ドラゴン、遠足の準備をする①
フローレンス女学院は、とってもにぎやかだ。
前期試験である【花の試験】を終えて、生徒たちもイキイキしている。
オリビアも毎日楽しそうだし、寮で同室のリュカちゃんも元気だ。
「【七天秘宝≪ドミナント・セブン≫】の探索者」として、エスメラルダさんに認められたのが嬉しいみたい。
はじまったばかりの昼休み。
中庭でオリビアが友達と楽しそうにお喋りしているのを、ベンチに座って眺めていると。
「お~い、古代竜~!」
「魔王さん」
「我、登場!」
「やぁ、授業はもう終わり?」
「うむっ、今日はリュカのクラスの軟弱なる人間が風邪で休んでおったからな。体育に参加しておったの! ほら、体操着かーわいいだろ!」
「へぇ……そのおでこの絆創膏は?」
「あうぅっ、き、聞くでない……これには悲しいワケが」
「マレーディア様、ボールに顔面からぶつかっていらっしゃったのは大丈夫でしたか?」
「あううぅ~~~クラウリア~~~! ば、バラすなよぅ」
最近は、魔王さんやクラウリアさんもたまにニンゲンの姿になって学園生活に参加している。
リュカちゃんのためだ。
1人でいる子に話しかけるのは、意外と勇気がいることらしい。
クラウリアさんやマレーディアさんがニンゲンの姿でリュカちゃんと一緒にいると、他の子も喋りかけやすいみたいだ。そういうわけで、この頃はリュカちゃんも同じ学年のお友達と一緒にいることが増えてきたのだ。……といっても、やっぱりお友達と衝突しちゃっていることもあるけれど。
「あー、いたいた。マレちゃーん、リュカちゃんが呼んでるよ~!」
「あう。我を呼びつけるとは……ちょっと待つがよいぞ!」
ぽふん、と魔王さんは黒猫姿になって、声のする方に駆け出して行った。
あとに残されたのは、ぬいぐるみサイズのボクと、ニンゲンの姿のクラウリアさんだった。
「あれ……魔王さん、ニンゲンの姿でいけばいいのに」
「そうですね……マレーディア様は小さい頃から、あのように娘さんたちと触れ合うことなく『魔王』として君臨しておりましたから……まだ慣れていないのかもしれません。それに……」
「それに……?」
「いえ。この学園ではそういうことはないと思うのですが……我々は、魔族ですから」
「え?」
そのとき。
ボクを抱き上げる手があった。
「ねぇ、パパ!」
「オリビア」
「あら、オリビアさん。ごきげんよう」
「えへへ、ごきげんよう。クラウリアお姉ちゃんっ!」
ごきげんよう、というのはフローレンス女学院で使われている挨拶だ。
とてもお上品。
「どうしたんだい」
「うん、あのね」
オリビアは、ぺらりと1枚の紙を取り出した。
そこには、楽しそうなイラストと一緒に、こう書いてあった。
――遠足のしおり。
「今度の遠足、1年生との合同遠足になったんだよ!」
「ごうどうえんそく?」
うん! と、オリビアは元気に頷いた。
―――
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