐ平原の一角。

そこへ、森を抜けて数多のエルフとプレイヤーが現れた。


「正面から戦うことの出来ない奴らが何をイキってるのやら」

「レオンってホント意地の悪い」

「そうは言いますけど、不意打ち以外の作戦が無いとか、ホントなんでそんなイキがってるの?ってなりません?」

「主に勝てるとか言いつつ、結局は不意打ちでしか勝てないんでしょ。雑魚は同じこと考えるから」

「拡声術式使って何言ってるんですか。煽り過ぎです」


森人・異界人混成軍に対して、相対する天照王国側の戦力はレオン、セレス、リック、リズ、ジルの5人。

他の戦力は後方にて待機中だった。


「ほれみろ。攻撃してきたぞ」


言葉もメンツも全てが最悪だった。いや、最高に煽りだった。


開戦の合図無く攻撃を仕掛ける混成軍。


距離が届かないのを分かっていないのなら馬鹿だが、


「どうせ煙幕代わり」

「リズ」

「駆け抜けろ風竜」


セレスの分析。それに同意するより先に、レオンはリズへと指示を出し、リズはそれを受けて配下の竜を飛ばす。


「はい丸見え」


一瞬で駆け出そうとしていた敵が丸裸にされ、転移系の魔法を発動しようとしていたのすらバレる。


「慌てんなよ。俺より強いんだろ?せっかく来てやったんだ、俺を殺して見せろよ」


レオンと混成軍全体を包み込む結界。


「戒律」


刻印結界魔術式・戒律...自身の命を核とした完全遮断結界


発動した転移魔法が阻害され、転移先がその場から数歩先になる。


「俺より強いんだろ?」


雷電砲華を放ち、目眩しとする。その隙にレオンは準備を終え、敵軍に向かって歩いていく。


敵もここは受けるようで、何人か纏まって進んできた。


モロバレの殺気とマナの動き。途中で乱入する気満々の相手に、腹を抱えて笑いたくなるのを我慢する。


「ここで貴様を殺す」

「やれるものならどうぞ?」


1歩前に出たプレイヤーが、召喚獣を呼び戦闘態勢を整えた。


「先手は譲ってやる」

「舐めるなよ!」


縮地のスキルだろう。それでレオンに迫る。


「ジョーカー、変幻自在、トリックスターズ」


初めて聞くアーツ。召喚獣の情報にも、あのタイプはいない。


「オールエレメントエッジ」


賢神にのみ許された、魔法のショートカットキー。そこへほかの魔法の発動キーを複合させ、複数の魔法を一度に発動させる。複合魔法詠唱。

エッジ系の魔法が男に向かうが、その全てが男にあたる前に消える。

いや、


「相殺したのか」


ジョーカー、チラリと見えたその姿は、トランプのジョーカーそのものだった。つまり、アーツの名前からして適応型の使役獣。


「トレードマジック、オール・オア・ナッシング」


レオンの腕に絡まる鎖。それは、ジョーカーと呼ばれた使役獣に繋がっている。


「封!」


鎖が砕け散る。


「魔法の封印か?その程度なら」

「爆雷」


脳裏を過ったある記憶に従って後退する。

直後、レオンのいた場所を爆破する、知っている魔法。


「トレードって交換か。俺とお前の魔法を交換、そんで自分の魔法には封をすることで、敵の魔法だけを奪うのか。ま、ジャックの下位互換だな」


あくまで冷静なレオン。その態度に嫌気がさした男が攻撃の手を強める。


「お前の強みはこの魔法にある!それがないお前ごとき、俺一人でも余裕だ!」


爆雷を利用して少しずつレオンのHPを削る。


「口ほどにも無いな!一陣とやらも!」


口数の増えた男と口数の減ったレオン。その状況が、自分達有利に見えた混成軍は、士気を上げていく。


「捉えた!トレードマジック・ライフorマナ」


レオンの肩に刺さった使役獣の鎌。その先から何かが吸われていく。


「ぶち抜け、パイルバンカー!」


動きの止まったレオンの腹を、パイルバンカーが捉え、その腹に大穴を穿つ。


「誰が最強なのか証明されたようだな!」


