ドラゴン、友だちと話す①
テストが終わってからの数日の休暇、オリビアは友達とボードゲーム大会をして遊んだり、友だちの部屋にあつまってパジャマパーティをしたりしていた。
ボクたちも、毎日の授業にでかけなくていいので、のびのびと学院の中を探索したり、レナちゃんの面白い作品を一気読みしたりして有意義にすごしている。
「あぅうぅ~、まったく、テストとやらはめんどいのぅ。やっと終わったからこれでレナの新作が読めるね!」
ベッドを転げまわる魔王さんは、レナちゃんのオリジナル作品の新作をぺらぺらめくっては楽しそうに笑っている。
今日も、リュカちゃんとは一緒じゃないみたいだ。
テストがおわってからというもの、「休日に護衛などいらぬ」という理由でリュカちゃんはひとりで出歩いているみたいだ。
おなじ敷地内にいるから、まぁいいとはいえ……ちょっと心配な行動だと思っている。
「それにしても、【七天秘宝】を探すことになりましたが……まるで手掛かりがありませんね」
クラウリアさんがため息をつく。
うん、たしかに「どんな宝石なのか」とか「どのへんにあるのか」も全然手掛かりがない。
エスメラルダさんが情報をくれるっていっていたけど……。
オリビアは、はじめての【王の学徒】としての任務なのに、とっても暗い顔をしている。
「……リュカちゃん、今日もいないね」
「そうだね、オリビア。でも心配しないで」
リュカちゃんは、テストの結果が返ってくるまではソワソワしてしまっていけない……ってことで図書室に籠っているみたいだ。
部屋には全然かえってこない。
魔王さんでも近寄れないくらいに、とっても「ナーバス」になっているらしい。
こんど、図書室まで迎えに行ってみようかな……。
「そうだ、パパ。明日は卒業制作の杖を作り始めるんだよ!」
「卒業制作の杖?」
「うん。2年生からちょっとずつ作り始めて、学院を卒業するときに『一生使える魔法の杖』を自分たちで作り上げるの。ほら、パパといっしょに宝玉を選びにいったでしょ?」
「ああ、そうだったね!」
ボクの住んでいた祠の奥の部屋の、一番奥に置いていた大昔に拾った、とってもきれいな宝玉。
ボクのとっておきの宝玉を、オリビアにゆずったんだ。
太古の昔からドラゴンたちの住む火山で発見された、夕焼け色に輝くまあるい宝玉。
まんまるの宝玉をのぞき込むと、夕焼け色の奥の奥に、星がきらきらと輝いて見える代物だ。
星の数は、1、2、3、……7つある。
七つの星のきらめく宝玉は、ほかのどんな宝石よりもパワーがあるしきれいだ。
太古のドラゴン友達がみんな羨ましがる、ボクのとっておきの宝玉。
あれをオリビアに譲ってあげたのだった。
そういえば、「卒業制作で杖をつくる」って言っていたっけ。
色々あって、すっかり忘れてた!
「えへへ、ずっとしまい込んでて、久しぶりに鞄から出したんだけど……ほんとに綺麗な石だよねえ!」
お星さまが煌めく夕焼け色の宝玉を、オリビアは大事そうに抱えている。
オリビアがマントにつけてるブローチも、いつも眠る前に大事そうに柔らかい布で拭いてくれている。
ボクのあげたものを、オリビアはとっても大事にしてくれているんだ。
嬉しいなぁ。
「さて、オリビアさん。そろそろ寝ましょう。明日からまた授業がはじまりますから」
「……うん。リュカちゃん、遅いなぁ」
「あう。気にするな。オリビアは眠っているがいい。リュカのやつは我が待っておるからの!」
「魔王さん、レナちゃんの新作が読みたいだけでしょ」
「あうっ! 古代竜ってばたまにツッコミが鋭いよね!?」
夜が、更けていく。
リュカちゃんが部屋に帰ってきたのは、真夜中のことだった。
―――
第8回ネット小説大賞受賞作です!
マイクロマガジン社様からの書籍化予定。
ちゃくちゃくと作業頑張っていますー。
書籍限定書下ろしふくめ、とっても可愛い本になりそうですのでどうぞお楽しみに!!!




