ドラゴン、【失われた原初の秘石】を使う。
理事長室。
立派なテーブルに置かれた【失われた原初の石】。
七つの星がきらきら煌めく、大きくて綺麗な大きい宝石。
「まさか……こんな近くにこんなものが……」
頭を抱えるフィリスさんと、魔王さん(猫)を抱っこしてわなわなと震えているリュカちゃん。
そしてボクと、オリビア。
【失われた原初の石】は、【七天秘宝】を探し出す力を秘めているのだそうだ。
オリビアの卒業制作に使う予定だったのだけれど、これってもしかしてフィリスさんとかに渡さないとダメなのかな……。
「あのう、これボクの家にあった石なのだけど……」
「まぁ、古代竜であればそういうこともあるでしょう……【失われた原初の石】は、持ち主が【七天秘宝】を求めたときに光の道を示す――といわれています。いずれにしても、これはエルドラコさんかオリビアさんが持っているのがいいでしょう。この私も実物を見るのは初めてですが……」
「あの、やってみてもいいですか。フィリス先生」
オリビアが、目をキラキラさせて小さな指をわなわなさせている。
やってみたいんだな。
オリビアは好奇心旺盛だ。
フィリスさんは、ゆっくりと頷く。
ソファに座ったリュカちゃんも、興味深そうに宝石を見ている。
「えぇ、もちろん。今の持ち主はオリビアさん……なのですよね?」
「うん、ボクがプレゼントしたからね」
「えへへ、パパありがとう!」
オリビアが、とっても大切そうに宝玉を抱きかかえる。
フィリスさんがごくりと唾を飲み込んだ。
「わたくしの【久遠の玉杖】は地下に安置しています。オリビアさん、【久遠の玉杖】以外の【七天秘宝】を探すように念じてください」
オリビアは、こくんと頷く。
「……七つ星の宝石さん、【七天秘宝】の場所を――オリビアたちに教えてください!」
手をかざし、目をつぶり。
オリビアが、ボクのとっておきの宝石に願いをかける。
すると――宝石の中で、ぴかぴかと七つの星が光り輝き始める。
「すごい! 伝説は本当だったのですね!」
フィリスさんとリュカちゃんがかたずをのむ。
ボクも、きらきらに圧倒される――ボクのお気に入り、こんなすごい力が秘められていたのか!
「この輝きが、私たちを【七天秘宝】へと……導く……!」
フィリスさんの言葉が終わるか終わらないかのうちに、光が一気に宝玉の中に吸い込まれて一筋のまばゆい光線になって――【七天秘宝】を指し示す!」
ビーっと!
それはもう、ビーっと!
「……」
「……」
「……」
「…………わ、わらわを指していますね」
――リュカちゃんを、指し示していた。
「……こほん。ま、まぁ、わらわの体には七天秘宝がひとつ、イオエナミ一族の秘宝【蒼水の剣】が眠っているわけなのですが」
「間違ってはいませんね……?」
「ぷっ、にゃはははは!」
「ああ、もう! 笑わないでよぅ、マレーディアお姉ちゃん!」
オリビア曰く、「フィリス先生の杖以外で、近くにある【七天秘宝】を探して! と念じたらしい。
たしかに、一番近くにあるのは、リュカちゃんの剣だよね。
「まぁ、これで本物のロスト・ワンだということが分かったということですね」
と、フィリスさん。
「では、おいおい場所を探しましょう!」
「はーい!」
「はいっ! わらわが、必ずや【七天秘宝】を集めて御覧に入れます、フィリス様! エスメラルダ様にも改めてそうお伝えをっ!」
「わかりました」
理事長室から退室する……その間際。
「あ!」
オリビアが、フィリスさんを振り返る。
「あのっ、こんどの遠足のことなのですが……」
「ん? ああ、合同実施になった遠足ですね。今年は【神龍泉トリトニス】に行くのでしたか」
「はい、あの……ひとつ質問があって」
「なんですか?」
オリビアは、真剣な表情でフィリスさんに質問をする。
「あの、おやつはどれくらい持って行っていいのでしょうか……!」
リュカちゃんの腕の中で、魔王さんが「ぶふぉっ!」と噴き出した。
【お知らせ①】
第8回ネット小説大賞受賞作です!
2020年8月にマイクロマガジン社様からの発売します。
書影も公開となりましたので、ぜひHP等でチェックしてみてください!
【お知らせ②】
なんと秋葉原アドアーズに垂れ幕を作っていただきました。
身長が7メートルあるオリビアをぜひご覧になってください。
【活動報告】で詳細なリンクご報告しています。
発売日は8月31日です!!!!
ぜひぜひ、書店様でのご予約などお願いいたします!!!