消えた戒律。その中央で勝利宣言をする男に、混成軍の士気は最大の盛り上がりを見せる。


「どうした!?頼りの最強様(笑)がいなくなって呆然か?こりゃ楽勝だなぁ!?おい!」


ただ立っているだけのほかの四人と、参戦してこない他プレイヤーに、先程のお返しと言わんばかりに煽る混成軍。

レオンの力を恐れ、利用しようとしていたエルフ達ですら、あの程度なら問題ないと判断してしまったようだ。


「ミオ、どう?」

「まぁ良いとこBランクかな」

「数は?」

「7かな。レオンってば、加減して6しか出さないんだもん。正確にはわかんない」


「リズ、貴女はどう見る?」

「低レベル。全てがくだらない。なんでこんなことするのか不思議」

「まぁ言いたいことは分かるわ。気付く気配がなくて、哀れだわ」


「配置完了。準備万端、配信もできてる。いつでもどうぞ」


後方のミオからも拡声術式に乗って運ばれた会話。全くもって興味の無さそうなソレに、混成軍のいや、一部のプレイヤーの怒りが限界突破する。


「敵を殺せぇ!」


そう誰が叫び、前進する。その目の前に、巨大な剣が突き刺さる。


「もういい。つまらん」


頭上からの声。声の発生源は、巨大な剣の上だ。


「知らない魔法やアーツとか見れると思ったのに、出てきたのはその程度。感情に任せた動きで視野を狭めて、判断を鈍らせる。直接戦ったわけじゃないのに、取るに足らないと判断する、その油断がお前達の弱さそのものだ」


声の主はレオンだ。


「戻るのが速すぎる!」

「馬鹿か。そもそも死んでねぇよ」

「嘘をつくな!さっき俺に殺されて」

「本物と分身の見分けがついてねぇだけだろ」


レオンの横に現れるもう一人のレオン。いや、レオンの言い方をすれば分身か。


「普通に考えて、何も情報がない相手と戦おうとするか?情報はあればあるだけ便利なんだ」

「クソガァ!」


わなわなと震える男が降りてきたレオンに攻撃を仕掛ける。


「ステータスが同じなら勝てる?能力に頼りすぎ?何言ってんだ。このゲームにおいて、ステータスと能力を最も有効に使いこなしてるのは俺だ。俺からしたら、お前らが使いこなせてないだけだ」


男が剣を振り下ろすより先に、腹を中心に全身を巡る衝撃に、後方へ吹き飛ばされる。


「縮地のスキルに現実の武術を少し合わせただけの突進だ。武術を現実でもやってるやつならできることだろう」


その言葉に頬を引き攣らせるカイドウとシェン。

彼等は現実で多少の武を収めている。それ故に、レオンの行った事の難しさを理解していた。


「普通は突っ込まない」

「相手も向かってる状態でな」

「しかもやってるのあれか?浸透か?」

「どっかの国の拳法だったか?」


シェン、カイドウ他、武術をかじっているプレイヤーがレオンの行った事の解析をしている。


「タイマンするのは終わりだ。纏めてこい。その全てを俺が返り討ちにする」


姿を隠していた間に発動していたバフに加え、いつもの血刀、血槍、血剣等。血操術で操作している無数の武器が空を埋め尽くさんとする勢いで現れる。


ワールドアナウンス


プレイヤーレオンに敵対するプレイヤーにワールドスキルを発動。


error 外部からの干渉を確認………


認証…レオンに敵対するプレイヤーの全ステータスを3倍。スキルLvを最大まで上昇。アーツ、魔法の使用制限を限定解除。

神の加護を付与



天照王国軍参加プレイヤーにイベント専用スキル守護者達を付与

プレイヤーのVITとHPを2倍


プレイヤーレオンに女神の試練を付与。レベル補正が無くなります。イベント期間中、該当プレイヤーは、現実同様の身体にレベル1状態の補正になります。

該当プレイヤーのHPは2000固定となります。


「え?それって」


流れたアナウンス。混成軍側は、レオンにバフが掛からなくなった事に勝機を見出した。


しかし、天照王国軍側のレオンを知るプレイヤーは思った。


現実の力で戦う?

