ドラゴン、湖水浴をする。③
現れた魔王さんの姿に、ボクは驚く。
オリビアたちの学院水着とは比べ物にならないくらい、布の少ないデザインだ……! 魔王さん、暑がりなのかな……いや、ボクもニンゲンとして生活して長いし、そろそろそういうことじゃないのはわかってきているけれど!
「わっはっは! どーだどーだ、夏っ! 太陽、浜辺――そして我のような美少女といえばっ!」
魔王さんは「ててーん!!」と叫びながらポージングをした。
「せっくすぃー水着!! であるっ!!」
「お似合いです、マレーディア様っ!! ああ、でもこのパラソルのせいで、ガン=レフを構えられません……クラウリア、一生の不覚っ」
「ふふふん♪ あとで部屋でゆっくり撮影会をしてやってもよいのだがぁ~?」
「ああっ♡ ありがたき幸せでございます、マレーディア様ぁっ♡」
「ふっははは! どうじゃ、古代竜! 輝くビキニにときめくがよいぞぉ!」
「ビキニ……って、その帽子のこと?」
「あう? え、いや、これは麦わら帽子ね? 水着水着」
魔王さんは、布の少ない「せっくすぃー」な「ビキニ」で色々なポーズを繰り出している。
クラウリアさんも普段と違う服装だ。
魔王さんと同じ布地のすくないビキニに、ひらひらのした布を腰に巻いている。
どうやら魔王さんとおそろいの水着みたい。
クラウリアさんは「大人!」という感じの雰囲気なのに、魔王さんはなんだか可愛らしく見える。
二人が並んでいると、なんともいえない迫力があった。
「まぁ、素敵!」
「憧れてしまいますわ……」
「眩しいですぅ」
そんな子どもたちの声に、魔王さんはむっふっふと満足そうだったけれど――
「さすが、クラウリアさんですわっ」
「あうぅ~!!! そっちかーい!! 我も褒めてよ~~!!」
いつもの魔王さんだった。
水着っていうのは、色々あるんだな。
しょぼしょぼしている魔王さんに、すかさずオリビアが駆け寄る。
「マレーディアお姉ちゃんもすっごい素敵だよ!」
「っ! ふ、ふっふっふ……さすがは我が妹分よな? オリビアってばわかってるぅ~」
「オリビアさんの言う通り、魔王様はこの渚で誰よりも輝いておられますよ!」
「うんうん」
「そ、そうかな? うむっ、そうだよね知ってる!! うっははは~!!」
楽しげなざわめき。
リュカちゃんも、表情に出さないように頑張っているけどお友達の魔王さんの浮かれっぷりに肩を震わせていた。
お屋敷からお手伝いにきている使用人さんたちの中には、「魔族の娘のあんなはしたない格好をお嬢様がたに見せるなんて……」と文句を言っている人もいたけれど、ボクがにっこり微笑みかけると彼らもすっかり黙ってくれた。楽しい気持ちがしぼまないように、ちょっとだけお静かに……という念を込めていたから、何かが伝わったのかな?
「さぁさぁ、皆さん。水泳実習の途中ですよ」
「「「はーい!」」」
魔王さんたちの周りに集まっていた子どもたちが、先生の一声で整列した。
オリビアも、背筋を伸ばして砂浜に座っている。うんうん、お行儀がいいなぁ。えらい!
先生は周囲を見回して、オリビアに目をとめた。
「それでは、一年首席のリュカ・イオエナミさんにお手本を見せてもらったところなので、次は二年首席のオリビアさんですかね」
「ふぇっ!?」
オリビアがぴょんっと飛び上がる。
オリビア、今まで泳いだりしたことなかったけど大丈夫かなぁ……!
8月31日の1巻発売まで、あとわずか!
コミカライズも決定です!




