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ドラゴン、水着を手に入れる。②

20200825

小説家になろうトップの「書籍化報告」に掲載していただきました。

 魔王さんからもらった水着や浮き輪で、午前中の水泳実習――もとい湖水浴は楽しい時間になった。ボクも魔王さんに選んでもらった水着を着て、ちょっと授業に参加させてもらったのだ。


 ボクもオリビアも相変わらず泳ぐことはできないけど、泳げない人たち向けの「顔に水をつける練習」や「水に浮く練習」を頑張った。すごく頑張った!

 正直、子どもたちに交じってボクも授業に参加することになるとは、ちょっと予想外だったけれど……オリビアが「パパと一緒に泳げるなんて、オリビアとってもラッキーだね!」と、とても楽しそうだったから……まぁ、こういうのもいいかな。

 オリビアも水泳の練習も頑張ったのだけれど、実習の最後の方は浮き輪につかまってプカプカと湖を漂っていた。


 どうやら、オリビアは浮き輪がすごく気に入ったみたいだ。

 湖からあがって昼食に向かうのにも、ずっと浮き輪を身に着けている。


 ふふふ、可愛いなぁ!

 クラウリアさん、ちゃんとオリビアの可愛いところ、チェ=キに撮ってくれたかな。


***


 お昼ごはんをお屋敷で食べたら、午後からは浜辺で自由に泳いだり水遊びをしたりする時間だ。

 その間に、オリビアとリュカちゃんは、【七天秘宝(ドミナント・セブン)】の探索に行くことになっている。


 お昼ご飯のサンドイッチを食べながら、リュカちゃんはヤル気満々だ。

 水着の上にタオルを羽織ったままで食べる昼食は、なんだか特別な感じがしてワクワクする。



「いよいよ本番でありまするっ! リュカは頑張ります……見ていてくださいませ、エスメラルダ様……!」



 オリビアはサンドイッチにご満悦で、リュカちゃんは午後からの探索にむけて燃えている。

 正反対の二人だけど、同じ目標に向けて頑張る仲間だ。

 午前中にもう一度、オリビアの持つ宝玉【失われし原初(ロスト・ワン)】を使ってみたところ、やっぱり【七天秘宝(ドミナント・セブン)】は湖の中にあるみたいだった。どうやって探したらいいんだろう……いくらリュカちゃんが泳ぎが得意と言ったって、湖の奥底まで潜ることはできないだろうし。



「ま、まぁ、潜ってみればわかりまする。はるか遠き東の果て、水の国の巫女姫であるわらわにかかればお手の物!」


「たしかに、リュカちゃんの泳ぎはすごかったものね」


「あう……たしかに、すいすい泳いでいたな。あ、リュカ。もしやあれって、おぬしの持ってるお宝の力だったり?」



 大きなクリームフルーツサンドイッチをあーんと頬張りながら、魔王さん。

 リュカちゃんは、大きくうなずいた。



「うむ、さすがマレちゃん。イオエナミ一族に伝わる【七天秘宝(ドミナント・セブン)】がひとつ【蒼水の剣】――その力により、わらわは泳ぎがとっても上手いのでありまする!」


「あうぅ~~っ! 【七天秘宝(ドミナント・セブン)】便利すぎではっ!」


「なるほど、宝玉の力を借りた魔法なんだね」



 学院の理事長であるフィリスさんも、【久遠の玉杖】という【七天秘宝(ドミナント・セブン)】の力で光の障壁を作ったりしていたものね。

 ちいちゃいものたち――エルフやニンゲンの使う力にしては、すごく強い力だと思っていたけど、【七天秘宝(ドミナント・セブン)】がその源だったらしい。なるほど、ニンゲンたちが奪い合うのも道理だ。



「なっるほどのぅ。でもあれ、けっこう制御ムズそうに見えるのであるがぁ?」


「わらわは幼き頃より【蒼水の剣】を受け継ぐものとして訓練をうけてきましたゆえ! ――本当は、わらわの力が完全なら……故郷はあんなことには」



 リュカちゃんの故郷は、たしか亜竜の大群に襲われて滅びてしまったと言っていた。

 ボクは、泣きそうになってしまう。

 故郷がまるごと消えてしまうなんて――リュカちゃんは小さな身体で、どれくらいの悲しみを抱えているんだろう。



「……リュカちゃん。見つけようね、【七天秘宝(ドミナント・セブン)】」


「む……おぬしに言われずともわかっておる! 見つけるのはわらわでありまする」


「でも、何か手掛かりがあればいいのですが……」



 みんなのわいわいしたお喋りを聞きながら食後のお茶を淹れていたクラウリアさんが、うーんと難しい顔をする。

 たしかに、湖といっても広い。

 【神龍泉トリトニス】――ボクが昔寝ぼけてドカンと掘ってしまった大穴は、そう、とっても広いのだ。

 ボク、反省……。



「あの、手掛かりでしたら心当たりがありますわ」


「デイジーちゃん」



 声をかけてくれたのは、デイジーちゃん。

 この館の持ち主であるパレストリアさんの家の娘さんだ。

 代々、ニンゲンたちの中では有名な魔術師の家系だということで、デイジーちゃんはいわゆる「お嬢様」というやつなのだ。

 すみれ色の長い髪が、まだ午前中の水泳訓練で濡れている。


 水着の上から羽織ったふわふわのタオルから伸びる手足は、すらりとしていて、オリビアよりも少し背が高い。去年うちに泊まりに来てくれたときには、オリビアとほとんど同じ背丈だったのに。

 子どもの成長って、本当に人それぞれなんだなぁ。


 デイジーちゃんは、ボクたちの顔を見回す。



「あの、食後に見ていただきたいものがあるのです」


「見てほしいもの? ボクたちに?」


「はい。実は――この館の地下に、湖の怪物から奪ったといういわれある鱗があるのです」


「湖の怪物だって!」


「う、鱗……!」



 ボクたちは顔を見合わせる。

 デイジーちゃんはさらに続けた。



「ええ。湖の怪物はその鱗を取り戻したがっていると伝わっておりまして、いまは厳重に封印されています。我が家に伝わる伝説では、その怪物は――額に『宝石のごとく光る角』を持っていたというのです」


「宝石のごとく! それはよもや、【七天秘宝(ドミナント・セブン)】!?」


「はい、可能性はあるかと思いますの」


 勇み足のリュカちゃんが立ち上がり、デイジーちゃんはこくんと頷く。

 なるほど、それはちょっと見せてもらう価値がありそうだ。

 鱗っていうのも気になるし。


 ……まさかボクの鱗とかじゃないよね。さすがにボクがここでお昼寝していたのって何千年も前だし。



「デイジーちゃん、ありがとう! それって、すっごい手がかりかもっ」



 瞳を輝かせるオリビア。

 とにかく、現物を見せてもらおう。

2020年8月31日、書籍版1巻発売です。

コミカライズ連載も決定!!

パパとオリビアの可愛い日々を、どうぞイラスト付きで楽しんでください!

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― 新着の感想 ―
[一言] パパやらかしてる可能性大。(笑)
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