『それはレオンの強化なのでは?』と



「クッ、ハハ、ハハハハハ!」


レオンは笑う。狂ったように。暴虐天童以来、使うことも無く、若干のフラストレーションを抱えていたレオン。


だから、ミオは願った。レオンが彼等のトラウマにならないことを。


「フーっ」


レオンが息を吐く。


その間に敵は進軍を止めない。魔法や弓の射程内に入ったのか、徐々にレオン目掛けて飛来するが、レオンはそれを一瞥しただけで動こうとしない。


目を閉じ、もう一度深呼吸をして、レオンが目を開ける。


「馴染んだ」


空気が爆ぜる音を置き去りに、レオンが飛び出す。


待機状態だった血剣を無造作につかみ、最前線の男の首を斬る。


勢いはそのままに、後方にいるプレイヤーの集団に突っ込む。追従してきた血剣を投げる、斬る、刺す。ありとあらゆる方法で周囲の敵を殺す。十数人殺った辺りで、敵が振り向く。


「次」


意識がこちらに向いたことを察し、レオンは飛び上がる。空中で姿勢を維持。空中待機状態の血槍を足場に、手に取った血槍をぶん投げる。


投げた時に片足を振り上げ、投げた後に踵で別の槍を蹴る。


降り注ぐ槍は、反撃の魔法や矢を撃ち落としながら敵に向かっていく。


「理不尽の権化」

「最近、玲音の能力が上がりすぎてる気がする。あんなことされたら、私の攻撃も無理かなぁ」

「私達三人で一番可能性あるのはミオだろう?それで無理なら無理だな」


獰猛な笑みを浮かべながら蹂躙しているレオンを見て、身内の三人はそんな会話をしている。


「なぁ、あれリアルでもできるのか?」

「できそうだよな」

「レオンだから、で済まされない件について」


レオンの力の一端を知るクラスメイトも困惑している。


というか、この場において困惑していないのは身内の三人くらいのものだろう。


「次」


ある程度敵を排除すると、レオンは地上に降り立ち、刀を構える。


「実践してみるか」


刀を納刀した状態で構え、レオンは以前試した動きをトレースする。


前衛が接敵するまでの時間稼ぎ、レオンをその場に留める目的の魔法を斬る。


即座に納刀。次を斬る。また納刀。斬る、納刀の繰り返し。


対処する順番を即座に把握。対処する必要があるものは斬り、そうでないものは避ける。


「納刀戦闘術…微妙か」


試しながら、レオンはこのスタイルの欠点を洗い出して行く。


攻撃を弾くのには使えるかもしれない。

でも、対人には向かないか。いや、痛みで相手が怯むなら使えるか?

納刀戦闘術と名付けたが、ゲームで言うアーツがないから、攻撃に威力が無い。

対個ならいけるが、対群は無理があるか。

そもそも、普通に戦った方が早いな。


そうして、レオンはその戦闘スタイルをやめる。


「疾風迅雷、射抜き」


レオンの最速の移動方法。その勢いを突きに乗せ、二人ほどを刀で貫く。


「車輪、刻刃、千断」


車輪の様に回転しながら周囲の敵を斬る。

空間に斬撃を刻み込み、見えない罠とする。

千断は、一瞬のうちに千回の斬撃を放つ。



「刀を扱う人間には、無の境地を目指すものが存在する。何かを求めた先にあるその頂き。無二、夢想、無敵、無縫、無我、無窮…他にもきっと沢山あるんだろう。そして、玲音もまた、その境地に達している」


ミオが誰に言い聞かせるでも無く、ただ語り出す。


「玲音が刀を初めて握ったのは、4歳の頃だった。自身の仕えるお嬢様を守る為の手段として、玲音はそれを選んだ。もちろん、銃器、暗器なんかも一通り。そんな中で、玲音は刀と拳、銃を極めた。元々、ハーフであることに違いはなかったのだから、その能力の一端によるものだったのだろうけど。彼は異様に飲み込みが早く、それを応用する術を心得ていた」


颯さんから聞いた。そして、アーノルドさんとエレナさんからも聞かされた、玲音の特異体質。


「昔から自分が得たいと思ったものは必ず得るまで辞めない子だった。そして、その道を極めて、辿り着いた境地。それは、無限。子供がつけそうな単語だよね。だけど、玲音のそれは違う。彼の刀術は、今この瞬間も成長を続けている。その瞬間瞬間に必要な技術を、動きをその身に落とし込み、更なる高みへと」


