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ドラゴン、友だちと話す③

※今回、お知らせ含めてのあとがきです。

 リュカちゃんがいたのは、北の塔のてっぺんだった。

 亜竜たちが襲ってきて壊れてしまった屋根や屋上は、植物のツタで補修されている。


 セラフィちゃんが庭の植物を使って補修したそうだ。

 セラフィちゃんは『庭園魔術』というちいちゃき者たちにとって新しい魔法体系を作っているのだ、とフィリスさんが自慢げにいっていた。


 さやさやと揺れるツタの葉っぱに隠れそうに、リュカちゃんは小さい。



「……リュカよ、すねるでないぞ」


「マレちゃんか」


「えっと……ボクもいるよ!」


「なっ!」



 ボクの声に、リュカちゃんは驚いて振り向いた。

 そして、きゅうっと唇をかむ。



「……パパ殿はオリビア・エルドラコの父だろう。わらわに構うておってよいのかえ?」


「オリビアは大切な娘だけど、君はボクの友達だからね。リュカちゃん」


「……。勝手にせい」



 むぅ、と体育座りをしているリュカちゃん。

 魔王さんとボクは、リュカちゃんの隣にそっと腰かけた。


 空には白い雲が流れている。

 吹く風が、ツタの葉っぱとリュカちゃんの髪をさやさや、そよそよ、と優しく揺らす。




「……」

「……」

「…………」

「…………っ!」



 こほん、とリュカちゃんが咳ばらいをする。



「い、いつまで黙っているつもりなのじゃ」


「……無理してしゃべろうとは思ってないかな」



 むぅ、とリュカちゃんは俯いた。

 ちなみに、魔王さんは狸寝入りをキメている。

 猫なのに。



「……じゃあ、しゃべらぬ」


「……。えっと、」



 ボクは、空を流れる雲にむけて、ぽつりぽつりとおしゃべりをする。

 神嶺(しんれい)オリュンピアスのお山のうえに住んでいたころには、あんなに近くにあった雲。

 こうして、ちいちゃい体で、ちいちゃいリュカちゃんの隣に座って見上げると、あんなに遠くて、あんなに白い。



「ボクとね、オリビアは、見ての通り血がつながっていないんだ。ドラゴンと、ニンゲンの子だからね」


「……。……わらわの先祖は(ドラゴン)と交わり子を成したヒトの巫女じゃ、血がつながっておっても不思議ではあらぬ」


「わわっ!? え、っと、ボクはその、ニンゲンとお付き合い的なことはしたことないからね!!」



 リュカちゃんから、「まじわる」なんて言葉が飛び出してびっくりした。リュカちゃん、こんなにちいちゃいのに、大人みたいなしゃべり方をする。


 ……いや。

 もしかしたら、無理に「大人」を演じているのかもしれない。


 リュカちゃんは言っていた。





――わらわは……こう見えても竜人の血を引く東国の姫じゃ。故郷の国はもうないが……。それに、エスメラルダ様の一番弟子。友など……友など……




 くわしいことはわからないけれど、リュカちゃんはこんなに小さい体に、たくさんの悲しいことやツライことを詰め込んで、大人になろうと背伸びしているんだ。



「あのね、リュカちゃん……エスメラルダさんは、きっと」


「ほう、私の話かね。古代竜」


「あうぅ!?」


「エスメラルダ様っ!?」



 振り向けば、エスメラルダさん。

 カツン、と靴の音を響かせて、ボクらのすぐそばに立っていた。



「リュカ、こんな場所にいたとはな」


「え、えすめらるだ様っ! これはその……違うのです、さぼっているわけではなくて……」


「……知っている。お前はまじめな子だからな」


「あ、ありがとうございます……」


「今日は、この間の話を訂正しに来ただけだ」


「え?」



 エスメラルダさんは、とっても淡々としゃべる。

 けれども、目の奥は心底リュカちゃんを心配しているんだ。ボクにはそれがわかる、だって、きっとボクがオリビアを見つめるときのまなざしと、とっても似ているから。



「【七天秘宝(ドミナント・セブン)】探索について、その……『補佐』という采配をしたが、撤回する。リュカ、お前も正式に『探索者』として、オリビア・エルドラコと協力して事に当たってくれ。もちろん、対等な立場としてだ」


