ドラゴン、遠足の準備をする③
魔導具制作の授業は、フローレンス女学院の地下にある『工房』で行うみたいだ。
薄暗くて、色々な道具が並んでいる。
「さっぁーて。ドゥーチェせんせぇのいうことよーぉく聞いて、さいっこぉの杖を作りましょうねぇ~」
オリビアたちと背丈の変わらない、ちいちゃな先生だ。
なんでも、ドワーフなのだとか。
どわぁふといえば、ニンゲンよりも昔からいるちぃちゃい者だ。手先が器用で、地上に開いた穴から綺麗な宝石を掘り出すのが得意。
ボクも昔、すこし交流したことがある。
お気に入りの宝石のうちいくつかは、ドワーフたちからゆずってもらったものだ。
オリビアのクラスの子たちも、持ってきた宝石を机の上のビロードの上に置いている。
大きさも色も形も、それぞれだ。
宝石店の娘さん、ルビーちゃんの宝石はさすがに大きくて立派だった。
「んっん~、オリビアさぁん。それが噂の宝玉ねぇ~?」
「はい、先生。パパの大事な宝石をもらったんです!」
「うっふっふ~ぅ。はぁあ~美しいわぁ~……うんうん、こんな逸品にお目にかかれるとはぁ。面倒だけど先生やってるといーことあるねぇ。うふふ、これはそろそろぉ学院長が~……飛んでくるころかとぉ~」
まるで子どもにしかみえないくらいにぷっくりとした体型のドゥーチェ先生が、オリビアの宝玉――大きくて丸くて、その中に七つの星が煌めいている――を見つめている。
ボクが、ニンゲンの喧嘩の跡でみつけてひろった、きらっきらのお気に入りの石だ。
――おそらくは、【七天秘宝】のうち、失われた八個目。
【失われた原初の石】、とニンゲンたちは呼んでいるらしい。
まさか、ボクの祠にそんな大変なものがあったなんて……!
「ど、どどどどういうことですの~!」
とたたたたたた、という賑やかな足音。
工房への階段を駆け下りてくる音だ。
「フィリスさん」
「おお~、噂をすれば、がっくいんちょ~」
「のんきに授業をしている場合ですか、ドゥーチェ先生っ!」
「にゃはは、工房持ちのドワーフ一族としては【失われた原初の石】なんて、こぉやって近くでよぉ~~く見ておかなくちゃだからねぇ」
「ななな、【失われた原初の石】ですよ!? わ、わ、私がエルフの賢女王としてこの【久遠の玉杖】を手に入れるのにどれほどかかったと……!」
「はっははぁ、ドワーフのことわざにはこういうのがある『あるところにはある、そこになければないですね』ってねぇ~」
けたけたと楽しそうに笑うドゥーチェ先生。
つられて、オリビアのお友達たちもクスクス、そわそわ。
「しっかし、父うえにもらったお宝が【失われた原初の石】とは、なんというかオリビアってかんじっす」
「ふふ、本当ですわね」
「……ぅ、ん」
初めての魔導具制作の授業で少し緊張気味だった雰囲気が、ふんわりほどけた。
「……と、とにかく。授業がおわったら学院長室にいらっしゃい。あなたの任務が大きく前進したわ」
フィリスさんは、はふんと溜息をついた。
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書影も公開となりましたので、ぜひHP等でチェックしてみてください!
【お知らせ②】
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ありがたすぎる~~~~~!!!!
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【活動報告】で詳細なリンクご報告しています
発売日は8月31日です。
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