「留まることを知らない、その成長速度。終わりの見えぬ玲音の研鑽。故に無限。バカバカしい程に真っ直ぐな玲音だから辿り着いた境地」


その話を聞いていた者たちは、目でレオンを必死に追っていた。


一挙一動を見逃さないように。


その場その場で必要に応じて、必要な技を組み合わせ、改良していく。

疾風と迅雷という二つの技を掛け合わせ、最速の移動方法としたように。

本来四人を纏めて斬る鳴神を、相手を無力化する為に四肢を斬るに留める。

格闘術アーツの使用もそうだ。


際限なく広がっていく玲音の戦闘スタイルは、無限と称するに値するものだ。


「そしてもうひとつ。この戦争でレオンが負ける確率は一割も無い。負けるとなったら、それは向こうが非常識な手札を持っていた場合のみ。ま、それも向こうはあんまり使いたくないだろうけど」


禁樹ユグドラシル。多くの生贄が必要とされるソレを、あの国の奴らが簡単に使えるとは思わない。


「でも、あの数の敵を連続で、かつ対人戦等をメインにしてきたプレイヤーを相手にしたら、流石のレオンも負けちゃうんじゃ?」


それは彼の担任であるアミューの疑問だった。


「確かに普通の人ならそう」

「私やミオ、マイでも無理だろうな」

「でも、レオンは違うよ。たかがゲーム如きでPKして満足してる奴らとは違う。実戦経験に裏付けられた効率的な倒し方と、人を殺す事の心構え。リアルで戦闘経験の無い彼らじゃ、経験のあるレオンには絶対に勝てない」


ミオは言い切る。しかし、ミオの発言に何人かは引っ掛かるものを覚えたようで


「実戦経験っていうのは?」


今どき、実戦経験がある人間なんてのは殆ど居ない。それも、レオンは見た目相応の年齢だ。


「クラスの皆や解放者所属なら、私達が別世界からの転移者だってこと覚えてるよね。その世界で、玲音は数え切れない程人を殺してるよ。私も、神楽も舞ちゃんも。好きで殺したことは無いけどね」


そう言った彼女の言葉に、周りの者たちからの視線が変わる。


クラスメイト達は、とある事件でもしかしたらと感じていたので、多少は平気だったが。それでも、同い年の彼女達の告白に衝撃を隠せないようだ。


「どうして、そんなことを?」


アミューは声が震えるのを自覚しながら、彼女に問い掛ける。

ミオの、彼女の視線の先には、一人で軍を相手に立ち回るレオンの姿。


「幼い頃から、財閥のお嬢様の護衛をしていた。初の殺しは小学生になる前。その人は、自分が仕える人を守る為に。自身が死の淵を彷徨う時もあった。その後……本当に色々あって、私たちの世界は大きく変わってしまった。人同士の争いが始まり、玲音と私達は、自分達の守りたいものを守る為に、そして、使命を果たす為に戦い人も殺したよ。そうしないといけない状態だった。殺さないとこっちが死ぬところだったもん。まぁ実際死にかけたしね」