「……! はい、はいっ! エスメラルダ様。リュカは必ずご期待に応えますっ! ……しかし」


「なんだ?」「もしも、リュカへの情けならば……そのようなお気遣いは……」


「……なにを勘違いしているのかは知らないが、お前の【花の試験】の結果を見ての判断だ。すべての科目で満点獲得、見事だ」


「っ! で、でもわらわはオリビア・エルドラコには点数がおよばず……」


「東国の呪術をおさめたお前が、我らの大陸の魔法を学ぶのは生半可なことではなかろう。それを乗り越えての首席入学、満点の獲得だ。師匠として、評価しないわけにはいくまいさ」



 はわわ、といきなりのエスメラルダさん登場に顔を赤くしているリュカちゃん。

 それにしても……どうして、エスメラルダさんってばこんなに都合よく表れたんだろう?


 ボクが頭をひねっていると、魔王さんがあくび交じりに応えてくれた。




「あう? そりゃあ、あれじゃよ古代竜。セラフィにこやつのこと話したんじゃろ? クラウリアから聞いたぞ」


「え? うん、話したけど……」


「セラフィから母親のフィリス、フィリスから友人……ママ友ってやつかの? そのエスメラルダに連絡がいったわけじゃろ? ママさんじょーほーもーってやつだよねっ!」


「なるほど!」




 それで駆けつけてくれたってことは、エスメラルダさんはやっぱりリュカちゃんのことでとても心を砕いているんだろうな。



「はいっ! リュカは必ずや【七天秘宝(ドミナント・セブン)】をいち早く、オリビア・エルドラコよりも多く集めまするっ! かならずやエスメラルダ様に褒めて……ではない、えっと、ご満足いただける働きをしますゆえっ、弟子として!!」


「む……」



 弟子として、という言葉にちょっと口ごもるエスメラルダさん。



「うむ……期待しているぞ、リュカ」



 ふわり、と姿を消してしまった。




「ふふふ……わらわは負けぬゆえ……!」



 不敵に笑うリュカちゃん。

 すっかり元気になったようでよかったけれど……やっぱり、なにか勘違いしてそうだよなぁ。







***




 ――フローレンス女学院、理事長室。



「エスメラルダ。あなた、大丈夫? ずっと【夕闇の宝冠】の力で姿を消してリュカさんを見守っているわよね?」


「ふぃ、フィリス! 言うでない……【宮廷の魔導士】としての責務ははたしておるわ」


「はぁ……あなた、本当にリュカちゃんのこと好きねぇ」


「当然だろう……不幸な出来事がきっかけとはいえ、私はリュカの保護者なのだから」


「それ、リュカちゃん本人に言えば?」


「馬鹿者! リュカは私を偉大な師匠だと思って羨望のまなざしをおくってくるんだぞ、威厳を保たねば!」


「……ぁ、そう」



 リュカの師匠、エスメラルダはものすごく感情表現が下手だった。

―――


第8回ネット小説大賞受賞作です!

マイクロマガジン社様からの書籍化予定。

ちゃくちゃくと作業頑張っていますー。

書籍限定書下ろしふくめ、とっても可愛い本になりそうですのでどうぞお楽しみに!!!


【お知らせ①】

書籍化作業大詰めにつき、毎日更新はとりあえず本日までです。


【お知らせ②】

ハイファンタジー日間ランキング10位の新作です♪


追放された腹ペコ聖女、実は【神竜級】の魔力持ちでした 〜大魔女に拾われて満腹スローライフを送っていたら【精霊女王】になりあがったので、もう「ぐうたら」とは呼ばせません!~

https://ncode.syosetu.com/n1082gh/


面白い、続きが気になる、がんばれー! ……と思ってくださる方は、ぜひ


下段に【評価欄:☆☆☆☆☆】がありますので、


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★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪

★★★☆☆評価 →まぁまぁかなぁ~? 

★★☆☆☆評価 →今後に期待かな? 

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― 新着の感想 ―
[一言] 色々拗らせてらっしゃいますね(笑) まぁのんびり紅茶でも。ww
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