ドラゴンと遠足前夜①
来月、書籍版第1巻が発売となります。
どうぞよろしくお願い申し上げます!
遠足のおやつは300サキュルまで、ということがわかった。
あとは、ついでに「ばなな」という南国の果物はおやつに含まれないということもわかった。
オリビアは、きらきらと目を輝かせて「何をもっていこうかな~♪」と浮かれている。
とても可愛い……!
すこし身体も大きくなって、お友達も増えたなって思っていたけど、まだまだ子どもなんだなぁ。
宮廷料理人の娘さん、ケイトちゃんの提案で手作りのお菓子をもっていくことにした。
300サキュルを持ち寄って、材料を買い込んでのお菓子作り。
オリビアのクラスのみんなと、オリビアと同室のリュカちゃんも一緒にクッキーやカップケーキを作ったのだ。
魔王さんも、クラウリアさんも一緒だ。
みんなで作ったお菓子は、山盛りになってしまった。
「ふんっ、まったく。これはさすがに作りすぎではありませぬか?」
「大丈夫だよ、リュカちゃん。こんなにあったら、リュカちゃんのお友達にも配れるよ」
「わ、わらわに友達など……!」
ぷう、と膨れるリュカちゃん。
少しずつクラスになじんできているようだけど、遠足となるとまだ不安みたいだ。
遠足は、いよいよ明日だ。
【神龍泉トリトニス】の歴史や地理を事前学習で調べたり、当日にどんな行動をするかを班ごとに決めたりした。
けれども――今回の遠足の目的は、『学習』だけじゃないんだ。
「パパ、見つかるといいね。【七天秘宝】」
「そうだねぇ、オリビア」
なんと、オリビアの持っている宝石【失われた原初】で、もういちど念入りに調べたところ――どうやら、ボクたちが探している【七天秘宝】のうちのひとつが、【神龍泉トリトニス】にありそうだということがわかったのだ!
【失われた原初】から放たれた光は、大きな湖の中をまっすぐに指し示していた。
「ふん、見つけるのはこのリュカ・イオエナミじゃからな!」
「えへへ。うん、リュカちゃんも一緒に頑張ろうねぇ」
「むう……」
デイジーちゃんがオリビアの影からひょっこりと顔を出す。
「ほら、リュカさんが型抜きしてくれたクッキーもとても可愛いですわよ」
「あうっ」
「この猫ちゃんのやつなんて、特に」
「えへへ、マレーディアお姉ちゃんみたい!」
「む!? ま、マレちゃんは関係ない」
リュカちゃん、照れちゃっているみたいだ。
「さぁ、明日は早起きですから、それぞれの寮に帰りましょう!」
デイジーちゃんの言葉で、みんながそれぞれ寮に帰っていく。
カップケーキやクッキーはケイトちゃんが持っていってくれるそうだ。
「いこう、パパ。明日は楽しみだね!」
「うん、そうだね」
リュカちゃんが魔王さんを抱いてさっさと寮に帰っていく背中を見送る。
やっぱり、まだまだオリビアと仲良くするつもりにはならないみたいだ。