最後にそう言った彼女は、笑っていたのに、握るその手からは血が滲んでいる。


「レナリス、制限解放。煌滅弓妃レーヴェアルサス。モード和弓」


ミオの二つの弓が溶け合うように一つとなり、その姿を和弓へと変える。


魔力で矢を作り出して構える。

戦場を見据えるミオの目は、戦場を見ながらも戦場を見ていない。


「そこか」


角度をほんの少し上げ、矢を放つ。


放たれた矢は、魔力痕を空中に残しながら、ミオの狙い済ました所に命中する。


「あぁ。ミオからの援護か」


命中したのはレオンの左手。避ける必要が無いと判断し受けてみれば、それは減っていたレオンのHPを大きく回復するものだった。


「自動回復があるとはいえ、この数は減る方が早いな」


レオンも反撃を受けているし、ダメージは着実に蓄積していた。

しかし、レオンの位置まで回復魔法は届かない。だから、ミオは自身の神器の能力でレオンの回復を行った。


「相変わらず、どういう読みしてるんだか」


常に動き回り、相手の狙いを定めさせないようにしているレオン。

敵陣ど真ん中と言ってもいい場所で戦っているレオンに矢を当てるなら、どれだけの隙間を狙い撃っているのか。


「雷公脈動、鳴動、侵蝕」


HPが減るのを無視して、レオンは強化の段階を引き上げる。


「アトラルカ、第二位階マナエンハンス、第三位階アストラル、第六位階アストラルゲート」


MPを一度全消費して、その後消費したMPの半分を最大値に固定し、MPを消費する技の威力を増加させるマナエンハンス。

HPとMPを共有し、アストラルという特殊値に変更。両方が尽きない限り、死ぬことも魔力切れになることも無い。

星の生命エネルギーに等しい力を呼び出すアストラルゲート。


ステータスによる補正は無いが、リアルと同一になったことで、この身体の出力は大幅に増加した。


リアルでは無尽蔵の魔力。それが固定されたHPをアストラルによって補い、アストラルゲートによって、普段手にすることの無い力を行使する。



「もしかしたら、今のレオンはリアルの玲音より厄介かもね」

「そうだな。アッチじゃ使えない力を使えるみたいだし」

「下手したら、アイツの分霊くらい余裕かも?」


三人は小声で話しているが、セレス達吸血鬼、リック、ジル、風音は聞こえていた。

彼等は、頬が引き攣るのを自覚する。

ヤバいやつに仕えてるのかも、と。



「天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉、村雨、早霧、始祖化、夜天朧月、神の加護解放、憤怒、傲慢、強欲、暴食」


禍々しい、そう称するのが相応しいと思える程の圧。


シークレットアナウンス


神祖の欠片に王の因子の発現を確認

該当プレイヤーの所持品に島を確認

該当プレイヤーに配下を数名確認

建国と魔王就任が可能になります



「怒りを纏いて全てを滅ぼせ、アージ・ダル・ハーカ」


玲音を赤黒いオーラが包む。


「時空を拡張しろ、ウェル・アムネウス」


玲音の周辺の景色が歪む。


「制御しろ、フェル・カウナス」


レオンの燻っていた感情や暴発しかけていたフラストレーションが落ち着いていく。


「記憶を辿れ。シャルハウル」

「癒しと救いを、セージ・アル・ハルカ」


レオンの記憶にある全力を出すために、常に自動回復が減少を上回る。


「統括し制御しろ、セルア・メリア」


血操術で創られた武器達が、先程より統率の取れた動きをする。


「封じ守護しろ、シュバリア・アル・セルア」


玲音の周囲の歪んだ空間を光が包む。


統括、封護、憎悪、慈愛、記憶、感情、時空の加護。

この世界では、ワールドスキル「解放」を使っている時に一度解放したきり。


故に、どんな効果なのかが分からない。


もうプレイヤーの枠を越えた何か。そうとしか言えない程の圧を放つレオン。

レオンは、恐れに混じって何かを企んでいる気配を感じとる。

その気配はエルフの一団からだ。



「人造改造兵器投入します!プレイヤーはソレを盾に前進を!」


後方より転移系魔法の気配。しかし、その転移先はエルフ軍の先頭集団の前。


何が来るのか警戒する。


「くそが」


レオンが思わずと言った風に呟く。

出てきたのは、明らかに人だとわかる姿と有り得ない程の兵器の数。それも、マトモなものとは思えない代物だろう。

何せ、人型には無数の武器が埋め込まれ、至る所に手術痕が残っているのだから。


「改造人間…それに、その兵器。何処から流れた」


兵器に込められた魔力。その魔力の質に覚えがある。


「魔物となっていた三天狼の魔力。それに、魔龍ベヒモス」

「それは、貴方に教える必要がありますか?まぁ、とある提供者が居たとだけ」


レオンは内に秘める憤怒の力が暴れ出すのを感じる。


「それにしても、貴方が魔狼を解放したおかげでこちらの研究が不十分で頓挫してしまいました。まぁ、試作品でも十分でしょう」


直後、後方から聞こえる悲鳴に振り返る。


「黒狼の力を研究した成果です。まぁ、大型化できなかったのが不満ですが。それ以外はお気に入りですよ」


離れているのではっきりと確認出来ない。しかし、あれは確かに黒狼の力。


「闇に紛れる力…」


不意打ちクリティカルは、本物と違い一撃とはいかないが、それでもかなりのHPを削る。

後方はベルリンやカイドウ達がいる為、簡単に瓦解することは無い。

これ以上の追加戦力が向かわなければ…いや、これフラグか


そうして感知に引っ掛かるプレイヤーの反応。PKプレイヤーだ。混乱に乗じて接近したか。予め大回りで潜んでいたらしい。


リズ、セレス、リック、ジルの孤立組にも黒狼が襲い掛かる。数匹白いのも混じっている所を見るに白狼の偽物。


「さぁ、レオン。あなた一人でこの数を捌けますか?」


レオンに集中する敵軍。人造人間に魔力兵器。エルフの軍勢にプレイヤー達。


「確かに、厳しいのかもしれない。だけどよ、さっきの忘れたわけじゃねぇだろ?」


数分前までレオンは数をものともしない無双劇を繰り広げていた。

まぁ、ちょっと危ないシーンもあったけど。ミオの援護無ければ別の手札を使っただけだから、問題は無いな。

と内心考えたがそれは誰も知らない。


「先程とは状況が違いますから」


自信満々な言葉と共に攻撃が再開される。

最初に接近してくるのは人造人間、改造兵士達だ。

雷公、機雷、爆雷、炎獅子、大蛇、煉獄、炎界、炎陽、鳥の閃、光砲、光竜、暗黒球、血泉・火縄、血刀、


可能な限り遠距離攻撃で数を減らそうとするが


「耐久力あんな」


ゲーム内のステータスでないと、バフはあまり意味を為さない。故に火力が足りないようだ。プレイヤーであれば問題なかった所を見るに、あの兵士達は耐久力に特化している可能性がある。


「ならば!」


重要部位欠損による即死なら、と近接戦に移行。首を狙うが、硬い何かに拒まれ刃が通らない。


「物理無効!?」


咄嗟に跳躍、足場スキルが進化した空足を使い、空を蹴って距離をとる。


「カザミノタチ」


雷の魔力を纏わせた一撃は、ダメージを与えたがいつも程の威力を発揮しない。


「チッ、神名抜刀術も割に合わなさそうだな。なら次」


心月を試す。黒狼、神狼、古龍、龍王達と戦っていて判明したことだが、心月にはちゃんと発動条件があった。

認識できる任意の場所に斬撃を刻み込み、設置型の攻撃とするこの技。発動条件は刀を手にしていること。正確には刀の柄を握っているのが条件。


「これなら通るか」


斬ったという結果を刻む技であれば、敵の首を落とせる。それにはかなり正確な空間把握能力が必要になるのだが


「どういう処理能力してるの?興味は尽きないわね。早く手に入れたいわ」


エルフの一人がそう呟く。さっきからこの女エルフは戦闘に参加しないで傍観しているだけ。戦えない訳ではなさそうだが…


狙う価値はある


「渡り鏡」


女エルフの背後に転移。強襲する。


「風鳴!」


最速の抜刀で仕留めに掛かるが、何かに邪魔をされる。


すぐさま距離を取り、周囲の敵の殲滅に戻る。


「無駄よ。私には加護がついてるから」


ベヒモスに似ているが違う…死を無効化する力じゃない。そこまで強力なら、それに見合うだけの力がある。だが、この女からはベヒモス以下の力しか感じない。となると


「攻撃を何回か無効化する加護か。何かに代償を払って受ける恩恵。死なないようにしてるってことは、指揮官クラス若しくは総大将…いや、副将だな」


レオンの読みは、あの女は副将で総大将は後方。


「まぁいい。とりあえず全部終わらせる」


内で暴れる大罪・憤怒の力を解放、それに呼応するように憎悪の加護が力を増す。

だが、統括の加護でそれを制御コントロール、封護の加護でレオンの精神への汚染を防ぐ。


「我が家の奥義の一つ心月。この技の更なる高みを」


父アーノルドが残した玲音への宿題。奥義の修得とその改良、進化。


思い出すのは心月の使い方。攻撃だけでなく、敵の攻撃を防ぐ障壁としても利用した。そして、心月は複数の斬撃を同時に刻むことが出来る。


「だったら、纏めてやれるってことだよな!」


空中で一瞬の硬直。瞳を閉じて、戦況を把握。狙いを定める。


「心月・刃層(じんそう)


レオンを取り囲んでいた100を超える兵士が、首を落とされ停止した。


そして、この心月・刃層には副次効果が存在する。急に現れた斬撃が大気中に小範囲の真空状態を作り、それが複数密集することで気圧差による自然現象を齎す。

かまいたち、殺すまでに至らずとも敵の攻撃を逸らし、傷をつけ、レオンに余裕を与える。


次への攻撃に繋げる


「心月・円刀(えんとう)


嵐層の外側の敵、レオンを囲うようにぐるりと一周。上半身と下半身がお別れする。


円刀…レオンを中心に円形に斬撃を刻み込む。心月の強化型。


「大海、海流、凍てつく吐息は時をも止める。コキュートス!」


レオンを中心に発生した海流にのまれ、その水ごと凍る。


「ブラッドウェポン・フルオート、シャドウウェポン・ディフェンスコード、アクセルブラッド、血円武器庫・レーヴァテイン、活性、剣群、暁の光は世界を照らし、黄昏の闇は世界を包み、白夜は世界に祝福を残した。天狼祝福・3」


新たな技も惜しむこと無く使う。天狼祝福はステータス倍率の為ではなく、もう1つの効果の為に発動させる。


天狼祝福は、最大3倍のステータス倍率を持つ。強力なバフ手段だ。

そして、祝福を最大で発動させることで使用出来る。その効果は、防御無視の追撃。追撃割合はレオンのSTR÷2×1.3


心月だけでは時間が掛かりすぎると判断。プレイヤーがあまり交じっていないことから、この対ボス用に組み込んだスキルの使用を決意した。



また複数の改造兵士が壊された。兵器の攻撃も当たらず、後方に送った異界人の部隊も未だ戦果をあげれずにいる。


「これは、使うしかなさそうね。」

「起こすぞ。禁忌の一端を」



その変化をいち早く察知したのはミオ、僅かに遅れてレオン。カクラやマイ、リズにセレス、リック、ジルも早くに気付いた。


「エルフの部隊がかなり後方へ引いている」

「何か仕掛けてくる」


そう全員が判断すると同時に、戦場全体が揺れた。


「ッ!リズ、セレス、リック、ジル!総員後退!」


周囲の敵を完全に無視して、渡り鏡でリズ達の下へ転移し指示を出す。


「セレス、全部隊使って敵強襲部隊を排除しろ。リック、お前のとこもだ」


あまり見ない焦った様子のレオン。余程のことがあると判断し、すぐさま指示に従う。


セレスとリックと入れ替わるようにして、ミオがレオンの下へ駆け付ける。


「レオン、不味いよ」

「わかってる。この気配は禁忌だ」



揺れに脚を取られ、身動きのできない森人国側のプレイヤーが、地面ごと何かに喰われた。


その何かは、巨大な一匹の蛇。全身を覆う薄緑の鱗。蛇や龍種に見られる縦長の瞳孔に、先が二手に別れた舌。幅だけで3mはあるだろう。全長は未だ把握出来ないほど巨大。


「なるほど。禁呪ユグドラシル、その発動に必要な前提条件を満たす為の」

「正解よ。流石禁呪の使い手ね」


その蛇の頭に優雅に佇むのは先程の女エルフ。その横には老いた男のエルフ。


「私はリリアナ、エルフの巫女よ」

「儂はリオール、エルフの長老だ」


そう名前を告げ、リリアナと名乗った女がその蛇の説明を続ける。


「この子は禁呪ミドガルズオルム。私達エルフが保有する二つの禁呪の一つよ」

「……ミドガルズオルム、別名ヨルムンガンド。なるほど、小人族がなんで厄災殺しを作れたのか疑問だったが、そこに繋がるのか」

「聡明な貴方。レオンと言ったわね。小人族のソレにこの子が関わるの?」

「…まぁいい。禁忌ヨルムンガンド、小人族は地中を移動している時に、偶然ユグドラシルの下で眠るソイツを見たんだろう。そして、観察し模倣した。その結果が厄災殺し」

「なるほど。では質問するわ。この子がどうして禁呪と呼ばれるか、わかるかしら?」


禁樹ユグドラシルのなら分かるが、ミドガルズオルムは記録が無く判断できないが。


「恐らく、喰ったモノをエネルギー、マナとして蓄積し、ユグドラシルの発動エネルギーにする。ミドガルズオルムがいれば、自国の犠牲無くしてユグドラシルが発動できるからな」

「そう正解。シンプルな能力だからわかりやすいわよね。ま、だから何ってことなんだけど」


ガパッ、という擬音が聞こえそうな程口を開き、何かを吐き出す。同時に、鱗が震え、棘のように外を向く。それはまるで外敵を排除する鱗の弾丸。


レーヴァテインと毒霧の持続ダメージが蔓延する戦場に、致死の弾丸が放たれる。


「喰らいなさいミドガルズオルム」



納刀戦闘術ですが、イメージとしてはPSO2というゲームの刀を使った動きから着想を得てます。

無の境地についてですが、作者のなんちゃって感満載です。

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